ロード・オブ・ザ・リング

ニュース・ログ 追加: 03.17. 2011

2007年1月からのニュース・ログです。元のページはこちらへ

画像は、NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した衛星「タイタン」地表の変化。タイタンは大気全面にスモッグが漂い可視光で地表を見ることができないため、近赤外線波長で撮影されたものである。

 

タイタンの北半球は現在、春を迎えつつある。その季節変化の中で、赤道域では液体メタンの雨が降り注いていると考えられており、それによる変化が捉えられたものと研究者達は考えている。画像で青いラインで縁取られた部分で顕著だ。

画像B、C、Dで白く輝いている斑点は大気下層(対流圏)に漂うメタンの雲。地表は灰色で写っている。黒く写っているのは「ベレット」と名付けられた地域で、周辺と異なる物質成分のため黒い色で出ている。

画像で写っている赤道域は殆ど乾燥している地帯であるが、画像に見られる変化はメタンの雨が地表を濡らしたためであろうと研究者達は考えている。彼らはこの地域を何年にもわたって注視しており、他の変化要因を排除した。

画像Aは2007年10月、B=2010年9月27日、C=同10月14日、D=同10月29日そしてEが2011年1月15日に撮影された。特にBについては、このフレームのすぐ外には巨大なメタンの雲が迫っており、この撮影の後にそれがこの地域を覆っていた。それによると見られる大きな変化を捉えたのがC。2週間ほど経過した後もまだ湿っているように見られるが(D)、しかし1ヵ月経つと一部を残して乾き上がったことがわかる(E)。

変化した領域の面積は、ざっとアリゾナ州とユタ州を合わせたそれに匹敵するという。

論文は「サイエンス」3月17日号に掲載されている。詳しくはこちらへ【Cassini 03.17】

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した衛星「レア」(手前)と「タイタン」(奥)。見かけ上重なって見えているもので、探査機からレアまでは110万km、タイタンまでは倍の230万kmの距離がある。

 

両者はおよそ60個ある土星の衛星の中でも最も大きなもので、タイタンの直径は5150kmで最大、レアのそれは1528kmである。この画像は昨年11月19日にナローアングルカメラで撮影されたもの。

大きいサイズはこちらへ【photo: Ciclops】

★追加情報 (02.24. 2010)

下は、今年1月10日に土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、「エンケのすき間」と、その間にある衛星「パン」。

            

昨年8月の昼夜平分から約5ヵ月後のことで、パンの影がリングの上に細長く落ちているのが印象的である。下は拡大したもので、パンは露出オーバー気味になっている。すき間に見える別の白点は、土星系とは無関係な恒星である。

            

大きいサイズはこちらへ【photo: Cassini】

土星周回探査機「カッシーニ」が昨年11月21日に行った衛星「エンケラドス」へのフライバイで取得した最新画像が公開された。

エンケラドスの南極域には「タイガーストリップ」と呼ばれる、まるでひっかいたような大地溝帯が走っており、そこから氷片や水蒸気の大規模な噴出が起こっていることが知られている。カッシーニは度々この噴出の真っ直中に飛び込み、各種観測を行ってきた。

11月のフライバイでは、それまでの観測では高解像できなかった領域が取得されたり、また、その観測データを基にタイガーストリップの最もよい3D画像が作成された。

研究チームは、過去の観測では見えなかった新たな噴出ジェットなどを探し出す予定である。既にあるひとつのフレームには、30の噴出が確認され、そのうち20が新たに確認されたものであるという。また、以前は活発だったジェットの少なくともひとつが、今回は大したものではないことがわかったという。

また、詳しい温度データによると、バグダッド渓谷における最高温部では180K(−93℃)を超え、ひょっとしたら200K(−73℃)を上回るかもしれないという。数値だけを見れば、地球上では充分低温だが、エンケラドスでは50K(−223℃)が通常の温度。そうすれば、バグダッド渓谷が如何に“熱い”かがわかる。

(画像・右は11月の観測で取得された温度分布データで、左は一昨年3月のそれ。右は左の10倍の解像度であり、ジェットと温度の対応が極めて向上している。)

            

この高温といい、ジェットのメカニズムといい、それらを説明するモデルはまだ定まっていない。詳しくはこちらへ【Cassini 02.23】

★追加情報 (02.09. 2010)

土星の衛星「エンケラドス」の南極域からは水蒸気や水氷が大規模に噴出していることがわかっているが(下)、土星周回探査機「カッシーニ」のプラズマスペクトロメーターの検出データの分析した結果、水分子をベースとする負イオンの存在が確認された。太陽系の天体でそのような負イオンが検出された場所は、他には地球、タイタンそして彗星がある。

負イオンの存在は、水の存在を示唆するものである。例えば地球上なら、滝や海岸など水分子の動く場所で生成される。

分析チームは、2008年のエンケラドスフライバイで取得されたデータを解析していてこれに気付いた。水の存在はもはや彼らを驚かせるものではなかったが、スペクトルのピークが水分子クラスターの存在を示しているとわかった時は驚いたという。

ちなみにタイタンでは炭化水素の負イオンが確認されている。これが巨大クラスターをつくり、それが大気中に漂うスモッグの要因と考えられている。詳しくはこちらへ【Cassini 02.08】

★追加情報 (02.03. 2010)

NASAは土星周回探査機「カッシーニ」の探査ミッションを2017年まで大幅に延長する決定を下した。このために、NASA2011年会計年度で6000万ドル(約55億円弱)が付けられた。

カッシーニは1997年10月に打ち上げられ、2004年6月30日に土星周回軌道へ投入された。その探査と発見は既によく知られている通りで、2008年に当初予定の4年の観測期間を全う。しかし機能になんら問題ないため、2010年9月までの延長が決定され、運用が続けられてきた。(下は昨年8月19日に撮影されたもの。惑星本体にリングの影が一本映り、そのすぐ南側にホクロのようについた点は衛星「エンケラドス」の影。大きいサイズ

             

2008年から10年9月までの現行ミッションは「Cassini Equinox Mission」(カッシーニ平分点ミッション)と呼ばれてきた。これはこの期間に、土星が昼夜平分(春分・秋分)を含むためで、リング面に平行に太陽光が射すなど、科学観測にはまたとない機会となっている。

今後延長されるミッションは「Cassini Solstice Missio」(カッシーニ至点ミッション)と呼ばれる予定。7年は両半球が至点(夏至・当時)に至るまでの期間であり、両半球の季節変化を追うことができる。「この延長ミッションは、外惑星の冬から夏への全行程を追いかける唯一の機会となります。」と語るのは、ジェット推進研究所の研究員であるボブ・パパラード氏。

カッシーニは至点ミッション期間中に土星を155周し、その間にタイタンへのフライバイを54回、エンケラドスへのそれを11回予定している。詳しくはこちらへ【Cassini 02.03】

★追加情報 (01.29. 2010)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した衛星「プロメテウス」。今月27日、約14万キロの距離から撮影されたものである。

            

パッとみて目玉焼きのように見えるが、画像解析チームも同じことを感じたのだろう、見出しにに“Over Easy”とあるがこれは「黄身の表面もしっかり焼いて中が半熟の目玉焼き」のことである。

下は引いて見たプロメテウスで、昨年7月30日に撮影されたもの。昼夜平分点の直前であり、リング面そして衛星の軌道に並行に太陽光が射していたため、衛星の影が細長くリング状に落ちている(左下から右上に走る一筋の淡い線)。

            

ところで、この衛星に形状が近いものが他にもある。「アトラス」と「パン」であり、下がそう。2007年に発表されたこれらは、その形がUFOを連想させることから、早速掲載しているオカルト系の書物もある(笑)。

            

共にメインリングに存在する衛星で、パンは1990年、探査機「ボイジャー」の画像を再分析中に、アトラスは1980年、同探査機土星接近時に発見された(下・左はアトラスで、右はパン)。

            

詳細はこちらこちらこちらへ【photo: Cassini】

…このような衛星は、元々あった岩石が芯となり、これにダストや小岩石が降着することで形成されたのではないかという説も提唱されています。

★追加情報 (01.25. 2010)

画像は、去年11月26日、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星の衛星「タイタン」(手前)と「テチス」(奥)。カッシーニからテチスまでの距離は、タイタンまでの距離のざっと2倍。見かけ上、テチスはタイタンの背後に隠れ、そして出現しました。

                     オレンジ色の大気層の向こう側に消えていくテチス
            

                    暫くすると…ひょこっり出てきました。かくれんぼ。
            

テチスの巨大なクレーター「オデッセウス」が目立っています。大きいサイズはこちらへ【photo: NASA/JPL/Space Science Institute】

…大きいサイズでみるととても美しい光景ですのでオススメです!

★追加情報 (01.15. 2010)

14日、欧州宇宙機構(ESA)が開発した「ホイヘンス」が土星の衛星「タイタン」へ突入、着陸に成功してから丸5年を迎えた。

ホイヘンスは、NASAが中心となって開発した土星周回探査機「カッシーニ」の脇腹に装着され、1997年に打ち上げられたタイタン探査機である。タイタンは厚い大気を有するが、全面がスモッグに覆われ可視光で地上を見ることができない。地表には液体メタンの海の存在が有力視され、そんな非常に個性的な特徴を直接確かめるために投入されたものである。

2004年6月30日、カッシーニ・ホイヘンスは土星周回軌道に入り、この年のクリスマスにホイヘンスは分離された。切り離されたホイヘンスは、翌2005年1月14日、タイタンへ突入、パラシュートを開いて降下した。大気圏突入から着陸までに要した時間は約2時間半。この間、地上の撮影や大気の観測などを刻々と続けた。

観測データは次々とカッシーニに送信され、カッシーニは一旦それをメモリーに蓄積した。ホイヘンスは着陸後も、カッシーニが交信範囲から外れるまでの更に70分間、データを電送した。全てが終わる頃、カッシーニはプログラムに従い、アンテナを地球へ向け、蓄えたデータを送信したのである。

ちなみにホイヘンスのシグナルは、カッシーニが交信範囲から離れた後も、さらに2時間、地球上の電波望遠鏡群で受信されたのであった。成功直後に記者会見が行われたときも、ホイヘンスは生きていたのである。

ホイヘンスの観測からは、メタンの海のようなものの存在は確認されなかった。だが明らかに流体によって形成されたと考えられる地形がみられ、着陸地点がぬかるみのようなところであることなどがわかった。

ホイヘンスは、着陸探査機としては、地球から最も遠い天体に着陸したものである。詳しくはこちらへ【ESA 01.14】

★追加情報 (12.17. 2009)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が今年7月8日に撮影した衛星「タイタン」。北極域で閃光が見えるが、これは、メタン湖で反射された太陽光だという。

             

この画像は可視光および赤外波長で取得されたデータを基にして合成されたもの。もちろん、このような光景が撮影されるのは初めてのこと。研究チームはこのような光景を撮影できないものかとかねてから狙っていたというが、冬だった北極域には太陽光が当たらず、撮影ができなかった。だが季節は変わり、太陽光が当たり始めるようになったいま、狙いを定めて撮影されたのがこれというわけである。

取得されたばかりのデータを見るやいなや興奮したと語るのは、カッシーニ画像チームのひとり、カトリン・ステファン氏。だがそれが稲妻や火山活動ではないことをはっきりさせるため、更なる処理が必要だったという。

詳しくはこちらへ【Csssini 12.17】

…なるほど、反射光か!またひとつ、広大なメタン湖の存在を強くサポートする証拠…言葉がでない一枚ですね。

★追加情報 (12.10. 2009)

土星の北極圏では雲が巨大な六角形をつくっていることが知られているが、このほど、その六角形の可視光画像が取得され、公開された。

この六角形はそもそも、約30年前にボイジャー探査機が土星を訪れた際に発見された。当時北半球は春の初めで、北極圏に太陽光が当たり始めていた頃であったため、可視光カメラで目撃されたのであった。

しかし土星周回探査機「カッシーニ」が土星へ到着・周回を始めた2004年には冬の終わりの頃で、北極圏には太陽光が当たらず、この六角形を見ることはできなかった。ただ、高性能の赤外線センサーにより、熱放射を可視化するという方法で、六角形構造の存在が再確認されている(右・2007年3月にリリースされた赤外線画像。北緯77度付近で北極点を囲むようにグルリと存在。対角線は差し渡し25000キロに達する)。

ところが今年夏に北半球は春分を迎え、北極圏にも光が戻りつつある。この機会を利用して、カッシーニにより可視光画像が取得され、それらを組み合わせて得られたのが下の画像である。

              

可視光で六角形が撮影されたのは、ボイジャー以来。少なくとも数十年のスケールで維持される大気の運動であることがわかったわけで、研究者達は驚きを隠せないようである。ちなみに北極圏と南極圏では大気運動はかなり異なっており、南極圏にはこのような六角形構造は見あたらない。動画など詳しくはこちらへ【Cassini 12.09】

…まるで木星の大赤斑のような不思議な現象ですね!

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、Gリング。キメの細かい微粒子で出来上がった輪であり、近年、埋もれた“微衛星”(ムーンレット)の存在がカッシーニによって確認され、これらが粒子の供給源になっていると考えられている。

             

撮影日は今年10月9日。画像の下半分が黒いのは土星本体の影に入っているからとのことですが…位置関係がなんかつかめないなぁ…^^; 大きいサイズはこちらへ【Cassini 12.01】

★追加情報 (12.01. 2009)

土星の衛星「タイタン」の両極にはメタンの湖があることが、土星周回探査機「カッシーニ」によるレーダー観測で明らかとなっている。ところが北極域と南極域では、その分布に大きな差がある。簡単に言えば、湖が多いのは北極側で、南極域は数が少ないのだ。

タイタンの地軸は傾いており、それゆえ両半球に季節変化がある。これはメタン循環系に大きな影響を与え、このことが湖の差の大きな要因として考えられるが、それ以外に土星の公転軌道の扁平も深く関わっている可能性がこのほど指摘された。

この説を発表したのは、カリフォルニア工科大学やジェット推進研究所などの研究機関に所属する研究者たちからなるチーム。論文は「ネーチャー・ジオサイエンス」誌オンライン版11月29日号に発表された。

2004年から土星を周回するカッシーニは、頻繁にタイタンへ接近し、極域のレーダー観測を行ってきた。その結果、北極域の湖の面積は南極域の20倍に達することがわかっており、部分的に溜まった湖や干上がったそれはおびただしい数に上ることも明らかになっている。(下・今年1月に公開された両極のレーダー地図。赤く縁取られたのが湖岸で、湖の総面積は北極域(左)のほうが圧倒的に広いのがわかる。)

            

研究者たちは当初、両極の地勢に何らかの根本的な違いが存在するのではと考えたが、そのようなものは何もないことがわかった。代わりに、季節の変化を主因と考えるようになった。土星は約30年弱で太陽を公転する…大雑把に言えば夏と冬が15年周期で入れ替わる。この変化はメタンが雨で降ったり、或いは蒸発したりという循環運動を強く支配すると考えられ、北極域でメタン湖が多いことの説明も容易そうである。

しかし、研究チームのオード・アーロンソン氏は、この考え方には難点があるという。この場合、蒸発に伴う水位減少は年間1メートルに達することなるというのだが、湖の深さは平均数百メートルはあると見積もられており、これでは15年周期で湖を満水にしたり干上げたりすることはできない。加えて、季節変化だけでは干上がった湖の数の違いを説明することができない。北極域には南極域と比べて、干上がった湖が3倍、少しだけ溜まったそれが7倍もあるのである。

アーロンソン氏は言う。「季節変化は全球的なメタン輸送に関わっていることでしょうが、それが全てではありません」と続け、より有効な説明として、土星の公転軌道の楕円性があるという。

これはちょうど、地球にも見られる長期的な寒暖変化と同じ理屈である。地球にはミランコビッチサイクルのような万年スパンの温暖期と寒冷期の変化があるが、これは公転軌道が楕円であること、しかも長期的な軌道変化があるため、太陽との距離が季節や時代によってかなり違ったものになることを反映したものである。

土星の場合、南半球が夏の時、北半球が夏の時に比べて12%も太陽に近い。その結果、南半球の夏は短いが陽射しが強いということになり(太陽に近いほど軌道速度が速いため、それゆえその期間が短い)、北半球の夏は穏やかな光線で長く続くということになる。

そうしてこの不均衡が、メタンが北極域に集中し、結果として湖がたくさんある理由なのではないかと研究チームは主張しているのである。詳しくはこちらへ【Cassini 11.30】

…タイタンの両極はいまちょうど季節が入れ替わる頃で、北半球は春、南半球は秋となっています。カッシーニの観測では、南極域に、1〜2年内に新たに出現したメタン溜まりも見つかっており(詳細)、これは雨のせいではないかと考えられています。

要は湖の形成には、短期的には季節変動の影響は大きいが、しかし長期的には軌道の効果が蓄積し、北極域にメタンが集中=湖形成が活発、というのが今回の主張。メタンの湖を巡っては、「大気中からの降雨では足りない。地下にメタンリザーバーがあるのではないか」という説もあります。実はかなり複雑な循環系があるのかも知れませんね。面白いです^^

★追加情報 (11.24. 2009)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星のオーロラ。集中観測が10月5日から8日までの間に行われ、この間の通算観測時間81時間で取得された472フレームの一枚で、これらを繋げた動画も作成され、公開されている。

            

カッシーニによるオーロラ観測は、以前も紫外および赤外線波長で行われたことがある。だが今回は、可視光波長によるもの。フレームあたりの露出時間は2〜3分間とのこと。

オーロラは太陽風が惑星の磁場に捕らえられ、極域に流れ込み、それが大気上層で分子を励起し生じる発光現象。地球のそれが高度100キロ〜500キロの範囲で生じるのに対し、土星のそれは1200キロの高度で発生している。これは地球大気(分子量の大きい窒素や酸素)に対し、最も軽い水素が土星大気の主たる成分であり、それゆえ高空まで広がっていることによる。

画像はもともと白黒で取得されているが、オーロラは際だつようにオレンジで着色されていることに注意。また、観測中の宇宙線ノイズやレンズフレア、ドット落ちなどは取り除いてある。

大きいサイズや動画、詳細はこちらこちらへ【Cassini 11.24】

★追加情報 (11.22. 2009)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」は、21日、衛星「エンケラドス」への通算8回目のフライバイ観測に成功した。

今回のフライバイは、今月2日に引き続いて行われたもの。最接近距離は2日のそれよりも10倍遠いものであったが、南極域に走る大地溝帯の1本の拡大画像が撮影された。取得された各種データの解析が今後数週間かけて行われる見込み。(下・今回のフライバイで取得された一枚。)

            

詳しくはこちらへ【Cassini 11.21】

…プルームの出現箇所がはっきりわかるような画像はこれが初めてでは!?スゴイ。そして美しい…

★追加情報 (11.13. 2009)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が今年9月22日に撮影した土星のBリング。リング面の上に漂う霧のようなものは、氷の微粒子の集合であり、いわゆる「スポーク」と呼ばれるものである。

            

微粒子が帯電すると、磁場との作用でそれらがリング面上に浮かび上がると考えられている。太陽光が当たらないほうが帯電しやすいようであり、今年の夏に迎えた昼夜平分点ではリング面は殆ど影に入ったため、大きいスポークが出現。しかも横から射す太陽光がそれをはっきり浮かび上がらせたため、上のような画像が得られることとなった。

スポークは1980年代初期のボイジャー探査機で発見されたもの。当時の土星は昼夜平分点に近い状態で、スポークが大きく発達していたと考えられる。その動き(こちら)から土星の磁場が関わっていそうなことはわかっているが、成因について確実なことはわかっていない。

カッシーニは2004年夏に周回軌道へ入ったが、スポークになかなか出くわさず、その初撮影に成功したのは2005年になってからのことだった。大きいサイズはこちらへ【Cassini 11.13】

★追加情報 (11.04. 2009)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」は2日、衛星「エンケラドス」への近接観測に成功、3日にデータを送信してきた。下は画像の一枚で、南極域から吹き上げるプルームが美しく輝いている。

            

カッシーニはこのプルームに真横から突っ込む形で飛び込み、抜けていった。今回取得されたデータをこれまでに取得されたデータと比較したりすることで、そのより詳しい特徴が明らかになるものと期待されている。詳しくはこちらへ【NASA 11.03】

★追加情報 (10.31. 2009)

11月2日、NASAの土星周回探査機「カッシーニ」は、衛星「エンケラドス」への7回目のフライバイ観測を実行する。今回のそれでは、最接近時に南極点上空約103キロまで接近する。

過去のフライバイ観測では、表面からわずか25キロの至近距離を通過したことがあったが(08年10月)、南極域から高く吹き上げられる噴出物(プルーム)の真上を通過することで、その懐深く飛び込むのは今回が初めてである。

(右の図で、水色と紫のラインは08年10月に行われた2回のフライバイの軌跡を示したもの。水色の方は25キロの至近距離まで接近したものであったが、プルームの真上を通過する軌道ではなかった。一方、赤色は、プレスリリースを参考に、多分こんな感じじゃないかなと思いながら管理人が書き加えたもの。カッシーニはエンケラドスの赤道面にほぼ並行にアプローチし、南極域の真上を抜けていくそうです。こうしてみると相当深い領域を通過していくのがわかりますね。)

また、この3週間後の21日には再びフライバイ観測が行われる。今度は南極点上空約1600キロを通過するが、このフライバイでは噴出口を有する大地溝帯の一本「Baghad Sulcus」の精密スキャニングが行われる。(下・南極域の地図。キャプション入りの大きいサイズはこちら



詳しくはこちらへ【Cassini】

★追加情報 (10.23. 2009)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」による、衛星「イアペタス」の遠距離ショット。今年9月24日、370万キロの距離からナローアングルカメラで撮影された。

            

イアペタスはその半分ごとに、表面の状態が全く異なっている。この成因はずっと謎であったが、最近土星に巨大なダストリングの存在が明らかになり、これがイアペタスの表面の違いを生み出している可能性が高いことが指摘されている(詳しくはこのページ追加情報 (10.07. 2009)へ)。大きいサイズはこちらへ【Cassini 10.23】

★追加情報 (10.19. 2009)

下は、NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、土星の衛星「タイタン」。撮影されたのは今年8月25日、ちょうど昼夜平分点を過ぎた直後のもの。

            

画像は赤、緑、青のフィルターを通して撮影されたものを合成して得られた天然色。タイタンはオレンジ色の、のっぺりした大気をまとった惑星であるが、この画像はよく見ると何か違う。そう、上半球と下半球で微妙に濃さが違うのだ…上半球はわずかに暗く、下半球はわずかに明い。ちなみに上が北半球。

タイタンの大気は季節の変動を受けている。これまでの研究で、冬半球は高高度までスモッグがただよい、短波長光(紫外・青系)を暗く長波長光(赤外)を明るくしている。この暗みと明るみのチェンジは、前回の昼夜平分点でも観測された。それは平分点を挟む1〜2年間で発生した。研究者たちはこのフリップフロップ(シーソーのように2つの状態がいったりきたり)のメカニズムを説き明かすべく、今回の変化もモニターを続けている。大きいサイズはこちらへ【Cassini 10.16】

…これまでは北半球が冬でした。カッシーニのレーダー観測では北極域にたくさんの湖地形が確認されており、これに対して南極域では数えるほどのそれしか認められていません。また、メタンの雲の量も北極域が多かったことから、冬半球では雲・雨・湖のメタン循環系がぐるぐる出来上がっているのではないかと考える研究者もいるようです。

★追加情報 (10.07. 2009)

土星の、新しい輪が発見された。それは今までだれも考えつかなかったような場所に、想像を超える大きさで広がるものだった。

これは、NASAのスピッツア赤外線宇宙望遠鏡による観測で見つかった。よく知られている土星系より遙か遠方にあり、しかも土星のリング面より27度傾いている。リング粒子は土星本体から600万キロのところから1200万キロのところまで広がっている。土星の衛星で最も遠方にあるのが「フェーベ」であるが、この衛星は発見されたリング内にあり、これがリング粒子の供給源と考えられている。

このリングは厚みもあり、それは土星の直径の20倍に達する。

「もし土星の上に立つことができたとして、このリングが見えるのであれば、それは満月2個分の幅があるでしょうね」と語るのは、バージニア大学の天文学者アンネ・バービサー(Anne Verbiscer)氏。この発見は「ネーチャー」誌に発表された。

ただしこのリングは非常に希薄。氷とダストの微粒子からできており、可視光で検出するのは困難。研究チームはフェーベの軌道付近にリングがあるのではないかとひらめき、スピッツア宇宙望遠鏡でサーベイを行ったのだった。その結果、その予感通り、リングがそこにあったのである(下)。

土星系では既に、リングと衛星が密接な関係を持っていることがわかっていた。研究チームはフェーベの表面から飛び出した粒子によってリングがあるのではないかと思ったのであった。

            

この発見はまた、衛星「イアペタス」の奇妙な表面状態のナゾを解くカギになるかも知れない。イアペタスの表面は半分が明るく、半分が暗い。イアペタスは新リングの公転方向と逆行しているのだが、リングの粒子がイアペタスの表面に、あたかも虫が車のフロントガラスにぶつかるように貼りつくことで、このような表面状態の違いができたのではないかと研究チームは考えている。

            

上はそれをわかりやすく表した模式図。長年の歴史の中で、フェーベにぶつかる微小隕石などの力で表面物質が飛び出し、新リングが形成された。その内縁のすぐ内側を回るイアペタスにダストが貼りついたと考えられる。ちなみに土星系全体では、フェーベが逆行衛星であり、リング粒子もそれに連れて逆行している。

詳しくはこちらへ【Spitzer 10.06】

★追加情報 (09.21. 2009)

先月11日、土星は昼夜平分(いわゆる春分、秋分)を迎えた。このとき太陽光は、リング面に水平に射すことになり、地球ではリングが消失したように見える。土星周回探査機「カッシーニ」は当初予定のミッションはすでに終え、現在は延長ミッションとして観測を継続しているが、このタイミングに居合わせたのはとても幸運なことだった。

(下は12日に撮影されたもの。リングが輝いて見えるが、これは強調処理を施したためで、処理前の画像ではリングは殆ど確認できない。しかもリング左側は、土星本体の反射光を受けて光っている。)

             

というのもこの機会は、リングの立体構造を把握する絶好のチャンスだからである。リング面から飛び出した部分が長い影を作るからで、それを調べれば垂直高さもわかる。

リングは10万キロを超える幅を持っているが、その厚みは10メートルもないと考えられてきた。ところが観測で取得されたデータより、数キロの高さに達する構造も存在することが明らかになったという。また、リング面は考えられていた以上に活発で、微小隕石などの衝突もしょっちゅう起こっていることがわかったという。

例えば下の2枚。左の写真では中央部に、リングアークとは平行をなしていない一筋の線が見え、右の写真では中央右隅に、シミのような細い線が見えているが、これらは隕石のような物体が高速で飛び込んで出来た筋だと考えられている。

            

詳しい分析によると、左の筋は長さが約5000キロ、右のそれは約200キロに達する。だいたい、1メートル程度の物体が秒速数十キロの速度で突っ込み、リングダストが舞い上がって出来たものだと推測されている(詳細はこちら)。

下は、プロペラ型をした構造体。リング面から盛り上がったように見えるそれの長さは130キロで、落ちた影の長さは350キロ。

               

これは、リング内に埋もれた「ムーンレット」(微衛星)と呼ばれる微小な衛星によるものと考えられている。ムーンレットは大きさが高々数百メートルのもので、それそのものは解像されないが、その引力の作用でダストをまとい、それが写真に写るサイズになる。このようなムーンレットは既に多く見つかっているが、このような垂直構造が確認されたのははじめて。分析により、このムーンレット本体は長さ400メートル程度のもので、飛び出した高さは200メートルに達するとみられている(詳しくはこちらへ)。

下は、Aリングの「キーラーのすき間」の中を走る衛星「ダフニス」(大きさ8キロ)の重力の影響で乱されるリング。キーラーのすき間はとても細いが、ダフニスの影響でリングダストが激しく乱れ、リング面から飛び出し、影を落としている。

             

ダフニスよりも外側のダストはダフニスよりも軌道速度が遅いため、ダフニスの後方(上方向)に、内側のダストは逆に速度が速いため、ダフニスの前方に乱れが出る。

過去にもダフニスによるこの現象は観測されているが、この写真でダストは最も高く飛び出しているという。影の長さは500キロといい、これより舞い上がったダストの高さは最大約4キロと算出されている。

詳しくはこちらへ【Cassini 09.21】

★追加情報 (08.20. 2009)

18日、土星周回探査機「カッシーニ」が地球フライバイを行ってちょうど10年を迎えた。

カッシーニは1997年10月打ち上げられ、内惑星空間域を飛行しながら金星に2回、地球に1回フライバイを行い加速、その後、木星にフライバイし、土星へと到達した。これはカッシーニが目方が6トンに達する重量級探査機であるため、土星まで飛ばすための増速に惑星フライバイを利用する他なかったためである。(下・軌道図。大きいサイズはこちらへ)

            

カッシーニは98年4月26日と99年6月24日に金星フライバイを行い、99年8月18日、地球フライバイを行って更に加速された。内惑星系へ別れを告げたこの時の距離は、地球から1171kmだった(下は最接近前日に撮影された月)

            

詳しくはこちらへ【NASA 08.18】

★追加情報 (08.15. 2009)

11日午前9時15分、土星は昼夜平分を迎えた。これはいわゆる春分/秋分の瞬間であり、土星では約15年おきに訪れる。土星周回探査機「カッシーニ」はこれを記念し、翌12日に土星本体およびリング撮像を行い、地球に送信してきた。

リングにはほぼ並行に太陽光が射すため、リングそのものの反射光や太陽の直接光を受けることなくリングを撮像できる。下はその一枚で、透かして背景の恒星が沢山見えており、リングの薄さが実感できる。

              

その他の画像はこちらへ【Ciclops 08.13】

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が先月26日に撮影したリング。リング面にポツンと小さい玉みたいなものが見え、その影が細長く伸びているのがわかるが、これはいわゆる「ムーンレット」(微衛星)。差し渡し数百メートルかそこらの岩石体であり、衛星と言うには小さすぎる物体。メインリングの中にはこのようなムーンレットが無数に存在することがわかっている。

             

このムーンレットはその影の長さから、約200メートルほどの大きさと見積もられている。これはリング面より外に飛び出しているのだが、もしこれがリング面に埋もれていたら、約400メートルほどの大きさになっていたに違いない。

このような光景は、昼夜平分点前後でしか得られない貴重なもの。リングの構造を知る上で貴重な情報のひとつとなる。詳しくはこちらへ【Cassini 08.07】

…ちなみに以前、発見・公開されたムーンレットはプロペラの形をしたものでしたが(こちら)、これはAリング内部のムーンレット(=本体は直接見えない)がその微少重力で寄せ集めたダストで出来上がったものでした。今回発見されたムーンレットはBリングの上面にあるもので、Bリングの密度はAリングよりも高いため、ダストがプロペラのような形に分布しにくいのではないかと考えられているようです。

★追加情報 (08.13. 2009)

下は、ハワイのジェミニ北望遠鏡で今年5月7日に撮影された土星と、その衛星タイタン。光学補正システムを使用して取得された近赤外線波長データを視覚化したもので、地上での可視光観測では見ることのできない特徴なども浮かび上がっている。例えば輪の外側にFリングがかすかに見えているが、これはそもそも、1979年のパイオニア11号探査機の接近によって発見されたもので、通常の地上望遠鏡観測では見ることができない。

              

ところでハワイ大学の研究チームは、ジェミニ北望遠鏡でタイタン大気の継続観測を過去8年間続けているが、昨年、タイタンの低緯度域(赤道付近)で大規模な雲の形成が起こっているのに居合わせた。これまでタイタンの中緯度および高緯度地域での雲形成はよく観測されてきたが、赤道地帯でのそれが認められたのは初めてのことである。

(下・2008年4月14日に撮影されたタイタン。波長2.12ミクロンの近赤外線による画像で、中央の明るく輝いている部分が赤道域で発生した雲。)

              

タイタンではメタンの循環が知られている。2005年のホイヘンス着陸機による観測では、明らかに液体メタンによって形成されたと見られる川や谷、湖沼跡が見出されているし、カッシーニ探査機のレーダー観測でもそのような地形が無数に認められている。

ちなみにタイタン地表はマイナス180℃近い世界であるので、地球のような水の循環はない。代わりにこの温度ではメタンやエタンといった炭化水素が液体で存在しうる。大気中の雲もメタンの雲であり、これが雨となって地表に降り注いでいると考えられる。

ところがその雲は、中緯度や高緯度では頻繁に見られるのだが、赤道地帯に認められたことがなかった。だがホイヘンスの観測では低緯度にも液体により形成されたと見られる地形が認められ、このことは、赤道地帯は非常に乾燥しているとするそれまでの理論モデルと矛盾するものだった。したがって、赤道地帯の地形は、地下からの液体メタンの侵出によるものではないかと考えられたりしてきた。

研究チームがこの雲を観測したのは2008年4月。この時、まず中緯度の南緯30度付近に雲が生じ、その数日後、赤道と南極付近に雲が出現したという。このようなタイミングのよさは、地球でもテレコネクションとして知られる現象がタイタン大気でも起こっていることを強く示唆していると考えられるという。

今回の発見が、タイタン大気の運動を考える上で貴重なものとなるのは間違いない。ちなみに土星周回探査機「カッシーニ」は目下、6週間に一度しかタイタンに接近しない。そのため地上からの望遠鏡観測の重要性は変わらない。詳しくはこちらへ【Gemini Observatory 08.12】

★追加情報 (08.10. 2009)

下は、土星のAリングにある「エンケのすき間」の間を走る衛星「パン」。土星は現在、昼夜平分近くにあり、その赤道ではほぼ天頂に太陽を見る。つまりその細い輪には並行に太陽光が射すことになり、下のように衛星の影が輪の上に落ちる現象を見ることができる。

もちろん、この現象を地球から見ることはできない。画像は、土星周回探査機「カッシーニ」によって今年6月28日に撮影されたものである。

            

土星は今月11日、昼夜平分を迎える。これは言うなら春分/秋分の日に対応し、土星では15年おきに迎える。画像のような幻想的な光景は昼夜平分の前後数ヶ月しか見ることができない、貴重なものである。実際、下は今年3月に撮影されたパンであるが、影の伸び方はまだ小さい。

            

加えてこの時には、リング粒子の影から、その垂直構造も露わになることが多い。カッシーニは、その情報を得るにちょうどよいタイミングで居合わせたことになる。

詳しくはこちらへ【Cassini 08.03】

★追加情報 (08.03. 2009)

英オックスフォード大学および米ルイビル大学の合同研究チームは、土星の大気運動および周回探査機「カッシーニ」で得られたデータを基に土星の運動を検討した結果、その自転周期として、これまで考えられていたよりも5分ほど短い値を導き出したことを明らかにした。

論文が雑誌「ネーチャー」に記載された。

土星や木星といったガス惑星は岩石惑星と異なり、自転周期を求めるのが難しい。有力な方法として磁場の変動周期から自転を推測する方法があるが、木星と異なり土星の磁場軸は自転軸と一致しているため、外部からその変動を検出するのが困難となっている。

これまで知られている自転周期は10時間39分であるが、これは惑星探査機「ボイジャー」が土星に接近した際に観測された惑星内部からの電波放射の周期を基に算出されたものであった。

合同研究チームは、土星表面のアンモニア雲の運動、そしてカッシーニの赤外線観測で得られた大気内部のガス運動のデータを基に、その3次元運動を明らかにすることで、土星の自転周期を割り出したという。

詳しくはこちらへ【Univ. of Oxford 07.30】

★追加情報 (06.25. 2009)

土星の衛星「エンケラドス」の南極域からはアイスダストが吹き出していることが知られているが、この氷片中にナトリウム塩が検出された。土星周回探査機「カッシーニ」の取得したデータを精査していて判明したもので、ナトリウム塩が検出されたのは初めてである。

このことは、エンケラドスの地下に液体の水があることを強く示唆している。論文が「ネーチャー」誌6月25日号に掲載された。

カッシーニは2005年、エンケラドス南極域から氷片ジェットが吹き出しているのを発見、ジェットの一部がEリングを構成していることが明らかとなった。カッシーニのコスミックダストアナライザーが、ナトリウム塩を検出した。

コスミックダストアナライザー分析チームは、液体の水がエンケラドスの地下にあるものと結論づけている。というのも、分析センサーにひっかかるほどの量は、水への溶解によって濃縮される他ないからである。

            

(上・ナトリウム塩の検出を基に、修正提案されている氷片噴出モデル。表面近くで地下水が激しくボイルし噴出するA案は、現実的でないと見られる。もしこのモデルであれば、地上でも検出できるほどのナトリウムが拡散しているはずだから。また、地下のもっと深いところでボイルし、すき間を通って外へ噴出しているB案も難しい。なぜならこの場合、水分の蒸発と共に塩が結晶化し、すき間が詰まってしまったり、表面では熱不足で充分な拡散ができないかもしれないので。C案は氷が昇華により拡散しているという考え。この場合、塩は太古の昔にそれが含まれた地層が形成され、ジェットとは別にその塩が外へ飛び出していると考えるが、この案もちょっと難しい。D、E案は地下の圧力岩盤釜の中でゆっくりと蒸発した水と共に外へ吹き出しているという案で、もっともありそうではあるが、確証はまだない。詳しくはこちらへ)

分析チームはまた、炭酸塩の存在を示唆するデータも検出しているとしている。これもまた、ナトリウム塩と合わせて、水の存在を示唆するものとなる。

一方、別の研究チームが、やはりネーチャー誌同号に、地上からの観測ではナトリウム塩は認められないとする論文を発表している。このチームもやはりエンケラドスのジェット中にそれを探し求めていたのだが、検出することができなかったのだという。カッシーニ・コスミックダストアナライザー分析チームとは相反する報告である。

カッシーニは今年11月、エンケラドスに2度のフライバイを行う。カッシーニ分析チームはこのフライバイ観測に期待を寄せている。詳しくはこちらへ【Cassini 06.24】

★追加情報 (06.11. 2009)

土星はまもなく、昼夜平分点(= Equinox, 春分、秋分)を迎える。現在、土星の赤道上で太陽をほぼ天頂にみる状態にあるが、これはつまり、輪にほぼ横から太陽光が射すことを意味している。幸運にも土星を周回する探査機「カッシーニ」がこのチャンスに居合わせ、過去には見ることのできなかった光景を撮影し続けている。

下は今年5月29日に撮影されたもので、キーラー・ギャップと、衛星「ダフニス」。まるでBB彈のような衛星ダフニスは直径8キロで、幅42キロのギャップの中を走っている。

            

ダフニスが輪の上に落とす影が印象的だが、それ以上に目を惹くのはその前後にさざ波のように立つ特徴。しかもこのさざ波が輪の上に落とす影が、リング面より飛び出した立体構造に迫るヒントになりうる。

影の長さから、構造はリングの厚さの150倍の高さに伸びていることがわかるという。詳しくはこちらへ【Cassini 06.11】

★追加情報 (05.15. 2009)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が昨年9月28日に撮影した、プレアデス星団・すばる。カッシーニは時々このようなターゲットを撮影し、カメラの性能チェックとキャリブレーションを行っています。

             

詳しくはこちらへ【photo: Cassini】

★追加情報 (04.14. 2009)

土星周回探査機「カッシーニ」によりこれまで行われてきた幾度ものフライバイにより、衛星「タイタン」の形状もだいぶ見えてきたようです。

最新の分析データに基づくと、タイタンはだいぶ潰れた形をしているようであるとのこと。

極端に例えて言えば、テニスボールを踏んだ際のいびつな形に近いという。テニスボールを真上から踏めば赤道周囲に対象に飛び出すが、タイタンの場合、それがやや非対称な場合に相当するという。土星の潮汐力の影響もあり、長軸は土星方向、短軸は極方向、そしてその2軸に垂直な(=進行方向を向いた)軸はそれらの中間の長さだという。

ここでもし仮に、地下にメタンの海があり、その分布が球に近いとしたら、極域でそれがメタン溜まりとして出現する可能性は高まる。そしてそれが、現在見る極域に集中したメタン湖を説明することにもなる。

詳しくはこちらへ【Spaceflight Now 04.12】

★追加情報 (03.13. 2009)

土星周回探査機「カッシーニ」は11日遅く、スラスターのバックアップへの切り替えを無事に完了した。NASAが発表した。

1997年の打ち上げ以来、約11年にわたって使われてきたスラスターは劣化が進んでいたため、バックアップへの切り替えが予定されていた。カッシーニには8個のスラスターが装着されており、姿勢制御や軌道変更を担っている。

詳しくはこちらへ【Cassini 03.12】

★追加情報 (02.26. 2009)

土星の衛星「タイタン」に広がる砂丘地帯の、その砂丘の“さざ波”の向きが全球的に描き出された。カッシーニ・レーダー観測チームが発表した。この結果は、地表付近の風の吹き方に関する重要な情報を提供する。

タイタンの表面には、広範囲に砂丘が広がっている。土星周回探査機「カッシーニ」はタイタンフライバイの度にレーダーで地表を観測、様々な特徴を明らかにしてきたが、今回の結果はその地道な観測データを合わせた結果、浮かび上がったものである。

その砂丘のさざ波であるが、概して西から東へと向いていることが明らかとなった(下・矢印の方向が砂丘の向き。大きいサイズ)。このことより、表面近くの風は東へと吹いていることがわかったが、これは今まで提唱されてきた循環モデルとは全く逆の事実であった。

            

(下は、赤道帯とその外側の境界付近の一枚で、上が北。黒い筋が砂丘で、西および北西から吹く風が合流して東に抜けている。)

                

「タイタンには雲が殆どないので、風がどちらに吹いているのかを把握するのは難しいものです。しかしこの砂丘の向きを追跡するやり方で、全球的な風のパターンをある程度詳しく知ることができました」と語るのは、カッシーニ・レーダー分析チームのラルフ・ローレンツ氏。

このような研究は、タイタン大気の運動を理解する上で重要な基礎データとなる上、将来のタイタン探査ミッション(バルーンといった飛行体を使用する)を設計する上でも貴重なものとなる。

ちなみに砂丘は炭化水素を成分とした砂粒と考えられている。砂丘は高地を囲むように覆っており、その標高を推測するための情報ともなる。赤道付近に集中し、かつ積層しているが、このことは乾燥しているために風による輸送が容易いことを示していると考えられる。一方、高緯度は液体炭化水素の湖があり、それ故“湿っている”ため、砂丘の形成には理想的ではないと考えられる。

詳しくはこちらへ【Cassini 02.26】

★追加情報 (02.20. 2009)

NASAと欧州宇宙機構(ESA)は先週ワシントンで会合を行い、将来の木星系および土星系探査ミッション実現へ向けた研究を更に煮詰めることを決定した。

NASAは昨年、次の外惑星探査候補として2つのミッションまで絞り込んでいた。ひとつは木星とその衛星「エウロパ」を探査する「エウロパ・オービター」、もうひとつは土星の衛星「タイタン」を探査する「タイタン・オービター」である。これらはその名の通り周回機(オービター)で衛星を周回しながらその調査を行うというものである。

一方、ESAは2007年に、独自の探査ミッションとして「ラプラス」および「タンデム」を最終候補に絞っていた。前者は木星系へ2機の探査機を飛ばし、ひとつは木星を周回、もうひとつは衛星「エウロパ」を周回、最終的には着陸を行うというものである。一方後者は土星の衛星「タイタン」の周回と着陸、および衛星「エンケラドス」の表面調査を行うというものであった。

NASAとESAは先週、相互のミッションを注意深く検討した結果、両者を合同した「エウロパ・ジュピター・システム・ミッション」(ESAで「ラプラス」と呼ばれたそれ)が技術的に最も実現性が高いことが認識された。しかし一方、ESAの太陽系研究グループは、このミッションと「タイタン・サターン・システム・ミッション」の科学的メリットは切り離せるものではないと結論、両ミッションの更なる研究を進めるよう提言を出し、NASAがそれに同意した。

NASAとESAの外惑星探査計画が合同で進むことになったわけだが、ただ、本格的な実行の前には、まだ幾つかの段階を踏み、実現性の研究が必要とされている。

ところで「エウロパ・ジュピター・システム・ミッション」とは、2機のオービターを用い、木星と4大衛星の調査を行うというもの。NASAとESAが1機ずつオービターを製作し、2020年に別々のロケットで打ち上げられる。両機は2026年に木星系へ到達し、最低3年の探査を行う予定である。その期間中、それぞれはエウロパとガニメデを1年近く周回し、存在可能性が指摘されている地下海洋の現実を探ることにもなっている。

            

一方「タイタン・サターン・システム・ミッション」はNASAのオービターとESAの着陸機および気球から成るミッションである。非常に野心的であり、技術的ハードルも高いため、NASAは更なる技術的研究を続けることになる。一方、ESA側では、土星系探査グループがタイタン探査ミッションを研究、再提出することになっている。詳しくはこちらへ【NASA 02.18】

…そもそも「タイタン・オービター」および「エウロパ・オービター」はNASA外惑星フラッグシップ級ミッションのファイナリストに残った国際ミッション。ESAも巻き込んだもので、この2つは昨年春に選定されました。一方、ESAは独自の探査ロードマップ「コスミック・ビジョン」で「タンデム」と「ラプラス」を計画しており、これまたNASAを巻き込んだ国際ミッションという位置づけでした。両セットはかなり被るため、結局、マージさせることで合意に達したということでしょう。(そういえばロシアがエウロパ着陸機をひっさげて参戦するという話があったようでしたがどうなったのか…?)

プレスリリースの感じから、木星系探査が最有力に残ったようですね。そもそもNASAは昨年末に最終チョイスを行うという話だったと思いますが、まだ決着がついていないということは、それだけ計画が巨大ということでしょうか。エウロパの海の有無も気になりますが、タイタンに浮かぶ気球も魅力的です^^ (管理人)

★追加情報 (01.30. 2009)

液化炭化水素の存在可能性が極めて高いとされる土星の衛星「タイタン」で、その雨によって出現したと見られる湖がはっきりと確認された。

これは土星周回探査機「カッシーニ」によるレーダー観測で明らかになったもの。カッシーニは2004年7月1日に土星周回軌道へ入って以降、数々の衛星に接近観測を繰り返し、重要な発見を続けている。タイタンのレーダー観測でも高い成果を挙げており、表面に液体炭化水素(メタン、エタンなど)湖の可能性が高い特徴を多数確認している。

「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」今月29日号に記載された論文によると、タイタンの南極域に、1年前には存在しなかった湖が出現していることが明らかになったという。南極域には無数の雲が漂っており、メタンの雨が降り注ぎ、湖を維持しているのではないかというモデルが考えられているが、今回の発見はそれを支持するより強い証拠となりそうである。

下の画像は、2004年7月3日と05年7月6日にそれぞれ取得された南極域のレーダー画像。04年ではまっさらな土地に、05年には無数の小さい湖らしき特徴が出現している。

           

画像で白く輝いて写っているのは低層の雲。このような雲からメタンの雨が降り注ぎ、湖を形成したことが考えられる。なお、既知の有名な湖“Ontario Lacus”の輝度がかなり異なっているが、これは観測時のイルミネーションの差から生じているものという。

一方、カッシーニに搭載の高解像度カメラによるタイタンの全球観測がほぼ終了した段階にあり、地図の最新版もリリースされている(詳細はこちらへ)。

            

このような観測により、湖地形にどれくらいの液体メタンが溜まっているか推測することができる。それによると液体メタンは南半球よりも北半球に多く、北半球は今後夏に向かうにつれ雲の出現も高まり、南半球よりも大量の降雨が発生するものと研究チームは予測している。

北半球には広大な湖が存在し、中にはスペリオル湖の5倍に達する広さのものもある。しかしこのような湖からのメタン蒸発量は少ないと考えられ、最近の研究では、降雨で失われた大気中メタンを補給するには不足すると指摘されている。今回リリースされた最新地図ではより正確なメタン量を見積もることができるが、仮に全部の湖地形が液体で満たされていたとしても足らないと、研究チームは指摘する。

このことは、やはり地下に液体メタンのリザーバーがある可能性を示唆していると言える。詳しくはこちらへ【Ciclops 01.29】

★追加情報 (12.16. 2008)

土星の衛星「タイタン」に着陸した探査機「ホイヘンス」が撮影した画像には、地球以外の天体の表面で観察された初めての液体かもしれないものが写っていた。

2005年に土星の衛星タイタンに着陸した後、ホイヘンスが撮影した写真の1枚に、同探査機の縁に一時的に形成されたメタンの滴と見られるものが写っていた(右側の写真の左下隅にある矢印部分)。研究者たちは、探査機から出た熱によって湿度の高い大気が立ちのぼり、探査機の冷たい縁の上で凝縮したものと考えている。(右・ホイヘンスの機体の縁で凝縮した滴(右側の画像の左下隅にある、長い矢印が示す箇所)。それ以外のしみ(短い矢印)は宇宙線によるノイズと判明した)

ホイヘンスが液体の形成に一役買ったとしても、このメタンの滴が、地球以外の天体の地表で直接検出された初めての液体であることに変わりはない。

タイタンには地球と同様に雲や湖、川が存在し、地球を除いて太陽系で唯一、液体が地表から蒸発し雨になって戻る天体だ。

科学誌『Icarus』に発表された論文の主執筆者で、アリゾナ州トゥーソンにあるアリゾナ大学に所属するErich Karkoschka氏は、「地球以外で最も興奮に満ちた世界がそこにある」と話す。

続きはこちらへ【Wired Vision 12.16】

★追加情報 (11.27. 2008)

土星の月(衛星)の1つであるエンケラドスでは、地表から水蒸気ジェットが超音速で噴き出している。この水蒸気ジェットの噴出口が、スポーツ競技場ほどの大きさの複数の穴であることが最新の研究で分かった。

            

エンケラドスの南極から水蒸気やちりが噴出しているという事実は、2005年に初めて発見された。その後、この噴出速度が時速約1600キロで、それぞれ160キロにわたる複数の裂け目(タイガーストライプ)から噴き出していることが確認されている。

今回の研究では、この裂け目に沿って並ぶ比較的小さな穴が、蒸気やちりの噴出源であることが明らかになった。「噴出のまとまりの中に個々のジェット噴射が存在していることが分かりつつある」と、研究チームメンバーであるコロラド大学ボルダー校のラリー・エスポジート氏は語る。

エンケラドスの表面は氷で覆われているが、その少し下には液体の水がたまっており、ノズルのような複雑な水路を抜けるうちに水蒸気となって飛び出しているのではないかと研究チームは推測している。

研究チームリーダーでNASAのジェット推進研究所の惑星科学者キャンディス・ハンセン氏は、「噴出源が液体の水であることを示す証拠がまた1つ得られた」と話す。

土星探査機カッシーニは、2005年と2007年にエンケラドスの付近を通過したとき、この衛星で起きている噴出によって背後から照らす星の光が暗くなっている様子をとらえた。このときのデータに基づいて、エンケラドスの地表から15キロ上空の地点における水蒸気ジェットの速度と密度が割り出され、そこからの噴出口のおおよそのサイズが算出されたのだ。

前出のエスポジート氏によると、「ジェットが裂け目の全域から湧き出ているのでないことは確かだ」という。ジェットの源は0.6平方キロメートルにすぎない小さな領域で、水蒸気の温度によってはさらに小規模な穴である可能性もあると研究チームは指摘している。

この衛星全体で放出されている水蒸気の量は毎秒およそ200キログラムにも上る。ざっと計算すると2〜3分毎にホテルのプール1つ分の水が噴き出していることになる。

一方、2005年に比べて2007年に観測された水の量は少なかったことも明らかになった。2007年当時、エンケラドスは土星の潮汐力で噴出口が大きくなるような地点に存在していたため、水量が減っていたのには「驚いた」とエスポジート氏は語っている。現実には想定とは異なる現象が起きているようだ。

NASAのハンセン氏によると、「既に理論物理学者たちはエンケラドスに関するモデルを改変し、今回の発見についても説明が付くような形にする方法を考え始めている」という。「仮説と実際の間でピンポンをするように研究の過程が前後するのはよくあることだ。観測データに基づいて仮説を立て、実証するためにさらに観測を実施し、仮説の正しい点と誤っていそうな点を見極めるのが科学の手法だ」と同氏は述べている。

続きはこちらへ。NASAのリリースはこちらへ。【ナショナルジオグラフィック 11.27】

…エンケラドスの噴出についてはいくつかモデルが提唱されていますが、昇華説はいよいよ難しくなってきたようですね。

★追加情報 (11.02. 2008)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」は10月31日、衛星「エンケラドス」へのフライバイ観測に成功、クローズアップ画像を含む観測データを送ってきた。このフライバイは同9日のフライバイに続くもので、最接近距離は197km。

9日のフライバイに比べると距離は約4倍と遠いが、今回は前回取得できなかった南極域噴出口のクローズアップを撮影することに成功した。

            

上は、「噴出口W」と符号の付けられた場所のクローズアップ(南極域全体地図はこちら)。その他、最新情報は運用チームブログへ【Cassini 11.01】

★追加情報 (10.10. 2008)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」によるエンケラドスフライバイは成功し、早くも最接近前後の画像が公開されています。

            

上には、ゲイザーの噴出が確認されている南極域の“タイガーストリップ”と呼ばれる地溝帯が写っています。その他の画像はこちらへ【NASA/JPL/Space Science Institute 10.10】

★追加情報 (10.06. 2008)

今年8月、土星周回探査機「カッシーニ」が衛星「エンケラドス」に地表から50kmの地点をすり抜ける飛行を成功させ、ダイナミカルな地表の撮影に成功したことは記憶に新しい。そのカッシーニが今月9日、再びエンケラドスへの近接飛行に挑む。

今回は前回の半分、わずか25kmの距離まで迫る。

なお、カッシーニは今月31日にもフライバイを予定しており、この時には196kmの距離を飛行する予定である。詳しくはこちらへ【Cassini 10.06】

★追加情報 (09.10. 2008)

土星の衛星「アンテ」および「メトネ」に、“アーク”(弧)の付随が確認された。これは土星周回探査機「カッシーニ」の画像を分析した結果、明らかになったもの。

アンテは2007年に発見されたもので、大きさは約2km。メトネは2004年に発見されたもので、大きさは約3km。共に「ミマス」と「エンケラドス」の間に存在し、ミマスと重力的共鳴関係にあると見られている。下画像、左上がアンテで右下がメトネ。視覚的にアークが確認されたのは初めてであり、同類の他の小衛星にもアークが存在する可能性を示唆してもいる。

             

アークは衛星に衝突した微小隕石によって飛び散らされた物質からなると推測されており、これがリングにならないのは、ミマスとの重力共鳴のためである。また、衛星は摂動によりアークの前後を行ったり来たりするものと考えられている。

さらに、土星のGリングに見られるアークと同様の力学系が成り立っているのではないかと画像分析チームのマシュー・ヘドマン氏は見ている。Gリングに見られるアークとよく似ているという。

ちなみに今年2月、高エネルギー粒子分布の分析から両衛星の軌道上に未知のリングもしくはアークの存在可能性が指摘されていたが(こちら)、それを直接確認したとも言える。詳しくはこちらへ【Cassini 09.05】

★追加情報 (08.12. 2008)

土星を周回しながら探査を続けているNASAの土星探査機「カッシーニ」は日本時間12日早朝、衛星「エンケラドス」への至近距離接近を実施、かつてないスペクタクルな画像および各種観測データの取得に成功した。

カッシーニは2004年に土星周回軌道に投入され、今日まで土星本体や数多くの衛星の観測を続けている。今回ターゲットとなったエンケラドスには既に4回接近観測を行っており、2回目となる2005年7月の接近では南極域の地溝帯から大量の氷細片噴出を確認、惑星科学界を中心に一躍脚光を浴びている。

カッシーニは今回、衛星の北極側から接近し、地表から50km足らずの地点を通過、その後、南極上空に抜けるコースを辿った。なお、今年3月にも同様の軌道を辿り観測を行っているが、その時は最接近直後にエンケラドスが土星の影に入ったため、可視光で南半球側のクローズアップを撮影することはできなかった。だが今回影にはいるのは最接近から36分を経過した後のため、それまでの間は可視光による画像の取得チャンスとなっていた。

右は、3月の軌道(E3)と今回の軌道(E4)を重ねて描いた図。前回に比べて今回の方が噴出域のより深いところを通過している。

下は、最接近後にダウンリンクされた画像の一枚。地表から1288kmの地点で取得されたもので、解像度は10メートル/ピクセル。(右の図から類推すると、南極域のちょうど真上から撮影した感じでしょうか。)

  

下は、距離1450kmからの撮影で、解像度は13メートル/ピクセル。(少し退いた分、全体の状態が把握できます…すごい構造ですね。)

            

エンケラドスの活発な地殻活動は南極域という狭い範囲に集中しているが、これもまた謎のひとつ。こうして取得されたデータ類は、そのメカニズムを考える上で貴重なものとなる。

カッシーニは今年10月にも2回のエンケラドスフライバイを予定しており、そのうち1回は今回の半分、約25kmの至近距離まで接近することになっている。その他の画像や詳細はこちらへ【Cassini 08.11】

★追加情報 (08.08. 2008)

土星周回探査機「カッシーニ」は今月11日、衛星「エンケラドス」の近接フライバイ観測を行う。カッシーニは最接近時、地表から約50km上空を通過するが、これは今年3月のフライバイ観測と同レベルの接近距離である。

              

カッシーニはエンケラドスの北極側からアプローチを開始し、南半球側へ抜けるコースを辿る。最接近は日本時間12日午前7時31分、ポイントは南緯28度・西経98度、高度は54kmが予定されている。このような接近観測はカッシーニの土星周回軌道投入から今年3月までに4回行われており、今回が5回目。2005年7月の2回目の観測では南極域からの大規模な氷粒子噴出が発見され、その後注目を浴びているのはよく知られている通りである。

今回の最接近に向けて、8日には軌道修正が行われる。

カッシーニは最接近後、搭載観測機器で南極域の集中観測を行う。解像度が7メートル/pixの画像が取得されるものと期待されている。これらデータは、噴出を研究する上で貴重な資料となるものと運用チームは期待している。詳しくはこちらへ【Cassini 08.07】

★追加情報 (07.31. 2008)

NASAの土星探査機「カッシーニ」による衛星「タイタン」の観測データを分析していた解析チームは、湖状の地形の中に液体が確かに溜まっていると断言できる強い確証を得た。論文が「ネーチャー」7月31日号に発表される。(下・想像図)

            

タイタンは土星最大の衛星で、組成95%が窒素からなるぶ厚い大気を有している。炭化水素の含有が高く、太陽光との作用でスモッグが発生し、大気全体に漂っているため、地表を可視光で見ることはできない。カッシーニは2004年の土星周回軌道投入より数えて40回以上フライバイを行い、レーダーで地表の観測を続けきた。

カッシーニが到着する前、タイタン地表の広範囲はメタンやエタンなどの炭化水素の液体で満たされた“海洋”に覆われていると考えられていた。しかしレーダー観測、それに2005年1月の着陸機「ホイヘンス」による観測で海洋の存在は否定された。一方代わりに“湖”のような地形の存在が多数確認されている。

今回の結論は、赤外線波長域での観測データを精査した結果、導き出されたもの。大気に漂う炭化水素のスモッグが邪魔をするが、それをうまくさっ引くことで、地表の要素だけを取り出すことに成功したという。

その結果、南極域に存在する広大な湖“Ontario Lacus”には液体エタンが湛えられていることがほぼ間違いないという。この湖はその名の通り、五大湖のひとつ「オンタリオ湖」とほぼ同程度の広さを有している。

(下が、“Ontario Lacus”。南極点のすぐ近くにあり、いかにも湖らしい。2005年6月の観測で発見されたもので、当初から液体炭化水素の湖の最有力候補と考えられてきた。詳しくはこちらへ)

               

タイタンの地表は温度が−190℃近くで気圧は約2気圧。この環境下ではエタンやメタンは気体でも液体でも存在する。詳しくはこちらへ【Cassini 07.30】

…昨年1月にも似たような発表が行われていますが(こちら)、今回は広大な湖のケースということと、より確固たる自信があるということでしょう。(管理人)

★追加情報 (05.30. 2008)

今月28日、土星周回探査機「カッシーニ」は衛星「タイタン」への44回目のフライバイ観測を行った。これは、当初予定されていた4年間のミッションでは最後のフライバイであったが、今後向こう2年間の延長ミッションが決定している。

延長ミッションは“Saturn Equinox Mission”(土星は今、ちょうど季節が入れ替わる時期)と呼ばれており、タイタン26回、エンケラドス7回、ディオネ、レア、ヘレーネに各1回ずつのフライバイが予定されている。詳しくはこちらへ【NASA 05.29】

★追加情報 (04.15. 2008)

NASAは、土星周回探査機「カッシーニ」の観測ミッションを2年延長する決定を正式に下した。

カッシーニ・ミッションは当初、今年7月に終了する予定となっていた。しかし、機体の状態も極めて良好であり、残存燃料も充分であることから、2年の追加ミッションが認められた。

同探査機は1997年10月15日に打ち上げられ、2004年6月に土星周回軌道へ投入、その後4年間にわたり観測を続けてきた。機体は10年以上宇宙空間にさらされているが、ごくマイナーな不具合以外は健全で、姿勢制御用の燃料も充分残っている。

これまで4年間の観測期間中、土星を62回周回。取得された画像は14万枚に達し、衛星「タイタン」へのフライバイ観測は43回、他の衛星へのフライバイは12回を数える。今回追加された2年の延長期間では、タイタンへのフライバイが26回、エンケラドスへ6回、ディオネ、レア、ヘレーネへそれぞれ1回ずつが予定されている。

                

これまでにも伝えられてきたように、エンケラドスでは大規模な氷片噴出が確認されており、タイタンには液化炭化水素の湖らしきものが無数に見つかっている。これらの姿により詳しく迫るデータが取得されるものと期待されている。

「観測計画を練った当初は、何を発見するのか本当にわかりませんでした…特にエンケラドスとタイタンにです」と語るのは、ジェット推進研究所のカッシーニ計画担当研究員の一人であるデニス・マトソン氏。「延長ツアーはこれらの新発見を受けたものであり、更に新たな発見をもたらす機会となるでしょう。」

詳しくはこちらへ【NASA 04.15】

★追加情報 (03.21. 2008)

土星の衛星「タイタン」の地下に、水とアンモニアを主成分とする層が存在する可能性が指摘された。「サイエンス」誌3月21日号に論文が記載された。

「タイタンの自転の変化が、その地下構造を知る手がかりとなっています」と語るのは、土星周回探査機「カッシーニ」のレーダー観測チームの一員で、論文筆頭著者のラルフ・ローレンツ氏。

観測チームは、カッシーニによって2005年10月から2007年5月の間に行われた19回のレーダー観測で取得されたイメージデータを利用した。1回のレーダー観測で取得される画像データは細長い帯であるが、それらの一部は対象が被っている。それを利用すると、その部分の年変化を見ることができる。

チームは観測初期の画像より、目標点として50ポイントを設定。それらを後に取得された画像中のものと比較すると、一部は動いていることが判明した。そのスケールは最大30kmに達するものであったという。

この大きな動きは、それまでのモデルでは説明できないもの。研究チームは、タイタンの地下に液体水とアンモニアの混合した層の存在を仮定すると、このような変動を説明できることを見出したという。地殻と深部が液体層で切り離されていることで、地表は動きやすくなる。(下・考えられる内部模式図。地下100kmのところに、液体層が存在するとされている)

                  

タイタンの地下にはこれまでにも、海が存在する可能性が指摘されてきた。今後、タイタンの自転変化を追うことで、本当に“海”が存在するか否か、よりはっきりしたことを知ることができるだろうとチームは期待している。詳しくはこちらこちらへ【Cassini 03.21】

★追加情報 (03.14. 2008)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」によるエンケラドスフライバイで取得された北半球。3枚の画像をつなげて作成されたものである。

           

下は、南半球。処理が施されていない生画像であるが、地形の特徴がよく見えている。

           

           

大きいサイズなど、詳しくはこちらへ。フライバイの詳細はこちらへ【CICLOPS 03.13】

★追加情報 (03.13. 2008)

土星周回探査機「カッシーニ」は13日、予定されていたエンケラドスフライバイを成功させ、データのダウンリンクも完了した。詳細は今後随時リリースされる予定とのことだが、一部の生画像は早くも公開され始めている。

                        北半球の一角。距離34435kmからの撮影
            

南半球側。距離12511kmからの撮影。南極域の“タイガーストリップ”も見えています。

            

  距離49612kmからの撮影。露出オーバーで背景の恒星が写ってます。

            

きちんとキャリブレートされた画像も後ほどリリースされる予定。詳細はこちらへ【Cassini 03.13】

★追加情報 (03.12. 2008)

日本時間13日午前、土星周回探査機「カッシーニ」が衛星「エンケラドス」にフライバイを行う。今回は最接近時、地表から約50kmを通過する予定。

            

フライバイシーケンスは12日午後0時45分(日本時間・以下同)に始まり、撮像やレーダー照射を含めた各種観測を開始。最接近は日本時間13日午前5時15分が予定されており、13日午前10時23分、終了する。この6分後、地球へ向けアンテナを向け、午前11時にダウンリンクを開始、ゴールドストーン局で9時間かけて受信する。

カッシーニは北極側からアプローチし、最接近後、エンケラドスの南半球側にまわりこみ、離脱しながら南極域の集中観測を行う。上の図からもわかるように、南極域から噴出するガイザーのデータ収集は大いに期待されており、飛行経路もガイザーの直撃によるダメージがほとんどないと見込まれるものになっている。

また、エンケラドスの北極域がカッシーニによって撮影されるのはこれが初めてである。詳しくはこちらへ【Cassini 03.12】

★追加情報 (03.07. 2008)

今月12日、土星周回探査機「カッシーニ」が、いま最も注目を集める衛星のひとつ「エンケラドス」に近接フライバイを行う。

今回の接近はカッシーニ計画で当初予定されていた4年間の探査期間中、最も距離が近いもの。エンケラドスに対し予定されていた4度のフライバイの最後であるが、同時に、今年から始まる延長ミッションで新たに立案された4度のフライバイの最初ともなる。

最接近時、探査機は地表から僅か50kmの地点を秒速14kmで通過する。今回のフライバイでは各種科学観測に加え、今年8月と10月に予定されているフライバイに備えるデータの取得が目標とされている。

今回の接近は、2005年7月、その南極域に大規模な噴出が確認されて以来の近接飛行でもある。カッシーニは北半球側から接近し(下画像・上段)、赤道を横切り、南半球側へと抜けていく(下画像・下段)。ただし最接近時は土星による食のため、可視光による撮像は不可能になる見込み。

            

下・離れつつあるカッシーニから見たエンケラドス。南極域の集中観測が行われる。

           

アプローチの際、カッシーニは北極側を1ピクセル200メートルの高解像度で撮像する。一方、エンケラドスを離れていく際、同700メートルの解像度撮影を行う。詳しくはこちらこちらへ【Cassini 03.06】

土星の衛星「レア」に、淡いものではあるが「輪」がある可能性が出てきた。土星周回探査機「カッシーニ」の取得したデータを分析していて判明した。これが確かなら、衛星が輪を持つ初めてのケースとなる。

これは、2005年11月にカッシーニが行ったフライバイ観測で取得された各種データを基にしたもの。カッシーニは展開するダスト粒子を直接検出したほか、レアを通過する前後で電子数のドロップを検出しており、これはリング構造の存在を示唆している。「恒星の周りの惑星や小惑星の持つ衛星の発見と似ているように、今回の発見も新しいフィールドを切り開いたと言えます」と語るのは、分析チームの一員であるNorbert Krupp氏。

(下は想像図。レアの周辺にダストが広がっている。極めて淡いため可視光での撮影はまだなされていない。イラストは輪を強調して描かれている。)

            

似たような手法で発見された輪がある。それは天王星のケースで、1977年、惑星本体による恒星の掩蔽を観測中、その前後で恒星の減光が確認され、輪の存在が認められた。

レアは土星でタイタンに次ぐ2番目に大きい衛星で、直径約1500km。分析チームの数値計算モデルによると、希薄なダスト円盤が広く取り囲んでおり、レアの中心から半径の8倍程度の所に密度の高い“輪”が存在すると見られている。詳しくはこちらへ【NASA 03.06】

★追加情報 (02.25. 2008)

土星に、まだ直接確認されていない輪が存在する可能性が出てきた。ドイツ・マックスプランク研究所のエリアス・ルソス氏の研究チームが、土星周回探査機「カッシーニ」の得た高エネルギー粒子分布に関するデータを分析していて気づいたという。

カッシーニは土星近傍でほぼ連続した高エネルギー電子流を検出していたが、ストリームの2ヶ所で不自然な途切れが発生。これがちょうど、衛星「メトネ」(Methone)と「アンテ」(Anthe)の軌道付近で生じていることを研究チームは突き止めたという。ちなみに「メトネ」は2004年に発見されたもので、大きさは約3km。一方の「アンテ」は2007年に発見されたもので、大きさは約2km。共に「ミマス」と「エンケラドス」の間に存在する(下・「メトネ」が見えている)。

             

「このことは、最も小さい類の衛星ですら、ダスト源となりうることを示しています」とルソス氏は言う。衛星が高エネルギー粒子を吸収することは知られているが、しかし、検出されたギャップから推定される吸収源の幅は1000ないし3000kmに達するという。小衛星の存在だけでこの説明は無理であり、輪、もしくは弧(アーク)の存在が考えられるという。構成粒子は衛星表面から飛び散ったダストである可能性が指摘されている。

ダストが飛び散る過程としては、隕石が衛星の表面を叩き、舞い上がらせたことが最もあり得るものだとしている。同様のプロセスが木星の衛星・リング系でも考えられているからだ。実際、土星系では衛星「ヤヌス」や「エピメテウス」、「パレーネ」を起源とする同様の輪が2006年に検出されている(下)。

             

ただ妙なのは、パレーネなどに付随するリングは見えるのに、メトネやアテネのそれはなぜ見えないのかということである。このことは、輪(ないしアーク)を構成する物質の違いが原因ではないかとルソス氏は語るが、正確なところは未だわからないという。

ルソス氏は昨年、Gリングの成因について新説を提唱するなど土星リング系の研究を精力的に行っている。今回の論文は「イカルス」誌2月号に記載されている。詳しくはこちらへ【Cassini 02.19】

★追加情報 (02.15. 2008)

土星の衛星「タイタン」が、地球に存在する全ての原油ならびに天然ガスを遙かに上回る液化炭化水素を有している可能性が指摘された。

これは、土星周回探査機「カッシーニ」でこれまでに取得されたデータから逆算して明らかになったもの。カッシーニ・レーダー分析チームのラルフ・ローレンツ氏の分析チームが算出したもので、「ジオフィジカル・リサーチ」誌レターズ1月29日号に論文が記載されている。

「タイタンは炭化物質で覆われています…まさに巨大有機化学工場です。この巨大炭素貯蔵はタイタンの地質学と気候の歴史を開く重要な窓です」とローレンツ氏は言う。(右・想像図)

タイタンの地表気温は−179℃という極寒であり、地球とは全く異なる。そこでは水の代わりにメタンやエタンといった炭化水素が液体で存在し、“ソーリン”が丘陵を形作ったと考えられている。ソーリンとは有機高分子の混合体のことで、1979年にカール・セーガンが作った造語である。

カッシーニはこれまでのフライバイで約20%のレーダーマッピングを終え、既に数百もの湖が確認されている。液体炭化水素を湛えているとみられるものも多く、それらの総和は地球上の原油や天然ガスを凌ぐものであるようだ。

(左下・今年2月8日に撮影されたタイタン…大気全体に漂うエアロゾルのため直接地表を見ることはできない。右下・北極域のレーダーエコーデータから合成された地表。紺〜黒い部分はエコーの特徴から湖とされる部分。面積がスペリオル湖を上回るものも認められている。)

            

地球上に確認されている天然ガスの埋蔵量は1300億トンと推定されており、それは全米の年間生活消費量の300倍に達するものである。だがタイタンでは、湖の各々が、それに匹敵しうる量を湛えているようなのである。

「これは北極域に広がる湖に関して推算したものです。南極域でも恐らく似たような状況でしょうが、正確なところはわかりません」とローレンツ氏は語る。カッシーニは南極域をまだ1回しかレーダー走査しておらず、2つの湖しか見つかっていない。一方、北極域には沢山の湖が確認されている。

なお、推測には湖の深度が重要な要素になるが、これは地球で見られる特徴を参考にしたという。例えば、地球上では湖の深さは、周辺山地の標高の10分の1に満たないといったものである。「いくつかの湖は10メートルを超える深さです。というのも、レーダーエコーが真っ黒だからです。もし浅いのなら底が見えるはずですが、それが見えないのです」と氏は続ける。

詳しくはこちらへ【Cassini 02.13】

★追加情報 (02.07. 2008)

2005年に発見されて以来、惑星科学者の注目を集める土星の衛星「エンケラドス」。その噴出メカニズムについて「ネーチャー」誌今月7日号に新説が記載された。

エンケラドスの南極域における大規模な氷粒放出のメカニズムについては、既にいくつかの仮説が発表されている。エンケラドスは自身の直径の3倍もの高空まで氷粒を吹き上げ、しかもそれをほぼ恒常的に続けている。「カッシーニが水蒸気ガイザー(間欠泉)を発見してから、水蒸気そして氷がどこからやってくるのかずっと考えさせられてきました。そして今、水はたぶん地下にあると言い切ることができます。」と語るのは、カッシーニ・コスミックダスト分析器の解析チームの一員であるユルゲン・シュミット氏。

間欠泉から吹き出す膨大な量の氷粒とその安定した生成は高温を必要としており、その温度は0℃に達すると彼らは考えている。恐らく地下湖が存在し、それはちょうど地球の南極・ボストーク基地の地下深くにある液体水湖に似たようなもの。その蒸発に伴う水蒸気で氷粒が成長し、地表の裂け目から吹き出しているとしている。

0℃というと氷(固体)と水(液体)と水蒸気(気体)が共存する、我々の日常では冷たい温度だが、そもそもが−100℃をうんと下回る環境では遙かに“高温”。彼らのモデルによると、地下水が蒸発し、その膨張による温度低下で氷粒が生じる。その粒は成長し、秒速300〜500mという超音速で運動する。だが殆どの氷片は、エンケラドスの脱出速度である秒速240mを超えることはできない。

というのも、噴出物がクレバスを吹き抜ける際、その壁にあたり速度を失うからである。だが水蒸気は壁に張り付いた氷片を巻き上げ、吹き上げもする。そのような相互作用を行いながらついには外空間へ抜けていく。しかし大半の氷片は脱出速度に到達していないため、やがてエンケラドス表面に降下してしまう。(下・水蒸気が高速でクラックを噴き抜け、氷粒もそれに乗って上昇する)

               

エンケラドスの重力を振り切りEリングの構成物質として漂うのは、全体の僅か10%たらずと見られている。

「もし温度が低すぎたら蒸気密度が小さすぎ、いま見るような大量の氷片噴出はなかったはずです。それ故、氷点(0℃)付近の温度に違いないと考えています。」とシュミット氏は述べる。

これまでにも、水蒸気は氷の中に閉じこめられていたものとするモデルや、水が昇華して生じた水蒸気とするモデルなどが提唱されている。だがこれでは今見る、時間スケールの長い活動を説明することができないと主張している。

今年3月には、カッシーニによるエンケラドスフライバイ観測が予定されている。最接近では地表からわずか50kmに迫り、噴出地帯では上空200kmを通過することになっている。探査機はこの時、噴出物の直接観測を行うため、得られたデータはより正確なメカニズムを描くためにも重要なものとなるに違いない。詳しくはこちらへ【Cassini 02.07】

★追加情報 (02.05. 2008)

土星の衛星「エンケラドス」が外空間へまき散らす“ゴミ”を、そこから10万キロも内側の「Aリング」が“掃除”していることが明らかとなった。

これは、土星周回探査機「カッシーニ」による観測で判明したもの。「土星のAリングとエンケラドスは10万キロも隔てているのに、両者の間に物理的コネクションがあるのです」と語るのは、NASAゴダード宇宙センター所属で論文筆頭著者のウィリアム・ファーレル氏。「カッシーニ以前には、両者は互いに無縁の物体として認知されていましたが、実はエンケラドスが吹き上げる物質の一部がAリングの外縁に運ばれていたのです。」

論文は「ジオフィジカルリサーチ」誌のレターズ1月23日号に記載されている。(下は土星系の模式図。Aリングの遙か外側にエンケラドスがある)

            

エンケラドスからは恒常的に水氷粉が噴出していることが知られている。この細かい水氷は、エンケラドスの軌道を中心にEリングを形成している(下・エンケラドスからの噴出もよく見えている)。

            

ところで、土星の周囲には「リングカレント」(環状電流)の存在が認められている。プラズマ(高温イオンと電子)は磁場に捉えられ磁力線に沿って動く。磁場の構造からプラズマがドーナツ状に分布し、しかも惑星自転に伴う磁場の回転と共にプラズマドーナツも運動する。プラズマ(=荷電粒子)の運動はすなわち電流であり、これが「リング・カレント」である。

リングカレントの存在は、80年代にパイオニアやボイジャー探査機により取得されたデータが示唆していた。しかしその全容はカッシーニの観測により明らかとなり、昨年末に論文が発表されたばかり(右・リングカレントの分布。土星本体・メインリングの遙か遠方に広がっていることに注意。詳細はこちらへ)

エンケラドスから吹き上げられた粒子の一部は太陽放射などの作用でプラズマ化し、磁場に捉えられる。それら粒子は磁力線に沿って極へと移動していくが、Aリングを横切る磁力線の上を走る粒子はリングに衝突し、そのまま降着してしまうことが明らかになったという。それはちょうど、スポンジが吸うような感じだと表現されている。

なお、木星にも同様のリングカレントが存在するが、木星のそれは土星に比べ非常に強い(=粒子密度が高い)。これは、木星には巨大な輪が存在しないためであろうと研究チームは考えている。木星の場合の主たる粒子供給源は、衛星「イオ」の噴火活動である。

ちなみに、水に関連する分子の運動モデルが正しいことも確認された。1990年代初め、ハッブルにより土星本体から24万kmのところに水関連分子の巨大雲に発見され、マサチューセッツ工科大学のジョン・リチャードらは、この雲がAリングへ吸収されているという仮説を立てていた。「彼らは予言し、そして我々がそれを見ているのです」と語るファーレル氏らは、観測データ分析の際、この仮説の影響を大いに受けたという。ハッブルで発見された分子の源泉は、もちろん当時は謎だったが、我々は今やそれがエンケラドスであることを知っている。

研究チームは、プラズマから放射される電波強度の変化をAリング周辺で観測し、プラズマがリングに吸収されていることを確認したという。詳しくはこちらへ【Cassini 02.05】

★追加情報 (02.01. 2008)

土星のリングに、それを構成する氷や岩石粒子が規則的な濃淡を描くように分布している領域が発見された。土星周回探査機「カッシーニ」による電波観測で明らかになった。

これは、池にできる波紋のように密度の濃淡を描いて分布している様だという。「粒子が集中した塊どうしは非常に接近しており、約100mから250mの間隔を隔てています」と語るのは、カッシーニ電波観測チームの一員であるEssam Marouf氏。通常、粒子どうしの間隔は動きと共に変化するものであるが、この場合、一定を維持しているのである。このような現象はこれまで確認されたことのない、全く新しいタイプのものだという。類推としては、回折格子のようなものを想像すればよい。

            

この構造はカッシーニから地球へ向けて放射された電波の周波数変動を分析して明らかになった。NASA深宇宙ネットワークで受信されたそれは、規則的なパターンを描くものだったといい、Aリングの内側およびBリング中央で確認された。

上は2005年に行われた電波観測データを視覚化したもの。電波の周波数はひとつだが、規則的に並んだ密度の濃淡があたかも回折格子のように働き、3つの周波数に分離している。下は電波観測の模式図。周波数の分離より格子間隔、つまりリング密度の濃い部分どうしの幅が計算される。

            

詳しくはこちらへ【Cassini 01.31】

★追加情報 (01.03. 2008)

土星の北極点が、その周辺より温度が高いことが明らかとなった。既に南極点が同様の“ホット・スポット”であることはわかっていたが、北極点も同様であることが判明したのは初めてである。

土星はその地軸の傾きにより、現在北半球がいわゆる“冬”で、北極点を含む高緯度は全く太陽光が当たらない。太陽エネルギーの入射はゼロであるにも関わらず、北極点が周辺よりも高温であることは、これが太陽放射と無関係の、土星固有の現象であることを示唆している。

「南極点のホット・スポットは、太陽光の条件と関連していることを既に掴んでいますが、北極点には1995年から全く太陽が当たらないのに同様のスポットが存在するとは予期していませんでした」と語るのは、研究チームのひとりであるグレン・オートン氏。約30年弱で太陽を公転する土星の場合、両極はそれぞれ約15年ずつ闇夜に包まれる。

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が取得した赤外線データより描き出された北半球の温度分布。北極点に向かって周囲からガスが流れ込んでおり、深部へ潜る際に圧縮され高温になっていると研究チームは考えている。

                  

北極域と南極域の渦運動は一見よく似ているが、実際はかなり異なっているという。北極域のそれは何年も継続する固有のもので、六角形構造をなしている。この特徴は80年代初めのボイジャー探査機による観測で発見されていたもので、2007年初めにカッシーニでも観測されたもの。一方、南極域は滑らかな渦を描いており、はっきりした六角形構造は見えない(右・カッシーニにより取得された南極点中心の大気運動。)

論文では、北極域の六角形構造は、それまでの研究で指摘されていたよりももっと高高度であると主張されている。またその成因は対流圏の下降運動と関連があると考えられるが、はっきりした仕組みはより詳しい研究を待たねばならないとしている。

論文は「サイエンス」誌1月4日号に記載されている。詳しくはこちらへ【NASA 01.03】

★追加情報 (12.12. 2007)

土星のリングが、これまで言われ続けてきた通説よりももっと古いものである可能性が指摘された。

これは、コロラド大学ボールダー校のラリー・エスポジト教授が提唱したもの。同教授は1979年、「パイオニア11号」の画像データより土星のFリングを発見した実績を持つ第一人者で、土星周回探査機「カッシーニ」搭載の観測機器「紫外線スペクトログラフ」担当の主席研究員。

土星のリングはこれまで、1980年・81年に同惑星へ接近した探査機「ボイジャー」や、90年代から稼働している「ハッブル宇宙望遠鏡」によって取得されたデータを基に、約1億年前に起こった衛星の破壊がもとで形成されたと考えられてきた。ところがエスポジト氏の研究チームは今回、カッシーニにより取得された最近のデータに基づき、リングは土星、ひいては太陽系全体の形成が始まった45億年前の時点で既に形成が始まっていた可能性があると主張しているのである。

また、リングはいくつかに分けられるが、それぞれ“年齢”が非常に異なっているように見えるといい、リング物質は継続的にリサイクルされていると考えられるという。(下・土星のリング系といくつかの衛星)

            

エスポジト氏によると、リングの中では物質の集合で衛星が形成され、またそれが粉砕され、が短期間で繰り返されている(リサイクル)と考える方が妥当だという。

これまでは、もしリングの年齢が太陽系の歴史と同程度であったとしたら、ダストの降着により黒ずんだものになり、いま見る美しい姿ではなかったに違いないと考えられてきた。ところがカッシーニの観測により、リング全体の質量が予想より大きいことが判明、このことが全体として非常に明るく、若く見える一因となりうることが指摘されている。

全体の質量が大きいということは、リング粒子の量が多いことを意味する。ダストの降着により黒ずむとしても、降着相手が多ければ密度は薄まることになる。

(下は、ムーンレット(微衛星)の周辺にリング粒子が降着する様子をシミュレーションしたワンシーン。ムーンレットは中央の楕円で、サイズは約61メートル。リング粒子はセンチメートルからメートル級のものを仮定して散りばめられている。「物質の集合で衛星が形成される」というその衛星は微衛星で、数十km〜の大型衛星ではない。下の状況は最大級に成長した段階で、この後一気にバラバラになる。動画はこちらへ)

              

また、今見ているリングが未来永劫同じ姿であるわけでもないともエスポジト氏は強調する。「それはちょうど、大都市がそれそのものは何世紀も維持されているとしても、そこにいる人々は常に入れ替わっているのと同じです」と語る。詳しくはこちらへ【NASA 12.12】

★追加情報 (12.06. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が取得した衛星「パン」(右)および「アトラス」(左)の高解像度画像。一目してUFOを連想させるような、円盤形である。パンのサイズは、左右約33km・上下約21kmで、アトラスのそれは左右約39km・上下約18km。円盤を特徴づける左右の広がりは赤道と一致している。

            

パンとアトラスは共にメインリングに存在する衛星で、パンは1990年、探査機「ボイジャー」の画像を再分析中に、アトラスは1980年、同探査機土星接近時に発見された。(下・左はアトラスで、右はパン。共にカッシーニによる撮影)

            

ところでこの円盤形の形状とリングの形成に関する論文が、雑誌「サイエンス」に記載された。

カッシーニ画像解析チームのリーダーであり、論文筆頭著者のキャロライン・ポルコ氏らは、14個の小衛星の形状とサイズを詳しく分析し、うち半分については質量と密度も割り出した。この結果は、土星のリングそのものの形成過程についても重要なヒントを与えているという。

土星のリングは、元々そこにあった1個ないし複数の衛星が何らかの理由で破壊され、その破片が基となってできあがったと考えられている。ただ、パンのようなリング内部やアトラスのようなリング周辺では、破片やチリが重力的集合でちょっとしたサイズまで成長するのは不安定で無理だとわかっている。

研究チームは分析データを基にシミュレーションを繰り返し、それらの衛星が、(元々存在した)硬い物体を核とし、その上に周辺のチリなどを集めて成長してできあがる様子を描き出した。30km程度の衛星に成長させる核は、約10km程度の大きさであればいいという。

また、アトラスやパンのような円盤体については、その核の周辺にダストの“ミニ降着円盤”ができ、徐々に降り積もっていった結果できあがった可能性が高いとしている。

この核は、恐らく、衛星の破壊が生じた際に残った、比較的大きな岩石体と研究チームは考えている。詳しくはこちらへ【NASA 12.06】

★追加情報 (11.27. 2007)

下は土星周回探査機「カッシーニ」が今月6日、ナローアングルカメラで撮影した一枚。リングの手前に衛星「ミマス」(手前)と「エピメテウス」(ミマスの奥)が写っている。撮影時、両者は48000kmの距離で隔てていた。

            

大きいサイズで見ると、ミマスの巨大クレーター「ハーシェル」も見える。ミマスは直径400kmほどで、ハーシェルのそれは130kmに達する。【NASA/JPL/SSI 11.27】

★追加情報 (11.22. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が先月24日に撮影したリング。一番外側のFリングが、また、「エンケの隙間」に存在するリングレットがくっきりと見えている。

            

撮影時、カッシーニはリング面から角度2度で、向こう側から太陽光が射す位置関係にあった。大きいサイズはこちらへ【Cassini 11.22】

★追加情報 (10.24. 2007)

土星のAリングの内部に、微衛星(ムーンレット)が複数存在することが確認された。

ムーンレットは極めて小さい物体で、大きいものでも差し渡し数百メートル程度。それ単体を解像して見ることはできないが、微小とはいえその重力の影響でダストなどを引き寄せ、それが“プロペラ”の形状をなしている様子から存在が確認できる。

下は土星周回探査機「カッシーニ」が2005年8月20日に撮影したもの。さそり座の「アンタレス」(αSco)がリングの向こうに写っているが、カッシーニは当時、リングによる同恒星の掩蔽観測を行っていた。(大きいサイズはこちら

            

幅の太いリングはAリングで、その内側に点線で囲まれたムーンレットの集団が写っている(土星のリング系の概要はこちら)。

この“プロペラ”、ひいては微衛星の存在が最初に確認されたのは、2004年にカッシーニが撮影した画像による。これまで微衛星は均等に分布するものという認識がなされていたが、今回の分析で、それが集団をなして偏在する可能性が出てきた。つまり、“ムーンレット・ベルト”の存在である。

下は、上の画像で赤く囲まれたプロペラの拡大画像。ムーンレット自体の大きさは約150m程度と見積もられており、小さすぎるため写っていない。左右にダストがプロペラ状に付随している様子がよくわかる。

           

土星本体に近い側(下側)を運動するダストは、ムーンレット自体の周回速度より早いため、その進行方向(右側)の“前方”に広がっている。一方、土星本体より遠い側(上側)を運動するダストは逆に速度が遅いため、“後方”に広がっている。

このリングレットは、土星リング系ができあがった後に形成されたものと考えられている。統計的手法に基づいた分析に基づくと、“ムーンレット・ベルト”には数千を数えるムーンレットが存在する可能性があるという。

このようなベルトの存在が明らかになったのは、今回が初めてである。詳しくはこちらへ【NASA 10.24】

★追加情報 (10.21. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星と衛星「レア」と「ミマス」。リング面から俯角4度ほどのポジションで撮影されたもので、美しい一枚です。

              

衛星がちょっと目立たないので拡大すると…リングの影の上に浮かんでいる小さい点が「ミマス」で、上の方に浮かんでいるのが「イアペタス」。なお、土星本体に映っている影は衛星「エンケラドス」のもので、この時画面の左手前に存在していましたが、フレームには入っていません。

            

この画像は今年9月9日に撮影されました。大きいサイズはこちらへ【NASA/JPL/SSI 10.19】

★追加情報 (10.15. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が今年5月9日に撮影した45フレームのイメージを合成して作成された天然色映像。リングの“裏側”(太陽光の当たっていない側)で、リング面から39度の位置を飛行中に撮影された。

            

同様の画像は今年1月にも取得されている。この角度からのこの眺めはカッシーニ以前には取得されなかったもの。1月のリリースでも大きな注目を集めた。

これはカッシーニ打ち上げ10周年を記念してリリースされたものの1枚(一覧はこちら)。詳しくはこちらへ【NASA 10.15】

★追加情報 (10.15. 2007)

「桃源郷は、朝霧に包まれた夜明けを迎える…」と言ってもいいような分析が発表された。

カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、土星の衛星「タイタン」の大陸「Xanadu」(ザナドゥ)は、明け方にメタンの霧もしくは霧雨が降っている可能性が高いことを指摘した。

これはハワイのケック望遠鏡および欧州南天文台のVLT望遠鏡による観測で明らかになったもの。タイタンは約16日で自転するが、ザナドゥ大陸が“夜明け”を迎える際、そこがメタンの霧雨に見舞われていることを示すデータが取得されたという。

この現象はザナドゥ大陸のみで見られるものだが、いつでも出現するわけでもないという。ちなみに「ザナドゥ」とは「桃源郷」の意。桃源郷の夜明けがミストに包まれているとは、なんとも物語のイメージに近い。

「湿った空気や雲が風で岸壁を駆け上がり、沿岸部に雨を降らせるのと同じ現象と考えられます」と語るのは、論文筆頭著者のMate Adamkovics氏。条件がそろえば、ザナドゥ大陸でも同様の現象が生じるのだろうと考えている。

研究チームは2005年2月に取得されたデータを分析した際、そのような現象に気づいたという。2006年4月、再度観測を行いスペクトルを精査したところ、詳細が浮かび上がったという。

(下はリリースされた図表。左は大気中に広がるエアロゾル密度の高度分布であり、南極域では分布が濃いことが示されている。右はAdamkovics氏の研究チームによる赤外線観測で取得されたもので、“Surface”は地表を示し、“Lower troposphere”は対流圏下層を示している。対流圏下層データは地表データを含むので、それから地表データを引けば前者の正味のデータが得られる。)

            

(このようにして取得されたデータが下で、メタン氷の雲が全球に広がっていることがわかる。特に黄色枠で囲まれた黒い部分は液体メタンの雲で、ザナドゥ大陸に分布している。ここはちょうど明け方の域とも一致している。)

            

この雲はいわゆる「巻雲」の類という。高度25〜30kmには凍ったメタンからなる雲が、20km以下には液体メタンの雲が広がっていると見られており、後者は霧雨として地表に降り注いでいる可能性があるという。

メタン雲の含水量(“含メタン量”)は地球の雲とほぼ同程度であるが、メタン滴の径がミリメートルサイズと、地球の雲(0.01mm程度)に比べて極めて大きい。このことはメタン雲が低密度で分布していることを意味するため、検出が難しいのではないかとAdamkovics氏は指摘している。

詳しくはこちらへ【ESO 10.11】

★追加情報 (10.12. 2007)

今月15日、現在土星で探査活動を続けている土星周回探査機「カッシーニ」が打ち上げ10周年を迎える。

            

カッシーニは1997年10月15日、ケープカナベラルよりタイタン4Bロケットで打ち上げられた(上)。詳しくはこちらへ【NASA 10.11】

土星の衛星「イアペタス」は半分が白く輝き、半分が真っ黒に色づいている奇妙な衛星であることが知られているが、際だった違いを生んだプロセスは今なおはっきりとはわかってない。これについてこのほど、NASAの研究チームが新過程を提唱している。

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影したイアペタスであるが、同じ対象であるのにこうも違うのは非常に奇妙である。イアペタスは地球の月と同様、常に同じ面を土星へ向けている。すなわち土星周回軌道上で、進行方向にも常に同じ面を向けている訳であるが、左の画像はその“前面”で、右は“後面”の姿。前面が真っ黒なのは、(別の衛星が関連すると思われる)軌道上に漂う噴出物を“被って”いるためではないかと考えられてきた。

            

(下・イアペタスで最も高い山脈で、探査機「ボイジャー」が撮影した画像より発見されたことにちなみ、「ボイジャー山脈」と呼ばれている。右側が前面であるが、山腹の右側は左よりも暗い。これは物質が被って、つまり降着したことを示唆するものと考えられている。)

            

ところで、カッシーニのフライバイによる赤外線観測で、暗い部分は温度が比較的高いことが判明した。高いと言っても−146℃であるが、これは水氷の表面から水蒸気が昇華するには充分な温度。この温度が、白黒をより際だたせているのではないかと研究チームは考えている。

「イアペタスの前面はまだ解明されていないいくつかのプロセスで暗くなっているのでしょう」と語るのは、研究チームの一員であるジョン・スペンサー氏。

彼らは、前面が黒くなったきっかけは浮遊物質の降着であるが、白黒をより際だたせてしまったのは温度効果によるのではないかと考えている。

物質が降着し、色が暗くなると、なお一層温度が上昇する。これはつまり氷の昇華を加速することにもなる。一方、昇華した水の一部は後面で再び氷に戻る…このような“暴走”が生じ、より際だった白黒が生じてしまったとも考えられる。

さらに、白黒の境界(下)には“グレー”の部分がない。つまり、熱的変化のタイムスケールが短いということであり、これも“暴走”を支持するものと言える。

            

なお、研究チームは暗い物質の厚さは薄いと考えているが、厚い部分もありそうだという。白い部分の中に見られる暗い部分は、右側の暗い部分と組成が同じであることも判明し、この複雑な模様がどのようにできたのか、全容解明にはまだまだ時間がかかりそうである。詳しくはこちらへ【NASA 10.08】


下は、先月10日に撮影されたイアペタス。カッシーニは直径1470kmのこの衛星に、暗い面側からアプローチしました。極の域に僅かに白い面が見えていますが、向こう側は真っ白です。赤道には特徴的な山脈が…

            

静寂美と大迫力…大きいサイズで見ると圧倒されます(こちら

★追加情報 (10.11. 2007)

土星の衛星「エンケラドス」といえば、南極域からの“スプレー噴射”で有名であるが(右)、このほど、具体的な“噴射口”が同定された。「ネーチャー」誌10月11日号に論文が記載された。

土星は現在、土星周回探査機「カッシーニ」によって調査が続けられているが、2005年に同探査機がエンケラドスへフライバイ観測を行った際、その南極域が周辺より高温であること、そこで大規模な噴出現象が生じていることが発見された。これ以降、タイタンに次ぎ最も注目を集める衛星となり、将来の探査計画候補にも上がっている。

噴出物が微細粒子であることはわかっていたが、カッシーニ画像解析チームの徹底した分析の結果、それが微細な氷の結晶であること、南極の“タイガーストリップ”と呼ばれる地溝帯から散布されていることのはっきりとした証拠を掴んだという。

噴射がタイガーストリップから噴射されていることをはっきり確認できたのは、これが初めて。下は同定された噴出口を示す画像で、○が付けられた8ヶ所が確認されている。この場所は周囲よりも温度が高い“ホット・スポット”の場所と一致している。(4本のタイガーストリップはそれぞれ「ダマスカス」、「バグダッド」…と命名されている)

            

解析チームは取得されてきた可視光画像と赤外線画像を注意深く見比べながら、どの部分から吹き出しているのか調査を続けてきた。またメカニズムとして、「地下には液体の水溜まりがあり、それが噴出している」という説を提唱している。噴出機構にはいくつかの説があり、妥当なものはまだ定まっていない。

詳しくはこちらへ【Cassini 10.10】

★追加情報 (10.07. 2007)

先月29日、土星周回探査機「カッシーニ」は衛星「ディオネ」、「エンケラドス」、「テレスト」にトリプルフライバイを行った。下はその際撮影された「エンケラドス」のクローズアップ。

            

南極域からは相変わらず噴出が続いています。年明け3月にはこの真上を通過するミッションが予定されています。【photo: Cassini】

★追加情報 (09.17. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が今月10日のフライバイで撮影した衛星「イアペタス」のクローズアップ。赤道に沿って山脈がそそり立っていますが、その様子がよくわかります(大きいサイズは

            

一体どうやって出来上がったのでしょうねぇ、これ…【photo: NASA /JPL/ Space Science Institute 09.11】

★追加情報 (09.12. 2007)

下は、NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が今月10日、衛星「イアペタス」に接近観測を行った際に撮影された一枚。この衛星は全体のほぼ半分ずつが組成の異なる物質に覆われており、また赤道に沿って山脈が形成されている。下はその山脈の一部のクローズアップで、標高約10km。画像の解像度は約23mである。

            

イアペタスはクルミのような形状をしており、地球の月のように、常に土星へ同じ面を向けている。土星を周回するイアペタスの“進行方向側”は暗い物質で、背中側”は明るい物質と、前後で全く違う物質で覆われており、非常に興味深い(左)。

            
 
研究者らは、これは軌道上を漂っていた暗い物質(恐らく衛星「フェーベ」と関連性があると考えられている)を被ってしまったためだろうと推測している。

また、赤道に沿って山脈が発達しているが(右上)、これはカッシーニが2004年末のフライバイで発見した最大の謎。裾の幅は約20km程度で、高さは15kmを下らない。これがなぜどのように出来上がったのか、研究者の間でもまだまとまっていない。詳しくはこちらこちらへ【cassini 09.12】

…カッシーニはイアペタス接近後、セーフモードに入っています。宇宙線によるエラーが生じ、システムがシャットダウンしたようで…週末にはリカバリー予定とのことです。

★追加情報 (08.13. 2007)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が今年6月24日に撮影した一枚。左に衛星「タイタン」、右に「ディオネ」、リング面のすぐ上・左側に「ヤヌス」が写っている。

            

大きいサイズなど、詳細はこちらへ【Ciclops 08.13】

…ヤヌスは大きいサイズでないとわかりにくいです。。

★追加情報 (08.03. 2007)

土星のGリングの形成に関する新説が雑誌「ネーチャー」に記載された。

リングの成因やその構造については不明な点が多かったが、衛星が深く関係していることが近年の観測でより明確となってきている。例えばEリングについては、衛星「エンケラドス」の氷噴出が“材料”の供給源となっているという具合だ。(下・土星のリング系。リングは発見された順にABC…と名称が付けられている。Eリングには衛星「エンケラドス」、Fリングには「プロメテウス」と「パンドラ」、Aリングには「アトラス」という具合に、リングと衛星の関わりは深い。)

            

Gリングは土星リング系で最も外側に位置する非常に希薄なリングで、微少な氷粒子で形成されていると考えられている。だが近接する衛星は発見されておらず、この氷粒子の由来など謎になっている。

土星周回探査機「カッシーニ」は2004年から観測を続けているが、Gリングに“アーク”が存在するのを確認していた。アークとはリングの中で部分的に特に濃い場所で、際だった“弧”として見られるもの。Gリングの場合、リングを構成する粒子が衛星「ミマス」の重力的な作用を受け集中することで、アークになっていることがわかっている。

                 

ドイツ・マックスプランク研究所の研究員Elias Roussos氏は、このアークに着目した。土星の磁気圏がアークをスイープする際に粒子の一部を“引きずり”、拡散させていくことでGリングが出来上がっているという(下・2005年に撮影されたアークの連続写真)。

             

研究チームはコンピュータシミュレーションを行い、現在見るGリングが確かに出来上がることを確認した。一方、2005年にカッシーニがアークを観測した際、荷電粒子の減少が認められていたが、チームはこれを、アークに存在すると見られる未検出の物質が吸収しているためと解釈。「カッシーニのカメラでこれまでに捉えられた以上の粒子がアークに詰まっていると考えられます」とRoussos氏は語っている。詳しくはこちらへ【NASA 08.02】

★追加情報 (08.02. 2007)

NASAは2日、来年3月に予定されている土星周回探査機「カッシーニ」のエンケラドスフライバイについて公開討論会を行った。

カッシーニは来年3月、衛星「エンケラドス」上空約30kmを通過する超近接飛行を行うが、氷粒子が噴出している南極上空を通過する予定であることが明らかにされた。

現在のところ、この噴出物の90%が水氷で、その他アンモニアやメタンなどを含むものと考えられている。

「カッシーニは、噴出物へのこれほどの接近飛行を行うようには設計されていませんでした。しかしその中に飛び込み、その物質が何であるのか分析し、それがどこから吹き出しているのか調べることにしました」と関係者は語る。

一方、NASAサイエンスミッション部門准局長であるアラン・スターン氏は「リスクが無いわけではないが、安全第一に飛行できるはずだ」と語っている。今後数ヶ月間の検討が行われ、飛行の可否が決定されるが、ゴーサインが出れば、粒子観測センサー以外のデリケートな装置は噴出を浴びないように機体の姿勢を整えることになるだろうという。

詳しくはこちらへ【Space.com 08.02】

★追加情報 (07.27. 2007)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が今年5月23日に広角カメラで撮影したもので、Fリングを挟むように飛ぶ衛星「プロメテウス」(外側)と「パンドラ」(内側)が特徴的。一方、左隅に見えるのは衛星「ミマス」。

 

大きいサイズはこちらへ【Cassini 07.27】

★追加情報 (07.19. 2007)

下の画像は、先日発見が報じられた土星の60番目の衛星「S/2007 S4」。土星周回探査機「カッシーニ」が今年5月30日に撮影したリング画像の中で見出された。

この新衛星は、2004年にカッシーニ画像で発見された衛星「メトネ」と「パレーネ」の軌道に近いところに存在しており、この周辺に衛星の集団が存在する可能性を示唆している。

            

初期解析では、衛星の大きさは約2kmと見積もられており、軌道は衛星「ミマス」(Mimas)と共鳴関係にある。新衛星は赤く示されている。

「我々は土星の60番目の衛星を、カッシーニの強力な広角カメラで発見しました。メトネとパレーネの近くを見ていたとき、ふと目を留めるものがあったのです」と語るのは、カッシーニ画像解析チームの一員、カール・マレー氏。

解析チームはその後、これまで撮影された画像を徹底的に調査し、それが新衛星で間違いないことに確信を持ったという。

ところで、カッシーニが打ち上げられた1997年には、土星の衛星は18個しか知られていなかった。ところがその後の大型望遠鏡の発達と、カッシーニの土星周回開始によりその数が飛躍的に伸び、60個目を迎えたのであった。ちなみにカッシーニの画像から発見されたのは、これが5個目となる。

詳しくはこちらへ【Cassini 07.19】

★追加情報 (07.19. 2007)

国際天文学連合 (IAU) は、7月18日、土星に新衛星が発見されたことを国際天文学連合回報 (IAUC) に発表しました。この衛星は土星を周回しているカッシーニ探査機によって発見されたもので、今年5月にすばる望遠鏡で発見された3個の新衛星に次ぐ、土星で今年4個目の新衛星です。

今回の発見により土星の衛星の数は、確実なものとして60個、不確かなものまで含めると63個となりました。不確かなものまで含めた総数は、太陽系の惑星で最も多い衛星を持つ木星に並ぶことになりました。

新衛星の詳細など、詳しくはこちらへ【国立天文台 07.19】

★追加情報 (07.07. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が捉えた“リング・ベール” リングを透かして見えるのは土星本体。「エンケの隙間」を走っていくのは衛星「パン」

            

撮影は今年5月23日。美しい光景ですね^^ 大きいサイズはこちらへ。

★追加情報 (07.04. 2007)

土星の衛星「ハイペリオン」の表面に、炭化水素が存在することが明らかになった。これは、土星周回探査機「カッシーニ」が2005年9月にフライバイした際に取得したデータより判明したもの。

論文が「ネーチャー」誌7月5日号に記載されている。

炭化水素は生命体を構成する基本物質であり、研究チームはこれが太陽系に広く存在することを示す発見としている。同衛星の表面にはその他、水氷やドライアイスが見つかった。

(右・表面状態の違いを色覚化したもの。青は水氷の割合が高い部分で、赤はドライアイス。マゼンタは水表とドライアイスの混合状態で、黄色はドライアイスと組成不明の物質の混合を表している。)

「ハイペリオンの表面に炭化水素が存在するのは特に興味深いものです。炭化水素は彗星や隕石、それに星間ダストの中に既に見つかっているものです。」と語るのは、NASAエームズ研究センターの惑星科学者Dale Cruikshank氏。「これらの分子が氷に含まれ、紫外線にさらされると、生命体に重要な分子が形成されます。今回の発見が生命の発見を意味するわけではありません。ただこれは、生命を構成する基本化学物質が宇宙の広範囲に存在することを示していると言えます。」

ハイペリオンにはかつて、地上望遠鏡による観測で水氷の存在は確認されていたが、ドライアイスがそれに混じっているのも今回確認された。「ハイペリオンの表面の殆どは水氷と有機物ダストの混合物で覆われていますが、それに加えて、ドライアイスも顕著です。ドライアイスは純物質の形ではなく、何らかの化学的結合で他の分子とくっついているようです」とCruikshank氏は語る。

詳しくはこちらへ【Cassini 07.04】

★追加情報 (06.29. 2007)

下の画像は、先月27日、土星周回探査機「カッシーニ」が衛星「テチス」にフライバイした際に撮影した一枚。大きいサイズでみるととても幻想的です。

            

その他の画像など、詳しくはこちらへ【CICLOPS 06.29】

★追加情報 (06.26. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」がリングの上を飛行した際に観測された「衝効果」を示したもの。色づけされているのは太陽光の反射や土星本体の熱放射を区別するためで、その上に点々と並んだ輝く輝点(Zero-Phase Points)が衝効果で光っているところである。

            

衝効果とは、太陽光が観測者の後頭部側から目前の対象に射した場合、直下が輝いて見える現象。粒子の影が周囲の粒子を覆わない状態になるためにひときわ輝いて見えるもので、直下面の向きは無関係。土星の輪では過去にも同様の現象が撮影されている(右・昨年7月に撮影されたそれ。詳しくはこちらへ)。

今回リリースされたのは、探査機の移動につれて輝点も移動していく様子。昨年8月16日、カッシーニがリング面上を飛行した際に観測されたもので、飛行方向は左から右。この効果を理論モデルと照らし合わせることでリングを構成する粒子やその分布がわかる。

分析の結果、リング面に入射した太陽光は40マイクロメートル程度の大きさの粒子と何度か反射を繰り返して返ってきたことがわかったという。詳しくはこちらへ【Cassini 06.26】

★追加情報 (06.14. 2007)

土星の衛星「テチス」(左)と「ディオネ」(右)が、衛星「エンケラドス」と同様、地殻活動を行っている可能性が高まった。これは、土星周回探査機「カッシーニ」の観測データを分析した結果、明らかになったもの。

           

カッシーニは2004年に土星周回軌道へと入ったが、その直後より、プラズマがリング状に土星を取り囲んでいることが明らかになっていた。プラズマはすなわちイオンや電子で、土星の磁場に掴まり、外側へ放り飛ばされている。

研究チームは、プラズマがリング状に分布し、粒子がその外縁から外空間へ流れ出している一方、それを補うように内側から粒子が供給されている様子を確認。そのプラズマ粒子の出所を詳しく辿ったところが、テチスとディオネに行き着いたという。

(下・プラズマリングと磁場の様子を描いたイラスト。テチスに付随するプラズマは青で、ディオネのそれは緑で示されている。土星本体から南北にループを描いて伸びる磁力線がプラズマに作用し、それを外へと飛ばしている。カッシーニの飛行軌道とプラズマを検出した場所がそれぞれ黒と赤のラインで描かれている。)

            

「テチスとディオネが、土星磁気圏でプラズマ粒子を供給する重要な源泉であることがはっきりしました」と語るのは、カッシーニのプラズマ分析チームの一員、ジム・バーチ氏。

これまで、土星の衛星で地殻活動が確認されていたのは「タイタン」と「エンケラドス」のみであった。テチスとディオネへのフライバイ観測は今後も予定されているため、より詳しいデータが得られるのではないかと期待されている。

論文が「ネーチャー」今週号に記載されている。詳しくはこちらへ【Cassini/esa 06.14】

★追加情報 (05.31. 2007)

土星を可視光および赤外線波長で撮影し、波長に応じて着色した結果できあがったのが下の画像。

            

この画像は今年2月24日、土星周回探査機「カッシーニ」が土星本体から158万kmの距離で取得した赤外線データに基づく。観測時間は通算13時間で、可視光および赤外光スペクトロメーターが同時に352波長で観測を行った。

見えているのは北半球側で、リングは太陽光の当たらない“裏側”の部分。リングは波長2.3、3.0及び5.1ミクロンの赤外線データを合成したもので、青で着色されている。

一方、北半球側は太陽の直射光が当たらない領域。すなわち夜側であるが、ここは赤外線波長で観測されたもの。特に波長5.1ミクロンは大気の深層から出る強い放射で、上層大気の雲を“照らして”、我々の目の前に浮き上がらせてくれる。

リングを描く2.3ミクロンは、氷の粒子が特に反射し、大気のメタン成分が強く吸収する赤外線波長。一方、緑で着色された3.0ミクロンは氷が強く吸収し、大気がよく反射する波長。特徴的なのは、太陽光を通しにくい部分は暗く、そうでない部分は明るく見えていること。透過率が最も小さいBリングは黒く見えている。

また、赤く着色された波長5.1ミクロンは土星内部からの放射を表しており、夜側で顕著に見えている(極に確認されている“六角形”の一部も見えている)。大気を漂う雲の詳細な状態が現れている。

詳しくはこちらへ【Cassini 05.31】

★追加情報 (05.23. 2007)

今月12日、土星周回探査機「カッシーニ」は衛星「タイタン」へ31回目のフライバイを行ったが、下はその際のレーダー走査で得られた画像。海岸とも言える変化豊かな地形が存在している。

            

水路や諸島、湾などといった、地球上でも海岸に見られる地形と酷似したそれが広がっている。黒く滑らかに見える部分はタイタンの他の所にも見られる、液体メタン・エタン溜まりと考えられている。しかもこの領域は黒さが特に濃く、これは液体の深度が数十メートルに達する可能性を示唆しているという。

一方、注目すべきは画像左下に見える諸島。島が一列に並んでいるが、その先には半島がある。これは、山地に液体が入り込んだ(ちょうどリアス式海岸のようなものですね@管理人)ものと考えられている。

詳しくはこちらへ【Cassini 05.23】

★追加情報 (05.22. 2007)

土星のリングで最も広く密度の濃いBリングが、堅くくっついた粒子の塊が集合している状態である可能性が指摘された。これは、今まで考えられてきた姿とは異なるものであるという。

「今までは、微粒子が均一に分散している姿をイメージしてきました。しかし実際は、微粒子がちょっとした塊となって、それが一杯に散らばっている感じだったのです」と語るのは、コロラド大学のラリー・エスポジト氏。(ゴマが一面に広がったような状態ではなく、豆が広がったような状態ということでしょう@管理人)

また、これまでは粒子が均一に分散していると仮定されてきたため、リング全体の質量も低く見積もられてきたことになる。今回の発見により、その質量は数倍になるものと見られている。

研究チームは、遠方の恒星がリングに隠される掩蔽現象を、土星周回探査機「カッシーニ」で観測してきた。この観測により、リング物質の分布やサイズなどを知ることができる。チームは様々なデータに基づき、リングを3Dで把握することができたという。

(下はリングを構成する粒子塊の特徴を際だたせるために着色が施された画像。ひとつの塊は高々50メートルのサイズなので解像することはできないが、掩蔽の観測データに基づき、その密度や形、方向を推測することができる。色の違いは向きの違いを表しており、明るさは密度の濃淡を表す。Bリングの黄色い部分は最も密度が高いところであり、光を殆ど通さない。)

            

ひとかたまりのサイズは、大体30ないし50メートルという。塊はぶつかり合いながら成長と破壊を繰り返していると見られている。

また、これまでのBリングモデルでは、粒子の衝突は1時間に2回程度の割合で起こっているとされてきた。だが今回の発見に基づくと、殆ど連続的に衝突が起こっており、塊を形成していることになるという。

詳しくはこちらへ【Cassini 05.22】

★追加情報 (05.16. 2007)

カリフォルニア大学で惑星科学を研究するフランシス・ニーモ準教授を中心とする研究チームは、土星の衛星「エンケラドス」の南極域における噴出活動について、潮汐力による氷の層の運動が深く関わっているとの説を明らかにした。「ネーチャー」誌今月17日号に論文が記載されている。

2005年、土星探査機「カッシーニ」がエンケラドスに接近観測を行った際、同衛星の南極域で大規模な噴出現象が発見された。同域には「タイガー・ストライプ」と呼ばれるトラの引っ掻き傷のような断層が並行に走っており、ここから水蒸気や二酸化炭素、メタンなどを噴出していることがわかっている。

(下は2005年7月14日の近接フライバイ時の飛行経路(黄色ライン)と「タイガー・ストライプ」(赤線域)。ダスト検出センサー(CDA)や質量分析スペクトロメーター(INMS)、磁力計が高い数値を示し、エンケラドスに噴出現象が確認された。下段の画像は、赤外線波長域での観測で得た温度分布である。数値は絶対温度(=セ氏−273)であるが、地溝の部分の温度が周囲よりも高いことがわかる。)

            
            

この噴出のメカニズムにはいくつかモデルが提唱されているが、一例としては地下の放射性物質起源の熱により氷の層の一部が溶解され、それが割れ目から吹き出しているのではないかというものがある(下)。ただ、噴出物に含まれるメタンや窒素といったもの説明は同モデルでは難しく、最適なメカニズムはまだ定まっていないのが現状である。最近では、メタン分子などを合成するために必要な高温を生み出す機構として「ホット・スタート」と呼ばれる、放射性物質の“急速な”崩壊が提唱されている。

            

ニーモ氏らは「ホットスタート」説に対して、表面の氷岩が土星の潮汐力により動き、その摩擦熱で難点を補おうと考えた(右)。ちょうど手をこすり合わせると温かくなるのと同じイメージである。

(右・地溝に沿って氷盤が動くことで摩擦熱が生じ、氷が昇華、他の分子を連れて外空間へ飛び去っている様子。)

一方、エンケラドスはややつぶれた楕円軌道を描いて土星の回りを約33時間で周回し、しかも地球の月と同様、常に同じ面を土星に向けている。このことはつまり、軌道上の各ポジションにおけるストライプの向きは常に同じである事を意味している。以上を踏まえ、軌道とストライプの向きを検討したところ、土星から最も離れた際には地溝が開くように力が作用し、逆に最も近づいた場合は閉じるように作用していることも判明したという。

以上のことから、土星から最も離れたときには噴出が活発になることが考えられるが、現段階ではこれ以上の追求は難しいとのこと。どの地溝から噴出が生じているかなど、細部は今後の観測に委ねられる。

このモデルの利点は、氷盤内に液体水のプールを仮定する必要がないことだ。摩擦熱は氷を温めるには充分で、表面から氷を昇華させ飛ばすことができると主張している。ただし、氷盤がよく動くように、その下には液体水が存在する必要があるという。もし氷盤がダイレクトに岩盤へ乗っていたら、潮汐力では充分に動かすことができないからであると、ニーモ氏は語る。

詳しくはこちらこちらへ【NASA/Cassini 05.16】

★追加情報 (03.25. 2007)

下の画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影したもの。

           
 
太いAリングに存在する「エンケの隙間」の中に浮かぶ衛星は「パン」で、1990年にボイジャー撮影の画像を再調査中に見つかった(左下)。一方、外側の「キーラーの隙間」と呼ばれる空隙の中に、衛星「ダフニス」が見える(右下)。
               

パンのサイズが差し渡し26kmであるのに対し、ダフニスは僅か7kmであるため、拡大してやっと認識できる。ただ小さいとはいえ、その重力が、リングの縁に“さざ波”を立てている。ダフニスは2005年、カッシーニの画像より発見された。大きいサイズはこちらへ【Cassini 04.25】

★追加情報 (03.23. 2007)

右は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、土星の北極点の映像。北極点を取り巻く大気が6角形を描いている様子がよくわかる。

この6角形の存在はは80年代初頭、ボイジャー1号、2号両機の観測で明らかになっていた。だが当時の観測は撮像角度と画質が悪く、はっきりした姿は得られなかった。

今回の観測で得られた画質は最高のものであり、この模様が長期間にわたる特徴であることが確認された。

この映像は赤外線スペクトロメーターで得られたもの。現在北極域は“冬”であり、太陽光が照射しないため可視光で捉えることはできない。

この大気運動は地球の極地でみられるものに類似している。しかし地球のそれは環状であり、土星の6角形は非常に特異だ。中に地球が4個並ぶほどの大きさ(約25000km)である。

映像は昨年10月30日からの12日間で得られたデータを基にしたもの。詳細や6角形の動画はこちらへ【NASA 03.27】

★追加情報 (03.22. 2007)

土星の衛星「エンケラドス」が噴出する微細な氷結晶が、土星の磁場に大きな影響を与えている可能性が強まった。「サイエンス」誌に論文が記載された。

アイオワ大学のドン・グーネット博士およびロンドン大学のデビッド・サウスウッド博士らは、エンケラドスが吹き上げる氷結晶がイオン化し、それが磁場に捉えられることで逆に磁場の運動を減速、土星本体の自転とズレを生じさせているのではないかという仮説を提唱している。

これがもし正しいなら、土星から発せられる電波を観測することで求められてきた自転周期は、厳密な値からはずれていることになる。

「この小さいエンケラドスが、自転周期を求めるための電波観測にそんな影響を及ぼしていようことなど、誰も予測しませんでしたね」とグーネット氏は語る。

これは、土星周回探査機「カッシーニ」が搭載する電波およびプラズマ観測装置によって得られたデータを分析した結果。エンケラドスの南極域からは恒常的に氷結晶が噴出していることがわかっているが、この氷結晶がイオン化(プラズマ)し、土星の磁場を変形させることでその運動をわずかに減速している可能性が高いという。

エンケラドスの土星磁場との相互作用および磁場の変形は、一昨年の春〜夏に行われたフライバイ観測で判明していたが、今回の発表はそれをより深く考察したものと言える。(下・当時の発表で示された模式図。南極域から吹き上げる粒子が磁場と作用し、それを押し曲げている様子)

            

土星表面はぶ厚いガスであり、また、木星と異なり表面に目立った模様がないため、自転に関する情報を得る方法は、土星から放射される電波の周期的な変化しかを追うしかない。この電波は磁場の運動に伴って放射されていると考えられており、それがこの方法のベースになるのでもあるが、彼らの説が正しければ、現在観測される自転周期は現実の値よりも僅かに長いことになる。

一方、土星の電波は他のガス惑星(木、天、海)と異なり、回転する灯台のような変化よりむしろパルス状の性質を帯び、また、年の単位でゆっくりと周期が変動している。カッシーニによる観測では、1980年始めに「ボイジャー」探査機が観測した値よりも6分伸びている。この変動値は約1%に相当する。

「土星の磁場が一回転すると、磁場分布の非対称性が電波バーストを起こすのではないかと考えています」と語るのは、サウスウッド氏。「我々はその2タイプの電波が、共にエンケラドスに関連しているのではないかと考えています」

現在のところ、周期の変動には2つの説が考えられている。ひとつは、エンケラドスの吹き上げがボイジャーの時よりアクティブであるという可能性、もうひとつは、29年で太陽を公転する土星の季節的な変化の可能性である。

「もし氷結晶が極めてアクティブであれば、磁場の減速は強くなり、それに伴い電波放射の周期も伸びることになります。」

ただ、正確な描写にはより詳しい分析が必要であり、現在行われているところであるという。詳しくはこちらへ【Cassini 03.22】

★追加情報 (03.20. 2007)

画像は、今年2月8日に土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した木星の姿。カッシーニのカメラは土星系内の至近距離の対象を得意とするが、この映像からは、“望遠鏡”としても悪くない性能を発揮することがわかる。

撮影時、木星と土星の間は地球・太陽間の11倍以上の隔たりがあった。

                

カッシーニは2000年末、木星へ接近し、フライバイ飛行を行った際にも画像を送り届けてきた(こちら)。大きいサイズなど、詳細はこちらへ。【Cassini 03.19】

…10時の方向と4時の方向に、ホコリのように見えるのは、衛星のようですね(?)

続いて下は、土星本体のすぐ上を飛行中に撮影された、リングの内側の様子。背景に映るやや流れ気味の恒星など、かつてのボイジャー映像を彷彿とさせますね。

            

右上の隅に見えているのはDリングの内縁で、視野はその内側の領域を捉えている。やや露出に時間がかけられ、更にきめの細かいリングが浮かび上がっている(Dリングは、幅広い主リングの内縁の部分。位置関係は下の図を参照)。

            

この映像は今年2月7日に撮影された。大きいサイズはこちらへ【Cassini 03.20】

★追加情報 (03.13. 2007)

土星周回探査機「カッシーニ」による衛星「タイタン」のレーダー観測により、その高緯度地方に巨大な湖が複数確認された。そのうちのひとつは北米・五大湖のひとつで、地球で最も広い湖でもある「スペリオル湖」よりも広い。

この観測は先月22日のフライバイ飛行の際に行われたもの、傍を通り抜ける際、カッシーニの大型パラボラアンテナをレーダーとして用い、タイタンの地表を走査する。当然だが細長いエコーが得られることになり、この観測では南半球から北へ向けてのイメージが得られた(下・左端が南半球側で、右に行くにつれ北上していく。大きいサイズ)。

             

低緯度の方には大して大きな特徴は見られないが、北上するにつれ様子は変化し、高緯度側の特徴は全く違ったものになっている。黒い領域は極めてなめらかな地形を意味しており、その特徴は湖そのものである。(このフライバイの詳細はこちら

下はその拡大画像。いくつかの“島”、それに“半島”が見え、湖に流れ込む“河川”も見えている。これらは既に見つかっている大湖の一部である(その別の画像はこちらこちらへ)。
             
ただ、実際に液体が溜まっているか否かは判断がついていない。最近、これまで“冬”が続いてきた北極域で液体メタンの循環を示唆する特徴が見つかりつつあり、それらを考えるとここに液体が存在する可能性はある。

なお、同地域は赤外線マッピングスペクトロメーターでも観測が行われており、物質の成分を明らかにすべくデータ分析が続けられている。詳しくはこちらへ【Cassini 03.13】

★追加情報 (03.12. 2007)

土星の衛星「エンケラドス」の南極域における大量の氷ダスト噴出のメカニズムに関し、新説が提唱された。

「エンケラドス」南極域からの氷ダスト噴出は、2005年、土星周回探査機「カッシーニ」によって発見された。エンケラドスの軌道とほぼ一致するように微細粒子からなるEリングが存在するが、この噴出が粒子を供給しているものとみられている。

(右はその強調画像で、Eリングを垂直に切断するように見たもの。上に広がるのがリングダスト。下はリングの中のエンケラドスで、噴出の様子がよく分かる。)

 

新モデルは、衛星内部で放射性元素が急速に崩壊し、その際に解放される崩壊熱が熱源であると提唱している。このモデルはまた、噴出されるダストに含まれる分子の成因にも都合がいい。この分子は形成に高温を要するものであり、窒素やメタン、プロパン、アセチレンなどである。最近のデータ分析より、これらが微量ながら存在することが明らかとなっていた。

特に窒素はエンケラドスの構成物質として元々考えられておらず、研究者達を驚かせている。これについて、窒素は内部の深いところでアンモニアが分解されたものではないかと彼らは考えている。

ところでこの「ホット・スタートモデル」によると、エンケラドスは氷と岩石の塊で、アルミニウムと鉄の放射性同位体を含んでいるという。この放射性同位体が約700万年間にわたり崩壊を続け、熱を発しているというのだ。

(右・エンケラドスの南極域。「タイガーストリップ」と呼ばれる、引っ掻き傷のような地溝帯が走っており、そこからダストが吹き上げている。)

特にアンモニアを分解するには、577℃もの高温が必要となり、ゆっくり崩壊する同位体元素と土星の朝夕力加熱でも、稼ぐことができない温度。だが急速崩壊による高温ならば充分可能な範囲となる。

一方、ダストの中には炭化水素鎖も見つかっており、これは生命の源を連想させる物質。エンケラドスの地下ではこのような有機化合物がたっぷり含まれているとチームは考えている。

エンケラドスは2008年3月、カッシーニによるフライバイ観測が行われる予定である。詳しくはこちらへ【Cassini 03.12】

★追加情報 (03.01. 2007)

土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、パステルカラーで美しい土星。この豪快な映像はカッシーニが土星の脇を、リング面の下方から上方に向かって通過していく際に撮影されたもの。

              

先月3日、土星から110万kmの地点で撮影された。もっと大きなサイズなどはこちらへ【Cassini 03.01】

下は土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、これまた息を飲む土星の姿。太陽光が大気上層に浅い角度で入射し、短波長成分(青)が散乱を受け全体が青く色づいている(同様の映像は過去にも撮影されている・こちら)。

            

一方、上方に写っている点は衛星「ディオネ」。直径1126kmの衛星も、巨大な土星の脇ではちっぽけな点にしか過ぎない。

画像はカッシーニがリング面より9度上方を飛行中に撮影された。大きいサイズなど、詳しくはこちらへ【Cassini】

★追加情報 (03.01. 2007)

土星を周回しながら探査活動を続けるNASAの土星周回探査機「カッシーニ」。2004年7月1日に土星へ到着してからこれまで多くの画像を送り続けてきたが、先月もかつて無いスペクタクルな土星の姿を撮影、送信してきた。

探査機は最近7ヶ月間、かなり大きな軌道傾斜角で飛行しており、リング面から高々と飛び上がる。このため全体を“真上”から見ることができ、下はその際撮影されたものだ。

            

土星本体の右上に伸びる影の部分を浮きだたせるためやや露光時間が長く、太陽側は露出オーバーになっている。撮影日時は今年1月19日。リング面から40度の角度を飛行中、赤・緑・青のフィルターで撮影された計36枚のモザイクを合成して作成された。

「やっと、長年待ち続けた映像が得られました」と語るのは、カッシーニ画像解析チームのリーダー、キャロリン・ポルコ博士。

「巨大な、銅メダルのような姿はかつて見たことのないものです。このような世界は2つとありません。全く、息を飲む光景です。」

カッシーニの高傾斜角飛行は今年6月下旬まで続き、その後は再び赤道面付近を周回する予定。1月30日には最高角となる59度を記録した。

            

(昨年7月から今年6月まで、カッシーニは「タイタン180度遷移」軌道を描いている。これは衛星「タイタン」へ接近を繰り返し、太陽に対して軌道長径を180度近く“振り回す”もの(左)。傾斜角も大きくなり、リング面から高く飛び上がることを繰り返している(右))。

大きいサイズの画像など、詳しくはこちらへ【NASA/JPL/Space Science Institute 03.01】

★追加情報 (02.20. 2007)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星の南半球。先月31日に撮影されました。

           

豪快な映像ですね^^ 大きいサイズはこちらへ【Cassini 02.20】

★追加情報 (02.16. 2007)

土星周回探査機「カッシーニ」が先月13日のタイタンフライバイの際に行われたレーダー観測で、タイタンにクレーターらしき地形が写っていることが明らかになった。

クレーターは隕石や小惑星による衝突痕で、多くの衛星や水星、火星といった大気層が無い、もしくは希薄な天体で見られる一般的な地形。タイタンの場合、ぶ厚い大気を有することで数は少ないと考えられており、これまで3つしか確認されていない。

下は、レーダー観測で得られたデータを視覚化したもの。クレーターの直径はざっと180km程度で、縁に相当する部分は周囲よりも高度が高く、また、地質的にも若いものと推測されている。

            

一方、クレーター内部は堆積物が溜まっているようで、なめらかな状態になっているようである。詳しくはこちらへ【Cassini 02.16】

★追加情報 (02.05. 2007)

土星を周回しながら地道に探査活動を続けているNASAの土星周回探査機「カッシーニ」。2004年の周回軌道投入以来、リングや衛星系に関して様々な発見を続けている探査機であるが、その予定探査期間は当初2008年までとされていたが、昨年、2年間の延長が認められていた。先日、カッシーニ運用チーム内で、さらに2年間(2010−2012年)の運用延長が決定されたという。

土星は木星と異なり強烈な放射線帯を有しないため、それによる機器劣化の心配はさほどない。だが、複雑な“土星周回ツアー”には多くの姿勢制御が必要であり、そのための燃料は限られている。故に機器の劣化如何に関わらず、燃料残量で延長期間が決まってしまうのだ。

昨年からは、ミッション終了後のカッシーニの処分方法も話題に出るようになった。衛星「タイタン」や「エンケラドス」への激突を避ける方向へ最終決定は出ることになると言われているが、これはかつて木星周回探査機「ガリレオ」の時と事情が似ている。ガリレオの場合、衛星「エウロパ」などへの激突を避けるため、木星本体への突入という形で処分された。

これらは全て、殺菌されていない探査機が異世界へ激突し、地球の細菌類で汚染しないようにするための配慮である。

ちなみに、2008−2010年の延長ミッションでは、タイタンやエンケラドスなどへの更なるフライバイが予定されており、特に2008年3月のエンケラドスフライバイでは、地表から僅か25km上空を通過するコースが予定されている。この他、衛星「レア」などにも近接接近が予定されているが、カメラの振り回しが追いつかず、画像に多少のブレは避けられそうにない模様。

また、Fリングを支配する羊飼い衛星である「プロメテウス」が2009年、Fリングに入り込むとされており、その際どのようなことが起こるのか、非常に興味深い対象として期待されている。

その他、詳細はこちらへ。【SpaceDaily 02.05】

★追加情報 (02.02. 2007)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」によって撮影された衛星「タイタン」の姿。昨年12月25日、紫外線フィルターを通して撮影された。紫外線波長で観測すると、タイタン大気の成層圏を見ることができる。この領域では、タイタンの自転速度よりも速い大気運動が生じており、「スーパーローテーション」と呼ばれている。

観測データには、季節変化の兆候が現れているという。画像・上方が北半球であるが、先日既報の通り、現在冬から春に変化しつつある。

            

タイタンの上空に広がる希薄な膜はハローであり、これまた紫外線撮影で際だつ特徴である。詳しくはこちらへ【Cassini 02.02】

★追加情報 (02.01. 2007)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」によって昨年12月29日に撮影された衛星「タイタン」の北極上空。ぶ厚い大気に、米国本土の半分のサイズに匹敵する巨大な雲が浮かんでいる様子が映し出されている。

            

この雲は、近頃レーダー観測で確認されている“湖”と関連がある可能性がある。

タイタンの北半球は長い間(約25年間)冬期にあり、北極域は闇に包まれてきた。最近、冬から春に移りつつあり、太陽光が当たるようになり始めて、この雲の存在が明らかになってきたのである。

2週間後の1月13日に再び撮影され、存在が確認されたという。

この雲は直径2400kmに達し、北緯60度付近までを覆っている。このような巨大雲の存在は理論的に予測されてはいたものの、実際の姿が確認されたのはこれが初めて。「我々は雲の存在は確信していたが、このようなサイズと構造であったことに驚いています」と語るのは、撮影画像チームの一員であるクリストファー・ソチン博士。

カッシーニ・レーダー観測チームは昨年、北極点の近くに湖状の地形を確認、液体が溜まっている可能性も高いと見られている。液体はメタンなどの炭化水素と考えられているが、メタンの雲との循環系が成立しているとの考えが高まっていた。今回の発見は、この説をより強固にするものと見られている。

画像の大きいサイズなど、詳細はこちらへ【NASA/Cassini 02.01】

★追加情報 (01.26. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が8分間隔で撮影したFリングとそれに重なるように存在する“物体”の姿。動いているのがよくわかる。

            

この“物体”は2年前に発見され、Fリングの複雑なねじれなどに関与していると考えられている。これが衛星なのか、それとも細かい粒子の集合体なのか、その正体は未だはっきりしていない(発見時の画像)。大きいサイズはこちらへ【Cassini 01.26】

★追加情報 (01.24. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」によるレーダー観測で得られた衛星「タイタン」の表面画像。模様は砂丘だそうですが、まるで竜安寺の石庭ですねぇ。

            

観測は今月13日、タイタンフライバイの際に行われた。このような砂丘はタイタン地表には普通に見られる地形で、風の作用で形成されたと考えられている。詳しくはこちらへ【Cassini 01.24】

★追加情報 (01.18. 2007)

下は土星のリングと「エンケの隙間」、そしてその中に浮かぶ衛星「パン」。先月16日、土星周回探査機「カッシーニ」により撮影された天然色画像。

           

「パン」は幅325kmの「エンケの隙間」の間を周回している小衛星で、そのサイズは僅かに26km。その形状はジャガイモのような形をしており、長径を常に土星本体の方向を向けたまま、周期約14時間弱で一周している。軌道はリング面に対して33度傾いている。

                  

この画像が撮影されたのはベストタイミングで、太陽光の当たらない側も写っている。大きいサイズはこちらへ【Cassini 01.18】

★追加情報 (01.12. 2007)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、“リング・ベール”。氷の粒子からなるリングを透かして眺めたもので、昨年11月4日に撮影された。

            

なんとも、幻想的なシーンです^^ 最も外側のリング(右下)はFリングで、濃淡がはっきり浮き出てます。大きいサイズはこちら【Cassini 01.12】

★追加情報 (01.03. 2007)

衛星「タイタン」のレーダー観測より確認されていた湖状の地形に、現在も液体が溜まっていることがほぼ間違いないという結論が、「ネーチャー」の今週号に発表された。

観測は昨年7月22日、土星周回探査機「カッシーニ」がタイタンにフライバイした際に行われたもので、同衛星の高緯度地方がターゲットとなった。この時、現在もなお液体が溜まっていると思わせる地形が確認されていたが(こちら)、詳細な分析と推論で、液体でほぼ間違いないだろうという結論が引き出された。ちなみにこの液体は液体メタンであるとされる。

(下・北緯80度・西経92度を中心とした420km×150kmの範囲。黒い部分はレーダーエコーが小さかった領域で、極めてなめらか、かつ平らな部分。)
            
いくつかの湖は既に干上がってしまっているが、他方、いまだ液体が存在しているようなものもある。干上がった湖は岸や縁がはっきりした、閉じた地形の名残と伺え、明らかに空っぽになっている。

液体が溜まり浸食を受けた痕跡が確認されない地形が、約15個確認される。この地形は隕石孔や火山カルデラを器とした湖に似ている。ただ、湖が多数集まっている部分は、隕石孔とは考えにくい。

また、地下の液体が噴出して溜まったと読める地形も存在する。ダム湖のように、川線に沿って細長くあふれ溜まったような湖もある。

(右・データを処理して新たに得られた画像。青の濃さがレーダーエコーの強さを表しており、濃いほどエコーが小さい。右下の湖は湖岸が遠浅に干上がっているように見え、また、左上のそれは、湖岸まで液体をしっかり湛えているように見える。)

一方、別の可能性として、砂のような低密度の堆積物が考えられるが、しかしそのようなものを運ぶ風の痕跡が他にないことから、この説は考えにくいという。詳しくはこちらへ【NASA 01.03】