恒星に関する話題

追加: 06.27. 2007

恒星とその進化、それらに関する記事を随時追加しています(報じられる全てではありませんのでご注意下さい)

<追加記事 06.27. 2007>

英アストロノミー・テクノロジーセンターのスザンナ・ラムゼイホワット氏を中心とする研究チームは、M3タイプ低質量星の周囲に高温の中性水素ガスが大量に存在するのを発見した。この恒星は「カメレオン座エータ星団」(Eta Chamaeleontis cluster)に存在する赤色矮星。この星団自体若い恒星の集まりである散開星団で、同恒星もその一つ。

スペクトルの特徴から、それが低質量星から放たれた紫外線に照らされた結果生じたものと見られている。

まだ原始星の域にある若い恒星の星周円盤の研究は、惑星系の研究に直結する重要な分野。近年続々と見つかっている系外惑星は木星型のガス惑星が殆どを占めるが、それらの形成過程を考える上でも重要なものとなる。特に中性水素は木星型惑星の主成分で、その高温状態の存在は、原始惑星の形成途中である可能性を強く示唆している。

また、星周円盤内の中性水素捜索は技術的にも難しかったもので、10mクラスの大型望遠鏡でも挑戦的な取り組み。これまで殆ど検出例は無く、研究チームはジェミニ南天文台(チリ)に最新の高解像度センサーを装着し、検出に成功した。ちなみにジェミニ北天文台でも、最近別の天体で同様の観測に成功している。

観測対象となった恒星は「ECHA J0843.4-7905」と符号のつけられているもので、観測データより付随する高温分子ガスの質量は太陽質量の約3%に匹敵し、それが約2天文単位ほどの距離の所で円盤を形成していると見られている。

ちなみに現在の理論では、木星型惑星は星周円盤が形成されてから約200万年程度で出来上がるものと考えられている。詳しくはこちらへ【Gemini Observatory 06.27】

<追加記事 06.11. 2007>

みなみのうお座の一等星「フォーマルハウト」には、ダストリングの存在が知られている。2005年6月には、ハッブル宇宙望遠鏡によるリングの可視光画像がリリースされたことも思い起こされる。リングが楕円、かつ縁がシャープであること、そしてフォーマルハウト自身がリングの中心からずれていることより、大型惑星の存在可能性が指摘されてきた。

(下・この画像は可視光で撮影されたもので、恒星の周囲を取り巻くリングが可視光で捉えられたのは初。中心に輝くフォーマルハウトからリングまでの距離は約133天文単位(1天文単位は地球〜太陽間の距離)であり、これは太陽から冥王星までの距離の約4倍に匹敵する。)

           

(このようなシャープなリングの存在、また、リングの中心(Ring Center)が恒星(Star)の位置とずれていることは、恒星の周囲を公転する惑星が最低1個は存在する有力な証拠と考えられている。)

「なぜリングがオフセンターなのか、知りたいのです」と語るのは、ロチェスターのアリス・キーレン女史。女史はダストリングと系外惑星の形成に関する研究の第一人者であり、フォーマルハウトも注目すべき対象のひとつとして研究を続けている。

キーレン女史の研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡により得られた最新の観測データを分析し、上述の問題点を説明しようと試みている。最新の分析では、海王星程度の惑星が楕円軌道を描いて公転していると設定すると、現在見る姿に近いそれとなることが明らかになったという。

ただ、惑星軌道が楕円を描くというのは興味深い。ダスト円盤の中で形成される惑星は、ほぼ円に近い軌道を描くのが一般的と考えられているからだ。「何かが惑星の軌道を大きくずらしたのでしょう」と女史は言い、軌道が楕円になった原因を現在検討しているとのこと。

論文が「マンスリー・ノーティス・ロイヤル・アストロノミカル・ソサイエティー」(MNRAS)最新号に記載されている。詳しくはこちらへ【University of Rochester 06.11】

下は、フォーマルハウトのリングと我々の太陽系を重ねて比較した模式図。フォーマルハウトリングは、太陽系のカイパーベルトよりも遙かに外側に位置している。

           

<追加記事 05.31. 2007>

欧州南天文台(ESO)のVLTI光学干渉計および米国立電波天文台(NRAO)のVLBA電波干渉計による観測で、赤色巨星の外層構造が初めて明らかになった。それによると、外層は「分子殻」「ダスト殻」および「メーザー殻」の3層になっているという。

これは、オリオン座の恒星「オリオン座シグマ」(S Ori)の長期観測によって得られたもの。この恒星はオリオン座“三つ星”の左端「アルニタク」のすぐ脇にあり、光度が7等から14等まで変化するミラ型変光星である。質量が太陽程度の赤色巨星で、過去1世紀の間、ほぼ400〜450日の周期で変光を続けている。まさにちょうど、我々の太陽が約50億年後に迎えるであろう姿とも言える。

ミラ型変光星は動径振動の大きい脈動星で、SOriも例外ではない。最小直径は最大時よりも20%小さく、外層からは地球1個/年に匹敵するガスが流れ出している(質量放出)。

「我々は皆、ダストから出来上がっているのです。恒星がその末期にダストをどのように星間へまき散らし、そしてそれが次世代の恒星、惑星、そして人類へと進化していくのか…これを研究することはとても重要なことです」と語るのは、論文筆頭著者のマークス・ウィットコウスキー氏。

観測は、VLTI光学干渉計とVLBA電波干渉計で行われた。巨星といえども、超高解像度が得られる光学干渉計でしか直径の変化を追うことができない。また、電波観測を同時に行うことで電磁波を捉え、外層域の詳細を知る手がかりとする。VLTIでは近〜中間赤外線観測が行われた。

その結果、巨星の直径が地球−太陽間(1天文単位)の約1.9倍から2.3倍の変化をしていることが判明した。これは太陽直径の400から500倍に相当する。下はその模式図で、恒星表面の外側に電離していないガス「分子殻」が、その外側に「メーザー殻」が、そしてその外に「ダスト殻」が広がっている。

            

ところで「メーザー」とはマイクロウェーブ波長におけるレーザー。観測では酸化ケイ素(SiO)が放射するメーザーが検出され、それが上図の赤・緑点で示された領域「メーザー殻」から放射されている。

一方、極小期にはダストの形成と質量放出が盛んであることがわかった。この時生成されたダストは極大期に外へ大きく拡散する。ミラ型では脈動がダスト形成と深く関わっていると考えられており、今回得られた結果もこれを強く支持するものといえる。

更に、酸化アルミニウム(Al2O3)のダストの存在も明らかになった。これが「ダスト殻」であり、粒子サイズは毛髪の1000分の1程度。

           

(上図・左は極小付近、右は極大付近における外層構造。分子殻は厚い下層と薄い上層に分かれており、その外側にメーザー殻(●)が広がる。更にその外側にAl2O3ダスト殻(▲)が広がっている。外層は毎秒10kmの速度で宇宙空間へ流れ出している。)

論文は「アストロノミー・アストロフィジクス」(A&A)に記載されている。詳しくはこちらへ【ESO 05.31】

…これが“本家”である「くじら座ミラ」の場合、極小サイズの時に光度は最大で、極大の時に光度最小となります。変光星は個性があって面白いですね^^ このSOriは一例であって、他の同型変光星はまた異なったものであるでしょう。それらを積み重ねることで、最も平均的なモデルが確定していくと言えます。

<追加記事 06.07. 2007>

恒星単体の上限質量は太陽の150倍程度と見られており、信頼できる数値の最大値は83太陽質量である。ところがこのほど、モントリオール大学の研究チームがこれを上回る恒星を発見した。

これは連星系を成す恒星で、質量は114太陽質量。はっきり確定した数値で100倍を超えたのは、これが初めてのことで、しかも、連星の相方も84太陽質量に達するという。恒星は互いに約3.77日で公転し合っており、地球から2万光年の散開星団「NGC3603」にある。しかも系そのものが、「A1」と符号の付けられた明るい高温恒星の周囲を回っている。

これは、欧州南天文台(ESO)のVLT望遠鏡における赤外線観測データと、ハッブル宇宙望遠鏡によるそれの分析から判明した。両者とも「ウォルフ・ライエ星」として知られる青色超巨星の部類である。

            

上の拡大画像で、「B」と符号の付けられたのが、上で述べた大質量恒星どうしの連星系。スペクトルのドップラー変化を追うことで、連星系であることと、両者の質量とが判明した。一方、「C」と付けられているのも同様の連星系(周期8.92日)であるが、恒星の質量はまだ確定していない。

このような観測は、恒星の進化論を検証する上で非常に重要なデータをもたらす。研究チームは他の領域でも同様の観測を継続中である。

詳しくはこちらへ【Canadian Astronomical Society 06.07】

<追加記事 05.28. 2007>

高温星どうしが至近距離で強烈に恒星風をぶつけ合っている環境が発見された。

NASAの紫外線宇宙望遠鏡「FUSE」が先頃、観測した大マゼラン雲内に、不可解な“光の塊”を発見した。場所はマゼラン雲内の「N51」と呼ばれる領域で、単体の恒星ではなく、連星であることが明らかになった。この「LH54-425」と符号の付けられた連星は共に「Oタイプ」である2つの高温星で形成されており、しかもその間隔は地球・太陽間の6分の1という至近距離で、僅か2日半で公転しあっている。

恒星の大きい方は質量が太陽の62倍、小さい方は37倍に達するといい、合計は100倍近くになる。この規模は、見つかっている中では最も最大級のものである(下は可視光画像。矢印の先に対象天体がある)。

            

一般に、高温星からは強烈な恒星風が吹き出している。これらも例外ではなく、そのレートは太陽の400倍近くに達している。

その上、それらが至近距離で向き合っているため、恒星風どうしは激しく衝突し高温となり、X線や紫外線を放射している。この極限環境は、それそのものの研究対象として非常に興味深いものであり、それらは恒星の進化の研究にも通じている。

両者がいずれ1つのまゆに包まれたような格好で融合する可能性もある。太陽質量の100倍を超える超大質量恒星の代表はりゅうこつ座の「エタ・カリーナ」であるが、これは近年、連星ではないかという指摘もある。ただ、「LH54-425」がガスで繋がりはじめるのは早くても数百万年後と見られている。

詳しくはこちらへ【FUSE 05.28】

<追加記事 05.17. 2007>

画像は、オリオン座の「バーナード30」と呼ばれる領域を、赤外線宇宙望遠鏡「スピッツア」で撮影したもの。この領域はオリオンの“頭”である「オリオン座ラムダ」(ベテルギウスの右上)の上方、地球から1300光年の距離にある。

赤外線とはすなわち熱であり、それを捉えることでダストやガスの分布を浮き上がらせることができる。画像は3波長の赤外線で得られたデータを目に見えるように視覚化したもので、色の違いは波長の違いを表している。

           

緑色に着色されているガスのは有機化合物(芳香族炭化水素)。上の方にポツポツと見える赤ピンクのスポットは星間ガスやダストの“まゆ”に包まれた恒星。一方、オレンジ〜赤みがかったガスは誕生しつつある恒星により照らされているもの。全体に散らばる青い点は、背後に広がる通常の恒星である。(上はリリースされているものの一部。大きいサイズがわかりやすいです。)

この領域が赤外線で詳しく撮影されたのは今回が初めて。観測を主導しているスペインのBarrado y Navascues博士。原始恒星や惑星系を研究している同氏は「この領域は対象としてもってこいであるにもかかわらず、あまり知られていられませんでした。しかし観測の結果、たくさんの低質量恒星や褐色矮星の存在が明らかになったのです」と語る。今回の観測でたくさんの原始恒星が見つかったことに、博士は興奮を隠せない様子だ。

今後この領域は、そのような研究において重要な観測対象となるに違いないと博士は言う。詳しくはこちらへ【Spitzer 05.17】

…同氏のブログがありますが…スペイン語なのでわかりません。。

<追加記事 05.10. 2007>

銀河系で最も古い恒星が、欧州南天文台(ESO)の研究チームによって発見された。「HE 1523-0901」と符号の付けられたそれは、誕生から132億年が経過していると見られている。

これはまさに、最古参とも、生きた化石とも言うべき恒星。宇宙がビッグバンで誕生して137億年が経過していることを考えると、この恒星はビッグバン後僅か数億年のうちに誕生したことになる。

「星の年齢を特定するのは、とても難しいことです」と語るのは、論文筆頭著者のアンナ・フレーベル女史。年齢の推定は放射性元素の存在比を基にするが、極めて正確な計測が必要とされるのだ。

放射性元素による年代測定といえば、炭素14を利用したものが考古学ではポピュラーだ。しかし宇宙スケールの年代になれば、炭素14では役に立たない。炭素14では4万年程度のスパンしか計測できないためだ。

放射性元素は、そうでない元素と異なり、“崩壊”を起こす。例えば炭素の場合、通常の炭素C12に対し、放射性炭素C14が存在する。炭素C14は崩壊して窒素N14になるのだが、例えば最初に100個のC14があったとして、50個のC14が崩壊してN14になるまでに約5730年がかかる(これを「半減期」という)。数がさらに半減するには、さらに5730年かかる。したがって資料に含まれるC14とC12の比を計測すれば、それができてからの経過日数を逆算することができることになる。

ただし天文学的な年代の場合、億年のスパンで測定できなければならない。したがってトリウムやウラニウムのような元素が測定対象となる。トリウム232は半減期が約140億年、ウラニウム238のそれは約45億年であるからだ。

研究チームはESOの大型望遠鏡「VLT」を用いて、「HE 1523-0901」にそのような元素が大量に存在することを確認。高精度のスペクトル観測により、ユーロピウム、オスミウム、イリジウムなども含まれていることが判明した。これらの元素も、ウラニウムなどと同様、年代測定に用いることができる。研究チームはこれまでに6通りの測定を行い、同天体の年齢を測定したという。

論文が、「アストロフィジカル・ジャーナル」誌5月10日号に記載されている。詳しくはこちらへ【ESO 05.10】

…なお、地球以外で初めてウラニウム元素が発見されたのは2001年のことで、同天文台の望遠鏡による観測によります。

<追加記事 05.03. 2007>

アマチュア天体写真家の間でも広く撮影の対象になる球状星団。球状星団を構成する星々は第1世代の古い恒星ばかりで、次世代の誕生はなかったと考えられてきた。しかし近年、その通説を揺らがす観測結果が出てきた。

イタリア・パドバ大学のジャンパオロ・ピオット氏の率いる研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、球状星団「NGC2808」(右)に少なくとも3世代の恒星が存在することを明らかにした。

ここ数年、明るく観測される有名な球状星団「ケンタウルス座ω」(ω星団)などに2世代の恒星が存在する可能性が指摘されており、ピオット氏らは他の球状星団はどうなのか分析を続けてきた。ω星団や今回3世代が確認された「NGC2808」は、球状星団の中でも特に総質量の大きいもので、このことも関係していると見られている。

「これまでこのような(3世代同居)状態は想像もしませんでした。全く、驚きです」と、同氏は語っている。

球状星団は銀河の周辺に分布する恒星の集団で、銀河が形成されたのと同時期に誕生したと考えられている。十万〜数十万と言われる恒星がほぼ同時に誕生し、進化を続けて現在に至っており、個々の化学組成などもほぼ均一と考えられている。新たな恒星の誕生はないと考えられており、星団誕生時の恒星(いわゆる第1世代)をそのまま見ているとされている。

研究チームは、「NGC2808」を構成する個々の恒星の明るさと色を、ハッブル望遠鏡で高精度に観測し続けてきた。

恒星はその明るさと色を基準に分類することができる(色は表面温度に対応)。縦軸に明るさ、横軸に色を取った座標平面の上に個々の恒星をプロットしていくと、いくつかのグループが出来上がる。この図は「HR図」と呼ばれ、恒星研究では重要な図表である。

青い、すなわち高温の恒星は明るく、赤い、すなわち低温の恒星は暗いことは直感的に明らかであるが、このいわば“比例”関係にあるような恒星を「主系列星」(図中、Main Sequence)といい、安定した燃焼状態にある恒星。我々の太陽は6000Kで黄色であることより、主系列星のほぼ中央に位置している。

一方、HR図の右上の方に、赤く(低温)明るいグループがある。これらはいわゆる「赤色巨星」で、低温であるが巨大であるため、光度が大きい。対照的に、左下には高温で暗いグループがあるが、これは「白色矮星」である。

星団の研究においては、個々の恒星を調べこの図を描くことで、星団の寿命や組成を知ることができるのだ。

研究チームは「NGC2808」の星々を調べ上げることで、次のようなHR図を得た。はっきりわかるように3色の補助線が引いてある。
              
黄・青ライン上に並ぶ恒星は、赤ライン上の恒星よりもやや温度が高い一群である。この違いは恒星の組成の違いを意味しており、赤ラインよりもヘリウムが多いことに起因すると考えられる。

恒星は通常、その中心部で水素核融合によりヘリウムを作り出す。ヘリウムを多く含む恒星が存在するということは、その恒星はヘリウムリッチな星間ガスから誕生したと考えるのが妥当であり、このことは、その恒星が後年に誕生したことを意味している。つまりこの図は、“3世代”の恒星が存在していることを表していると言える。ただし、第2,3世代とも第1世代の誕生から数億年以内に誕生したものである。

球状星団では、第1世代の恒星から放たれる放射が星間ガスを吹き払ってしまうため、新たな恒星が誕生しないと一般に考えられている。しかし「NGC2808」のような質量の大きな星団(典型的なそれの約3倍)は、充分な量の星間ガスを引き留めておくだけの重力を持っており、そのガスが第1世代が作ったヘリウムなどを取り込んで次世代の恒星を生み出している可能性が高い。

加えて、第1世代恒星の超新星爆発による衝撃波がこの星間ガスを圧縮、次世代誕生を促したことも考えられるという。

ちなみにこの星団には、約100万個の恒星が存在するという。

ただし、もうひとつのシナリオとしては、実はこの星団は元々大きな銀河で、我々の銀河系の重力で周囲が剥がされ銀河中心部のみが残された矮銀河である可能性もあるという。事実、先述の「ω星団」はその可能性があるという。

研究チームは今後、更なるスペクトル分析を行い、その実体に迫っていく予定である。詳しくはこちらへ【Hubble 05.03】

<追加記事 04.18. 2007>

強烈な放射を放つ高温星の周辺に広がる“危険地帯”の具体的な範囲が、初めて明らかとなった。

アリゾナ大学のゾルタン・バログ氏を中心とした研究チームは「Oタイプ」の高温星とその周辺を赤外線宇宙望遠鏡「スピッツア」で観測、惑星系の形成が困難な範囲の見積もりを行った。スペクトル型が「Oタイプ」の恒星は高温であり、周辺に強烈な紫外線や恒星風を吹き付けている。近傍では惑星系の形成は困難とされているが、具体的な“危険地帯”の範囲が見積もられたことはなかった。

結論として、恒星から1.6光年以内の範囲では惑星の形成は困難という。

惑星は一般に、恒星が誕生時から従える星周円盤の中で形成される。星周円盤の中でダストやガスが惑星の形になるまでは数百万年を要すると考えられており、その間は安定した環境である必要がある。当然、それを乱す外部からの影響があれば、惑星系の形成は難しくなる。

ところで、バログ氏らの研究チームは昨年も関連の調査結果を発表している。「Oタイプ」の恒星が放つ紫外線で、近隣の恒星が持つガス円盤を吹き飛ばす様だった。

(下は波長24ミクロン観測で得られたその映像。右にあるのが高温星で、その左側にある太陽程度の恒星から尾状(Tail)に伸びているが、蒸発(光蒸発)し吹き飛ばされているガス円盤。この様は、太陽に近づいた彗星に似ている。詳細はこちら

           

今回チームが発表したのは、より体系的な調査に基づくもの。彼らはいっかくじゅう座の方向、地球から5200光年の距離にある「バラ星雲」の中の1000個の恒星を観測、星周円盤の捜索を行った。それらは太陽の10分の1〜5倍の質量を有する、年齢200〜300万年程の恒星で、全て「Oタイプ」恒星の近傍に位置するもの。

(下は赤外線で見たバラ星雲。アマチュア天体写真家にも人気の対象で、中心に高温星が集まっている。)

           

それによると、高温星から1.6光年以上離れたところの恒星の約45%には星周円盤が存在し、この割合は、他の(高温星が近くにない普通の)環境における値とほぼ等しい。ところが1.6光年以内ではその値が27%になり、高温星に近くなるほど低下していくことが明らかになった。しかもこの危険地帯では、高温星との距離が2分の1になると、円盤の蒸発速度が2倍になるという。

(下は中心部の拡大で、観測波長によって色分けされている。5個の高温星の周辺に丸く描かれているのが“危険地帯”。高温星から放たれる放射によって吹き飛ばされたダストが緑で着色された部分で、その外側に温度が下がったダスト(赤)が続く。)

            

「恒星は常に動き回っています。もし危険地帯に長く留まっていれば、惑星系は恐らく形成されないでしょう」とバログ氏は言う。

惑星系研究者の中には、我々の太陽は高温星にさらされるような過酷な環境で誕生したと考える者もいる。もしそうであるとしたら、幸運なことに、我々の太陽にはそこを逃げ出すだけの充分な時間があったのだろう。

論文が「アストロフィジカル・ジャーナル」誌5月20日号に記載される予定。詳しくはこちらへ【Spitzer 04.18】

<追加記事 04.10. 2007>

低質量恒星どうしからなる、これまで知られている中で最も間隔が隔たれたタイプの連星系が発見された。恒星は木星の100倍にもならない程度の質量でありながら、両者の間隔は5000天文単位に達するのである。これは、知られている最大値の3倍に達する。

例えれば、2個の野球ボールを300kmの300kmの間隔で置いた状態に匹敵。両者は極めて弱いながらも重力的に引き合っている連星で、その公転周期は50万年に達する。

この系は、セロ・トロロ天文台(チリ)の観測で発見され、ジェミニ南望遠鏡(ハワイ)によって追観測が行われた。報告が「アストロフィジカル・ジャーナル」のレターズ4月10日号に記載されている。

                  

このような長距離で隔てた連星系は、質量の大きな恒星というのが相場だった。単純な話、大質量で引力が強くないと、お互いに引き合っていることができないからだ。だが今回発見された連星系は、低質量星どうしでなぜ重力関係が切れないのか、そもそもどうやって系ができあがったのか、現在のところ全くわかっていない。

連星系は南半球で見ることのできる ほうおう座に存在し、2星にはそれぞれ「2MASS J012655.49-502238.8」「2MASS J012702.83-502321.1」という符号が付けられている。

これまで知られていた最大間隔の低質量星連星系は「Koenigstuhl 1AB」と呼ばれるもので、値は1800天文単位。新発見はこの3倍に達するもので、もしどちらかの恒星の傍を別の恒星が通り過ぎたり、あるいは星間ガスの塊に遭遇するだけでも結びつきが切れてしまうほどの、か弱い引力で保たれている。

発見は、2つの観測を比較してなされた。16年をおいて写された星野の中で、両者の位置が僅かにずれていたのである。ジェミニ南望遠鏡による赤外線観測で、両者は表面温度が2200℃程度の赤色矮星(M型)で、10億年ほどが経過していると見積もられている。

その上、これらは「THアソシエーション」と呼ばれる星団の近くにいることから、更に質量が小さい、褐色矮星の部類に入る可能性も指摘されている。同星団は3000万年程度の若い恒星の集団であり、2星もこれらの仲間だとすると、10億年燃えてきた赤色矮星と考えるよりも、3000万年程度の褐色矮星と考えた方が観測結果と合うからだ。

ただ、正確なところはまだ未知の段階である。詳しくはこちらへ【Gemini Observatory 04.10】

<追加記事 03.29. 2007>

アリゾナ大学のデビッド・トリリング氏らの研究チームは、赤外線宇宙望遠鏡「スピッツア」による観測で、ダスト円盤に囲まれた連星系の存在を確認した。「アストロフィジカル・ジャーナル」4月1日号に論文が記載される。

ダスト円盤は惑星系の存在を連想させるが、もし惑星が存在するならそこは、映画「スター・ウォーズ」で描かれるような(右)、二重太陽が沈む世界と言える。

宇宙には我々の太陽のような単独恒星は少数派で、半数以上が連星系を成している。「連星系が惑星系を有することに、なんの困難もないことを意味しています」と語るのは、トリリング氏。SFで描かれる世界は、実はありふれたものなのかも知れない。

これまで、恒星が連星系の場合は両者が1000天文単位(1天文単位は地球・太陽間距離)も離れたような場合で惑星系が形成されると考えられてきた。既に200を超える系外惑星が発見されているが、そのうち50がこのようなタイプの連星系に存在する。

だが彼らは、500天文単位以下の間隔の連星系を観測、ダスト円盤の存在を追った。ダスト円盤とは岩石の材料となるケイ素などの元素を含んだ円盤のことで、そのような円盤中で惑星が形成されると考えられている。

このような連星系に惑星が存在するとはかつては考えられなかった。だが近年、そうでもないケースが見つかりつつあり(こちら)、彼らは偏見抜きの集中サーベイを行ったのだ。

サーベイは、地球から50〜200光年の範囲に散らばる69の連星系に行われた。これらは我々の“中年”太陽より若く、質量も大きいものばかりで、このうち約4割が円盤を有していることが判明したという。

この数値は単独恒星に円盤が存在する割合よりやや大きい程度。これはつまり、連星系であっても、単独恒星の場合と同様にダスト円盤を持ちうることを意味している。

しかも驚くべき事に、それらの約6割が近接な連星系。恒星どうしの間隔は高々3天文単位といい、円盤は両者を囲むような格好で存在するという。

(下は恒星の間隔の違いによる分類。3〜50天文単位のセパレーションでは円盤は見出されず、50〜500天文単位では片方の恒星に円盤が観測された。)

             

「近接な連星ほど円盤を持つことがわかり、とても驚いています」とトリリング氏は語ってる。詳しくはこちらへ【Spitzer 03.29】

<追加記事 03.22. 2007>

オリオン3つ星の南にあるオリオン星雲。画像に映し出されているのは、その中を駆け抜ける“弾丸”だ。

下の画像は、ハワイ・マウナケアのジェミニ天文台の北望遠鏡で撮影されたオリオン星雲の一部(右・詳細)。レーザー光学補正システムを併用して撮影されたもので、この領域のかつてないシャープな映像が得られた。

レーザー光学補正システムは高度90km付近のナトリウム原子をレーザー光で発光させ、このスポットで大気の揺らぎを検出、映像から差し引くというもの。この技術はすばる望遠鏡などでも実用化されており、地上望遠鏡でありながら驚異的な映像を得ることができる。

オリオン星雲は地球から約1500光年の距離にある。たくさんの恒星が誕生しつつある“星のゆりかご”であり、他にはない特徴を見ることができる。

            

上の画像はジェミニ北望遠鏡に装着された近赤外線撮像センサーによって得られたもの。飛びゆく“弾丸”は青く着色されているが、これは鉄原子の存在を示している。速さは秒速400kmに達し、ざっと音速の1000倍超。その衝撃加熱で5000℃に達している。そしてその後方に伸びる、オレンジに着色された“飛行跡”は、擾乱された高温水素ガスだ。

“弾丸”は1983年に発見され、大質量星の形成における何らかの劇的な活動によりはき出されたものだろうと推測されている。詳しくはこちらへ【Gemini Observatory 03.22】

<追加記事 03.07. 2007>

きりん座の方向・530光年のところにある連星系「きりん座Z」(Z Cam)の周辺に電離水素ガスが殻のような形で漂っていることが明らかとなった。NASAの紫外線域銀河観測宇宙望遠鏡「ギャラクシー・エボリューション・エクスプローラー」(GALEX)により明らかになった。

GALEXは地球を周回する宇宙望遠鏡で、銀河を紫外線波長域で観測するのが主任務だが、恒星などの天体も観測対象としている。

「きりん座Z」は、古くから知られている「激変星」のひとつ。激変星とは突発的に増光する天体で、いくつかタイプがあるが、基本的に赤色矮星と白色矮星からなる近接連星系であるのが特徴。赤色星の外層ガスが白色矮星に流れ込むことで降着円盤を形成、降着ガスが臨界点を超えた際に爆発・増光を起こす。いわゆる「新星」(超新星ではないことに注意)も、この激変星の一種である。

ちなみに「きりん座Z」は、「ふたご座U型激変星」に分類される。この型は10日〜約10年の間隔で突発的増光を繰り返すものであり、「きりん座Z」は約3週間おきに増光を繰り返している。

この爆発は、熱的不安定に陥った降着円盤が安定に戻ろうとする(降着ガスが白色矮星になだれ込む)際に見られるアウトバーストであり、積もったガスが暴走核反応で吹き飛ぶ「新星」とは異なる(増光も新星ほどではないので「矮新星」と呼ばれている)。ただ、最終的には積もりに積もったガスに点火、新星爆発を起こすと考えられているが、それが実際に観測されたこともなければ、それらしき残骸が見つかったこともなかった。

ところが、「GALEX」が2004年1月に観測した「きりん座Z」のデータを解析すると、同天体の周辺に殻構造をした電離ガス雲が漂っているのが発見された。このガス雲はまさにその新星爆発によって吹き飛ばされたものと考えるのが自然であるといい、拡散を逆算すると、数千年前にそのような爆発が起こったと考えられるという。

            

このガス雲は別の地上望遠鏡によっても、確かに密度の高い水素ガス雲であることが確認されたという。(上画像・中心がZ星であり、5時の方向と、8時〜11時の方向に淡く見えるのが発見された水素ガス。右上の枠外画像は、ガス雲だけを強調したもの。)

今回の発見は雑誌「ネーチャー」3月8日号に記載されており、論文執筆者達は「この新星爆発は数日から数週間の間、夜空に最も明るく星として見届けられたに違いない」と記している。詳しくはこちらへ【NASA/JPL-Caltech 03.07】

<追加記事 02.15. 2007>

恒星が生まれている、いわゆる“星のゆりかご”として知られる「M16」、通称「わし星雲」。へび座の方向5500光年の場所にあるこの領域は可視光(左下)で見ると3本の“柱”がそそり立つ姿が見える。これらは“Pillar of creation”とも呼ばれるガス星雲で、その先端などで恒星が誕生しつつあることがわかっている。

ちなみに「M16」は正確に言うと散開星団であり、この柱の手前の方に存在する若い星々の集団を指す。同星団も背後のガス星雲から誕生したと考えられている。ガス星雲には「IC4703」という固有符号がつけられており、M16の恒星から放たれた紫外線を受けて輝いている。

           

一方、右上はX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」による、X線波長域で見た同じ領域。X線のみに感応しているため、左の可視光画像とは全く異なった姿を映し出している。柱は全く見えず、代わりにビー玉のような色とりどりの粒が散らばっており、赤、緑、青はそれぞれ低、中、高エネルギーX線源に対応している。これらは誕生して間もない、若い恒星である。

ところで、柱そのものの中には、このようなX線源は殆ど存在しない…僅かに2ヶ所、柱の先端部に認められるだけである。つまり若い恒星は存在しないわけで、柱の中での恒星形成はほぼ終わった段階であると考えられる。その僅か2つの恒星のうちひとつは太陽と同程度、もうひとつは太陽の5倍程度の質量を有するものと推測されている。

恒星は“EGG”と呼ばれる、高密度なガス塊の中で形成されていくと考えられている。この柱にも多くのEGGが存在するが、それらからX線は検出されておらず、これもまた、殆どのEGGが恒星をはらんでいないことを示唆している。ただし、別の赤外線観測によると、73個のEGGのうち11個に恒星の“胎児”が存在し、うち4個は(褐色矮星止まりでなく)しっかりした恒星に進化するに充分な質量を有しているようである。これら4個は、あまりにも初期過ぎてまだX線を放射していない状態と推測されている。

柱の中の僅かな“赤ちゃん恒星”は、わし星雲の歴史では最後の世代であろう。M16が形成されたのは数百万年も前のことで、当時はいわば“ベビーブーム”だったと言える。

            

(上はチャンドラによるわし星雲周辺の広域観測で得られた画像。無数の光点は若い星々で、右上の集中している領域は「NGC 6611」と符号がつけられた散開星団。これらもやはり、ガス雲の中で形成されたと考えられている。)

詳しい論文が「アストロフィジカル・ジャーナル」誌1月1日号に記載されている。大きいサイズの画像など詳しくはこちらへ【Chandra 02.15】

…この柱自体が、今まさに最後の時を迎えつつあるという説があります。この近くで数千年前に発生した超新星爆発の衝撃波が既に到達、崩壊が始まりつつあるという分析が今年初めに発表されています。EGGもガスを吹き飛ばされ、中の恒星は未熟のままでむき出しになるかも知れないとのこと(詳細はこちら)。

<追加記事 01.08. 2007>

NASAのハッブル宇宙望遠鏡とハワイのケック天文台の大型望遠鏡による観測で、スーパーサイズな恒星のひとつに関し、これまで考えられていた以上のガス流出が起こっていることがわかった。

この恒星は「おおいぬ座VY」。赤色超巨星(supergiant)であり、また、極めて高い光度で輝いているため「極超巨星」(hypergiant)に分類されている。放出されたガスはループやアーク(弧)を描いており、ガスの塊が様々な方向へと運動している。この恒星は過去1000年間で何度もアウトバーストを繰り返しており、終焉が近いことを示している。

ミネソタ大学のロバータ・ハンフレイズ女氏率いる研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡とケック望遠鏡を用い、この恒星がまき散らすガスの運動を詳しく測定した。おおいぬ座VYは大質量ガスを驚くべき割合で放出し続けており(質量放出)、それ故、研究対象としても重要な恒星のひとつである。

大質量星は進化の末期に質量放出をすることがわかっているが、モデルの検証などの面からもこの天体は重要なのである。「超巨星の質量放出は単純に、球対称で一様なアウトフローをしていると考えられているが、この恒星の場合は非常に複雑です」とハンフレイズ氏は語る。「我々はこの観測によって、ガスがどのように放出されてきたのか、完全に描き出したのです。」

この天体は過去100年以上に渡り研究され続けてきた。地球から5000光年の場所にあるこの恒星は、太陽の30〜40倍の質量を有し、50万倍の光度を放っている。そのサイズは、仮に太陽系に据えたとすると、外層は土星軌道に達する。

ハッブル望遠鏡による観測で、過去のアウトバーストで放出されたガスが織りなすアークや塊がはっきりと浮かび上がった。アークの向きがランダムであるため、爆発は局所的な活動域で固有に生じたものであることが明らかである。

一方、ケック望遠鏡で行われたスペクトル観測では、より詳細なガス運動が描き出された。ガスの速度や方向を分析することで、やはり爆発は局所的なものであることがわかった。

下はハッブル宇宙望遠鏡で撮影されたおおいぬ座VY。左は可視光で撮影された姿で、右は偏光フィルターを通して撮影されたもの。可視光画像から、細いアークやフィラメント構造が明らかである。

            

一方、偏光は3方向観測され、右はそれぞれの画像データに色をつけて組み合わせたもの。

最も外側に散らばるガスはおよそ1000年前に放出されたもので、恒星の傍のガス塊は最近、約50年ほど前に放出されたものであるという。

また、活動域やプロミネンスに付随する磁場がアークなどの形成に関わっているのではないかとチームは考えている。磁場の強さなども観測されたが、その結果、この磁場は大質量放出を引き起こすに充分なエネルギーを与えうることがわかったという。

このフェーズは、約50万年ほど続くと考えられている。大質量恒星はその進化の最後に超巨星へと変化するが、外層からは大量のガスが流出していく。おおいぬ座VYの場合、既に自身の質量の半分を放出したと考えられている。最後は、超新星爆発を迎える。詳しくはこちらへ【Hubble 01.08】

<追加記事 12.11. 2006>

画像は、ハッブル宇宙望遠鏡により撮影された射手座のNGC6357の中心部。小規模の散開星団が存在し、「Pismis 24」と呼ばれてい(左)る。恒星の中には極めて大質量で、強い紫外線を放っているものがある。

            

この中で最も明るく輝くのは「Pismis 24-1」と符号がつけられている恒星(画像・右上)。この恒星は、200ないし300太陽質量を有する、銀河系では最も重い、空前の大質量恒星と考えられたことがあった。ところがハッブルの観測により、この恒星が二重星であることが判明した(画像・右下)。この観測より、お互いの質量は共に100太陽質量程度とみられている。

そもそも理論的に、恒星単体の上限質量は150太陽質量程度と考えられていたため、同天体を単体と考えるのはやや無理があった。

更に、スペクトル観測により、片方の恒星が更なる連星をなしていることが判明した。これはハッブルでも分解して捉えることができないほど近接した系をなしている。

観測は今年4月行われた。詳しくはこちらへ【Hubble 12.11】

<追加記事 11.06. 2006>

NASAのガンマ線バースト早期観測衛星「スウィフト」は昨年末、太陽系の近傍の恒星で発生した大規模なフレアをキャッチしていた。しかもそれは、太陽よりも遙かに激烈なレベルのものだったという。

2005年12月、「UPegasi」と呼ばれるペガサス座の連星で発生した。フレアが生じた恒星は太陽より僅かに軽いものであったが、フレアのエネルギーは太陽の1億倍を超えるものであったという。

もしこのレベルのフレアが太陽で発生したら、地球上では大量絶滅などの甚大な影響がもたらされることになる。ただし太陽は非常に安定して燃えているためこのようなフレアが生じることはない。また、UPegasiは太陽系から近いとはいえ、135光年離れたところにあるため、そこで生じたフレアの影響が地球に及ぶこともない。

なお、太陽以外の恒星フレアが直接検出されたのは初めてのこと。「あまりにも強烈だったため、最初は恒星の爆発かと思いましたよ」と語るのはメリーランド大学のラッチェル・アステン氏。「太陽フレアについては我々は多くの情報を持っていますが、しかしあくまでそれは、同じ恒星からのものです。このUPegasiのフレアは、太陽以外の初めてのもので、詳しく調査する格好の機会ですね。」

フレアは電波域からX線域の広範囲にわたる放射を伴う大規模な爆発現象で、太陽フレアはコロナで引き起こされることがわかっている。太陽の場合、X線放射は数分間続くだけだが、UPegasiの場合は数時間続いていたという。このことからも、UPegasiのフレアがいかに大規模だったかがわかる。

フレアはコロナから太陽表面へ向かって生じる電子の大量降下が関わっている。太陽面における磁場のねじれと結合が、このような電子の大量降下と加速を引き起こしているのではないかと考えられている。

(右は2005年9月、NASAのTRACE衛星によって捉えられた太陽フレア。明るく輝くループは磁場(磁力線)を表しており、このループのねじれと結合がフレアの引き金になっている。)

ところで、フレアを起こした恒星は連星系「II Pegasi」をなす2つの恒星のうち、0.8太陽質量の方。ちなみに伴星はその半分の質量の0.4太陽質量。両者は極めて接近しており、半径の数倍程度しか距離が離れていない。このためお互いに作用する朝夕力は非常に大きく、これが高速自転を実現している(恒星どうしが近接=連星周期が数日、かつ、朝夕力の結果同じ面を向けあっているということは、自転周期も連星周期とほぼ同じ程度であるということですね@管理人)。

具体的には、太陽が28日で自転するのに対し、II Pegasiの恒星は7日で自転する。この高速自転が、強いフレアを引き起こしていると考えられる。

なお。若い恒星は自転が早く、フレアも活発であり、これは我々の太陽にもかつて当てはまっていた。一方、II Pegasiは少なくとも我々の太陽よりも10億年は年齢を積んでいると考えられており、若いとは言えない。ただ、それが上述のような連星状態であるため、若い恒星同様、活発なフレア発生を維持していると考えられるという。

ちなみにこのフレアの発見は、放射された高エネルギーX線の検出でなされた。スウィフトは元々ガンマ線バーストを瞬時に追跡するための衛星であるが、フレアで発生した高エネルギーX線をガンマ線バーストのアラートと“勘違い”したのであった。詳しくはこちらへ【NASA 11.06】

<追加記事 10.27. 2006>

右は、NASAのスピッツア赤外線宇宙望遠鏡を通して見つかった、蛇の形をした暗黒星雲。銀河系の中心方向・いて座の11000光年離れたところに横たわっている。

暗黒星雲は分厚い星間ガスやダストの塊で、低温のため分子状態で存在し、周辺の恒星などが放つ光を吸収するため黒く見える。

一般に暗黒星雲は新たな恒星が誕生する場でもあり、この蛇状星雲も例外ではなく、所々に赤く輝いているのは、ガスが収縮し、熱を発し始めている姿であり、それらは太陽の50倍にも達する大質量星である。

このような場所を調査すると、恒星がどのように形成されていくのかを知る手がかりを得ることができるのだ。大質量恒星は、我々の太陽のような低質量の恒星と同じプロセスで誕生するか否かといった問題はまだ解決されていない。詳しくはこちらへ【NASA 10.27】

…下の方の赤い円形のやつは、超新星爆発の残骸でしょうかね〜

<追加記事 10.03. 2006>

アリゾナ大学スチュワード天文台の研究チームは、NASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツア」による観測で、高温の恒星から吹き出す強烈な紫外線と恒星風が、近隣の恒星が持つガス円盤を吹き飛ばしている姿を発見した。

チームは、地球から2450光年の距離にあるOタイプのスペクトルを持つ高温星とその周辺をスピッツアにより観測した。その結果、その近隣に存在する太陽程度の質量を持つ恒星が有するガス円盤が、高温星から吹き付ける紫外線と恒星風で蒸発(「光蒸発」という)し、吹き飛ばされている状態を見つけたという。

(下は波長24ミクロン観測で得られた映像。右にあるのが高温星で、その左側にある太陽程度の恒星から尾状(Tail)に伸びているが、蒸発し吹き飛ばされているガス円盤。この様は、太陽に近づいた彗星に似ている。)

            

Oタイプの恒星は最重量級の恒星で、太陽の100倍程度の質量に達することもある。その放出するエネルギーは、太陽の100万倍以上になる。

この哀れなガス円盤では、惑星系が誕生する確率はゼロに等しいといえる。ちなみにこの光蒸発の過程は、太陽に接近した彗星が尾をなびかせる過程と似ている。

研究チームはそもそも、Oタイプ恒星に近すぎて円盤を持たない恒星を探している途中だったという。ところが彼らがたまたま見つけたのは、その円盤がはがされていく最中のものだったというわけだ。

この発見をまとめた論文が最近、「アストロフィジカル・ジャーナル」にアクセプトされた状態だという。詳しくはこちらへ【Spitzer 10.03】

<追加記事 09.27. 2006>

太陽の10倍以上の質量を持つ大質量恒星がどのようにその質量を獲得したのか、そのメカニズムを明らかにする重要なヒントが米国立電波望遠鏡(VLA)の観測で見つかった。

この観測と研究はスペイン・バルセロナ大学のマリア・テレサ・ベルトラン女史らの研究チームによって行われてきたもの。これまで大質量恒星の形成過程にははっきりしない部分があったが、女史らのチームはそれを明らかにする重要な手がかりを発見した。

同チームは地球から約25000光年の距離にある「G24 A1」と符号のつけられた若い大質量恒星を電波望遠鏡で観測した。この恒星は太陽の約20倍の図体を抱える。

これまで恒星は、星間ガス雲が自己の重力で崩壊(収縮)し、形作られるものとされてきた。だがこの考えは小質量の恒星には妥当であるものの、大質量の恒星にはムリがあるとされてきた。シミュレーションで太陽の8倍を超える質量の恒星をこのメカニズムで作ろうとしても、途中で様々な放射が優勢となり、(放射による“斥力”を収縮ガスが受け)形成がストップしてしまうのだ。

この困難を解決するひとつのアイディアとしては、誕生しつつある恒星の周囲に降着円盤が存在し、その円盤から安定してガスが降着しているというものがある。恒星の誕生が進むにつれ外への放射が強まるが、放射はガス円盤に当たることがなく、つまり物質の降着を妨げることはないという考えだ。このモデルは同時に、円盤の中心軸に沿って上下に、一部の物質が強力に吹き飛ばされることも予言する(右)。

このモデルそのままの姿に存在する大質量恒星として彼らが見つけたのが、「G24 A1」なのだ。

彼らは電波望遠鏡を用い、アンモニア分子が放射する23GHz付近の電波の動きを詳しく追った。動きはそのドップラーシフトから知ることができるが、それによると、ガスはドーナッツ状の円盤に向かって落ち込んでいることが判明したという。

「私たちの発見は、大質量恒星の誕生メカニズムに“円盤モデル”が有効であることを示唆する重要なものです」と女史は語る、詳しくはこちらへ。【NRAO 09.27】

下の画像は、NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」によって得られたデータを擬似カラーで表現したりゅうこつ座の星団「NGC3576」の姿。NGC3576は巨大なHU領域で、地球から9000光年のところに位置する。低エネルギーX線(0.5−2.0keV)域の放射を赤で、高エネルギーX線(2−8keV)域のそれを青で示してある。

チャンドラによる観測では点源のようにみえるX線源の塊が捉えられており、その一部は若い大質量の、大量のガスを放出している恒星である。また、青い部分はガスの奥深くに埋もれた恒星たちの姿。

               

「HU領域」とは、恒星が誕生を続けている濃密な水素ガス雲のことで、イオン化した水素原子(電離水素)が大量に含まれていることから名付けられている(ちなみに中性水素は「HT」)。この領域には高温で若く、かつ大質量の恒星が存在し、そのような恒星は強力な紫外線を放射し、周囲のガス雲を電離させ、散光星雲を形作っている。

NGC3576は非常に密度が高いので、チャンドラによって得られた画像中では、多くのそのような恒星は埋もれてしまっている。恒星の塊は赤外線観測では認められているが、しかし、存在する恒星の数では散光星雲としての輝きを維持するには不十分であることがわかっている。

一方、電波観測で、HU領域の外縁から外側に向かった、膨大な量の電離ガス流の存在が認められている。このX線データと電波観測データをヒントに、埋もれた塊から吹き出す強力な恒星風に迫ることができるのだ。大きい画像と詳細はこちらへ。【Chandra 09.27】

<追加記事 09.19. 2006>

オリオン星雲で、生まれたばかりの二つの恒星が、水素ガスを広範囲に噴き出している「アウトフロー」という現象を鮮明な画像でとらえることに、国立天文台や名古屋大などの研究チームが成功した。

恒星の進化の仕組み解明につながる成果で、20日付の米天文学術誌に掲載される。

観測したのは太陽の約25倍の質量を持つ「IRc2」と、7倍以上の質量がある「BN」。ともに地球から約1500光年の距離にあり、南アフリカに設置した赤外線望遠鏡で撮影した。IRc2やBNから噴き出したガスは、差し渡し約2光年(1光年は約9兆5000億キロ・メートル)にも広がっていることがわかった。【読売 09.19】

<追加記事 08.31. 2006>

下の画像は、NASAのスピッツア赤外線宇宙望遠鏡でこれまでに得られた30万ショットを越える画像をつなぎ合わせて作られた、大マゼラン星雲の赤外線画像。この中には100万個を越える天体が含まれている。

               

画像は疑似カラーで、波長3.6ミクロンを青、8ミクロンを緑、24ミクロンを赤で表している。青は年月が経過した恒星から発せられるもので、中央部に集中している。その周辺の、混沌とした輝く領域は高温かつ大質量の恒星が分厚いダストに埋もれているところ。そしてその恒星によって熱せられたダストが赤い部分に対応している。なお、緑の部分は比較的低温の星間ガスや分子サイズのダストが広がっているところである。

この画像はまさに、大マゼラン雲の“ダスト地図”と言える。これにより、天体の輪廻転生のメカニズムを読み取ることができるのだ。60億年ほど前、この星雲が銀河系に最接近した際、その重力で“かき回され”、その結果、大質量星の爆発的な誕生が引き起こされたと考えられている。この状態はまた、数十億光年も離れた、いわば若い銀河における恒星形成のプロセスと似通っていると考えられており、マゼラン星雲は、若い銀河の研究に通じる重要な研究対象でもある。詳しくはこちらへ【Spitzer 08.31】

<追加記事 08.23. 2006>

ある種の巨大銀河では、中心に潜む超大質量ブラックホールが新たな恒星の誕生を阻んでいることが、NASAの銀河観測宇宙望遠鏡「ギャラクシー・エボリューション・エクスプローラー」の観測で明らかになった。

この宇宙望遠鏡は約800に及ぶ、様々なサイズの楕円銀河を観測した。その結果、より質量の大きい(もしくは巨大な)銀河ほど、若い恒星が少ないという関係が見出されたという。巨大銀河はそれに応じた大質量ブラックホールを有することが知られているので、研究者達は、ブラックホールが若い恒星の少なさに関係していると考えている。

「巨大銀河における超大質量ブラックホールは、恒星の形成に厄介な環境をもたらしています」と語るのは、チームを率いる韓国・ヨンセイ大学のイ・ソクヨン教授。

これまでも、ブラックホールが恒星誕生を阻んでいると予測はされていたが、それを確かめる充分な方法がなかった。2003年に打ち上げられたギャラクシー・エボリューション・エクスプローラーの超高感度紫外線センサーは、恒星が誕生する際に放射する紫外線の観測に大きな威力を発揮し、今回の結論が導かれた。

研究チームは、ブラックホールが銀河のサイズに対してある一定の大きさに達すると、ブラックホールの影響のため、その銀河ではもはや恒星が誕生しないことを発見した。

また、この要因として2つのメカニズムが考えられるという。1つは、ジェットが恒星を形成するためのガスを吹き飛ばし、それが欠乏してしまうというもの。もう1つは、ブラックホールの周囲のガスが高温になり、恒星の形成につながるガス収縮を阻むというもの。

論文が「ネーチャー」8月24日号に記載された。くわしくはこちらへ【NASA/JPL-Caltech/GALEX 08.23】

…上の記事にはありませんが、彼らは楕円銀河でも恒星が誕生していることをつきとめています。これまで、楕円銀河は古い星ばかりからなり、新たな恒星の形成は行われていないと考えられてきました。

<追加記事 08.17. 2006>

画像は、ハッブル宇宙望遠鏡により撮影された球状星団「NGC6397」の拡大画像。左の画像の中にある、小さい2つの囲みをそれぞれ更に拡大したものが右の2つ。このうち、青枠の中に写っているのは白色矮星で、赤枠の中のそれは赤色矮星である。
                

NGC6397は地球から約8500光年の距離にある、比較的近いところにある球状星団で、観測も比較的容易い。これはカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のハーベイ・リッチャー氏率いる研究グループが得たもので、上の2星は、これまでに撮影された中では最も暗い恒星であるという(赤色矮星は26等級、白色矮星は28等級)。

現在チェコで開催中の国際天文学連合(IAU)の総会で発表された。また、今月18日発行の「サイエンス」誌にも記載されている。

「この星団の中で、水素燃焼をする恒星は全て網羅しました。もはや、発見を待っている微かな星はないでしょう。我々は、安定した核反応を支えることのできる最小限の恒星を発見したのです。これよりも小さい恒星は、もはや暗すぎて観測にかからないでしょう」とリッチャー氏は語る・

ハッブルでは、非常に小さく暗いが、太陽のように核反応で自身を輝かせている赤色矮星と、恒星の“燃えかす”の1つである白色矮星のサーベイが行われた。

ところで、最初は高温の白色矮星も時間の経過と共に少しずつ冷えていくが、冷えるにつれ赤みを帯びていくのではなく、表面での化学組成の変化により、むしろ青みを帯びていくという予測がある。今のところ、実際に青みを帯びたそれは見つかっていない(…彼らとしてはそれを見つけたいのでしょう^^@管理人)。また、白色矮星を調べることにより、星団の進化などを辿ることもできる。事実、このNGC6397は約120億年が経過していると考えられている(NGC6397と太陽系の位置関係は下・上図で、左下が星団の全景)。

             
             

右上のグラフは、この星団を構成する恒星を丹念に調査して纏め上げられた、いわゆるHR図。右側のグループが主系列、で、低温(赤)の恒星は輝度も小さく、高温(黄色〜白)のそれは、輝度も大きいことが示されている。

一方、左側のグループが白色矮星で、これもその温度によって明るさが異なってくることが示されている。ただ、低温側のある点から色が青みを帯びるため、ヘアピンカーブを描くような分布図になっているが、この部分だけはまだ推測の域をでない。

このような地味な調査は、恒星の進化はもちろん、宇宙全体の進化のシナリオにも影響を与える重要なデータとなる。大きいサイズの画像など、詳しくはこちらへ【Hubble 08.17】

<追加記事 08.14. 2006>

ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターのダン・マロン氏を始めとする研究チームは、恒星を形成しつつある高密度の星間ガス領域が、“砂時計”のような形をした磁場を形成していることを発見した。

関連論文が「サイエンス」8月11日号に記載されている。

研究チームはペルセウス座の方向980光年の距離にある原始星形成領域「NGC 1333 IRAS 4A」を、スミソニアンのサブミリ波電波干渉計を用いて観測した。「この領域を調査対象に選んだのは、過去の研究より、砂時計の形をした磁場の存在を示す可能性が高いと判断したからでした」と語るのは、マロン氏。「NGC 1333 IRAS 4A」はペルセウス座分子雲「NGC1333」の一部。NGC1333は太陽程度の恒星を13万個以上も含むガス星雲で、恒星の誕生が盛んな領域。

(画像・左はスピッツア赤外線宇宙望遠鏡が撮影したNGC1333の姿。誕生しつつある恒星(原始星)は可視光での輝きは発しないので、赤外線波長による観測でないと見ることができない。4種類の赤外波長による観測を重ね、違いがわかるように着色したもの。右は NGC1333-4A 領域。詳しくはこちらへ)

            

これまで、恒星の形成モデルによると、重力収縮を始めた星間ガスは、それ自身が形成する磁場(=反発力)に打ち勝つ必要性があることが予測されていた。詳しい計算によると、その磁場の形は砂時計に近いとされてきた。

星間ガスやダストは磁力線に沿って並ぶので、ガスなどの分布を干渉計で調べることで、磁場の強さや分布を調べることができる。「スミソニアン干渉計の特殊偏光検出能力により、この場の直接解析が可能となりました。今回の発見は、理論で予言されていた事柄を確かなものとする、最初の例ですね。」と語るのは、チームの1人であるランプラサド・ラオ氏。

(右上の画像で、赤い点線が磁場の分布。砂時計のくびれのような感じですね。大きいサイズはこちら

この発見はまた、IRAS 4A においては、重力収縮を減速させる要因として、磁場による圧力が乱流によるそれもより影響力が強いということを示しているという。このことは、他の恒星形成の場でのほぼ同じではないかと彼らは考えている。

IRAS 4A では、あと100万年もすると、2つの恒星が誕生するとみられている。詳しくはこちらへ【Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics 08.10】

…まるで超音波診断で胎児の胎動をみているような感じですね!

<追加記事 08.14. 2006>

冬の夜空に輝くオリオン座(左下)。可視光ではおなじみの姿を赤外線波長で撮影すると、見た目はがらりと変わる。右下は1983年に運用された赤外線宇宙望遠鏡「IRAS」によって撮影されたオリオン座。淡く広がるのは星間ガスやダストで、ひときわ輝く領域は「オリオンA」(下半身の中央)、「オリオンB」(“三つ星”の左端)と呼ばれており、ここでは大量の恒星が続々と誕生している。およそ“少子化問題”とは縁のない領域だ。

            

このような領域は、恒星の誕生メカニズムを研究するにおいては、非常に重要な観測対象である。オリオン領域は古くから知られた場所であるが、まだまだ知られていないことは多い。

最近、NASAの赤外線宇宙望遠鏡「スピッツア」によってこの辺りの観測が行われた。スピッツアはオリオンA,B双方の領域に、ダスト円盤を従えた恒星をざっと2300個、まだダスト円盤を従えるまでにない、生まれたての恒星を200個発見した。下は、スピッツアによるオリオンAの拡大観測(上の画像で、白線に囲まれた領域)。

            

この拡大領域には約800個の、太陽程度の恒星が存在する。この中で更に拡大したのが別枠に示された3箇所で、これらの恒星はこのような“地方都市”を形成し、いわば分散型集合形態で存在している。画像の中で緑色に着色された部分は、ジェットの存在を示している。

赤外線で観測すると、可視光では全く見えなかった円盤やジェットなどの存在を検知することができるのだ。

ところで、一連の観測により、誕生したての恒星の分布に関し、興味深いことが明らかとなった。ダスト円盤を従えた恒星の約60%は“地方都市”に存在し、15%はその郊外の“町村”に、そして残りの25%は点々と散在するというのだ。これまでそのような恒星の90%は“都市住まい”だと考えられていただけに、この結果、特に25%もの恒星が点在分布していることは、恒星誕生の世界観に大きな変化をもたらす可能性もある。

また、このような研究は、我々の太陽が誕生した環境に迫ることにもなるなど、極めて奥が深い。詳しくはこちらへ【Spitzer 08.14】

<追加記事 08.02. 2006>

欧州南天文台(ESO)の望遠鏡VLTを用いて観測を続けている研究者らがこのほど、褐色矮星と白色矮星からなる連星系を発見した。この不自然な組み合わせは、かつて白色矮星が巨星だった頃、この褐色矮星がその巨星の内部(外層)を回っていたことを意味している。

「大体、(褐色矮星にとっては)非常に厄介な進化を辿るはずなのです。ですがいま目の前にある状態は、褐色矮星が巨星に飲み込まれても、殆ど影響を受けなかったということを示しています。」と語るのは、英・キーレ大学の研究員ピエール・マックステッド氏。

見つかった連星系では、双方の天体は地球−月間の距離ほどの隔たりを持ち、僅か2時間で公転し合っている。普通、矮星は必ずしもそのような至近距離に位置しない。元々、太陽−地球間の距離の隔たりはあったものが、恒星が巨星へと膨張した際に飲み込まれ、軌道を落としていったはずである。

研究チームの一員、マット・バーリー氏は、「褐色矮星が窒素大気を有するため、巨星の水素外層に包まれても、(窒素の方が充分重いので)はがされる事がなかったのだろう」と考えている。

だが、相方(巨星)は全く無傷というわけではなかったはずである。褐色矮星が恒星の中心に向かって落下していくにつれ、衝撃波が巨星を引き裂いていったはずだと、マックステッド氏は語る。

また、褐色矮星は堪え忍んだとはいえ、その軌道は最初よりもずっと内側に落ち込み、加えて、白色矮星からの放射と潮汐力により非常な高温状態に曝されているのである。

相対性理論によれば、この連星系の間隔も周期も更に短くなり、約14億年後には、1時間ちょいの公転周期になると考えられている。この時には、褐色矮星の大気が白色矮星に降着を始めるだろうと、同チームのメンバーは考えているという。詳しくはこちらへ。ESOの発表はこちら【SpaceDaily 08.02】

<追加記事 07.25. 2006>

形成の真っ最中にある恒星の周囲を取り囲むダストの円盤が、恒星の自転にブレーキをかけている証拠が見つかった。NASAのスピッツア赤外線宇宙望遠鏡を使った恒星の観測により明らかになった。

恒星は、星間ガスが収縮することで形成されていく。ガスが僅かでも回転運動をしていると、収縮、すなわち中心に寄るにつれて角速度は速くなっていく…ちょうどスケーターが広げた腕を縮めるとスピンが高速になるのと同じ原理だ。

こうしたプロセスにより、形成されつつある恒星は一般に高速回転をしており、その自転周期は半日かそこらに達する。その周期はもっと短い可能性もあるが、しかし、それにブレーキをかけているメカニズムが存在すると考えられてきた。あまりに回転が速くなると、恒星自体がバラバラになってしまうからだ。恒星の周囲を取り巻くダスト円盤はその1つではないかと考えられてきたが、これまで直接の検証は困難だった。

論文が「アストロフィジカル・ジャーナル」誌7月20号に記載された。

スピッツアサイエンスセンターのルイザ・レブル博士は、この問題に10年も取り組んできた、第一人者の一人だ。今回の成果をまとめた論文の筆頭執筆者でもある。今回の発見は、誕生間もない恒星とそれを取り巻く円盤との複雑な関係を理解するために必要な要素の一部分であるという。

これまで、恒星の磁場が円盤に“ひっぱられる”形になることで、恒星自身の回転にブレーキがかかっていると考えられていた。この仮説を検証するため、レブル博士らはスピッツアを用い、オリオン星雲に存在する約500の、生まれたての恒星の観測を行った。彼らはそれらをスピンの遅いタイプと速いタイプとに分類し、円盤を持つ恒星の数が、遅いタイプでは速いタイプの5倍になることが明らかになったという。(上イラスト・磁場が円盤と作用している模式図。こちらのページの一番下に、わかりやすく表した動画があります。)

「少なくともこの領域の恒星に関しては、円盤が自転のスローダウンに一役買っていることが明らかだと言えます。ただ、もっと他のファクターが関わっている可能性も否定はできません。」と語るのは、レブル博士。他のファクターとは、例えば恒星風などが考えられる。

もし、確かに円盤が恒星の自転にブレーキをかけているのだとしたら、つまり、惑星を持つ恒星はそうでない恒星に比べて自転が遅いということになるのだろうか?レブル博士によると、必ずしもそうではなく、自転が遅い恒星は、単に余計に時間が経過しているだけだろうという。

この自転周期と恒星系形成の可能性との相関関係に関する疑問は、究極的に落ち着く先は、系外惑星の捜索と研究に委ねられるだろう。これまでのところ、惑星を携えた恒星の自転は、どれも遅いものばかりである。ちなみに我々の太陽は、約28日で自転する。

現在の技術では、生まれたばかりの恒星の周囲に存在する惑星を発見することはできない。「次世代の望遠鏡技術に因らなければならないでしょう」と同博士は語っている。【Spitzer 07.25】

<追加記事 07.18. 2006>

ハワイ・ケック天文台所属の研究員サム・ラグランド氏とそのチームは先頃、アリゾナの赤外・光学望遠鏡群(IOTA)の3つの望遠鏡を用いて、複数の赤色巨星の観測を行った。これは複数の望遠鏡で構成される干渉観測で、電波の場合はVLAやVLBIが有名であるが、光学波長でのそれも可能で、これまで2台の光学望遠鏡で構成された干渉計での観測は度々行われてきた。ただ彼らの場合は、3台の望遠鏡を組み合わせたところが一歩進んでいる。

彼は一連の観測で、対象とした赤色巨星の約3分の1について、その表面の輝度分布に著しいムラがあることを見出した。高輝度の部分は巨大なスポット状に分布していると考えられるという。

また、3割の赤色巨星が球対象から崩れた、非対称な形をしていることも明らかになった。

この成果は、3台で干渉計を構成したことの成果だとラグランド氏は主張する。3台用いることで、単に大きさを測ることが可能になるだけでなく、より詳しい形状を描くことができるのだ。

このように、大きな可能性を秘めた光学干渉計だが、皮肉なことに、IOTAは維持費の問題から今月1日に閉鎖された(閉鎖に関するプレスリリースはこちら)。IOTAは1993年に2台の望遠鏡で稼働を開始し、2000年には1台追加され、計3台が座っている。

観測は2004年に行われた。同施設の責任者であるウェスレイ・A トラウプ氏はラグランド氏らに対し、3台の望遠鏡を同時に用いた場合のテストを依頼したのであったが、3台同時稼働は何らかの新しい知見をもたらすのではないかという目論見があった。

基本的に、電波よりもずっと波長の短い光を干渉させようとすると、要求される精度は飛躍的に高まる。ちょっとした振動ですら命取りになるという、観測の成功だけでも成果となるレベル。3台稼働するにあたり、もちろん、工夫もそれなりに施されている。

赤色巨星は、太陽もいずれは迎える、恒星の末期の姿。多くの赤色巨星の姿をより詳しく知ることは、恒星の進化を考える上で重要なデータとなる。彼らは35個のミラ型巨星、18個の半規則変光星および3個の不規則変光星を観測した。ミラ型のうち12個が非対称な輝度分布を示した一方、半規則変光星は僅か2個、不規則変光星はゼロだった。

なぜこのような輝度のばらつきが生じるのか、はっきりしたことはわからないが、元々その恒星に存在していた所謂“系外惑星”のような伴星が膨張した巨星表面に影響を与えている結果なのではないかという考えも同チームは出している。

或いは、恒星風として放出されたガスが局所的に固まって分布し、恒星からの光線を遮っているとも考えられるという。いずれにせよ、正確なところはまだわからない。詳しくはこちらへ【keck Observatory 07.18】

<追加記事 06.27. 2006>

度々話題になる「がか座β星」で、大きな発見があった。従来よりこの恒星にはダスト円盤が存在することはわかっていたが、それとは別に、2枚目の円盤が存在するというのだ。

            

上はハッブル宇宙望遠鏡によって2003年10月に撮影された画像を処理したもの。これまで確認されてきた濃い円盤よりやや傾いた状態で2枚目の円盤が見てとれる。

この希薄な円盤の傾きは約4度で、コンピュータシミュレーションの結果、2枚目の円盤の中に木星質量と同程度ないし20倍の質量の惑星が存在する可能性があるという。この惑星が主円盤のダストを蹴散らし、今回発見の円盤を作っているのだろうという。

最初に円盤の存在が確認されたのは1984年。だが、2002年にはケック望遠鏡により主円盤の内側に、太陽系サイズの小さな円盤の存在の兆候も見出されるなど、望遠鏡技術の発達で新発見が続いている。詳しくはこちらへ【Hubble 06.27】

<追加記事 05.12. 2006>

下の画像は、太陽程度の恒星の、寿命末期の姿…NASA・チャンドラX線宇宙望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で得られた画像をコンポジットして作られたもの(青い部分はチャンドラ、その他はハッブルによって撮影)。

               

これらは一般に「惑星状星雲」と呼ばれているもので、太陽程度の質量を持つ恒星が、その寿命末期にガスを放出して行く姿。ガスの温度は数百万度に達し、そのスピードは時速数百万キロに達する。

恒星の進化論でいうと、太陽程度の恒星は末期に膨張し、赤色巨星となる。やがて外層は剥がれ始めるが、その時のスピードは比較的遅く、時速5万キロ程度。これが数百万年続くと、やがてコアがむき出しになってくるが、このコアから放たれる強烈な紫外線によって周辺のガスが熱せられ、一気に加速されると考えられている。

ガスは両極から吹き出すように拡散しているものが目立つ。この形成には磁場が関わっていると考えられているが、まだ正確なことはわかっていない(画像中、左下の「BD+30-3639」はジェット噴射になっていないが、実は極側から見ている姿ではないかという説もある)。詳細と大きいサイズはこちらへ【Chandra 05.12】

<追加記事 03.01. 2006>

死にゆく星から吹き出しているガスジェットは、磁場によってきつく収束されたものであることが明らかになった。地球から8500光年離れた老いた天体の観測によって判明した。(右・模式図)

対象は、わし座に位置する「W43A」と呼ばれる天体。「惑星状星雲」と呼ばれる、恒星が末期にガスを星雲状に拡散させていく状態の、まさに「死にゆく星」。米国科学財団のVLBA電波望遠鏡を用いた観測により観測が続けられており、2002年には水分子ガスのジェット放出が確認されている。

この水分子ガスのジェット放出発見は、多くの惑星状星雲が非対称な形をしている理由を考える上で、大きなヒントになるという。

(右は惑星状星雲「M2−9」で、97年にハッブルが撮影したもの(「バタフライ星雲」などと言われている)。細長く放出されているガスの速さは秒速300kmを越え、その長さより約1200年前に放出が始まったものと考えられている。地球から2100光年のところに存在。大きいバージョン&詳細はこちら。なお、2002年の水分子ガスジェットの発見と解説はこちら。この中ではまだ、ジェットの形成メカニズムは「はっきりわからない」とされている。)

「そうするとですね、次の疑問は、どのようにしてガスがそのような細いジェット状に収束されているのか、ということだったんです」と語るのは、研究チームの一員で、英ジョドレルバンク天文台のウォルター・ブレミングス氏。

「磁場はこれまで、クウェーサーや原始星(誕生したばかりの恒星)から吹き出すジェットには認められていましたが、磁場が実際にジェットを収束させていることのはっきりとした証拠は得られていなかったのです。今回のVLBAによる観測結果は、初めて得られた直接証拠となるものなのです」と、ブレミングス氏。

VLBAを用いてジェット中の水分子から放たれる電波の偏向などを調べることにより、ジェットを囲む磁場の強度や方向を捉えることができる。

「我々の得たデータは、磁場で収束されたジェットが惑星状星雲の複雑な形状を生み出しているという最近の理論モデルをうまく説明しているのです」と言うのは、ジョドレルバンク天文台のフィリップ・ダイアモンド氏。

太陽程度の恒星は、安定期には中心部で核融合を続けているが、末期に近づくと外層を吹き飛ばし始め、やがて“芯”がむき出しになった状態に移行する。この芯は「白色矮星」と呼ばれており、大きさは地球ほどだが、質量は太陽程度に相当。巨大な自重を電子の縮態圧で支えた、これまた超高密度天体。

一方、白色矮星から放射される強力な紫外線がガスを吹き払い、惑星状星雲を形成する。

W43Aは、まさにこの過渡期にあり、水分子ジェットの分析により、移行開始から高々数十年しか経っていないと考えられている。恒星研究者にとっては、まさにグッドチャンスに出くわしているといえる。

なお、ブレミングス氏とダイアモンド氏と共に、鹿児島大学のイマイ・ヒロシ氏らも一連の研究に参加している。論文は今月2日発行の「Nature」誌に記載されている。詳細はこちらへ【NRAO 03.01】

…それにしても「惑星状星雲」は誤解を招く名称です。惑星とは全く関係ないのに。。

<追加記事 01.10. 2006>

米国天文学会総会では、多くの発見や研究が報告されています。リリースされている中からいくつか・・(興味深いのばかりですが・・多すぎ^^;)

星の誕生・1

オリオン座のオリオン大星雲は多くの恒星が誕生する場だが、このほど、ハワイ・ケック天文台の10m鏡による赤外線観測で、その生まれたての恒星の周囲にダストのリングが存在し、惑星系形成への第一歩を踏み出していることが明らかになった。(左・赤外線画像、右・可視光画像)
                

この星雲は周囲の大質量星からの強い紫外線や恒星風に吹きさらされているハードな環境であるが、そのような状況下でもダスト円盤が成長できることが示されたという。詳しくはこちら。【Keck Observatory 01.11】

星の誕生・2

UCLAの大学院生チャオ-ウェイ・ツァイ氏率いる研究チームは、近傍の系外銀河に、かつてないタイプの「超恒星集団」の存在を見出した。これらの恒星集団は誕生過程にある若い恒星の集団であるが、問題なのは、それが球状星団の様相を呈していることだ。球状星団は我々の銀河系では、寿命末期の恒星の集団であるからだ。

彼らは超長基線電波干渉計(VLA)を用い、ラジオ波による観測を行い、形成されつつある大恒星集団の周囲に“超ガス星雲”を検出した。「超ガス星雲は若い、超星団から照りつける強烈な紫外線で熱せられているんです」とツァイ氏は言う。星団はガスの奥深くに隠されまだ可視光で見ることはできないが、ラジオ波よりその存在が明らかだという。

チームの一員であるジーン・ターナー教授は、「なぜ我々の銀河系では球状星団の形成が行われていないのだろう。他所ではこのように今だ行われているのに。」と語る。詳しくはこちら。【UCLA 01.10】

星の誕生・3

3500を越える銀河を調査した結果、恒星の誕生は、その材料となる星間ガスが充分に供給されることが重要で、銀河どうしの衝突による恒星の大量生成はさほどでもないことが明らかになった。

遠方の−すなわち宇宙初期の頃に形成された−銀河の観測を通し、宇宙初期の頃ほど恒星の形成が活発だったことがわかっている。これまで、宇宙初期の高密度下では銀河の衝突が盛んであり、それが恒星誕生を盛んに引き起こしていたのではないかと考えられていたが、研究チームによると、銀河の衝突はさほど重要でもなく、いくつかのメカニズムが絡み合って大量生産を起こしていると考えられるという。くわしくはこちら。【UC Santa Cruz 01.10】

で、こちらは恒星の死の前…

宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の研究チームは、大質量恒星の寿命末期の状態である“超巨星”がひとかたまりになって存在する姿を発見した。この塊は14個の赤色超巨星からなるもので、これまでリストアップされたことがなかった。そもそも超巨星自体、数は少なく、既に知られているのは200個程度。その中、一気に14個も、しかも固まった状態で見つかったのは珍しい。
               

超巨星は、恒星進化を研究する上でも重要な天体。詳しくはこちら。【HST 01.10】 

…画像中央の白枠内を拡大したのが右下。確かに、密集していますね。それにしても、このような画像はアマチュア天文家もたくさん写しているでしょうから、既に写し込まれていたのも多数?ここに星団があるというのは気付いていた人もひょっとしたらいるのでは?・・でもまさか、これが赤色巨星の塊だとは、さすがにハッブルでないとわからないでしょう。完全にノーマークな対象だったのでしょうね。他にも星団らしきところをしらみつぶしに拡大すると、色々面白いものが見つかってくるかもですね。

超赤色巨星、もういっちょ!

米欧の研究チームが、空全体で最も巨大な星を三つ突き止め、10日、米天文学会で発表した。分析に加わったローウェル天文台(米アリゾナ州)によるといずれも赤色超巨星で、一生を終えつつある年老いた星々。それぞれ直径は太陽の1500倍もあるという。

天の川にある74個の赤色超巨星について、最新データを加えて表面温度を計算。これと明るさをもとに星の大きさを分析した結果、5200〜9800光年の距離にある三つの星が、これまで最大と考えられてきたケフェウス座のガーネットスター(ざくろ石星)をわずかに上回っていることを突き止めた。

三つの超巨星の直径は10億マイル(16億キロ)を超え、半径は地球と太陽の平均距離の約7倍もある。仮に太陽の位置にこうした星があると、星の表面は木星の軌道を超え、土星の手前まで達する。ただし、質量は太陽の25倍しかないという。

研究チームは「赤色超巨星の大きさと温度について、数十年ぶりに理論値と観測値が一致した」と説明している。

ローウェル天文台は「三つの星の温度が従来の説より10%ほど高かった事実と、星までの距離の最新データで、星の大きさを決めることができた」と説明している。【毎日 01.11】

<追加記事 11.03. 2005>

NASAのX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」が今年5月と6月に行った観測から、これまでブラックホールが存在すると考えられていたところに、代わりに中性子星が存在するのを確認した。

下の画像は、2005年に欧州南天文台(ESO)が“さいだん座”に発見した「超星団」である「Westerlund 1」。超星団は、何十万個もの若い星が極めてコンパクトな領域にひしめいている状態をいい、これまで発見された超星団はかなり遠方にあった。しかしこのWesterlundは、これまでの超星団と比べ太陽系に1000倍以上も近い。太陽よりも質量の大きい恒星も数百を数え、中には土星軌道に達する程のサイズを持つ恒星も存在する。

              

左は可視光による画像で、太陽の40倍の質量をもつ大質量星も含まれている。研究者の中には、これらが繰り返し衝突を起こすことで、太陽の100倍を超える質量のブラックホールが形成されると考えている者もいた。ところが右の、チャンドラで得られたX線画像からは、そのようなブラックホールの存在が確認されず、代わりにブラックホールの一歩手前の状態とも言える「中性子星」(CXO J164710.2-455216)が発見されたという。

ところが問題なのは、この中性子星、元は太陽の40倍の質量の恒星だったということが判明したことである。

恒星の最後の段階で、中性子星が形成されるか、ブラックホールが形成されるかは、非常に難しい分野。現在の理論では、太陽の25倍以上の恒星の最後はブラックホールになるということになっているが、この発見はその“定説”を大きく覆すことになる。

一方、超大質量星はむしろ、超新星爆発の前に、外層を外へ吹き飛ばすことで“身軽”になり、超新星爆発後に中性子星を残すというシナリオがありうる。しかしそれで考えると、ブラックホールになる恒星の質量範囲は、太陽の25倍程度〜40倍という、狭い範囲に限定されることになるという。【Chandra X-ray Observatory/Spaceflight Now 11.03】

<追加記事 09.04. 2005>

星のもとになるガスやちりでできた円盤を、国立天文台と中国、英国の研究チームが、米ハワイ島のすばる望遠鏡を使い、太陽の7倍もの質量がある星の周囲で発見した。「Nature」誌 9月1日号に発表された。

太陽質量の3倍以下の軽い星は、周囲の円盤からガスやちりが降着して誕生することが従来知られていたが、重い星は軽い星が合体してできるのか、円盤からの降着で誕生するのか、論争があった。今回の発見は円盤説を裏付ける世界初の観測証拠となる。

重い星は、太陽質量の100倍程度が知られている。

研究チームは2003年1月、オリオン大星雲の方角にあり、地球から1500万光年離れた「BN天体」を赤外線カメラで観測。その結果、誕生から数万年〜数十万年の若い星の周囲に、太陽と地球の距離の約200倍の半径の円盤が存在することがわかった。

(写真は冬の代表的星座であるオリオン座。オリオン大星雲の可視光画像(左下)と、星雲の中心領域の赤外線画像(右上)。BN天体は赤丸で示した赤外線で明るい星)

このような円盤は「降着円盤」と呼ばれ、惑星系の形成やクウェーサー、X線連星のメカニズムとして古くから研究されている。

図は降着円盤のイメージ図。ガスやチリの円盤が中心へ向かって落ち込み、円盤の上下に向かって物質が吹き出している(ジェット)。中心付近は高温になるため、X線の放射が起こる。

国立天文台の田村元秀・助教授は「軽い星の合体では円盤構造はできない。太陽の7倍の重さの星にも、ガスとちりがその重みで収縮して星を形成、周囲に星の回転の影響で円盤ができる仕組みがあることがわかった。もっと重い星にも同じメカニズムがあるのか今後調べる」と話している。より詳しくはこちらへ【読売/国立天文台 09.04】

…ただ、吹き出す量よりも、中心天体に張り付く量が多くないと太らないわけで…この辺の微妙なバランスが興味ありますねぇ。。

学生の時の研究テーマの1つが降着円盤でした。当時はまだ直接観測は少なかったのですが、近年ぞくぞくと詳細がわかりつつあり、モデルの検証もできつつあります。いまの学生さんはうらやましい(笑)

<追加記事 09.01. 2005>

太陽の約7倍の質量があるオリオン座領域の原始星の周りに、ちりやガスでできた円盤があるのを国立天文台などのチームがハワイに設置されている「すばる望遠鏡」で発見し、1日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

太陽の3倍以上の重い星で円盤を見つけたのは初めて。重い星の形成には(1)太陽の3倍未満の軽い星がいくつか合わさってできるという合体説(2)軽い星と同じく、ちりやガスが降り積もってできるとした降着説…があるが、降着説を裏付ける成果という。

日本、中国、英国の共同研究チームによると、すばる望遠鏡に取り付けた偏光機能付きの赤外線カメラで、地球から約1500光年離れ、生まれて間もない天体「BN」を詳細に撮影した。【共同 09.01】

<追加記事 07.21. 2005>

東京大や国立天文台などの研究チームは21日、ハワイのすばる望遠鏡による赤外線観測で、これまでで最も暗い24・7等級の銀河をとらえたと発表した。この明るさは、従来の銀河の半分で、肉眼による限界とされる6等級の約3000万分の1に相当するという。

また、約50億光年離れた渦巻き銀河など約100億光年先までの銀河を、赤外線での観測としては最も鮮明に撮影するのにも成功した。

同チームは2003年3−4月、すばる望遠鏡で、かみのけ座の方向を観測。大気によるゆらぎの影響を補正する装置を使うことで、暗く遠い銀河をキャッチするのに成功した。

宇宙では約140億年前に最初の銀河が作られたと考えられているが、当時の銀河の状態や、その後どう進化したかは分かっていない。【共同 07.21】

<追加記事 03.27. 2005>

国立天文台の山口伸行研究員らのグループは、地球から約1万光年離れたNGC3576と呼ばれる領域に、星間ガスが高密度に集まり、星が生まれる直前の“星の卵”を電波望遠鏡でとらえた。28日から東京都日野市で始まる日本天文学会で報告する。

観測に使われたのは南米チリの標高4800メートルの高地に設置されたASTE(アステ)望遠鏡。この領域は新しい星が生まれている場所として知られているが、波長1ミリ以下のサブミリ波と呼ばれる電波で宇宙空間のガスを観測し、星が誕生しようとする現場を複数とらえた。

この場所を可視光や赤外線で観測しても星は見えないが、高密度のガスが集中しているため、将来、質量が太陽の10倍以上の重い星が生まれると考えられるという。【共同 03.27】

<追加記事 03.11. 2005>

太陽のように、自分で光る「恒星」にも大きくなれる限度があり、質量にして太陽の約150倍が上限らしい…米宇宙望遠鏡科学研究所(メリーランド州)のチームが、米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡を使った多数の星の観測からこんな結論をまとめ、9日発表した。

星の質量は誕生時から決まっているが、どこまで重い星が宇宙に存在するかは未解明。直接観測に基づく信頼性の高い推定は初めてという。【共同 03.11】

…学生の頃、恒星単体の質量の上限は約100ソーラーマス程度だと予測されていることを知りました(太陽の100倍を超えると、安定した核融合が実現できなくなるという計算結果)。星の安定性に関する議論は昔からありますが、今回、実際にそれが間違いなさそうだ、ということがわかったということでしょうか。もっとたくさんの恒星を調査して、より確固たる上限を決めて欲しいですね!【管理人】

<追加記事 03.02. 2005>

誕生後1万〜10万年しかたっておらず、核融合反応で光り出す前の「星の胎児」の撮影に成功したと2日、米航空宇宙局(NASA)や東京大などの研究チームが発表した。これほど若い星の観測は初めてで、研究チームは「星の形成過程を解明する大きな手がかりになる」と話している。

みなみのかんむり座の方向にあり、地球から約500光年離れている。宇宙空間のガスを集めて成長中で、まだ肉眼で見える光は出していない。

NASAゴダード宇宙航空センターの浜口健二研究員らは、欧州宇宙機関のX線天文衛星を使って、この星が出しているX線をとらえた。ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡による赤外線観測で、生まれたばかりの星だと確認された。

これまで見つかっている中では、誕生から100万年程度の星が最も若かった。
【毎日 03.02】