火星をスパイせよ!

初版: 08.13.2003  追加: 04.22.2009

火星にラジコンカーを送り、予想以上の成果と行動を続け、勢いづいている米航空宇宙局(NASA)。そのNASAの次期火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(Mars Reconnaissance Orbiter)の建造が着々と進んでいる。この探査機は来年(2004年)10月に打ち上げられ、約7ヶ月後に火星に到着、その周囲を周回しながら地上の様子を調べるのが目的。

この探査機の名前「リコネッサンス」は、「偵察」という意味(発音しにくい単語だ。。(笑))。その名の通り、いわば火星の周囲をまわる史上初の「スパイ衛星」で、これまでにない強力な解像度を持つカメラが搭載される。それは、キッチンテーブルの上のものも見分けられる位のもの。その他、大気や地下の状態を詳細に調べるレーダー等も搭載され、生命反応によって生じた化合物や、大気状態の変化を探る。

また、解像度が高いということは、データ量が飛躍的に増大することを意味する。このデータ転送が不十分だと、得られる画像が制限されることになる。そのため、探査機からのデータ転送量は、我々が日常に用いる電話回線経由の高速通信(ブロードバンド)によるものの3倍を超えるという。地球〜火星間をつなぐデジタルリンクで、隣の家との電話よりも多いデータ量を実現するのだ。しかも、この驚異的な能力をもつ探査機の総重量は2トンを超える。

写真は、組み立て中の探査機で、ロッキード・マーチン社が請け負っている。ここまでくるのに1年以上かかっており、今は最終段階。今後は別々に作られている各種装置を組み合わせていくといい、ソフトウェアは96パーセント完成の状態という。この「火星偵察ミッション」に関わる人員は、ロ・マーチン社が175人、ジェット推進研究所が110人の計285人。

「今後数ヶ月内に6つある観測装置を組み立て、チェックを完了し、来春にはケープ(=ケープ・カナベラル空軍基地)に搬送、アトラスV打ち上げロケットに装着する予定。我々はとても興奮しているよ。」と語るのは、ロ・マーチン社の衛星プログラム主任、ケルビン・マクネイル氏。

この探査計画では、火星面に着陸して調査するミッションはないが、その驚くべき解像度で撮影された火星面の様子が楽しみだ。これまで米国や旧ソ連が送り込んできた、バイキングやマルスといった着陸機の姿も捉えることはできないだろうか?と思うのは、私だけかな…?

【以下、関連追加記事です。下に行くほど古くなります。】

★追加情報 (04.22, 2009)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が昨年12月30日に撮影した一枚。これまでにもいくつか見つかっているピット(縦坑)と見られる特徴のひとつ。

            

この画像では側壁が切り立っているのがわかり、太陽光を受けた僅かな内部が見えている。この穴のある場所は火山地帯で、関連する地殻活動が形成に関わっている可能性もある。

ところでこの穴、奥は全く見えないが、かすかな光を強調する処理を施すと…

            

…意外と浅かったのですねぇ。ストーンと下まで抜けているのかと思いきや…詳しくはこちらへ【photo: Hirise】

下は、MROが撮影した火星の南極域(南緯81.8度)の一枚。パッと見、気持ち悪い模様だが、これはドライアイスの下からガスが吹き出した結果できあがったものと考えられている。(色は擬似カラーであることに注意)

            

南極域は現在春を迎えており、厚く積もったドライアイスが昇華、どんどん減少。そのドライアイス層の下に溜まったガスがダストと共に吹き出し、このような模様を作っていると考えられる。根のような筋はガスが移動した通り道と解釈されている。

詳しくはこちらへ【photo: Hirise】

★追加情報 (03.10, 2009)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が今年2月21日、火星の衛星「ダイモス」を撮影し、その画像が公開された。火星は2つの衛星を持つ。ひとつは「フォボス」で、もうひとつは「ダイモス」。ダイモスはフォボスより外側の軌道を回り、大きさも小さい。

下は、その画像であるが、色彩がやや強調されていることに注意。ダイモスの表面はレゴリス(目の細かい砂、表土)で覆われ滑らかで、その様子はフォボスによく似ている。ちなみにMROはフォボスを昨年3月に撮影している(こちら)。

            

表面の色感の違いは、表面物質の差異を表現していると考えられる。滑らかな面は赤みを帯び、クレーターの近くでは赤みがやや薄い。これはクレーター形成時に内部の物質が飛び散ったことを反映しているのではないかと考えられている。

解像度は20メートル/ピクセル。上の2枚は5時間半の間隔をおいて撮影されたもので、太陽光の当たり方の違いで見えている領域がやや異なっている。

大きいイサイズなど詳しくはこちらへ【HiRISE 03.09】

一方、下はMROが撮影した「ビーグル2」着陸予定域の一角。ビーグル2は2003年末、現在も稼働中の「マーズ・エクスプレス」に相乗りして火星へ送られた着陸機。分離は成功したが、その後着陸成功を確認するシグナルが受信されることはなかった。

            

ちなみにこの画像の公開ページでは「どなたかこの画像のフルレゾリューション版を精査し、“らしき”特徴を探してくれませんか」と呼びかけられている。詳しくはこちらへ。MROが撮影したビーグル2着陸域一覧はこちら。【HiRISE 03.09】

★追加情報 (12.29, 2008)

下は、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が撮影した画像。大規模な大気運動を見事に捉えている。

これは、オリンポス火山の頂上部を走り回るつむじ風(Dust Devil)を真上から見た様子。オリンポス火山は太陽系最大の火山で、高さは27000メートル、すそ野の直径は800kmに達する。頂上には巨大なカルデラが広がっており、つむじ風がそのすぐ脇を突っ走っている。

            

つむじ風は砂を上空にまき散らしながら走る。これは静止画であるが、砂の流れる方向が写っており、ダイナミックな動きを表現している。

上空に巻き上げられた砂は、雲を形成する凝結核となる。上の画像で白くもやのように写っているのは雲である。このような観測データは、火星大気の運動を理解する上で重要なヒントとなる。その他の画像はこちらへ【MRO 12.18】

…火星に降り立ち、遠方から見たらどのように見えるのでしょう…標高27000メートルに対しすそ野の半径が400kmなので、山腹は4度ほどの傾斜しかありません。山頂は、ほぼ地平線の先に…富士山の位置に山頂を重ねたら、岡山や山形あたりが麓ということになりますかねぇ。そこから静岡に向けてひたすらダラダラと緩い傾斜…山という認識はなさそうで…

★追加情報 (09.25, 2008)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影したもので、“Deformation band”と呼ばれる構造。この構造、地球上では地下水の動きと深い関わりがあり、火星でも同様の関わりがあるのではないかと見られている。

                      

詳しくはこちらへ【NASA 09.25】

★追加情報 (09.10, 2008)

下は、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が7月28日に撮影した一枚。火星の北極冠を取り巻く周辺の砂地帯とのこと。

            

詳細はこちらへ【photo: NASA】

…まるで滑らかなチョコレートですねw

★追加情報 (05.20, 2008)

火星の地殻および上部マントルが考えられていた以上に硬く冷たいことを示すデータが得られた。NASAが発表した。

このデータは、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今年2月、搭載されている地下探査レーダーによって取得されたもの。この発見は、これまで地下に存在するかもしれないと考えられてきた液体水が、あるとすれば考えられている以上に深いところにあることをも意味している。

「北極冠の地下の地殻が褶曲していないことを発見しました。このことは、惑星内部が想定以上に硬く、それゆえ冷たいということを示唆しています」と語るのは、サウスウェスト・リサーチ研究所(コロラド州)のロジャー・フィリップス研究員。

レーダーによって得られたイメージは、長く、連続した地層を映し出していた。それは1000kmに到達するもので、米国大陸の約5分の1に匹敵する。また、その堆積層は火星の気候変動を辿る上で極めて有益であることが一目瞭然だったという。(下・取得された断層画像。極冠の厚みは約2kmで、成長年数は400万年と推定されている。)

            

地球では、氷層が地殻に沈み込むのだが、火星ではそのようなことがないのだ。これは、地殻が硬いか、リソスフェア(地殻と上部マントルの境界)が極めて厚く冷たいかのどちらかを意味していると考えられる。

このようなデータは、地下の温度分布を知る上で重要なものであり、今回初めてそれが明らかになった。岩石惑星の場合、地下に潜るほど温度が高くなるものであるが、火星の場合はその上昇率が緩やかであるのである。そしてこれは、あるかもしれないと考えられている液体の水の存在域が、考えられている以上に深いことをも意味していると言える。

また、氷と土砂の層が交互に、計4層浮かび上がっている。これは火星の気候変動により生じたものと考えられる。気候の変動には地軸の傾きと公転軌道の離心率が深く関わっているが、これらを研究する上でも重要な資料となるのは間違いない。

詳しくはこちらへ【JAXA 05.15】

★追加情報 (04.09, 2008)

火星を周回しながら観測を続けるNASAの「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が、衛星「フォボス」のかつてない高解像度画像を取得した。

             

撮像は先月23日に行われた。上の画像はフォボスから6800kmの地点からのもので、解像度は1ピクセル6.8メートル。過去にも同程度の解像度での撮影は行われたことがあったが(例えば「マーズ・グローバル・サーベイヤー」は4メートル)、MROのカメラはSN比が抜群によいため、かつて無いものが取得された。

また、10分と違わずもう一枚撮影されており、これら2枚よりステレオ画像が作成されている。その他の画像はこちらへ【HiRISE 04.09】

★追加情報 (04.07, 2008)

右は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した隕石の連続衝突痕と思われるもの。「クリセ平原」(Chryse Planitia)と呼ばれる地方に見つかったもので、非常にダイナミックな規模である。

クレーター列は北西から南東に向かって延びており、小惑星もしくは彗星のインパクトで形成されたもののようである。さらに、激突・飛び散った物質がクレーターを形成することも考えられる。それらは不規則な形でかつ浅いインパクトと考えられるが、そのような二次的クレーターも多数見受けられる。

このようなクレーター・チェーンは太陽系の他の天体でも見つかっている。木星の衛星「カリスト」や「ガニメデ」には大規模なものが見つかっており、特にカリストのそれは最低15個のクレーターが繋がったもの。また、地球にも見つかっており、グーグル・アースで探している人たちもいる(これらの詳細は当サイトのこちらへ)。

画像の大きいサイズなど、詳しくはこちらへ【HiRISE 04.02】

★追加情報 (03.04, 2008)

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が撮影した北極点近くの画像に、偶然にも“なだれ”の現場が写っていた。なだれは斜面を駆け下り塵がもうもうとまくれ上がっている。

            

この画像はMROが今年2月19日に撮影したもので、なだれは複数箇所で発生していた。アリゾナ大学のイングリッド・ドーバー スピテール女史は、このなだれに最初に気づいた人物だ。「本当に驚きましたよ。火星でダイナミックなことが起こっているのを見るのは素晴らしいものです。私たちが見ている多くのものは、何百万年もの間無変化なものなのですから」と、画像解析チームの一員である彼女は言う。

MROに搭載されている高解像度望遠レンズ(HiRISE)は、土地の季節変化を捉えるため、定期的に同じ場所を撮影している。しかしこの日に撮影されたこの斜面は、もともとその対象ではなかった。

「我々はそもそも砂丘地帯を覆うドライアイスの変化をチェックしていたのです」と語るのはHiRISEチーム副リーダーのキャンディス・ハンセン氏。

このなだれが起こった地域は北緯84°の極北で、赤く見えるのは水氷の部分で、高度700mの急斜面。MROが撮影したのは約6km×約60kmの細長い地帯だが(下)、この中に複数のなだれが写し込まれていた。(白枠の部分。大きいサイズはこちらへ)

   

なだれを引き起こした要因はまだわかっておらず、解析チームは今後も変化を追い続けるという。このなだれ現象は初春に限られるのか、それとも年間を通して生じているのか、興味は尽きない。詳しくはこちらこちらへ【NASA/HiRISE 03.03】

★追加情報 (12.26, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」により撮影された、南極冠のクレーター。南半球は冬に向かいつつあり、南極冠では成長を続けるドライアイスがハ虫類の肌のような層を形成している。

               

このクレーターを含む域を広角で撮影したのが下の画像。

            

…中央ちょい上にポツンと…寂しいですね^^;

クレーターの数はその土地の経過年数を推量するひとつの目安となるものですが、極冠域はドライアイスの昇華など環境の変化も激しく、クレーターの変化も活発なのではないかと言われています。詳しくはこちらへ【NASA/JPL/Univ. of Arizona 12.26】

…極冠、遠くからみると滑らかに見えますが、拡大するとウロコみたいですね!

★追加情報 (12.13, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今年2月に撮影した火星の南極域の一角で、非公式に“イサカ”(Ithaca)と呼ばれている地域。南極域の特定の地域では冬から春に向かう時期、このような扇状模様が出現することで知られている。

            

このような模様は以前から知られていたが、長い間その正体は謎だった。だが、別の周回探査機「マーズ・オデッセイ」により行われた集中観測と分析により、それが地下から吹き出した物質であることでほぼ間違いないとする論文が昨年8月、「ネーチャー」誌に記載されたのは記憶に新しい(右・想像図)。

一方、下の画像は今年4月に撮影された南極域の一角。クモの巣あるいは毛細血管にも似た模様が出現しており、所々で噴出物が風に流され薄黒い筋を作っている。


           

論文を発表したアリゾナ州立大学のフィル・クリスチャンセン氏は扇や血管模様のでき方について、次のような説を主張している。

「南極では、永久氷の上に、有色の砂やダストが被さり“薄膜”が形成されている。冬に入り、太陽光が当たらなくなると、二酸化炭素大気がドライアイスとなってその上に降り積もり、最終的には約1mのドライアイスの層を形成する。

やがて春になり、太陽光が当たり始めると、ドライアイスの層を透過してその下の砂の層を温め(有色なので熱を吸収)、ドライアイスの昇華を促すに充分な温度に上昇する。そうして生じたガスはどんどん圧力を増し、やがて層のもろい部分から地上目がけて吹き出すようになる。周辺のガスもその穴を目がけて殺到するため、その時砂などが層をこすり、クモの巣状の模様も形成される。」

大きいサイズはこちらこちらへ【photo: NASA/JPL/University of Arizona

★追加情報 (10.28, 2007)

下は、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」によって撮影された火星の衛星「フォボス」(上)と「ダイモス」(下)。これは同探査機に搭載されている6つの観測センサーのひとつ「CRISM」によって取得されたものである。

            

撮影は、探査機が夜の域を飛行している際に実行された。「CRISM」は地表のスペクトル観測を行うセンサーであるが、この時衛星の方へ向けられ、そのスペクトルデータを取得。それが合成され、可視光で見た感じに近い映像が作成された。

フォボスは先月23日に撮影され、約400mを解像。一方ダイモスは今年6月7日に撮影されたもので、約1.3kmを解像している。共に0.36〜3.92マイクロメーターの幅を544ポイントの波長で撮影されたデータを基にしている。

フォボスとダイモスはそれぞれ直径21kmと12kmのサイズで、前者は7時間39分、後者は1日6時間17分で火星を周回している。フォボスはその公転周期が火星の自転周期より短いことから、火星面では西から上り東へ沈むように見える。また、フォボスは地球の月の約3分の1のサイズで見え、ダイモスは一恒星のように見える。詳しくはこちらへ【JHU 11.27】

下は、今年6月30日に「マーズ・リコネッサンス・オービター」によって撮影された火星の北極域。この視野の何処かに、「マーズ・ポーラー・ランダー」(MPL)が墜落(?)しているものと見られている。

            

MPLは1999年末、火星北極域に着陸を目指し突入したが、二度とシグナルを送ってこなかった探査機。逆噴射エンジンが予定よりも早くカットしたため、墜落したものと考えられている。

現在火星へ飛行を続けている「マーズ・フェニックス」がMPLで行われるはずだったミッションの再チャレンジに挑む。大きいサイズはこちらへ【photo:NASA/JPL/University of Arizona

★追加情報 (10.21, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した「Samara Vallis」。ここはソ連の「マルス6号」がクラッシュした場所と考えられています。

             

…ここのどこかに、今もマルス6号着陸機が…?大きいサイズはこちらへ【NASA/JPL/University of Arizona

★追加情報 (10.12, 2007)

下は、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した一枚で、2009年に予定されている火星探査ミッション「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」の着陸候補地点のひとつ。

              

この他にも、候補地が多くリリースされています。一覧はこちらへ【MRO HiRise 10.10】

★追加情報 (08.30, 2007)

先日記載の火星の縦坑(?)はやはり、縦坑の可能性が強まりました。

下は火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今月9日に撮影したもので、先日リリースされた縦坑の入り口らしきものを再度撮影したもの。今回は太陽光が中へ入っており、坑道壁の一部が写っている。

             

撮影されたのは現地火星時間・午後2時30分で、西に傾きつつある太陽から光が差し込んでいる。

これより、中はやはり垂直に抜けている可能性が高まった。このような地形は地球上でも同様のものがハワイに「ピット・クレーター」として存在し、地下で空洞になったマグマ道へ地盤が崩落することで形成されている。

               

上の画像より、深さは少なくとも78メートルに達している。入り口のサイズは約150メートルである。詳しくはこちらへ【NASA/JPL/University of Arizona 08.29】

★追加情報 (08.24, 2007)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)搭載の高解像度望遠撮像カメラ「HIRISE」に生じていた細かいノイズの克服に見通しが付いた。NASAが発表した。

MROは昨年11月より本格的な科学観測を開始、最大の目玉であるHiRISEは今日までに3000枚を超える画像を取得している。だが、運用開始当初より、HiRISEの焦点プレートにあたる14の撮像センサーのうち7つにノイズが生じ、その悪化等が懸念されていた。

            

このノイズは目で見てわかるものではなく、修正を施すことで運用そのものに影響を及ぼすことはなかった。ただ、今後悪化する可能性はないか、懸念されていた。

担当エンジニアリングチームはこの件に関し、どうしてかつどのような状況下で発生するのか試験と検討を重ね、ほぼ克服できる見通しがたったという。詳しくはこちらへ【NASA 08.24】

★追加情報 (08.20, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今年5月5日に撮影した一枚。ポッカリと“穴”らしきものが写っている。

            

周囲への影は一切無く、また、内壁のようなものも全く見えない。拡大したのは↓

            

縁は内側へ崩落した跡のようにも見える。内壁が見えないのは完全に垂直な穴か、“オーバーハング”(壁が内側に向かって傾斜してそそり立っている。つまり穴の内側はドーム状空間)の状態になっているのではないかと解析チームは推測している。詳しくはこちらへ【MRO HiRISE】

★追加情報 (07.18, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が6月6日に撮影した地表(こちら)に偶然映っていた、つむじ風の天辺。

             

つむじ風は「Dust Devil」と英語表記される。そもそもつむじ風は「dust whirl」と呼ばれるが、より規模の大きいものが「デビル」に化ける。つむじ風は積乱雲の下に垂れ下がる竜巻とは異なり、晴れた日に生じる上昇気流が原因で上空へ伸びていく空気の渦。火星でも頻繁に発生しており、地表が充分に暖まる午後によく発生することが知られている。

上のつむじ風も火星時間で午後3時過ぎに発生したもの。影もきれいに見えており、その長さと太陽光の入射角度から渦の高さは約500mと見積もられている。天辺の直径は200m程であるが、地表ではかなり狭い範囲と考えられている。詳しくはこちらへ【NASA/JPL/University of Arizona 07.18】

★追加情報 (07.11, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今年5月5日に撮影した、南半球の一角(54.6S, 17.5E)。

             

上の中には、流体の流れ出した痕跡と言われる「ガリー」、砂丘、つむじ風の走った跡、明るい岩石の堆積が写っている。これらの特徴は火星面ではお馴染みのものだが、一枚のフレームに全てが存在するのは珍しい。

画面中央上・白く見えているのがガリーで、長年の間に堆積したものと考えられている。その周辺を含む黒い部分は砂丘で、複雑な風の流れが存在するとみられている。一方、右下の白い部分は明るい岩石の堆積。

画面全体に走る黒い筋は、つむじ風の走った跡。詳しくはこちらへ【photo: NASA/JPL/University of Arizona】

★追加情報 (07.06, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)の高解像度カメラ「HiRISE」によって撮影された、「ヴィクトリア・クレーター」の一部。走り回っているラインは火星探査車「オポチュニティ」が残したわだち。2本が並行に走っている様子がはっきり写っています^^(大きいサイズではっきり)

             

撮影されたのは、先月6日。大きいサイズはこちらへ【photo: HiRISE】

★追加情報 (04.25, 2007)

下の画像は、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した、南極冠の一部。現在火星は南半球が春を迎え、南極冠は小さくなりつつある。

             

極冠は主にドライアイスから成り、温度が上昇する春から夏にかけて昇華、小さくなってしまう。画像で黒く見えるブツブツは、露出を始めた地表である。大きいサイズはこちらへ【MRO 04.25】

…なんかかゆくなってくる映像ですね^^;

★追加情報 (02.16, 2007)

2003年12月、火星着陸を目指し大気圏突入したものの、その後全くシグナルを送ってこなかった火星着陸機「ビーグル2」。2005年、NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」(MGS)によりその墜落現場と思わしき場所が撮影され、メディアでも取り上げられたが、このほど「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)によりその高解像度画像が得られた。

ビーグル2は英国が開発し、欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」に相乗りする形で火星へ向かい、エクスプレスの周回軌道投入5日前に切り離され、大気圏へ突入した。しかしその後、予定時刻になっても全く応答が無く、ビーグル2ミッションは失敗に終わった。

2005年、MGSが撮影した着陸予想地点に不自然な黒点が発見され、インパクトポイントの可能性が高いと報じられた(下・大きいサイズはこちら)。また、最新鋭の高解像度カメラを備えたMROでも撮影されることが予定され、関係者の期待を集めていた。

             

        (下は黒点の拡大画像。MGSではこれが限界だった。「H2Oクレーター」と名付けられた。)
             

(陰影と想像から推測された特徴。「タイム」誌所属の、空軍の偵察衛星の画像分析に携わっていたという人物によるもの・詳細はこちら
             

下はMROの高解像度カメラ「HiRISE」により撮影された、H2Oクレーターの拡大画像。残念ながら、上で指摘されたような特徴は一切見あたらない。

             

ビーグル2計画の主任研究員で英オープン大学のコリン・フィリンジャー教授は、「やはり、今回の結果には残念です。しかしJPLやアリゾナ大学のカメラチームには非常に感謝しています。彼らの高性能カメラでインパクトポイントがそのうち見つかるだろうと楽観的ですよ。」と語っている。

画像の解像度は約84cm。先月27日に撮影された。大きいサイズなどはこちらこちらへ【PPARC/HiRISE Operations Center 02.16】

…思いこみがタップリ入った(?)推測と現実とのギャップが…こうも違うとは(汗)。。

★追加情報 (02.15, 2007)

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」による観測で、液体が流れた痕跡とおぼしき地形が新たに見つかった。このような流体痕は既にいくつも見つかってはいるが、今回の発見もまた興味深いものになりそうだ。というのも、同探査機に搭載されている高解像度カメラ「HiRISE」により発見されたものだからである。

右は同カメラによって撮影された発見場所。解像度は1mに迫り、これまでの探査機では確認できなかった細やかな違いも読み取ることができる。

アリゾナ大学のクリス・オオクボ博士は、昨年9月に撮影された「カンドール谷」(Candor Chasma)の画像を眺めていて、ひとつの特徴に気づいたという。「割れ目に沿って黒みの少ない部分が見えたのです。かつてユタ州で実地調査を行っていたときに見つけた、黒っぽい砂岩の割れ目の間に走る、明るい色に変色した筋(「ハロー」・Halo)を思い出しましたよ。」と博士は語る。

下はその詳細で、「joints」は割れ目。もともと地下にあったが、数百万年をかけた浸食で地表に露出した。白っぽい「ハロー」は、いわば地下水脈の痕跡と考えられ、しかもこの部分は周囲よりもやや高度が高いようである。水の作用による鉱物の堆積がそこを周囲よりも硬化したことで、逆に浸食が進みにくくなったため浮き上がって露出したと考えられている。

            

この白い筋の成因としては、水に拡散した鉱物成分が溶解し、岩石の一部になった可能性が最も高いという。別のケースとしては、気体によるとも考えられるという(天然のガス管かな?@管理人)。
           

上は、今回の発見の舞台となった場所の広域地図で、かつて「マーズ・グローバル・サーベイヤー」で得られた画像。詳しくはこちらこちらへ【NASA/MRO 02.15】

★追加情報 (02.07, 2007)

画像は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が撮影した、南半球にある大陸「テラ・シレナム」(Terra Sirenum)に存在する無名のクレーター。直径7km、深さ700mに達する、綺麗なすり鉢状のクレーターである。

クレーター壁からは「ガリー」と呼ばれる流痕が無数に見えるが、このクレーターのガリーは他で見られるそれとは少し特徴が異なっている。しかもこの大地にはガリーを含むクレーターが多いが、そんな中でもこのクレーターのものは変わっている。

             

というのも、一般的なガリーにはさも液体が流れたような、先端が枝分かれした地形などが見られる。ところが上の画像に見えるのは、まるで粘土細工の“へら”のようなそれだ(何かクリームを垂らしたような感じですね@管理人)。超大きいサイズはこちらへ。【photo: NASA/JPL/University of Arizona

ところで、MROは今月、ひとつの記録を達成した。それは昨年11月の科学観測開始以来の送信データが、CD-ROM・1000枚分に達したのである。この量は、97年から昨年末までの9年間に「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が送信したデータ量に匹敵する。

2008年まで予定されているファースト・ミッション期間中に、総計5000枚分のデータが得られるものとされている。

ただ、懸念事項が2つあることも明らかにされた。その1つは高解像度撮像カメラ「HiRISE」にあるという。このカメラは同探査機の主力センサーであり、上のクレーターもこのカメラで撮影されたもの。カメラを構成する14個のCCDセンサーのうちのひとつに、昨年11月下旬よりノイズが入るようになったという。また、打ち上げ直後より同様の症状を抱えていた別のセンサーはノイズが更にひどくなり、加えて先月には別の5個のセンサーに同様のノイズが入り始めているという。

現段階ではそれらは目立たない程度であるが、今後悪化することがないかどうか懸念されている。

フライトデータを検討したところ、撮像の前にセンサーの温度が暖かいほどノイズが軽減される傾向があるという。撮像チームはどのようなオペレーションが最もベストなのか、検討を続けているという。

一方、もう一つの不具合は、「マーズ・クライメット・サウンダー」と呼ばれるセンサーに見られるもの。このセンサーは大気をスキャンして温度や雲、ダストの分布を捉えるものである。

12月末、時折スキャンをスキップするようになり、視野が僅かに外れてしまう不具合が発生した。これは新たなスキャンテーブルをアップロードすることで一旦は消えたものの、先月中旬より再び同じ現象を起こすようになったという。現在、詳細を調査中という。

詳しくはこちらへ【MRO 02.07】

★追加情報 (01.31, 2007)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の高解像度撮像カメラ「HiRISE」が撮影した木星。カメラのキャリブレーションのために撮影されたものであるが、この解像度はハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたものと同程度のこと。

             

このカメラはかつてない解像度を有しますが、さすが凄いですね。大きいサイズはこちらへ【NASA/JPL/University of Arizona 01.31】

★追加情報 (01.11, 2007)

1997年7月4日に火星へ着陸し、同年9月27日まで稼働していたNASAの火星着陸機「マーズ・パスファインダー」の現在の様子が、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」により撮影された。かつてない解像度で撮影された着陸機とその周辺の様子に、チームは驚いている。

(下は当時、探査車「ソジャーナー」がはい出した直後に撮影された画像で、多くの科学雑誌を飾る記念すべき一枚となった。エアバッグの一部と、ソジャーナーが地表に降りるためのランプウェイ(はしご)が見えている)

             

               (下は、ソジャーナーのカメラで撮影されたパスファインダー着陸機)
             

撮影は昨年12月21日に、搭載されている超高解像度望遠カメラ「HiRISE」によって行われた。

右は、着陸地点とその周辺の全景である。中央下のクレーターは非公式に「ビッグ・クレーター」とパスファインダーチームによって呼ばれていた。パスファインダーはクレーター壁から3km北方に位置する。また、同クレーターの上方・左に見える2つの明るい特徴は「ツイン・ピークス」と呼ばれる峰で、パスファインダーからも撮影された。ツイン・ピークスの上方・右の輝いて見える高地は「ノース・ノブ」と呼ばれており、パスファインダーからは地平線の先に撮影されている。

パスファインダーが着陸している地域は太古の昔に洪水であふれたところとされているが、このスケールで見る限り、そのような特徴は伺えない。この地域が洪水に見舞われたのは18〜35億年前と考えられている。風によって形成されたさざ波模様や砂丘が全体的に見え、クレーター内にも集中している。成因不明の多角形型の尾根が、パスファインダーの東側に見える。(大きいサイズ

下は、パスファインダーとその周辺の拡大図。

 

                 (参考:当時、パスファインダーから撮影されたツインピークス)
            

下は更なるクローズアップ。パスファインダー着陸機とバックシェル、パラシュートが見えている。その他、耐熱シールドの一部と思われる物体が4つ見え、うち2つはパスファインダーからも見えていた。当時、パスファインダーから最も近いところにある物体はバックシェルではないかと考えられていたが、HiRISEの画像や、当時パスファインダーが撮影した画像の再分析などで、耐熱シールドから飛び出した断熱材であろうと判明した。なお、バックシェルとパラシュートは、パスファインダーの視野には入っていなかったことも明らかになった。

                           (マーズ・パスファインダー着陸機)
              

                  (バックシェルとパラシュート。シュートは質感もわかりますね)
             

下は、着陸機を強拡大し、パスファインダーによって得られていた高低データを色覚化してそれに被せたもの(高い部分は赤)。着陸機を原点に置いたxy軸は距離(m)を示している。HiRISEによって上空から得られた画像と、ほぼ10年前にパスファインダーによって得られた視野は見事に一致しており、HiRISEの解像度の高さが改めてわかる。

           
             

上は、パスファインダー着陸機から撮影された探査車「ソジャーナー」の動き回った様子(注:探査車はもともと一台です)。いくつかの岩石には名前がつけられており、HiRISEもそれらをきちんと解像しています。着陸機によって得られたパノラマ画像はこちらです。リコネッサンス・オービターによる大きすぎるサイズだけど素晴らしい画像など、詳細はこちらへ【NASA 01.11】

(参考:パスファインダー着陸機によって撮影されたパノラマ画像。ソジャーナーは約3ヶ月間をかけて、着陸機の周辺を一周しました。マーズ・パスファインダーミッションのサイトはこちら

            

★追加情報 (12.26, 2006)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)のスペクトロメーター「CRISM」により得られたデータを視覚化したもの。撮影地点は南緯38.9度、東経195.9度付近で、日時は11月25日。波長0.36〜3.92マイクロメートルの幅を544波長に分割して観測した。

CRISMは地表面の構成元素を解像度18メートルで調査、水の痕跡などを探りつつ、地表の季節変化なども追う。

             

この画像が撮影されたとき、火星の南半球は真冬。南極冠は真っ白になっているが、しかし地球の極と異なるのは、その白には氷に加え、ドライアイスが含まれているということ。ドライアイス、すなわち固体の二酸化炭素は凝固点が水の氷よりも遙かに低いため、春になると氷よりも先に昇華し、消え失せてしまう。

上の画像はクレーターリムの一部で、太陽光線は左上から射している(画像・上が北)。リムの南側には太陽光が当たらない部分があり、霜が張っている。この場所は、この時期の平均“霜北限”の更に15度ほど北になる。

上半分の画像は、3つの赤外線波長で観測されたデータを色覚化したもので、霜の部分が青く着色され、周囲より浮き上がっている。一方、水と二酸化炭素それぞれの吸収スペクトルを色覚化したのが下半分の画像。青い部分は水氷による赤外波長1.5マイクロメーター付近の吸収の度合いを、緑の部分はドライアイスによる波長1.45マイクロメートル付近の吸収を示している。ちなみに赤は、地表による1.33マイクロメートルの吸収。

両者を比較してはっきりわかることは、水の霜は“陽当たりのよい”リムの北側にも、そうでない南側にもまんべんなく見られるのに対し、ドライアイスの霜は南側の、最も陽当たりの悪い部分にだけ集中していることだ。詳しくはこちらへ【MRO】

★追加情報 (12.13, 2006)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」がその威力を存分に発揮しています…

搭載されている地下探知レーダー(SHARAD)による観測データがリリースされた。下は11月8日に行われた探査で得られたデータを視覚化したものであり、レーダー走査は南緯75度〜85度の範囲、約590kmに渡って行われた。

下段のカラー画像は、レーザー高度計によって得られた高低差を視覚化したもの。緑の部分は低地であり、赤〜白の部分は高地である。
            

一方、上段はレーダーエコーを視覚化し、地表と地下の様子を断面図で示したもの。白い部分は反射波が強い部分、黒い部分は弱い部分である。ちなみに中段は主たる層構造をラインで表現したもの。詳細はこちらへ【NASA 12.13】

…そのほか、多くのリリースがなされています(こちらへ)。

★追加情報 (12.04, 2006)

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」は今月7日より本格観測を開始、続々と撮像データを送ってきている。先日は火星探査車「オポチュニティ」のパラシュートなどがリリースされたが、今度は、探査車「スピリット」のそれら、加えて伝説の着陸機「バイキング」の現在の姿がリリースされた。

画像(a)は、探査車「スピリット」のバックシェルとパラシュート。パラシュートはその膜感まで表現されており、リアル。画像(b)は着陸機で、この上に探査車が乗っていた。

ちなみにバックシェルとは着陸機と車を格納していた容器の上半分で、そこにパラシュートも格納されている(下段・左)。下半分は耐熱シールド。また、着陸機をスピリットが撮影した姿が下段・右である。その他、耐熱シールドなどの画像はこちら

            

            

右は、10月3日、11月4日及び30日に撮影された、探査車「オポチュニティ」とその周辺の様子。現在オポチュニティは「ヴィクトリア・クレーター」のリムをうろうろしているが、その様がよくわかり、面白い(大きいサイズ)。

1976年7月20日、火星着陸探査機「バイキング1号」がクリセ平原の西に着陸した。直径3mのこの着陸機も、マーズ・リコネッサンス・オービターの超望遠撮像センサー「HiRISE」がしっかりと捉えた。探査機の所在は、探査機がかつて送信してきた周辺の風景を手がかりに同定された。

さらには耐熱シールドやバックシェルの姿も確認された(下画像・左がバイキング1号着陸機で、右が耐熱シールド)。なお、バイキング2号に関しても同様の画像がリリースされている(こちら)。



ちなみにバイキング2号の撮像はトップ事項として位置づけられている。というのもマーズ・リコネッサンス・オービターの重要任務のひとつに、来年打ち上げられる「マーズ・フェニックス」探査機の着陸地点の決定がある。フェニックスは北極地方に着陸する予定であり、低緯度に着陸しているバイキング2号とは緯度が全く異なるが、周辺の状況はよく似ていると考えられており、着陸候補を選定する上での画像比較対象としてもってこいとなされているからである。

その他、詳しくはこちらへ【NASA 12.04】

★追加情報 (11.29, 2006)

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」は今月7日より本格観測に入っているが、主力である超望遠撮像カメラ「HiRISE」の運用を担当しているアリゾナ大学は、これまでに得られた画像を大量にリリースしている。

下は、火星探査車「オポチュニティ」が着陸した場所周辺の様子。画像(a)はパラシュートと、探査車を保護していたバックシェルを写しだしている。バックシェルの右側に白く広がるのは、それが地上に激突した際に露出した土であろうとみられている。一方、画像(b)は地表に激突して2つにちぎれ飛んだ耐熱シールドと、そのインパクトポイント。

          

画像(c)は、オポチュニティが着陸した小さな「イーグル・クレーター」。真ん中に今なお着陸機が残されている様子がはっきりわかる。大気圏突入に耐え、パラシュートで降下、最後はエアバッグに包まれて着地したオポチュニティはゴロゴロと、この小さなクレーターに転がり込んだ。まさに“大ホールイン・ワン”であり、NASAは会見でもそのように語ったことが思い出される。

          

ただ、オポチュニティがもし走行仕様でなかったら、360度壁面の、全くつまらない風景を見るに終わっていたことだろう。2004年1月24日、このクレーターに、確かに入ったのだということを改めて感じさせてくれる。オポチュニティはここで60火星日を過ごし、地質調査を行った後、はい出し、今なお走行を続け、実に1000火星日を軽々と超えてしまった。上の画像の大きいサイズを含む、アリゾナ大学のリリースはこちらへ。その他の画像はこちらへ【Univ. of Arizona 11.29】

★追加情報 (11.13, 2006)

先週、交信不能が伝えられたNASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」について、今なお交信が回復していない状態にあるという。

報道によると、今月6日以降、2時間おきにコンタクトが図られているという。もしこのまま交信が確立しなければ、すぐ傍を飛行している「マーズ・リコネッサンス・オービター」により、グローバル・サーベイヤーを撮影、機体の姿勢などを検証する予定とのこと。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 11.13】

★追加情報 (10.16, 2006)

9月末から今月上旬にかけ、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の各種観測機器の電源が入れられ、本格的な観測開始を目前に控えたテストが行われた。現在火星は「合」(地球から見て太陽の向こう側)の位置にあり、地球とのコミュニケーションが難しいため、探査機は休止モードに入っている。11月にはいると、いよいよ本格的な活動が始まる。

ところで、下は観測機器「MARCI」(Mars Color Imager)によって得られた北極圏の全体像。探査機は極軌道を周回しているため南北極を真上から見ることができるが、現在南極域は極夜、北極域は白夜に覆われている。

           

探査機は毎日ほぼ同じ地点の上空を午後3時(現地時間)に通過する。MARCIは雲の定点観測を行う形で活躍することになっており、「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が午後2時に通過後、その1時間後に通過し、両者のデータを組み合わせて雲の動きの詳細を探る予定である。

上の画像は深夜、午前6時、正午、午後6時に撮影された4枚のモザイクを組み合わせて作られたものである(白夜のためこのようなことが可能)。真っ白い部分は水の永久氷と考えられている。

なお、地球との更新が休止されている間もMARCIは機能しており、蓄積されたデータは更新回復後にダウンロードされる予定となっている。詳しくはこちらへ【MRO 10.16】

★追加情報 (10.06, 2006)

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が高解像度撮像センサー(HiRISE)で撮影したヴィクトリア・クレーター。中央にはフットボールチーム「ワシントン・レッドスキンズ」のホームグラウンドである「フェデックス・フィールド」が合成されている。【MRO 10.06】

           

…大きいサイズはこちら

これは凄い!

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の高解像度撮像カメラ(HiRISE)が、火星探査車「オポチュニティ」とヴィクトリア・クレーター周辺の撮影を行い、その映像が公開された。

オポチュニティは現在、メリディアニ平原を走行しており、この映像が撮影される5日前に、火星着陸以来目指してきた直径800mのヴィクトリア・クレーターに到着したばかり。

この映像では、「ダック・ベイ」と名付けられた入り江、その南側に存在する先鋭な岬「ケープ・ヴェルデ」などが見えている。大きいサイズの画像で見ると、探査車自体やその轍(わだち)もわかる。加えて、探査車、さらにはカメラのマストの影までも写っているのが驚異的である。

           

この画像は今月3日に撮影されたもので、解像度は29.7cm/ピクセル。撮影時、、火星時間午後3時30分だった。詳しくはこちらへ【JPL/NASA/MRO 10.06】

…MRO、いよいよ本格的にその実力を見せつけてきましたね!

★追加情報 (09.29, 2006)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」に搭載されている高解像度撮像センサー「HiRISE」による、周回低軌道上からのファースト・ショットが29日撮影され、先ほどリリースされた。

            

撮影時の探査機は高度280kmを飛行中で、地表の解像度は約30cm/ピクセル。大きなサイズの画像と詳細はこちらへ【NASA 09/29】

★追加情報 (09.26, 2006)

今月11日、エアロブレーキングを無事に終え、予定されていた低高度周回軌道に投入された火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)。この目玉である「高解像度撮像センサー」(HiRISE)の、低軌道におけるテスト撮影が今月29日に行われることになった。アリゾナ大学の担当チームが実施する。

HiRISEは他の惑星へ送られたカメラの中ではかつてない高解像度を誇り、MROの火星到着直後、エアロブレーキング開始前にもテスト撮影が行われた。このときは高度2500kmからの撮影であったが、現在MROは高度300kmを周回している。

最初のテストでもすばらしい画像が得られたが、今回は更なる期待が高まっている。詳しくはこちらへ【Spaceref 09.26】

★追加情報 (09.19, 2006)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)の地中探査レーダーのアンテナが今月16日、展開された(右図で、左右に伸びるブーム)。

このレーダーは「SHARAD」と呼ばれているもので、イタリア宇宙庁が開発したもの。地下1kmの深さまでを捉え、氷層や地下水の有無といった調査を行うことになっている。

レーダーブームは片方5mの長さで、スプリングの力で展開された。展開時には機体にも震動が伝わり、これまた、予定通りにブームが展開したことを示した。

18日にはテストも行われたが、予定通りの特性が得られたという。詳しくはこちらへ。【MRO 09.19】

★追加情報 (09.12, 2006)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」のエアロブレーキング並びにスラスター噴射による低軌道遷移オペレーションが終了した。

リコネッサンス・オービターは今月11日、搭載する6基の中型スラスターを12分半噴射し、南極上空に近火点、北極上空に遠火点となる楕円軌道への投入に成功した(近火点250km、遠火点316km)。

これにより、今年3月に火星周回軌道へ投入されて以来続けられてきた、「エアロブレーキング」という気の長い軌道投入作業は終了したことになる。なお、4月から8月まで続けられていたエアロブレーキング期間中、探査機は火星を426周し、高度45000kmから486kmまで高度を落とした。

エアロブレーキングとは、火星超高層の希薄な大気を利用して減速をするというもの。時間がかかり、それなりのリスクも伴う方法だが、なにより燃料を節約できるという利点がある。エアロブレーキングのおかげで、この探査機の場合、約600kgの燃料を節約することができたという。

この後、今月中に、10mアンテナの展開と、重要な観測機器のレンズキャップの展開が行われる予定。エアロブレーキングの間は、ダメージを避けるためカメラのレンズキャップは閉じられていた。11月には本格的な科学観測が始まる予定になっている。

この探査機は、かつてない高解像度で火星面を調査するのが目的だが、これは火星からの大容量通信の試験も兼ねている。予定されている当初2年間ミッションの間には、これまで行われてきたすべての火星ミッションで得られたデータを上回る情報量が地球に送信されることになっている。詳しくはこちらへ【NASA/JPL 09.12】

…この探査機による画像は楽しみです。特に、これまでに火星へ着陸した探査機の姿など、いったいどのレベルで見えるのか・・下のバイキングなども、凄い映像が得られるのでしょうね^^

★追加情報 (08.25, 2006)

今年3月に火星周回軌道に入っていたNASAの火星周回探査機「マーズ・リカナッサンス・オービター」はエアロブレーキングを順調にこなし、まもなく終了を迎える。

エアロブレーキングとは、わざと高層大気を飛行することで減速し、予定の低軌道へと遷移させていく作業。高層の極めて薄い大気を通過するとはいえ、機体の温度上昇や姿勢不安定などを起こしやすく、難しいマニューバが続けられてきた。ただ、高層大気の特性などを逆算することもできるなど、得るものも多い。

最終的には北極上空320km、南極上空255kmを通過し、周期53分の周回軌道に投入され、11月から科学観測が始められる予定。詳細はこちらへ【MRO 08.25】

★追加情報 (04.13, 2006)

NASAの火星周回探査機「マーズ・リカナッサンス・オービター」に搭載されている3つの撮像カメラのうち、2つ「Context Camera」(CTX)及び「Mars Color Imager」(MARCI)が撮影したテスト画像がリリースされた。ちなみに3つ目のカメラは先日リリースされた「HiRISE」で、自慢の超高解像度撮像センサー。

CTXは解像度6mで、HiRISEが捉えている領域の狭さを示すもので、撮像範囲は30km四方(要するに、ファインダーっぽいものでしょうかね@管理人)。スペクトロメーターの機能も有しており、対象領域の元素成分の分析も行う。また、長期に渡る地形の変化なども監視する予定。

一方、MARCIは大気や地表の観測を行い、雲やダスト、極冠の変化などを追い続ける。

下は、MARCIで撮影されたテスト画像の一部(大きいサイズ)。このうち右端のカラー画像は、リカナッサンス・オービターが撮影した4時間後に「グローバル・サーベイヤー」が撮影した同じ地域。リカナッサンス・オービターが撮影した際は現地時間・早朝で、グローバル・サーベイヤーは同・午後2時頃に撮影。

   

リカナッサンス・オービターによって撮影された3枚について、260nm(紫外線域)波長域での撮影では、オゾン吸収帯を見ることができる。画像で、比較的薄黒い領域はオゾンの存在を示している。火星大気では、水蒸気とオゾンは負の相関関係があり、それ故、比較的明るい領域に水蒸気の存在を追うことができるといえる。

なお、“比較的”というのは、そもそも火星を紫外域で撮影すると鉄を含む成分による吸収で暗く写る性質があるため。“比較的”には、「その中でも、明るいところ」というニュアンスがある。なおここでは示されていないが、紫外域における別のやや長い波長で撮影した画像からは、その違いがはっきり分かるという。

また、グローバル・サーベイヤーのカラー画像では雲が写っているが、これはリカナッサンス・オービターの画像には反映されていない。もちろんこれは撮影時刻が大きく異なるためであるが、最終的には、グローバル・サーベイヤーとリカナッサンス・オービターの撮影時刻差を1時間まで縮める態勢に入り、より実のある両者の比較検討ができるようになされる予定。

詳細と更なる画像はこちらへ。カラー画像の合成手順の紹介はこちらへ【MRO 04.13】


★追加情報 (03.26, 2006)

火星周回機「マーズ・リカナッサンス・オービター」の高解像度カメラ(HiRISE)による火星面のファーストショットが届いた。下は24日、高度2489kmから撮影されたもの。範囲は49.8km×23.6km。

   

さらに、右下の白い四角を拡大したのが次の画像。

画質は最高のもので、ヨゴレもピンぼけも一切無いという。今後、エアロブレーキングで高度を下げつつ軌道を確定し、今秋には現在の高度の10分の1の低軌道から科学観測を開始する予定。大きいサイズと詳しくはこちらへ【MRO 03.25】

…まだこのすごさが実感できません^^; が、右の画像の解像度は30センチ 2.5mとのことですから、更に低軌道で撮影するとより細かい画像が撮れるのでしょうね。
(すみません、解像度間違えていました。。30cmは、最終的に達成される予定の解像度とのことです。26日修正・管理人)

★追加情報 (03.22, 2006)

火星の周回軌道に無事投入されたNASAの火星周回探査機「マーズ・リカナッサンス・オービター」(MRO)に搭載されている高解像度撮像カメラ(HiRISE)による火星のファーストショットが木曜夜(米東部時間)に行われる運びとなった。

HiRISEを制御している米アリゾナ大学の研究者達によると、東部時間午後11時41分から50分に掛けて第一回目の撮影が行われるという。また、第2回目の撮影が東部時間・今月25日午前11時15分から22分に掛けて行われるとのこと。

「我々は撮影後1時間半ほどで画像を目の当たりにすることになると思う」と語るのは、HiRISE運用マネジャーのエリック・エリアソン氏(HiRISE運用チームのサイトはこちら)。詳しくはこちらへ【Space.com 03.22】

…どのような画像がでるのか、楽しみですね!それにしてもMROってデカイんですねぇ・・こうしてみると(右)
大きいサイズ

★追加情報 (03.10, 2006)

「マーズ・リカナッサンス・オービター」の、名称「リカナッサンス」(Reconnaissance)ですが、以前はここで「リコネッサンス」と書いていましたが、発音をきちんと調べてみると…結局、「リカナザンス」が妥当なようで・・。“カ”にアクセントがあるので、「リナザンス」とでもなるのでしょうかねぇ。。

日本時間午前7時17分、マーズ・リカナッサンス・オービターからのシグナルを受信!確認の瞬間、管制部は大きな歓声に包まれた。

同7時26分、予定されていた周回軌道への投入が確認された。管制部、拍手の渦!リカナッサンス・オービターは火星を周回する米国製の3機目、欧州のマーズ・エクスプレスを加えると4機目の探査機となった。

…リカナッサンス・オービターはかつてない高解像度のカメラを搭載しています。管理人はこれで撮影されたマーズ・ローバーや、99年に消息を絶ったポーラー・ランダーの捜索が非常に興味あります(捜索は予定されており、期待通りの性能を発揮すれば、下のような画像が得られると考えられています)。

    

NASAの火星周回探査機「マーズ・リカナッサンス・オービター」の逆噴射・周回軌道投入作業(MOI Burn)が始まった。

点火確認後、一斉に拍手!JPL管制部よりNASA・TVで視聴可能。燃焼時間は27分、終了時は裏側へ回り込むため、機体状態はすぐには確認できません。

…点火2分前、管制部では皆ピーナツをぼりぼり食べ始めました。これは無事を祈願して行われる恒例の願掛けです(笑)。

★追加情報 (03.07, 2006)

火星は手強いディフェンダーだ。このレッド・ウォーリアはこれまで、人類が送り込んだ探査機の3分の2近くを払いのけているのだ。現在この惑星へ向かっているNASAの「マーズ・リカナッサンス・オービター」(MRO)を運用しているチームは、規律と訓練、そして経験をもってして、闘いに挑もうとしている。

いよいよ10日(日本時間・11日午前6時24分)、火星に「マーズ・リカナッサンス・オービター」が到着する。探査機の軌道投入が無事確認されるまで…それはまさにエンジニアリング・ゲームだ。“ビッグ・ゲーム”に臨むにあたり、チームは鍛錬を続けている。

「チームの連携を即応状態にもっていくのが、目指すところですね」と語るのは、トレーニングエンジニアのルース・フラゴソ女史。彼女らはミッションチームを鍛え上げるトレーナーだ(右画像・下)。

「我々はチームに対しプレッシャーを加えていますよ。どのような反応を示すのか見たいのです。彼らを窮地に陥らせようとしていますよ。」

このように、様々な困難を想定、彼らにぶつけることで、状況対応能力を習得させる日々が続いてきたのだ。

「それ全てが意図されたものであり、目的に応じたものであるにもかかわらず、リアルなものだ。パイロットが座るフライトシミュレーターのようなものだよ。訓練であるとはいえ、レッドアラームは非常にリアルなものだよ!」

こう語るのは、MROチーフエンジニアのトッド・ベイヤー氏(画像・中)。彼らの受けている訓練は「オペレーショナル・レディネステスト」という優しい響きのする名称で呼ばれるが、現実は優しいものではない。

MROチームは最近、17のアノマリー(振る舞いの異常)を経験した。うち11は予定されていたもので、チームが故障を想定して仕組んでいたもの。ただ、6つは想定外に発生したものであったが、それらは全て克服されている。

それを「Gotchas」(ガチャ)だと呼ぶのは、ロッキード・マーチン社のシステムエンジニア、シンディ・シュルツ女氏(画像・上)。それらには、電気系統の故障と温度計データの異常でヒーターにスイッチが入る現象が含まれていた。

オーバーヒートは姿勢制御に支障をきたし、探査機の軌道を乱す原因となる。チームは当初、この現象が生じるとは考えてもいなかったが、現実には起きうることが示されたわけである。彼らは目下、これが生じたときに備え準備を進めている。

打ち上げから約半年、チームは観測器機のキャリブレーションや、軌道投入に備えた訓練に明け暮れてきた。万全の態勢で臨もうとしている。【MRO 03.07】

…続きと詳細はこちらへ。到着が楽しみですね!ちなみに「ガチャ」とは、日本語訳しにくいのですが、「落とし穴」や「罠」などといったもの。ない方が良いけど、あっても回避できるものというニュアンスがあるようです。そもそも口語で「つかまえたぞ!」(Got you!)という表現です。

★追加情報 (02.24, 2006)

現在、火星を目指して一直線に飛行している(右)NASAの火星周回機「マーズ・リカナッサンス・オービター」が来月10日、到着する。同探査機はその名「リカナッサンス」(=偵察)の通り、かつて無い高解像度で火星面を撮影、将来の各種ミッションに備え地質データを取得する予定。

来月10日、メインエンジンの逆噴射を行い減速、火星周回軌道に入るという、クリティカルなフェーズを迎える。予定では米東部時間・同日午後4時24分(日本時間・11日午前6時24分)、逆噴射を開始する。だが、逆噴射停止は火星の裏側にまわっているときで、地球との交信が不通の状態。勿論、プログラムにより制御されるが、管制部は緊張を迎えるのは間違いない。【MRO 02.24】

★追加情報 (02.04, 2006)

目下、火星を目指して順調に飛行中であるNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の軌道と現在位置です。
        
NASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」は、火星へ向けてこれまで「巡航フェーズ」(cruise phase)にあったが、来月10日の火星到着へ向け、いよいよ「アプローチフェーズ」に突入する。

巡航(クルージング)というと穏やかで滞りのない飛行を連想するが、実際の所、現場はそんなのんびりしたものではなかった。「“クルーズ”は、だまし言葉だね…円盤突きゲームをやっていたんじゃないよ」と冗談混じりに答えるのは、プロジェクトマネジャー、ジム・グラフ氏(円盤つきゲームとは、主に船上で行われるゲーム(実際の様子))。

では、何をやっていたか…実は多くのテストと機能チェック、軌道の監視と修正に追われる日々を過ごしていたのだ。

目下のところ、近日予定されている第3回目の軌道修正(TCM-3)は、必要ないようだという。

「第2回目の軌道修正(11/28・TCM-2)後、ナビゲーションは極めて予定通りに進んでいるよ。そしてもっと重要なことなのだが、現在のままで行けば、火星周回軌道への投入も極めて予定内に進むということだ。軌道のファインチューンは極めて微小で済むかもしれない。」と語るのは、ナビゲーション担当チーフのハン・ユー氏。

次回の軌道修正(TCM-4)は今月28日に予定されており、火星到着は来月10日の見込み。【MRO 02.04】

…上の図で、打ち上げから到着までの間、地球と火星はほぼ並走する形になっています。打ち上げられた探査機と地球の姿を火星から見ていたら、あたかも後方からパスを出しすり抜けていくように見えますね。ちなみに太陽中心座標で眺めると(まさに上の図)、大きく弧を描いて飛んでいくように見えますが、これはホーマン軌道と言われます。

★追加情報 (12.28, 2005)

右は、火星へ向けて飛行中のNASAの火星周回機マーズ・リコネッサンス・オービターが撮影した散開星団NGC4755。この星団は「宝石箱」(Jewel Box)と呼ばれており、誕生から1000万年程度の若い恒星たちの集まり。地球から約7500光年の距離にあり、非常に美しい星団で、「南十字星」と呼ばれて有名な南十字座にある。

ちなみに「宝石箱」と名付けたのは、天王星を発見したウィリアム・ハーシェルの息子の、ジョン・ハーシェル。ハーシェル父子は星雲・星団をくまなく拾い上げ、また、銀河の恒星の数をカウントしたことで有名。

画像は今月14日、搭載されている「高解像度望遠カメラ」(HiRISE)によって撮影されたもの。この撮影にはキャリブレーションの目的がある。なお、「宝石箱」というわりにはパッとしないのは、このカメラは緑、赤、それに近赤外線の3波長で撮影するため。それ故、目に見る姿とはやや異なる。また、これはあくまで星野の一部であり、フルフレームでは700メガピクセルに達する。(このカメラは青緑(BG)、赤(R)及び近赤外(NIR)の3波長域に感度のピークがあるようです。詳しくはこちらを@管理人)

「このイメージは極めてシャープだよ。カメラと探査機の能力は素晴らしい。火星を撮影するのが楽しみだね」と語るのは、HiRISE開発の主任研究員であるアルフレッド・マクイーウェン氏。

(下は、HiRISEカメラで期待されている解像度を示す(大きいサイズ)。99年、火星着陸を試みて消息を絶った「マーズ・ポーラー・ランダー」を撮影した場合、現在火星を周回している「マーズ・グローバル・サーベイヤー」に搭載のマーズ・オービタル・カメラ(MOC)では真ん中のようなイメージが得られるが、HiRISEの場合、右端のようなイメージになるとされている。このカメラではポーラー・ランダーの捜索も予定されている。)
      

次に、右はリコネッサンス・オービターに搭載されている「背景カメラ」(CTX)で同日に撮影された、ほぼ同じ星野。このカメラは広角で背景を撮影し、高解像度カメラがどこを向いているのかをはっきりさせる目的がある。したがって、それほど高い解像度を必要としない。

これと同じ星野をアングロ・オーストラリアン天文台で撮影したのが、こちらの画像。これと比べると遙かに見劣りがするが、しかし、同天文台の望遠鏡は主鏡4mで総重量260トン。先の画像はこの鏡を用い、露出5分で各々撮影された3枚の画像をコンポジットしたものであるのに対し、CTSは主鏡は僅か10cmで、重量3.5kg、1ライン当たりの露出が0.05秒弱であったのは注意したいところ(…そう考えると、感度はいいなぁ)。たいしたことはないとはいえ、火星面を1ピクセル当たり6mの解像度で撮影する能力を持つ。

なお、これらの画像が撮影されたとき、探査機は火星から2280万kmの所を飛行していた。3月10日に火星到着の予定で、11月まで軌道確定作業が続けられ、その後、定常観測が開始されることになっている。【MRO/MSSS 12.28】

★追加情報 (12.23, 2005)

現在火星へ向かっているNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」は目下、火星までの行程のあと4分の1を残すところを飛行している。この惑星間クルーズでは、探査機が自身の位置を把握するために恒星や惑星を“ナビゲーションカメラ”と呼ばれる撮像装置で撮影するが、先日、リコネッサンス・オービターのナビゲーションカメラが捉えた1枚がリリースされた。

右は火星の周辺を狙って撮影されたもので、火星の衛星「フォボス」(Phobos)や「ダイモス」(Deimos)も写っている(大きいサイズ)。画像・下の方には「すばる」(プレアデス星団/Pleiades)、右下にはおうし座のアルデバラン(Aldebaran)も写し込まれている。カメラは予想以上の精度で機能しているという。

ところでこのナビゲーションカメラはそれほど大きいものではなく、長さ30cm、直径6cmで、重量は2.8kg。ちなみにこれは今までのナビカメラを進化させた新開発のもので、このミッションでの働きが効果的であったら、今後の惑星探査機に同様のカメラが搭載されることになる。

これは、マーズ・リコネッサンスには必ずしも必要ない装置であるが、性能試験のために搭載されているという(別にスタートラッカーと呼ばれる小型カメラが搭載されており、それがナビを果たしているので)。火星へ飛行するまでは衛星を写し、それを元に自身の姿勢や位置を把握する一方、火星周回を始めた後は、別の高解像望遠カメラのターゲットを確定するための“ファインダー”の働きをする。

火星到着の約1ヶ月前から周回軌道にはいるまでの間に約500枚の画像が撮影されることになっている。これは特に、周回軌道投入(06年3月10日)まで残り8日間の間に集中して行われる。精度は約1km程度。【MRO 12.23】

★追加情報 (11.18, 2005)

今年8月に打ち上げられ、目下、火星を目指して飛行中であるNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が18日、約20秒間のエンジン噴射により飛行進路を修正、来年3月10日に到着する軌道へと探査機を投入することに成功した。現在、(太陽に対して)秒速27kmで飛行を続けている。

8月12日に打ち上げられて以降、同探査機は順調に飛行を続けており、現在、火星までの全行程の約60%を通過した地点にいる。3月に到着後、約半年間に渡って火星周回軌道を確立し、その後、搭載する高解像度カメラでの地表の撮影などを開始することになっている。

火星到着までに4回の軌道修正が予定されており、今回は8月27日に続いて2度目。8月の軌道修正は、搭載された6機のメインエンジンのテストも兼ねていた。今回の修正は、6機の軌道修正用小型エンジンで行われた。【NASA 11.18】

★追加情報 (10.19, 2005)

今年8月に打ち上げられ、目下、火星を目指して飛行中のNASAの火星周回機「マーズ・リコネッサンス・オービター」から、膨大な量のデータが送信され、新記録を樹立した。

これは1日に75ギガビットのデータを送信したもので、CDに例えると13枚分に相当する。この中には、カメラのキャリブレーション用に撮影された月の画像も含まれている(下)。これは9月8日、約1000万kmの地点から撮影されたもの。肉眼で見たとしたら下のように小さな点でしか見えないが、搭載の高解像度望遠レンズで撮影されたのが上。光学系の性能がよく示された1枚である。
    
マーズ・リコネッサンス・オービターは火星表面をかつて無い高解像度で撮影し、その膨大なデータ量を高速で送信する任務を帯びる。この探査機は、惑星間の高速大量データ通信の試験も兼ねている。【MRO HP 10.19】

★追加情報 (09.13, 2005)

先月12日に打ち上げられたNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」は順調に飛行を続けており、先日、搭載されている高解像度カメラのチェックが行われた。

画像は今月9日、約1000万qの地点から撮影された月の姿。これは赤外波長で撮影されたもので、下の小さいものは可視光(肉眼)で見たとした時のイメージ(大きいサイズ)。このような画像はカメラの補正などに用いられる。同時にナビゲーションカメラなどのチェックも行われ、予定通りの性能が確認された。

      

予定では来年3月10日に火星周回軌道に入り、その後軌道の確定作業を行い、来年11月から本格観測に入る(上:地球から火星へ向かうトラジェクトリ)。【MRO HP 09.13】


★追加情報 (08.30, 2005)

このようなページがあるとは知りませんでした。「顔」の画像が欲しい方はこちらへ。いろんなお顔が楽しめます(笑)
  → 火星の顔

…マーズ・グローバル・サーベイヤーなど火星周回機からの画像を解析する会社のHPの1ページです。

★追加情報 (08.30, 2005)

12日に火星へ向けて打ち上げられたNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の、打ち上げ直後に飛行する姿が、熊本県民天文台で撮影された。

     

画像は同天文台の41センチ望遠鏡で捉えられたもの。上に伸びる一筋の光がその航跡。フルレゾリューションはこちらで。【MRO HP 08.30】

★追加情報 (08.12, 2005)

火星無人探査機「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」が米東部夏時間12日午前7時43分(日本時間同日午後8時43分)、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からアトラス5ロケットで打ち上げられた。NASA当局者は「MROは正常に機能している。打ち上げは成功した」と述べた。

来年3月に火星上空に到達、軌道調整を行った後、11月から調査を開始する。【時事/JPL 08.12】

★追加情報 (08.11, 2005)

前日から打ち上げが延期になっていたNASAの火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の打ち上げが再び延期された。ロケット上段の液体水素燃料のセンサーとそのソフトフェアの不整合が原因。

打ち上げは日本時間・12日夜に再セットされた。(…シャトルといい、センサーが鬼門ですねぇ(汗))

燃料の注入など、手続きは順調に行われてきたが、上段ロケットへの液体水素の段階になり、燃料センサーとそれに関するソフトウェアに不整合が見つかった。エンジニア達は打ち上げをロンチウインド(発射可能時間域)のギリギリまで、更に30分延長したが、この間における修正を無理と判断、今日の打ち上げを中止した。既に注入された液体酸素・水素は一旦抜き取られる。

この火星探査機には着陸機は搭載されていないが、その名の通り(リコネッサンス=偵察)、未だかつて無い高解像度のカメラが搭載されており、火星地表面の精査に挑む予定。また、地球−火星間の大量高速データ通信の技術試験も兼ねている。【NASA-TV 08.11】