地平線の彼方に

 ニュース・ログ 追加: 07.16. 2015

2007年1月からのニュース・ログです。元のページはこちらへ

<追加情報 07.16. 2015>

ニュー・ホライズンズのフライバイは見事に成功しました!NASAからのライブ中継を見ることはできなかったのでその瞬間を味わうことはできませんでしたが、後でリリースされた画像には驚きましたね。

下は、最接近の16時間前に長距離望遠レンズ「LORRI」で撮影された冥王星全景。いわゆる「ハート」と呼ばれる模様もしっかり、その細部まで撮影されています(大きいサイズと詳細はこちらへ)。

 

これを見た印象は、ハートの部分よりも、クレーターが非常に少ない(というか、ほとんど無さそう)ということ。ちょうど、子供の時に砂場で作った「泥だんご」に似ているなぁと…湿った泥を丸めて、仕上げは乾いたさらさらの砂をふりかけるアレです(笑)。

 

また、高さ3500メートル級の山々が集まっている領域も発見されています(上・大きいサイズはこちら)。これは、できてまだ1億年も経過していないとかいう、非常に若い山々だそうで。山地では無く、それぞれが火山のような孤立峰になっているのが、首をかしげます。これどうやってできたんでしょうねぇ?造山活動もあるのではという考えもありますが、プレートテクトニクスの考えでは難しそうな。。

で、さらにリリースされたのが下の画像。衛星シャロンのクローズアップですが、くぼみの中に山が!これはもう何がなにやら…なんでこうなった^^;

 

冥王星はメタンの大気をまとっていますが、大気と地表との間では大規模な循環活動があるという説があります。冥王星は楕円軌道のため太陽との距離を大きく変化させますが、そのため地表温度も大きく変化し、メタンが表面に昇華凝結している時期とそうでない時期との差がかなり大きいという考え。で、個人的に思うのですが、この激しい昇華により地表の風化もかなり激しいのではと…この風化がクレーターを埋めたり、特異な地形を出現させるのに大きな一翼を担っていはしないかと思ったりですが、どうなのでしょう。

まもなく、一連の発見についてNASAが会見をするそうです。どのような話が出てくるか興味深いですね(^^)会見は米東部夏時17日午後1時(日本時18日午前2時)から開かれます。詳しくはこちらへ【New Horizons 07.16.2015】


<追加情報 07.14. 2015>

いよいよ今夜、ニュー・ホライズンズが冥王星に最接近します。打ち上げから9年半、この日を楽しみに待っていました。

すでに様々な画像が公開されていますが、冥王星の衛星・シャロンもまた面白い天体のようで…画像には2つのクレーターが写っていますが、内側の反射能が暗いようで。現時点での推察では、内側は周辺とは別の物質で埋められているか、もしくは周辺の氷の結晶よりも粒の大きい結晶になっているのか(そのため反射能が落ちる)、その辺が考えられるとのことです。

 

またすでに確認されていた北極付近の暗域ですが、これも今後の撮影で何なのか見えてくるだろうとのことです。楽しみですね^^ 詳しくはこちらへ【New Horizons 07.12.2015】

なお、冥王星の直径はこれまで考えられていたよりも僅かに大きいこと、大気層は薄かったことなどが判明しています。詳しくはこちら


<追加情報 07.07. 2015>

ニュー・ホライズンズは4日、コマンド実行のタイミングに問題があったため一時的にセーフモードに落ちましたが、80分後に交信再開、昨日、フルオペレーションに戻りましたが、最接近間近でこのトラブルに、ハラハラしました^^; ただ冥王星系はダストリングの存在説もあり、その辺のリスクは高まっていくと考えるのが自然ですね。気が抜けません。

さて、最新の画像が…カラーを見ますと、全体的に赤みがかっているようで。冥王星の外側にいくつもの小惑星や準惑星が見つかっていますが、それらにも赤みがかっているのがありますね。それらと同じくくりかなぁ…なんか、海王星のトリトンの様相を想像していたので、ちょっと違和感が(笑)

       

 

詳しくはこちらへ【New Horizons 07.06.2015】

冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」が先月25日と27日に望遠カメラ「LORRI」で撮影した最新画像が公開されました。これはカラーで、当然、カラー画像でこの解像度は史上初です。このあとぐんぐんシャープに見えていくことでしょう(^^)
 

詳しくはこちらへ【New Horizons 07.01.2015】


<追加情報 06.26. 2015>

ニュー・ホライズンズの接近は順調で、冥王星系の画質もどんどん向上しているのがわかります。同探査機が最接近をした際に見ることになる側とその反対側の、現時点での見え具合が先日公開されました。

 

すでにわかっていたことですが、かなり多様性に富んだ表面のようです。しかも極冠の存在を強く示唆する高輝度領域も確認されています。一方、シャロンの極域には“暗域”も検出されているという、魅力的な発見も。また、冥王星とシャロンのサイズには2倍以上の違いがあることもわかってきました。

 

(上の画像は6月18日に撮影された衛星シャロン。確かに極域に黒い部分が…炭化水素化合物でも沈着しているんですかねぇ。?)

「この系にはただ驚くばかりだ」と、ミッション責任者のアラン・スターン氏は語っています。詳しくはこちらへ【New Horizons 06.22.2015】

少し前のリリースですが、これは載せておきたいので…冥王星探査機「ニューホライズンズ」が4月中旬、1億1300万kmの地点から撮影した冥王星系を動画にしたものです。冥王星と、その周囲を公転するシャロンが見事に描き出されています。



冥王星の自転周期と、シャロンの公転周期は約6日ちょいできれいに同期していることが既に知られていますが、こうして実際に見ることになるのは初めて。素晴らしいですね。

なお、シャロンの自転周期も6日ちょいと、要は3者全てがシンクロしています。もうちょい近づけば、その様子も見えてきますかねぇ。楽しみですね^^詳しくはこちらへ 【New Horizons 04.29.2015】

<追加情報 01.15. 2015>

米航空宇宙局NASAとジョンズ・ホプキンス応用物理研究所の担当チームは、冥王星を目指して飛行を続けている冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」による冥王星の観測を開始すると発表した。

ニュー・ホライズンズはほぼ9年前の2006年1月に打ちあげられ、30億マイル(約48億キロ)の飛行を経て冥王星圏に到達、約半年後の7月14日に最接近を行う。ニュー・ホライズンズは、これまでNASAが打ちあげた惑星探査機の中では最速の探査機であり、道中、冬眠を繰り返しながらここまでやってきた。だが運用チームのこの9年間は“ヒマ”という文字とはほど遠く、機器の調整、観測プログラムのリファイン、幾度とない“本番”さながらの予行演習を繰り返してきた。

「NASAの冥王星探査は人類の、この凍り付いた未開の世界に対する最初のクローズアップなのです」と語るのは、NASA惑星探査部門本部長のジム・グリーン氏。「運用チームはこの第一フェーズに備えてとてもハードかつ滞りない活動をしています。」

このグランドピアノサイズの探査機は12月に最後の冬眠から目覚め、いよいよ本番に入ったのである。今月25日より、望遠レンズによる撮像が始まる。搭載されている長距離望遠カメラ(LORRI)によって、連続的に冥王星とその衛星たちの撮像が続けられる。このことにより、衛星の動きがより詳しくわかることになり、また、残りの道中を飛行するにあたって重要な情報を得ることになる。

「私たちはその惑星に到達するために、過去のどの探査機よりも長距離の飛行を成し遂げ、いままさに観測に入ろうとしているのです!」と語るのは、ミッション責任者のアラン・スターン氏。

今後数ヶ月以上をかけて、LORRIにより冥王星系の数百ショットの撮像が行われ、冥王星までの正確な距離を割り出すことになる。5月までは、“点”でしか写らないのだが、最接近ポイントを決定するに当たって重要な情報は得られる。一連の活動で得られた情報に基づく最初の軌道修正が3月にも実施される予定となっている。(図・ニュー・ホライズンズ接近フェーズ概要)

 

「ニュー・ホライズンズ最接近時における冥王星の正確な位置が、必要なのです」と語るのは、接近ミッション担当責任のマーク・ホールドリッジ氏。氏は「フライバイのタイミングは正確でないといけません。というのもコンピュータのコマンドは冥王星を通過する正確な時刻を基にしてからです」と続ける。このコンピュータが観測機器の方向などを制御するわけだが、時刻と軌道が正確でないと、あさっての方向を向いて観測、なんてことになってしまう。

(プログラムは当然、事前に地上から予め送信されておくわけです。しかも火星のように光速で15分かそこらの場所ではなく、何時間もかかる距離です。汗)

春まで続く第一フェーズではまた、引き続き惑星間空間の環境観測も実施される。その後、春に入るとより活発な科学観測が始まり、その時には、地上のどのパワフルな望遠鏡をも凌ぐ解像度で撮影が実施されることになる。

原文はこちらへ。【New Horizons 01.15.2015】

…打ち上げからもう9年経過しましたね…当時はウェブ中継で打ち上げを見ましたが、強風による翌日への延期などもあったことが思い出されます。時の過ぎるのは早いですね…あの頃から成長していない気しかしない管理人です(笑)

<追加情報 04.20. 2011>

冥王星は単に遠くて冷たいばかりか、最新の観測データによれば、非常に有害な一酸化炭素を含む大気で覆われていると改めて確認された。

10年以上前の観測で、確定的ではないものの冥王星の大気に一酸化炭素が存在する証拠が見つかっていた。

ハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡の観測データに基づく今回の研究では、一酸化炭素の存在が確認されただけでなく、2000年の観測時に比べて一酸化炭素の量が倍増していたことが明らかになった。

研究を率いたイギリス、セント・アンドリューズ大学の天文学者ジェーン・グリーブス氏は、「地球でそんな(大気成分が何倍にもなる)ことが10年の間に起こるかどうか考えてみて欲しい」と話す。地球でそのような変動が自然に生じるとはとうてい考えられない。

冥王星の大気はとても薄く、大気圧は地球の100万分の1程度だが、大気層は比較的厚い。冥王星自体の直径は2300キロ程度しかない。そして今回の研究により、冥王星の大気層の厚みが、この10年間で100キロから3000キロに増えたことが分かった。実に最大の衛星カロンまでの距離の4分の1に及ぶ。

天文学者らは大気の膨張について、冥王星の過酷な季節変化によるものではないかと考えている。

冥王星の公転周期は248年で、楕円軌道を描いているため、太陽との距離が大きく変化する。1989年に近日点を通過し、太陽との距離は44億キロ以内にまで近づいた。「おそらく(太陽から受け取った熱量の)多くが、冥王星の大地に吸収された」とグリーブス氏は語る。冥王星の表面は氷に覆われているため、表層物質の一部が昇華(固体から直接気化)して、薄い大気を膨張させたと思われる。

太陽風(太陽が常時放出している荷電粒子の流れ)によって、いずれは増大した大気の一部は吹き飛ばされてしまうだろう。また、太陽と冥王星の距離が離れるにつれて温度が下がり、吹き飛ばされなかった大気のうち、一部の成分は凍って雪のように降り積もる可能性がある

グリーブス氏は太陽周期に言及し、「冥王星の大気は、太陽の周期に非常に強く反応していると思う」と語った。太陽の磁気活動はおよそ11年周期で変動し、宇宙天気と太陽フレアが変化する。

ただし、前回の観測データが11年前のものとはいえ、今回と大気構成が異なる点については、「現時点ではまだ分からない要素ばかりだ」という。

予想以上に多くの一酸化炭素が存在すると分かったが、それは冥王星が持つ大気圏のごく一部に過ぎない。冥王星の大気は、地球と同じくほとんどが窒素だ。将来、宇宙飛行士が何らかの形で冥王星までの長旅と、摂氏マイナス220度という極寒に耐えることができたとして、冥王星の大気を吸い込んでも害はないのだろうか?

「うっかり熱を加えれば一酸化炭素が発生し、たいした量を必要とせず死に至る。どうなっても僕は知らないよ」とグリーブス氏は語った。

冥王星の大気に関する今回の研究は、ウェールズで開催中の王立天文学会の会合で4月19日に発表された。【ナショナルジオグラフィクス 04.20】

<追加情報 03.18. 2011>

冥王星探査機「ニュー・ホライズン」が天王星軌道を通過しました。早いですね!

            

位置情報の詳細はこちらへ【New Horizons】

<追加情報 09.03. 2010>

画像は、NASAの冥王星探査機「ニュー・ホライズン」が撮影した海王星。同惑星の衛星「トリトン」が写っている。

           

ジョンズホプキンス応用物理研究所のニュー・ホライズン管制チームは、5月25日から7月30日まで、年一度のシステムフルチェックアウトを行った。上の画像はこの間の6月23日に取得された。この時、探査機−海王星−太陽の角度が34度、海王星−探査機−太陽の角度が95度であったが、このような大きな位相角で海王星を観測するのは地球では無理。この位置関係(下)は海王星やトリトンの大気で散乱された太陽光を調べるには都合がよく、この分析は大気の属性を調べる上で重要なデータとなる。

           

画像は同探査機に搭載の長距離望遠カメラ「LORRI」によって撮影された。「海王星のすぐ傍にトリトンが写っていますが、カメラが設計通りに作動していることの証しですね。」と語るのは、ニュー・ホライズン計画研究員のハル・ウィーバー氏。同探査機が海王星とトリトンを撮影するのは、2008年に続いて2度目。

ニュー・ホライズンの本来の目的は2015年の冥王星探査であるが、このような外惑星観測へも貢献しているのである。詳しくはこちらへ【New Horizons 09.03】

<追加情報 02.26. 2010>

NASAの冥王星探査機「ニュー・ホライズン」は先月26日、太陽から15.96天文単位(約23億9千万キロ)の距離まで到達した。これは、同探査機が打ち上げられた2006年1月時の地球と、冥王星最接近時の2015年7月時の同惑星との距離の中間にあたる。

「ここから先、冥王星系に向けてアプローチを開始します。残り半分の旅が始まったのです」と語るのは、ミッション責任者のアラン・スターン氏。

詳しくはこちらへ【New Horizons 02.26】

<追加情報 02.05. 2010>

米航空宇宙局(NASA)は、ハッブル宇宙望遠鏡により撮影された冥王星の最新画像を公開した。

観測は2000年から2002年の2年間にわたって行われた。この約6年前の1994年に撮影された画像と比べると、北極域の明るさが明るくなり、逆に南極域のそれは暗くなっていることがわかるという。地軸が傾いているため冥王星には季節変化があり、しかも公転軌道がやや強めの楕円であるので、その変化が劇的であるとされてきたが、今回の比較でそれが確かなものとなった。続きはこちらへ【sorae.jpg 02.05】

…下は、冥王星の全球がわかるように並べたもの(初めて見たときはまるで生物の教科書に載っているカエルの受精卵の変化みたいに見えました汗)。特に「180°」にはそこだけ孤立して一際明るい輝点が存在しており、この正体が何なのか、研究チームの興味をひいているようです。2015年に到達する「ニュー・ホライズン」による観測が期待されます。

           

冥王星には薄い大気があり、その変化が劇的なことが知られています。約2世紀半の公転の間で、メタンなどが昇華の過程を通して地表と大気を行ったり来たりしており、それが光度にも大きな変化として表れています。とても興味深いものです^^

<追加情報 12.30. 2009>

NASAの冥王星探査機「ニュー・ホライズン」が29日、道のりの中間地点を通過した。

ニュー・ホライズンは2006年1月19日にケープ・カナベラル空軍基地より打ち上げられて、まもなく4年。順調に飛行を続けており、現在は冬眠モードにあるが、1月5日にコマンドを送信し、約10日間かけて軽いチェックが行われる予定。

(下は、探査機から地球までの距離(青)と、探査機から冥王星までの距離(赤)を、時間の関数で表したグラフ。両者が交わるのが中間地点で、それが12月29日。青線が波打っているのは、地球の公転による変化が大きく効くから。)

           

             

探査機は2015年7月14日、冥王星に最接近する。詳しくはこちらへ【New Horizons 12.29】

<追加情報 11.12. 2009>

冥王星探査機「ニュー・ホライズン」は12日、地球から15天文単位の距離に達した。

運用を担当するジョンズホプキンス大学応用物理研究所は9日、ニュー・ホライズンに目を覚ますコマンドを送信した。探査機は今年8月下旬より冬眠モードにあったが、コマンドに反応し目を覚ました。(下は世界時12日22時現在の探査機の場所。土星と天王星の中間地点を通過したのが9月上旬であった。)

            

冥王星に到着する2015年7月までの間、探査機は毎年行われるチェックアウト以外の殆どを冬眠モードで過ごす。このモードでは、週1回、地上へ状態を示す信号を送信するのみ。今年のチェックアウトは7月から8月下旬にかけて行われた。

今回探査機が目を覚ましたのは、アンテナの向きを微調整するのと、いくつかのメンテナンスを行うため。20日に冬眠モードに落とされ、来年1月に今回と同じ作業が再度行われる予定という。

詳しくはこちらへ【New Horizons 11.12】

<追加情報 09.08. 2009>

冥王星探査機「ニュー・ホライズン」は8日、土星と天王星の中間地点を通過した。詳しくはこちらへ【New Horizons 09.08】

<追加情報 08.31. 2009>

7月より続けられてきた冥王星探査機「ニュー・ホライズン」のチェックアウトが今月28日、無事に終了した。探査機は冬眠モードに入った。

このチェックアウト(ACO)はミッション開始から通算3度目のACO。7月7日より始まり、過去のACOに比べ滞りもなく極めて順調に進められたという。

詳しくはこちらへ【New Horizons 08.28】

<追加情報 07.11. 2009>

冥王星探査機「ニュー・ホライズン」は、順調に飛行を続けている。探査機は約200日間の“冬眠”から目覚め、チェックアウト期間が始まった。

今月7日午前6時30分(米東部時)、ジョンズホプキンス大学応用物理研究所の管制部より、NASA深宇宙ネットワークを通してコンタクトが取られ、状態に関するデータがダウンロードされた。全ての機能は正常で、問題はないことが確認された。(下・現在位置。高速で45分ほどかかる)

             

ニュー・ホライズンは昨年12月16日に冬眠モードに入って以来、週1回、地上に状態を示すシグナルを送信するのみで、機器の殆どは停止されたままになっていた。

今後、各種チェックなどが行われ、探査機は8月27日に再び冬眠モードに入る。詳しくはこちらへ【New Horizons 07.08】

<追加情報 05.11. 2009>

冥王星の名付け親であるヴェネチア・バーニー女史が先月30日、死去した。90歳だった。

バーニー女史はイングランド出身。当時いつくかの命名案があったが、当時11歳の女史の提案が広く賛同を集め、結局これで確定したのであった。

現在冥王星へ向かって飛行を続けている探査機ニュー・ホライズンには、ダストカウンターが搭載されているが、これには彼女の名が付けられている。詳しくはこちらへ【New Horizons 05.08】

<追加情報 03.13. 2009>

冥王星を目指して順調に飛行している冥王星探査機「ニュー・ホライズン」は現在冬眠モードにあるが、年一度のチェックアウトの際に行われたテスト撮影画像が公開された。

下は、海王星と衛星トリトン。昨年10月16日、長距離望遠カメラ「ロリー」で撮影されたもので、探査機と海王星の距離はこの時37億5000万km。テスト撮影の成果は期待通りで、最高感度を達成することができたという。

            

一方、トリトンは科学的対象としても興味が持たれている。2015年に接近予定の冥王星は、トリトンと特徴がよく似ていると考えられている。トリトンは冥王星とほぼ同程度のサイズで(僅かに大きいくらい)、海王星に捕獲されたカイパーベルト天体のひとつと見られている。

ニュー・ホライズンの飛行位置からの海王星系の観測は、トリトンそして海王星本体に関する貴重な資料を得ることができるものと期待されている。今後も年一度のチェックアウトの際に、その観測が行われる予定である。

詳しくはこちらへ【New Horizons 03.12】

<追加情報 03.06. 2009>

太陽系では異端とされている冥王星の大気は、地球とは正反対の性質を持っていることが判明した。この準惑星の気温は、高度が上がるほど高くなるという。

先日、冥王星の大気に含まれるメタン(温室効果ガス)の濃度が、チリにあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを使って測定された。

測定の結果、冥王星の大気にはメタンが2番目に多く含まれていた。しかも、メタンの温度は意外にも氷に覆われた地表より高高度の方が高かったのである。高精度の測定によると、冥王星の上層大気は摂氏マイナス220度の地表より50度ほど高温だった。

フランス、パリ天文台のエマニュエル・ルルーシュ氏が率いる研究チームの推測では、冥王星の地表では所々でメタンなどのガスが凍って薄い層を形成している。その固体ガスは、公転している冥王星が太陽に近づくにつれて蒸発して気体になる。この昇華というプロセスにより、冥王星の地表は冷却され大気は暖められる。

科学者のレスリー・ヤング氏は、NASAの無人探査機ニューホライズンを担当している副責任者だ。同氏は今回の発見に強い関心を持っている。ニューホライズンで予期せぬ観測結果が得られるかもしれないからだ。

「太陽を公転する過程で、冥王星が時間とともに変化することは周知の事実だ」と同氏は指摘する。地球上での観測結果と、冥王星を周回するニューホライズンのデータを結びつけることで、冥王星の性質を解き明かす新たな糸口が得られるだろう。詳しくはこちらへ【ナショナルジオグラフィクス 03.06】

<追加情報 12.19. 2008>

冥王星探査機「ニュー・ホライズン」は、9月2日から年一度の全体チェックが行われてきたが、今月16日、無事に終了した。探査機に搭載されている殆どの科学機器は現在冬眠状態にある。

          

管制を担当するジョンズホプキンズ大学応用物理研究所の運用チームは、約4ヶ月間にわたり、各種科学機器の状態チェックやキャリブレーション、ソフトウェアのバックアップなどを続けてきた。探査機は2006年1月に打ちあげられ、冥王星到達までの約9年半を殆ど冬眠状態で飛行するが、年に1回、今回のような全体チェックが実行される。

このチェックは毎年、約10週間をかけて行われるが、その期間は弾力的である。最初のチェックは2007年に行われたが、この時もソフトウェアのアップデートなどで3ヶ月を要している。

次回のチェックは来年7月から、約4ないし6週間かけて行われる予定。詳しくはこちらへ【New Horizons 12.19】

<追加情報 10.15. 2008>

15日、冥王星探査機「ニュー・ホライズン」が打ち上げ1000日を迎えた。探査機は現在、土星軌道を少し越えたところを全速で飛行中である。

             

ニュー・ホライズンは2006年1月19日にフロリダで打ち上げられ、これまでトラブルもなく順調に飛行を続けている。昨年2月下旬には木星にフライバイ、膨大な観測データを送ってきたことが記憶に新しいが、探査機はもう土星軌道を越えた空間を飛行しているのだ。

冥王星への接近は2015年7月が予定されており、まだまだ先の感じがするが、運用チームに暇はない。現在は年に一度の全体チェックが行われている。これは9月2日から始まり、12月までかかる見込み。右は今月の予定表であるが、毎日ギッシリとスケジュールが詰まっている。

また、飛行ソフトウェアのアップグレードなどが行われている。

ミッション責任者のアラン・スターン氏は、あっという間の1000日だったとの思いであるようだ。公式サイトでは1000日達成を記念して、お祝いメッセージを募集している。投稿文は原則ほぼ記載されるとのこと。詳しくはこちらへ【New Horizons 10.06】

<追加情報 09.23. 2008>

現在発見済みで名前が決まっていなかった準惑星にようやく名前が与えられた。この準惑星は、ハワイの神話で誕生と豊穣をつかさどる大地の女神の名前から「ハウメア(Haumea)」と名付けられた。

この準惑星については、2つの天文学者チームがそれぞれ独自に発見したと主張していた。国際天文学連合(IAU)は、正式な「発見地」をスペインのシエラネバダ天文台と記しているが、これは明らかに妥協策のようだ。

2005年にアンダルシア天文研究所(IAA)のホセ・ルイス・オルティス氏が率いるシエラネバダ天文台のチームが、この天体の最初の発見報告をIAU委員会に提出し、この天体には「2003 EL61」という仮の名前が付けられた。

しかし、IAUは、天体発見で有名なカリフォルニア工科大学のマイケル・ブラウン氏が率いるチームに、正式名称を選ぶ栄誉を与えた。ブラウン氏のチームは2004年にこの天体を最初に発見したと言われている。

オルティス氏のチームが発見報告を行ったとき、ブラウン氏のチームは「私たちがこの天体について公表しようとした直前に、オルティス氏のチームが発見を“奪った”」と主張した。こうして、発見者をめぐる論争が発生した。

IAUは、先週発表した最終報告で、天体の正式名称が「ハウメア」に決まったと伝える一方、「発見者」の名前は空欄のままにしている。

ブラウン氏は、「発見者が天体の命名をするというIAUのルールを考えれば、IAUの考えは明らかだろう。私が本当の発見者だと言っているも同然だ。ただし、発見者が誰であるかにかかわらず、冥王星の仲間が正式の名前を得ることは非常にうれしく思う。新しい準惑星に名前が付けられ、正式なリストに加えられるのは、それ自体で素晴らしいことだ。こうしてリストの名前が増えてゆけば、一般の人々も、海王星より遠い領域にたくさんの天体が存在することに気付くようになる」と話す。

準惑星のカテゴリーには、元惑星の冥王星に続いて、すぐに元小惑星のケレスが加わり、最近になってエリスとマケマケが加わった。先週の段階で、正式に発見が承認されていながらまだ名前の付いていない準惑星は、「2003 EL61」と呼ばれていた天体を残すのみであった。

ブラウン氏は、この天体を発見したのが2004年のクリスマス直後だったので、それにちなんでこの天体を「サンタ(Santa)」と呼んでいたが、チームの一員でイェール大学のデイビッド・ラビノウィッツ氏が「ハウメア」と名付けることを提案し、ブラウン氏もそれに同意した。

ハウメアはハワイの神話で石を象徴する女神であり(ハワイ人は石を大地の骨とみなす)、今回の命名は2003 EL61にふさわしい名案と言える。細長く、およそ冥王星の3分の1の大きさを持つハウメアは、大部分が岩でできていると考えられているのだ。

さらに天文学者たちは、この準惑星が過去に他の天体と衝突して衛星が分離したと考えており、その点もハウメアの名に適している。ブラウン氏は自身のブログで、「ハワイの神話では、女神ハウメアはさまざまな神々の母であり、その体の各部位から神々が分離して誕生したと言われている。カイパーベルト天体のハウメアの場合も、ハウメアを中心としてその破片が周囲に散らばってカイパーベルト天体の一群を形成している」と説明している。

準惑星ハウメアの2つの衛星にも、女神ハウメアの娘から名前が付けられた。1つはハワイ島の守護神でフラの女神「ヒイアカ(Hi'iaka)」で、もう1つは水の精霊「ナマカ(Namaka)」である。

一方、オルティス氏は、自分たちのチームがこの準惑星を発見したという見解を譲らず、名前を付ける権利は自分たちにあるはずだと主張している。詳しくはこちらへ【ナショナルジオグラフィック 09.23】

<追加情報 09.19. 2008>

国際天文学連合(IAU)は19日までに、太陽系の外周で発見されたラグビーボール状の天体について、ハワイ神話の多産の女神にちなんで「ハウメア」と命名し、第5の準惑星、4番目の冥王星型天体(海王星以遠の準惑星)に分類した。

準惑星は2006年8月のIAU総会で新設された分類で、これまでに冥王星とエリス、セレス、今年7月に命名されたマケマケがある。

「2003EL61」という仮符号を付けられていたハウメアは、マイケル・ブラウン米カリフォルニア工科大教授らが発見した。長径が冥王星(約2300キロ)程度のラグビーボール状の形で、自転周期が約4時間と高速で回転。地球−太陽間の平均距離(約1億5000万キロ)の35〜50倍の楕円(だえん)軌道を周回し、2つの衛星を持つ。【時事 09.19】

…IAUの公式リリースはこちらへ。この天体、ブラウン氏らのチーム内では「サンタ」と呼ばれていました。詳細は当サイトのこちらの<03.14.2007>の記事にて。

<追加情報 08.04. 2008>

国際天文学連合 (IAU) は、2005年3月31日に発見された太陽系外縁天体(136472) 2005 FY9 について、その発見者であるカリフォルニア工科大学のマイケル・ブラウン (Michael Brown) 博士によって提案されていた「マケマケ (Makemake)」という名称を承認し、同時に準惑星として分類することを決定しました。

マケマケは、南太平洋のラパ・ヌイ島 (イースター島) に伝わる、人間を創造し豊穣を約束する神の名前です。この天体の発見がキリスト教の復活祭(イースター) の数日後だったため、そして、この島をヨーロッパ人が発見したのが1722年の復活祭の日と言われているための提案でした。

これによって、マケマケは4つ目の準惑星、なおかつ、冥王星、エリスに次ぐ3つ目の冥王星型天体となりました。国際的には、他にもいくつかの準惑星候補があがっています。その大きさなどが明らかになるにつれ、マケマケと同様に、IAUで命名提案が承認されると同時に準惑星として登録されることになります。したがって、今後も準惑星の数が増えていく可能性は高いでしょう。

一方で、2006年のIAU総会で採択された太陽系の惑星の定義に反発し続けている天文学者もいます。特に冥王星の発見の地であるアメリカでは、その傾向が顕著です。

アメリカのボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学では、8月14日から3日間にわたって「The Great Planet Debate (偉大なる惑星討論会)」なる討論会が開催される予定です。

天文学の分野では、1920年に開催された宇宙構造についての有名な討論会を「The Great Debate」と呼んでいます。この時には、渦巻き星雲 (注) が我々の天の川銀河に属するのかどうかや、天の川銀河の大きさに関する討論が、二人の有名な天文学者の間で行われました。

今回は、それにちなんだ惑星定義についての討論会で、アメリカ自然史博物館で冥王星を展示から真っ先にはずしたニール・タイソン (Neil deGrasse Tyson)博士と、IAUの惑星の定義に反対しているマーク・サイクス (Mark Sykes) 博士との間での討論も予定されています。

とはいえ、全体としては、惑星の定義を改めて冷静に見直し、様々な側面で捉え直すと共に、教育現場で科学教育に生かそうという狙いがあります。特に、なんらかの決議や採決が予定されているわけではありませんが、この討論会の行方は今後のIAUの議論に反映される可能性もありえないことではありませんので、注目に値することは間違いないでしょう。

注:当時は、淡く星雲状に見える天体が、我々の銀河系の中にあるのか外にあるのかが明らかになっておらず、現在の系外銀河にあたる天体も、すべて「星雲」と呼ばれていました。【国立天文台アストロトピックス402 08.04】

<追加情報 07.20. 2008>

国際天文学連合(IAU)は20日までに、太陽系の外周で2005年に発見され、大きさが冥王星の3分の2程度とみられる天体について、ポリネシア・イースター島の豊穣(ほうじょう)の神にちなみ「マケマケ」と命名したと発表した。冥王星とエリス、セレス(ケレス)に続く4番目の準惑星、3番目の冥王星型天体(海王星より遠い準惑星)に分類された。【時事 07.20】

<追加情報 07.07. 2008>

冥王星の衛星「カロン」が発見されてから30年を迎えた。1978年6月、米海軍天文台のジェームス・クリスティーおよびロバート・ハリントンによって偶然発見され、同7月7日、公式に発表された。

クリスティーらは当時、冥王星の軌道要素をより精度の高いものにすべく精密な位置観測を行っていた頃であり、衛星の発見など考えてもいなかった。冥王星を撮影した彼らは、それが不自然にゆがんでいること…妙な塊がついているのに気づいたが、当初は光学系に問題があるのではないかと考えたほどである。だがその可能性は排除され、それが別の天体の被さったものであること、その後の継続観測により冥王星を周回していることが確認されたのであった。

           

彼らは過去に撮影された画像のチェックを行い、やはり同じような冥王星のゆがみを確認した。彼らは精密に計測し、それが衛星の存在によるものであることに確証を持ち、7月2日、海軍天文台の60インチ望遠鏡で追観測を行い、その塊が予測される場所にあったのだ。

7月7日、それが冥王星の衛星として公式に発表された。クリスティーは名前を「カロン」(Charon)と提案し、その後認められている。カロンはギリシャ神話に登場する冥府の川アケローンの渡し守である。ちなみにクリスティーは彼の妻の名シャーリーン(Charlene)にひっかけて、カロンを「シャロン」と呼んでいた。

詳しくはこちらへ【New Horizons 07.02】

<追加情報 05.30. 2008>

冥王星を目指して飛行中の冥王星探査機「ニューホライズン」が先週、89日間の“冬眠”から目を覚まし、来月頭にかけて各種テストやデータのダウンロードを続けている。

これらの作業は6月2日には完了する予定で、翌日から再度冬眠モードに入る。探査機が次に目を覚ますのは91日後の9月2日のことで、この時は年1回の総チェックが行われることになっている。

探査機は現在、土星軌道付近を通過中である。6月3日、運用チームはフライト866日を祝す予定であるが、この日は冥王星到達まで(要9.5年=3463日)のちょうど4分の1である。ちなみにちょうど半分の道のりに達するのは2010年10月17日である。

               
           

探査機が土星軌道を横切るのは6月8日。「この出来事はとても意義深いものです。というのも、人間の作った宇宙機が土星を超えたのは27年ぶりのことですからね。1981年8月、ボイジャー2号が土星を横切ったのが最後なのですよ。」と語るのは、ミッション責任者のアラン・スターン氏。

詳しくはこちらへ【New Horizons 05.29】

<追加情報 05.03. 2008>

2006年1月に打ち上げられ、冥王星を目指して飛行中のNASAの冥王星探査機「ニューホライズン」は、順調に航海を続けている。探査機は昨年2月に木星フライバイ&観測を追えた後、殆ど冬眠状態にある。機器の状態を示すビーコンが定期的に送られてくるが、それは「グリーン」を指しており、何ら問題はない。

ところで、冥王星最接近は2015年の夏だが、地上の運用チームに暇はない。運用を担当するジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所は年内に接近シーケンスの手順設定とテストを追える予定で、全力で動いている。スケジュール通りに進めば、来年半ばには冥王星フライバイのフルリハーサルを実行することができるという。

運用チームは今週、冥王星接近時における各々の観測活動およびナビゲーションの完全リストを作成、今後より精密なシーケンス設計が行われる。6月にはそれらが現実に可能か、探査機の電力や燃料、地上施設の能力などを加味した検討が行われる。

運用チームは2009年以降、その規模や予算が縮小されることになっており、それまでにフライバイシーケンスを完全に作り上げるのを目標としているという。

一方、9月2日から11月中旬にかけて、年に一度行われる搭載機器のフルチェックが行われることになっており、この手順設計も現在進められている。詳しくはこちらへ【JHU/APL 05.01】

<追加情報 02.23. 2008>

冥王星を目指して飛行を続けているNASAの探査機「ニューホライズン」が米東部時21日午前5時、太陽から9天文単位の距離に達した。

同探査機の飛行距離は2006年1月19日の打ち上げより15億6000万km。現在の飛行速度は時速6万kmに達する。今年6月8日には土星軌道を通過する見込み。詳しくはこちらへ【NASA 02.21】

<追加情報 01.24. 2008>

冥王星を目指して飛行中の冥王星探査機「ニューホライズン」は順調に飛行しています。下は搭載の超望遠撮像センサー「ロリー」によって撮影された冥王星。バックの恒星からはっきり分離して写されています。

           

撮影は昨年10月6日、ロリーのハイレゾリューションモードで行われました。ロリー・ハイレゾモードの露出間隔は通常約0.1秒が上限だそうですが、この撮影では0.967秒開放されたそうです。

探査機は現在、冥王星まで36億kmの地点を黙々と飛行中。冥王星と衛星「シャロン」を分離して撮影できるようになるのは2010年頃で、2014年に冥王星系を通過します。詳しくはこちらへ【New Horizons 01.24】

<追加情報 10.24. 2007>

下は今年2月、冥王星探査機「ニューホライズン」が木星フライバイを行った際に撮影したもので、木星と衛星「イオ」。木星は最接近日の2月28日に撮像センサー「リーサ」で撮影されたもので、イオは3月1日に長距離望遠カメラ「ロリー」で撮影されたものであり、下は両者の合成写真(大きいサイズ)。

           

この写真は「サイエンス」誌今月12日号の表紙を飾った。同誌にはニューホライズンにより得られたデータに基づく論文が記載されている。【New Horizons 10.09】

<追加情報 10.13. 2007>

ハワイのマウナケア・ケック望遠鏡で、恐らくハッブルを超えるシャープさで冥王星系が撮影された。

撮影を試みたのはハワイ大学のデビッド・ソーレン博士。先月5日、光学補正装置の装着されたケックの大型望遠鏡が使用されたが、博士によるとその夜は好条件が重なったという。

「空のシーイングが平均よりも良く、装着された撮像センサーは感度向上型で、冥王星の光度は最大で、その上光学補正装置を導入していたのです。」と語る。

下は撮影された一枚。中央に冥王星と衛星カロン、その右上に衛星ニクスとヒドラが見えている。

           

このうちニクスとヒドラは2005年に発見されたもので、昨年、正式名称が与えられた。大きさはどちらも100km以下と見られている。

現在冥王星へ向けて飛行中の探査機「ニューホライズン」はこれらも観測する予定だが、このような地上観測は探査機観測の計画を立てる上でも非常に重要なデータを提供する。詳しくはこちらへ【University of Hawaii 10.11】

<追加情報 10.11. 2007>

冥王星を目指して飛行中の冥王星探査機「ニューホライズン」が、今年2月から3月にかけて通過した木星で取得した観測データをまとめた論文9本が、「サイエンス」誌今月12日号に記載される。(下・衛星「イオ」の噴煙速度に関する図表)

           

論文では、木星の輪に“アーク”が確認されたことやイオの噴煙速度などが発表される予定。詳しくはこちらへ【New Horizons 10.09】

<追加情報 09.28. 2007>

冥王星を目指して飛行中のNASAの冥王星探査機「ニューホライズン」は26日早朝(日本時)、4回目の軌道修正に成功した。

軌道修正は26日午前5時4分(日本時)から15分37秒間のスラスター噴射で実行された。使用した燃料は1kg未満で、ΔVは2.37m/s。管制しているジョンズ・ホプキンス応用物理研究所(APL)によると、今回の軌道修正は2006年1月の打ち上げ以降、4回目とのこと。(右・その一幕)

この軌道修正を仮に行わなかったとしても、探査機は冥王星から50万kmの地点を通過するが、この修正により、冥王星の衛星「カロン」軌道の内側を通過する軌道に投入されたことになるという。

探査機は現在、木星−土星軌道の間のあたりを飛行している。管制部はこれから3週間、探査機のチェックアウトを行う予定である。詳しくはこちらへ。【New Horizons 09.27】

<追加情報 07.19. 2007>

冥王星探査機「ニューホライズン」は先月27日より“冬眠”モードで飛行を続けていたが、12日、“目覚まし”のコマンドが送信された。

2月末の木星フライバイと観測を無事に終え、データのダウンロードが5月までに完了。今後は冥王星まで一直線だが、先月27日、探査機に対し冬眠モードに入るようコマンドが送信され、全てのシステムが正常に推移したことが確認された。それ以降、地球へ“システム正常”を示すビーコンのみが送信されてきていた。

           

冬眠モードは科学機器やガイダンス、コントロールシステムの電源をオフにして飛行する状態。これは機器の消耗や故障といったリスクを下げ、また、交信頻度の削減による深宇宙ネットワーク(DSN)の負荷を軽減する目的がある。DSNは多くの宇宙機の管制で既に飽和状態となっている。

探査機はスピン姿勢制御の下、冥王星までの残り8年間の殆どをこのモードで過ごすことになる。ただ2ヶ月に一度、チェックとキャリブレーションのため目覚ましが行われるのみ。冬眠中、フライトコンピュータは自機の状態を監視し、それをビーコンで送信する。何も問題が無ければ“グリーン・コード”を送信するが、何処かに何らかの不具合が生じた場合は“レッド・コード”を送信し、ヘルプを求めることになっている。

今月12日、目覚ましのシグナルが送信され、探査機は穏やかに目を覚ました。この時、探査機は地球から5億5000万kmの地点を時速7万4000kmで飛行中だった。

全ては順調に機能しており、今後、紫外線スペクトロメータ「アリス」の制御プログラムのアップグレードや同機器でまだ開放されていなかったフタの展開などが行われる。再び眠りにつくのは今月21日が予定されている。詳しくはこちらへ【New Horizons 07.12】

<追加情報 07.17. 2007>

冥王星の衛星「カロン」において、氷の結晶などが間欠泉のように上空に吹き上げている可能性の高いことが明らかになった。

これは、ハワイのジェミニ北望遠鏡における精密観測で得られた近赤外線波長スペクトルを分析した結果、わかったもの。それによると、アンモニア水和物や水の結晶などがカロンの表面に存在する特徴が見出されたという。これは、水とアンモニアの混合物がカロン内部から吹き出し形成されたことを示唆するものだという。

吹き出しの時間間隔は数時間から数日ほどで、10万年に1ミリの割合でカロンの表面をコーティングしていくレートだという。この発見は、他のカイパーベルト天体にも同様の現象が存在する可能性を強く示唆しているものといえる。

「水氷結晶の存在を説明するメカニズムは他にもいろいろ考えられます」とした上で、「我々のスペクトル観測で得られた特徴は、低温下における噴出、すなわち液体が表面に達し、凍結して吹き出す現象によく当てはまるものなのです。これはつまり、カロン内部に液体の水が存在することも示唆しています」と語るのは、論文を発表したアリゾナ州立大学のジェイソン・クック氏。

カロンの場合、内部の放射性物質の崩壊熱で水が液体となり、アンモニアと混合していると見られている。表面付近に達した水は氷点で凍り付く際膨張し、地表の裂け目を押し広げたことが考えられ、この時、一気に吹き出すシナリオが考えられる。そしてそれらは結晶となり降下し、フレッシュな氷が表面を覆うというのだ。

研究チームの目的は、メタンやドライアイス、アンモニア、それにアンモニア水和物の検出が目的だった。特にアンモニア水和物はカイパーベルト天体の1つ「クワオワー」(2002LM60)の表面にも確認されているもの。特に同水和物は水の液体状態を維持するもの。彼らはカロンの冥王星側とそうでない側を個別に集中観測し、スペクトルを得た(カロンと冥王星はお互いに同じ面を向かい合わせて公転しあっている)。それを元に表面温度を計測、氷の状態を推測した。

           

(上は波長2.2ミクロンを中心としたスペクトルで、上が冥王星に向いた側、下がその“裏”側。黒いドットが観測数値であり、実線で示されたモデル値(アンモニア水和物と水氷の混合物を仮定)とよくフィットしている。)

このような噴出現象は、太陽系では例えば土星の衛星「エンケラドス」などで知られており、カロンでそのような現象が起きているのではないかとクック氏は半信している。カロンの表面がどうなっているのか、真相は2015年に接近する冥王星探査機「ニューホライズン」によってもたらされることになるだろう。

詳しくはこちらへ【Gemini Observatory 07.17】

<追加情報 06.23. 2007>

国際天文学連合(IAU)が採択した冥王星の新しい分類「準惑星」について、日本学術会議の「太陽系天体の名称等に関する検討小委員会」(委員長・海部宣男国立天文台名誉教授)は「準惑星と認定する基準にあいまいさが残る」などとして、分類の定義を見直すよう、IAUに提案することを決めた。

小委員会は▽準惑星の主要な基準は「自らの重力で球状となる天体」だが、球形になっている理由が自己重力かどうかは外見では判断が難しい▽冥王星をはじめ、海王星より太陽から遠い「太陽系外縁天体」と、火星と木星の間にある小天体は、成り立ちが異なると考えられているが、今回の定義では両方とも準惑星に含まれ、混乱を招く――などの問題点を指摘。09年の次回総会までに定義を再考するよう求める。

IAUは昨夏、冥王星を太陽系外縁天体の一つとして位置付け、惑星から除外。さらに準惑星という新しい分類を設け、冥王星をこれに含めることを決めた。【毎日 06.23】

<追加情報 06.14. 2007>

NASA・ハッブル宇宙望遠鏡とハワイ・ケック天文台大型望遠鏡の共同観測で、昨年新設された「準惑星」の中でも最大径の「エリス」の質量が測定された。それによると、エリスの質量は冥王星の1.27倍で、直径だけでなく質量でも冥王星に“勝っている”ことが判明した。

           

エリスは符号「2003 UB313」としても、また、ニックネーム「ゼナ」としても有名だったカイパーベルト天体(KBO)。2005年、カリフォルニア工科大学のマイク・ブラウン氏らのグループが、その直径が冥王星よりも大きいことを確認、それは惑星の定義そのものに迫る議論に火を付けた。

昨年夏、国際天文連合は激論の末、惑星の定義を公式に定め、冥王星をそのカテゴリーから外すことを決定。冥王星は「準惑星」(当時の邦訳は「矮惑星」)に“降格”されたと話題になったことも記憶に新しい。

ところでエリスの質量測定は、それが衛星を持つために可能である。衛星「ディスノミア」の公転周期などを精密に計測することで推測することができる。また、そうして得られた質量と既にわかっている直径より密度を計算したところ、約2.3グラム/立方センチであることが判明。この値は冥王星や別の大型KBOである「2003 EL61」、それに海王星の衛星「トリトン」の値に近い。このことは、エリスもまた、岩石をかなり含んだ塊であることを示唆している。

ディスノミアは冥王星の衛星「シャロン」や地球の月と同様、母惑星に他の天体が衝突したことで形成されたと考えられている。一方、トリトンは海王星に捕獲されたKBOであろうと考えられている。

詳しくはこちらへ【Hubble 06.14】

<追加情報 06.01. 2007>

今年2月下旬から3月上旬にかけて木星へフライバイした冥王星探査機「ニューホライズン」。同探査機がこの期間に取得した観測データのダウンリンクが終了した。(下・木星付近を飛行する想像図)

            

ニューホライズンは、2月24日から3月7日にかけて木星を観測、写真撮影の他、磁気圏の観測などを精力的にこなした。総データ量は36ギガビットに達したが、それらは搭載されている磁気データレコーダーに記録され、地球へ向けてゆっくりとダウンリンクされてきた。

ニューホライズンは冥王星という遠距離から大量の観測データを送るのが本来の目的であるが、軽量の同機には高速通信に耐える大型パラボラもハードウェアも備わっていない。したがって、レコーダーに一旦ストアし、それをゆっくり再生させながらこちらで受信するという方法を採るしかない。

実際、2015年7月に予定されている冥王星での観測データも、全てのダウンリンクには数ヶ月かかるとされている。(木星同様、ニュース向けの画像やデータは優先させられるでしょうが…@管理人)

詳しくはこちらへ【New Horizons 06.01】

<追加情報 05.01. 2007>

冥王星探査機「ニューホライズン」が2月下旬に木星へ最接近した際に取得されたデータが新たに公開された。1日、NASAが会見を開いた。

「ニューホライズン」は2015年の冥王星最接近を目指して、現在も順調に飛行を続けている。2月28日、木星から約240万km以内を通過し、その重力により加速を受けた(木星フライバイ)。このフライバイの前後、同探査機は木星の科学的観測を行い、かつてボイジャーやガリレオで得られた情報に新たな知見を加える成果が得られた。

その成果は、木星大気、リング、衛星それに磁気圏と多方面にわたる。昨年出現した、大赤斑に次ぎ2番目に大きな赤斑、通称「大赤斑Jr.」の高解像度映像が取得されたほか、衛星「イオ」に火口の変化や新たな噴火などが認められた。

ニューホライズンが今回行った観測量(約700観測)は、冥王星で行われるそれの約2倍に達する。データレコーダーに蓄積されていた34ギガビットに達するデータの約70%が、現在までにダウンリンクされている。

次の画像は、衛星「イオ」を異なるセンサーで見た一覧。左は望遠撮像センサー「ロリー」が捉えたもので、右上は撮像カメラ「ラルフ」のセンサーの1つ「MVIC」(多波長可視光撮像カメラ)を通して得られたもので、両者は既に公開されているもの。一方右下の映像は赤外線撮像センサー「LEISA」で見たもの。オレンジのスポットが火口に対応しており、夜の側に少なくとも10個のスポットが見えている。

          

「LEISA」のデータをより詳しく分析することで、個々の温度や地表の組成を知ることができる。

下は、イオの火口に認められた変化。左は木星周回探査機「ガリレオ」が1999年に撮影した映像で、右はニューホライズンが今年2月27日、270万kmの地点からロリーで撮影したもの。

          

火山活動は活発であるものの、7年の間で殆どの特徴は変化していない。変化した点としては、例えばニューホライズンの映像で11時の方向にみえる黒い点が、ガリレオの方では認められない。この点は「Dazhbog火山」であるが、ガリレオが活動を終えた(2001年)以降に活発な活動をしたものと見られる。

もっともはっきりした変化は、左下の黄色の円内。新たな火山活動が始まったと見られ、直径500kmに達する噴出堆積物が認められる。

下は、イオが木星の影に入った時に撮影されたもの。地表の詳細は見えないが、それに代わり、高温域やガスの様子が浮かび上がっている。

          

黄色の円内は活発に活動する火口の溶岩によるもの。赤道の南側に並んだ2つは「Pele火山」と「Reiden火山」であるが、2時の方向に見える3つ目はこれまで確認されなかったもの。

縁に大気のように見えているのはガスであり、イオにまとわりつくガスが木星磁場との作用でオーロラのように輝いている。また、ガスはイオの高空にも広がっており(オレンジ色の円)、火山によって吹き上げられたものと考えられている。

一方、左側に集中する光のブツブツ(青円内)は木星磁場との相互作用によるものと考えられている。この領域は常に木星側を向いており(イオは地球の月のように、常に同じ面を木星に向けている)、木星磁場に沿った電流(荷電粒子流)と直接コネクトする。これが関係しているとみられるが、詳細はまだわからない。

下は、木星のリング。上段は木星接近中に撮影されたもので、細部が非常によくわかる。

          

一方、下段は木星最接近直後に撮られたもので、リング面に微細なダストが漂っているのがわかる。ちょうど太陽光を正面にするような形で撮影したもので、ダストが輝いて浮かび上がっている。

下は、木星の4大衛星・勢揃い。左から「イオ」、「エウロパ」、「ガニメデ」、「カリスト」。

          

エウロパの表面は氷に覆われていて非常にスムーズ。地下には液体の水(海)があると言われており、将来の探査目標として有望視されている。カリストの表面も氷に覆われているが、クレーターと裂け目、飛び散った氷でスムーズとは言えない。

下は、木星の向こう側から“昇ってくる”エウロパ。これまでには見られなかった、スペクタクルな光景。科学目的の撮像ではなく、芸術性を重視した構図であり、一般ファンの提案によって試みられたもの。

          

詳細やその他の画像はこちらへ【NASA/New Horizons 05.01】

<追加情報 04.05. 2007>

画像は、冥王星探査機「ニューホライズン」が撮影した木星の衛星「カリスト」。両者ともほぼ同じ領域であり、左は2月27日に、右はその翌日に撮影された。同探査機は28日に木星へ230万kmまで最接近したが、このときカリストは木星を挟んで向こう側に位置していたため、探査機とカリストの距離は470万kmおよび420万kmであった。

          

撮像は、搭載されている望遠高解像度撮像センサー「ロリー」による。カリストは他のガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ)に比べ、クレーター以外の特徴が乏しい。最大のクレーターは10時の方向にみえている。

クレーターは白く輝いているが、これは水の氷を多く含むからである。詳細はこちらへ【New Horizons 04.05】

<追加情報 04.02. 2007>

この美しい映像は、冥王星探査機「ニューホライズン」が撮影した木星の衛星「イオ」(左)と「エウロパ」(右)。

          

木星最接近の2日後にあたる先月2日午後19時34分(世界時)、同探査機に搭載されているカメラ「ラルフ」のセンサーの1つである「多波長可視光カメラ」(MVIC)によって撮影された。両衛星の距離は79万kmで、科学観測よりも芸術性を優先して撮影された一枚。

イオの夜の領域が真っ暗でないのは、木星本体の照り返しが当たっているため。エウロパの方は照り返しが照射しない位置関係であったため、真っ黒になっている。

火山は3つ確認できる。イオの上方で高々と噴煙を上げるのは「Tvashtar火山」。また、縁の部分、9時の方向に見えるのは「Prometheus火山」で、両者間の、昼夜の境界線上に見えている青いスポットは「Amirani火山」である。

詳しくはこちらへ【New Horizons 04.02】

<追加情報 03.28. 2007>

冥王星探査機「ニューホライズン」がその道中、木星の傍を通過してから間もなく一ヶ月が経とうとしているが、通過時に撮影された衛星「イオ」のカラー画像が公開された。

同じ視野の白黒映像が高解像度望遠撮像カメラ「ロリー」により撮影されており、今月13日にリリースされている。今回公表された映像は「多波長可視光撮像カメラ」(MVIC)により得られたもので、ロリーに先立って撮影された。ロリーに比べると解像度が落ちるが、カラーである分、ロリーの映像とはまた違った趣がある。

                   

1時の方向に高々と噴煙を上がる噴煙は「Tvashtar火山」。夜側における噴火がこのような形で観測されるのは初めてのことで、高度330kmまで吹き上がった噴煙の頂部が太陽光を受けて輝き、また夜の闇に火口が赤く輝いている様子はとても美しく神秘的である。

「MVIC」は撮像カメラ「ラルフ」を構成するセンサーのひとつで、青(480nm)・赤(620nm)・赤外(850nm)および狭メタン波長(890nm)のフィルターを備えている。このカメラは冥王星における光量にあわせて設計されているため、木星圏では赤と赤外域は露出過剰になってしまう。したがって上の映像は青及びメタン波長のデータを基に、肉眼で見た色に近づくように着色されたものである。詳細はこちら

ニューホライズンは順調に飛行を続けている。今月19日には制御系に生じたエラーのため自動的にセーフモードに入り、交信が短時間であるが不通となった。その後の処置はスムーズに進み、ダウンから90分以内には交信が回復、2日と経たずに蓄積されている観測データのダウンロードを開始している。

飛行中に自律的にセーフモードへ入ったのは今回が初めてであり、その原因や今後への対策など、検討が続けられている。詳しくはこちらへ【New Horizons 03.28】

<追加情報 03.14. 2007>

海王星の外側の「カイパーベルト」と呼ばれる領域には、近年多数の小惑星が発見されており、冥王星を超える大きさの天体も見つかっているのはよく知られているが、このほど、これまで見つかっている「カイパーベルト天体」(KBO)の中で3番目に大きな「2003EL61」の形成過程に新説が提唱された。

「2003EL61」は2003年、スペイン・シェラネバダ天文台のホセ・オルティス氏らによって行われた観測を再精査した際に発見され、2005年に公表された。一方、米カリフォルニア工科大学のマイク・ブラウン氏らも発見、追跡を続けていたが、公式発表を行っていなかった。

その後、精力的な観測が続けられ、2005年1月28日、ハワイ・ケック天文台における観測で1個目の衛星が、同年6月30日の観測で2個目の衛星が確認されている。

大きさは、昨年正式名称が与えられた「エリス」(2003UB313)、「冥王星」に続き3番目だが、表面の反射能は冥王星を僅かに上回る。

(右画像・中心の「2003EL61」の上方11時の方向に1個目の衛星が、下方6時の方向に2個目の衛星が写っている。なお、2個目は当初、背景の恒星と思われていたが、その後の観測で衛星と確認された。)

なお、「2003EL61」とその衛星には公式名称がまだ与えられていない。ただブラウン氏らのチームを中心に、本体が「サンタ」、最初の衛星が「ルドルフ」と呼ばれている。

ところでこの「サンタ」は、カイパーベルト天体の中でも非常に興味深い特徴を有している。光度観測などにより、形状がラグビーボールのような形をしている可能性が高く、しかも自転周期が僅か4時間と極めて高速であることが判明したのだ。ラグビーボールの長径が冥王星の直径に匹敵するのだが、このサイズでこの形状の天体は、太陽系には他に存在しない。

          

ブラウン氏らは、この天体が45億年前、大激突によって形成された可能性を提唱、「ネーチャー」誌に論文が記載された。

同氏の研究チームは、この天体の軌道付近に存在する他のKBOを観測、その特徴を分析・比較した結果、もともと「サンタ」も球状で、冥王星と同程度のサイズがあったものと結論。それが太陽系形成初期に別の天体と激突、氷や岩石の破片をまき散らしつつ、本体は高速回転を始め、やがて現在のようなラグビーボールのような形になったのではないかと主張している。

ちなみに、この天体の軌道は未だ安定しておらず、遠い未来には太陽系内部まで入り込んだ、細長い楕円形へと進化する可能性がある。いわゆる彗星はそのような天体の一種だが、この「サンタ」も将来、彗星になる可能性がないわけでもなさそうだ。ただそれは、10億年後の話だとブラウン氏は言う。詳しくはこちらへ【Caltech 03.14】

…KBOの進化には衝突が大きなファクターであることが考えられており、冥王星探査「ニューホライズン」計画の責任者でもあるアラン・スターン氏も、冥王星系は過去の大衝突で出来上がったと主張しています。さらにスターン氏は、同星に輪がある可能性まで思考を拡大しています。

<追加情報 03.16. 2007>

下は、冥王星探査機「ニューホライズン」が先月24日に撮影した木星。これまでは望遠撮像センサー「ロリー」によるものばかりであったが、これは撮像カメラ「ラルフ」(Ralph)が搭載する赤外線スペクトロセンサー「リーサ」(LEISA)によって得られた画像。この時、木星まで約600万kmの地点にあった。

           

リーサは、1.25μm〜2.50μmの赤外線波長域において、250の波長で撮影することができる。上の3つは左から1.27μm、1.53μm、1.88μmに対応している。このような波長を特定した撮像は、対象を構成する成分などを分析する上で重要なものだ。木星の場合、大気の特定の層を見ることができる。

各画像で、明るく輝く部分は雲などによる太陽放射の反射光であり、暗い部分は太陽放射が吸収されている部分を意味する。なお、左上の黒い点は、衛星「イオ」の影である。

中央の画像は比較的高層の様子と考えてよい。他の2枚は、深い部分である。また、3枚の画像全てで明るく見えるのは高層の雲で、左右の画像で明るく、しかし中央の画像では暗く見えるのは、低層の雲である。

例えば中央の画像の左下に見える、孤立した円盤状の雲は「小赤斑」であるが、両側の画像では(完全な孤立ではなく)周囲の大気運動と相互関係を交わしているように見える。このことはつまり、「小赤斑」を形作るメカニズムは高層にまで達するものであることを示唆している。

より多くのデータはまだ探査機のレコーダーに保存されたままである。今後ダウンリンクされてくる膨大な量を解析することで、木星大気のより詳細な構造が判明するものと期待されている。詳しくはこちらへ【New Horizons 03.16】

<追加情報 03.13. 2007>

画像は、冥王星探査機「ニューホライズン」が3月1日午前0時35分(世界時)に撮影した木星の衛星「イオ」。2月28日前後に同探査機は木星フライバイを行い、その際得られた一連のショットの一枚。夜の側で、火山が高々と吹き上げる噴煙の頂部が太陽光を受け輝いている。

このような画像が撮影されるのは初のことで、これまた非常にスペクタクルなものである。

          

このスナップは先日既報の、3つの火山が同時に噴煙を上げている姿の続き。上部に見える火山は「Tvashtar火山」であり、火口の溶岩の輝きも見事。一方、2時の方向に微かに噴煙が見えているが、これは「Zal Patera火山」と見られ、5時の方向に見えているのは「Masubi火山」のようである。

この画像は木星最接近の19時間後のに撮影されたもので、探査機からイオまでの距離は約230万km。露光は75ミリ秒で、昼の側はやや露出オーバー。夜の側の噴煙は、木星の照り返しを受けて輝いている。

大きい画像など、詳細はこちらへ【New Horizons 03.13】

<追加情報 03.09. 2007>

先月28日に木星へ最接近した冥王星探査機「ニューホライズン」。木星フライバイにより増速、一路冥王星を目指して順調に飛行を続けているが、フライバイ時に収集された観測データのダウンリンクも徐々に始まっている。

下は最接近4日前の2月24日に望遠撮像カメラ「ロリー」によって撮影された木星のリング。距離710万kmの地点であった。

          

リングの幅は約1000kmで、その内側にはダストの膜が広がっている。「これは木星のリング系の映像としては最も鮮明なもののひとつです」と語るのは、惑星科学者のマーク・ショワルター博士。

リングの中央には隙間(ギャップ)が見えているが、恐らく未発見の衛星が存在するのではないかと考えられている。「もし小衛星が存在するとすれば、今後数週間でダウンリンクされてくる数百枚の画像中に写っているかも知れません」と語るのは、「ロリー」責任者のアンディ・チェン博士。

木星のリングは極めて淡いため、地球で捉えることはできない。1979年、木星へ接近したボイジャー1号が撮影した画像に偶然写っていたのが発見であった。詳しくはこちらへ【New Horizons 03.09】

<追加情報 03.02. 2007>

冥王星探査機「ニューホライズン」が木星フライバイの前後に取得したデータの殆どはまだ搭載メモリー上に眠っているが、先に地球にダウンリンクされた分については先日より公開が続いている(下・4日1時(日本時)における探査機の位置…木星を後に、一気に飛び去っていきます)。

               

下は、望遠撮像センサー「ロリー」により、先月28日20時4分(日本時)に撮影された衛星「イオ」の姿。木星最接近より5時間後のことで、この時イオに最接近した。その距離は250万kmだった。

          

イオには多数の火山が存在するが、11時の方向にて活動しているのは「Tvashtar火山」で、噴煙の高さはざっと290km。この噴煙は2週間前にハッブル宇宙望遠鏡で確認され、ニューホライズンも26日に最初の撮影を行っている(先日の記事参照)。26日の撮影では露出オーバーでイオ本体がつぶれてしまったが、今回は最接近ということで噴煙が適度な露出時間で浮かび上がるため、イオ本体の表面も綺麗に表現することができている。

噴煙の様子がこれほど繊細に捉えられたのは史上初のこと。

一方、9時の方向には「Prometheus火山」が噴煙を上げている。高さは60km。更に、下方、昼夜境界の夜側に淡く「Masubi火山」の噴煙が写っている。

(下はハッブルにより先月撮影された映像。左は可視光で右は紫外線によるもので、縁にコブのごとく出ているのが上の大噴火。)
          

大きいサイズなど詳細はこちらへ【New Horizons 03.02】

<追加情報 02.28. 2007>

冥王星探査機「ニューホライズン」は28日、木星フライバイを成功させ、運用チームは喜びの渦に包まれている。下は木星最接近直後、予定通りの軌道を辿っていることが確認され、歓声に包まれる管制室(中央・黒のジャケットを着ているのが、「ニューホライズン」ミッション責任者(PI)であるアラン・スターン氏)。

          

ニューホライズンはフライバイにより時速14000kmの増速を受け、時速83600kmに達した。2006年1月の打ち上げ以降、8億kmを飛行したが、これは過去に打ち上げられた外惑星探査機の中で最速。2014年7月の冥王星系最接近に向け、予定通りのコースを辿っている(管制はジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所が行っている。下は管制室で、同研究所は現在飛行中の水星探査機「メッセンジャー」の運用もここで行っており、向こう壁のNASAのロゴの横には、ニューホライズンとメッセンジャーのシンボルイラストが見える)。

          

なお、今回のフライバイの前後、ハワイのケック望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡、チャンドラX線宇宙望遠鏡といった地上望遠鏡や宇宙望遠鏡が同時観測を行っている。一部は既にリリースされており、下の画像はハッブルにより2月17日に撮影された木星。ここでは記載していないが、チャンドラは極地方のオーロラを映し出している(画像はこちらこちらへ)。

          

「木星の傍という過酷な環境をフライバイするということは、我々ミッションチーム、そして探査機がテストを受けていると言えるでしょう。また、8年後に接近する冥王星で期待すべき知見を得るだけでなく、すでに木星で驚くべき成果を挙げつつあります。」と語るのは、アラン・スターン氏。詳細や大きい画像はこちらへ【New Horizons 02.28】

木星フライバイ中の冥王星探査機「ニューホライズン」は現在、木星から約230万kmの地点を順調に通過中である。最接近は28日14時13分(日本時間)で、この後、一路冥王星を目指す。

              

下は、最接近の直前・27日19時1分(日本時)に撮影された衛星「ガニメデ」のベストショット。望遠撮像センサー「ロリー」により、350万kmの距離から撮影された。(大きいサイズ

            

下は、ニューホライズンが木星最接近開始で最初に地球へ送信してきた画像。映っているのは衛星「イオ」で、「ロリー」により26日17時40分(日本時)に距離400万kmから撮影された。

           

左は露出3ミリ秒で撮影されたイオで、地表の特徴がよく見えている。同衛星は木星の朝夕力により活発な活火山が多数存在するが、散らばる黒い斑点がその火口。右は露出20ミリ秒で撮影された露出オーバー画像。11時の方向に空高く舞い上がる噴煙が見えている。また、2時の方向に見える光のコブは高山である(詳細はこちら)。

下は、27日2時31分(日本時)に撮影された3枚の画像を組み合わせて作られた木星表面のクローズアップ。見えている渦は昨年話題になった「大赤斑Jr.」。

           

視野の上下幅は33000kmで、これは地球の直径の約2倍半のサイズ。その他の映像など、詳しくはこちらへ【New Horizons 02.28】

<追加情報 02.06. 2007>

画像は、冥王星探査機「ニューホライズン」により得られた木星大気全図。先日より既報であるが、同探査機は今月28日の木星フライバイに向けて順調に飛行を続けている。

          

この全図は、同探査機に搭載されている望遠撮像カメラ「ロリー」によって撮影されたもの。先月14、15の両日にかけて11枚の映像が撮影され、それをつなげて作成されている。撮影は1時間おきに10時間に渡って行われた。10時間は木星の自転周期に相当する。

大赤斑を始めとする木星大気の特徴が、非常によく見えている。大きいサイズなど、詳細はこちらへ【photo: New Horizons】

…木星最接近が楽しみですね!

<追加情報 01.29. 2007>

下は、冥王星探査機「ニューホライズン」が今月17日に撮影した木星とその衛星。探査機は来月28日に木星にフライバイし加速、冥王星を目指す。

           

木星に近い側の衛星は「イオ」、外側は「ガニメデ」で、木星大気にポツンと落ちた両者の影はまるでホクロですね。大きいサイズの画像やその他の最新画像はこちらへ【photo: New Horizons】

<追加情報 01.22. 2007>

下は、冥王星探査機「ニューホライズン」が撮影した木星。今月9日、長距離望遠撮像センサー「ロリー」で撮影された一枚。

          

左にポツンと写っている点は衛星「イオ」。また、木星の上の方に落ちている黒点は衛星「ガニメデ」の影であり、ガニメデ本体は視野の外にある。

下は、そのガニメデも写し込まれた一枚。右上に写っているのがガニメデで、左側はイオ。

          

…大きいサイズなどはこちらへ【photo: New Horizons】

<追加情報 01.18. 2007>

下は、冥王星探査機「ニューホライズン」が今月8日に撮影した木星と、その衛星「イオ」。同探査機に搭載されている遠距離望遠カメラ「ロリー」により、距離8100万kmの地点から撮影されたもの。

木星のシンボルとも言える大赤斑もくっきり見えている。

          

これは、同日に撮影された11枚のうちの1枚。木星を訪れた探査機は過去にボイジャーやガリレオ、カッシーニがあるが、ニューホライズンが見た木星はまた異なったものだという。木星はそのガス模様の複雑な変化で知られているが、チームはこの分析も進める予定。対象にはミニ大赤斑「レッド・スポットJr.」も含まれ、そのクローズアップも撮られる。

また、ニューホライズンは木星の磁気圏内部を初めて長時間飛行する探査機でもあり、細長く伸びるその空間構造に関する貴重なデータが得られるものと期待されている。

            

ニューホライズンは木星へのフライバイで速度を加速(下グラフ)、一路、冥王星を目指す。木星周辺の環境は過酷であるので、なにより安全が最優先であるが、研究者たちは木星系のデータができるだけ多く引き出せることも期待している。
             

               

この木星探査は一過性のものであるが、2003年9月まで継続された「ガリレオ・ミッション」以来、約3年半ぶりの同惑星探査。しかし次にここを探査機が訪れるのは2016年の「ジュノー・ミッション」であり、ロボット探査からはしばしの別れともなる。

ニューホライズンの木星最接近は2月28日で、その8年後の2015年、冥王星系へと踏み入れる。詳しくはこちらへ【New Horizons 01.18】