(☆フェニックス関連の日々の最新情報はこちらへ)
今年8月、一機の探査機が火星を目指して地球を飛び立つ。「フェニックス」と名付けられたそれは、火星の北極圏に着陸し、科学観測を行うのだ。これが成功すれば、史上初めて火星の極圏で活動する探査機ということになる。
フェニックス・ミッションは火星の北半球高緯度に着陸し、地表を掘削、水などの存在を直接確かめるという野心的な試みであり、「マーズ・スカウト」プログラムの第一弾となる。「マーズ・スカウト」は2001年に創設された一種のコンペティションで、低予算で実行可能な火星探査プログラムを公募し、NASAが選定を行い、実行に移すというプログラム。フェニックスはその第一弾として2003年8月4日に正式選択されたものであった。
ところで「フェニックス」とは「火の鳥」、「不死鳥」の意。よく知られているように、火の鳥は不老不死で火を食い、炎の中に身を投じ灰となり、再び甦るという神話上の鳥である。
この名前が選ばれたのは、ちょっとした経緯がある。この探査機は、クリーンルームの隅にお蔵入りとなっていた探査機を引っ張り出して作り替えられたものなのだ。
◇
90年代後半、NASAは2つの火星探査機を相次いで失った。それは「マーズ・クライメット・オービター」(MCO)と「マーズ・ポーラー・ランダー」(MPL)の2機で、MCOは1998年9月に火星周回軌道への投入に失敗、その3ヶ月後、MPLは着陸に失敗したのであった。
90年代のNASAは緊縮予算の中で「より早く・より確実に・より安く」を謳い文句に科学ミッションを行っていた。1997年には「マーズ・パスファインダー」ミッションを成功させたが、それはスローガンが満足に機能していることを示すものとしても賞賛を受けた。だがMCOとMPLのロストは結局“3拍子”が裏目に出たこと結果と判明、2001年に予定されていた火星探査ミッション「マーズ・サーベイヤー2001」はキャンセル、組織の見直しと改編が行われたのであった。
(MCOは、メートル法とヤード法を取り違えるというごく初歩的なミスで失われた。火星周回軌道投入時、単位を間違えてコマンドを送信したため火星大気の中に突っ込み、燃え尽きたとされる。またMPLは着陸レーダー系の欠陥により予定より早く逆噴射エンジンを停止、墜落したと考えられている。これらは緊縮予算下において限られた人材とテストでミッションを遂行したため、ミスや欠陥の発見ができなかったと結論づけられた。しかも、MPLには降下時に送信するべきテレメトリーの送信機も省かれていたため、原因究明が難航した。)
「マーズ・サーベイヤー2001」はやはり周回機と着陸機から構成されるプログラムであったが、その時既に着陸機は大部分が完成していた。それが使われることなく、製造元のロッキード・マーチン社でお蔵入りとなったのである。ちなみに周回機は「マーズ・オデッセイ」ミッションとして独立、2001年に打ち上げられ、現在も火星を周回している。
今回のフェニックス・ミッションの責任者(PI)であるアリゾナ大学のピーター・スミス氏は、マーズ・パスファインダーミッションにおける撮像系の担当責任者であったと同時に、MCOとMPLでも撮像系を担当した。彼とそのチームは、パスファインダーで大成功に浸ったのもつかの間、MPLではどん底に突き落とされたのである。
だが、NASAがマーズ・スカウトプログラムを立ち上げたことを知ると、行動は早かった。クリーンルームに保管されている機体の再利用を思いつき、提案書を書き上げたのである。組織編成は、自分を統括PIとしてプログラム進行はアリゾナ大学が行い、NASA・ジェット推進研究所とカナダ宇宙庁、それにロッキード・マーチン社が参画するものである。
勿論、他の提案との厳しい競争にさらされた。2002年8月に25の提案が出され、同年年末に4つまで絞られた。この時ライバルの提案は「火星の大気を一周しその採取を行い、地球に持ち帰る」、「火星大気をグライダーでゆっくりと降下し、組成などを調べる」、「周回機で大気中の生命起源の成分を探査」という魅力的なものばかりであったが、NASAが最終的に選んだのは、フェニックスであった。
フェニックスは、しまわれていた着陸機をより発展させた仕様となっている。一旦分解され、98年の失敗を踏まえボディに改造を行い、2つの科学機器をそのまま受け継ぐ一方、3つの科学機器はMPLと同型のものが使用されている。
つまり、一旦打ち切りとなったミッションを再び甦らせた上、失敗したMPLの再チャレンジという想いが「フェニックス」という名に込められているのだ。
探査目的は、極域の土壌が生命を宿すことが可能な環境なのか、水の存在はどうなっているのか、気象状態はどうなのかという3点である。特に極域の地下には水の存在が判明しているのだが、その水を発見したのは、奇しくもマーズ・オデッセイであった。
マーズ・サーベイヤー2001ミッションが、形を変え遅くなったとはいえ、成果を出しここに完結しようとしている、とも言える。
◇
着陸機についてみてみよう。着陸機は地球から火星へ向かうクルージングフェーズでは、耐熱シールドおよびバックシェルで構成される“二枚貝”の中に納められて飛行する。
左下はその模式図で、右は最終工程が進められている実機。「クルーズ・ステージ」に太陽電池が装着されており、大気圏突入後に展開するパラシュートがバックシェルの背後に納められている。
シェルのサイズは直径2.64m、高さは1.74mで、太陽電池は広げると幅3.6mに達する。総重量は670kg。
機体にはヒドラジンを燃料とする計20基のスラスターが搭載されている。うち12基は着陸機の底に並べられており、着陸間際に逆噴射を行い、減速するためのもの。残りの8基のうち4基はクルーズステージに、残りの4基は着陸機に搭載されている。着陸機に搭載されているそれらは小型のもので、噴射口がバックシェルを貫通して外に出ている。
(上の画像では、クルーズステージに装着された2基が見えており、バックシェルに見えている四角形の小窓がスラスター口である。中央の6角形構造は着陸レーダーで、その周りに12基の逆噴射スラスターが並んでいる。)
クルーズステージの4基は予定されている6回の軌道修正に、小型スラスターは機体の姿勢制御に用いられる。
着陸機の2枚の円形太陽電池で発電された電力は、2台のバッテリーにチャージされ、それがシステム全体を稼働させる。
地球との交信は、NASAの深宇宙ネットワーク(DSN)により、既に火星を周回している周回探査機を中継して行われる。周回機はNASAの「マーズ・オデッセイ」、「マーズ・リコネッサンス・オービター」、それに欧州宇宙機構(ESA)の「マーズ・エクスプレス」。
テーブルにはUHFヘリカルアンテナが搭載されており、送受信はこれを介して行われる。通信レートは毎秒8キロビット、32キロビット、128キロビットの3モードがあり、地球から周回機経由でアップリンクする際は前2つの低モードで行われる。一方、バックシェルにもUHFアンテナが搭載されており、火星までのクルージングフェーズにおける交信で使用させる。勿論、クルージングフェーズではダイレクト交信が行われる。
探査機の頭脳であるプロセッサは「RAD6000」。これは火星探査車「スピリット」「オポチュニティ」にも搭載されているプロセッサで、90年代初めにIBM、米空軍およびJPLの3者で共同開発されたものが原型。ちなみに米アップル社の「PowerPC」も、このプロセッサを用いている。やや古い型ではあるが、放射線耐性などの信頼性が抜群に高い。
科学機器を乗せた中央のテーブル状の本体は直径1.5m。火星着陸後に気象観測用のマスト(地上高2.2m)とステレオカメラを伸ばし、2枚の円形太陽電池を広げた際の横幅は5.52m。特徴的なロボットアームの長さは2.35mで、先端にシャベルと小型カメラを搭載。科学機器はアームと気象観測マストを含めざっと7種類で、総重量は55kg。機体全重量は350kgである。
観測機器について簡単に触れておこう。全部で7種類を搭載するが、うち3つは複数の機能を有している。
ロボティック・アーム(Robotic Arm; RA)
アルミとチタンの合金でできた長さ2.35mのロボットアームで、先端にはシャベルと電動ヤスリ、小型カメラ(RAC)がついている。バックホーのような動きができ、上下・左右・前後それに回転が可能。約50cmの深さまで掘削可能であるが、地下の氷層はそれほど深い所にはないと考えられている。氷層に突き当たったら、ヤスリで削って採集する。
このアームは地表に直接触れサンプリングを行うツールであるので、組み立て時における滅菌処理には特に注意が払われている。2007年3月に高熱滅菌処理が行われた後、特殊なラップに包まれ、一切の微生物から隔離されている。このラップは火星に着陸後、外れるようになっている。
このアームはマーズ・ポーラー・ランダーに搭載されていたものと同型であるが、掘削能力が増強されている。2000年に行われたデス・バレーにおける実験では、4時間で25cmほど掘り進むことができた。この地は極めて硬い土壌であり、フェニックスが目指す極地と似たような環境と考えられている。
ロボティック・アーム・カメラ(Robotic Arm Camera; RAC)
シャベルのすぐ上に取り付けられたCCDカメラで、通常のデジタルカメラと基本的には同じ仕様。地表の近接撮影や掘削時の進行状況などの撮影を行う。対象を照らす赤、緑、青の発光ダイオードも備えられている。
ピントは電動モーターで合わせられ、範囲は11mm〜無限大。最近接撮影での解像度は23ミクロンを実現するが、これは毛髪よりも遙かに小さい。
サーフィス・ステレオスコピック・イメジャー(Surface Stereoscopic Imager;
SSI)
機体中央から上へ伸びるマストの上に乗るステレオカメラ。人の両眼とほぼ同じ間隔で配置されたカメラでステレオ撮影を行い、人間がその場で見るのと同じ視野を実現する。
各々には12種類のフィルターがターレット状に備えられており(左上)、フルカラー撮影のみならず特定の波長で撮影することで、地表、それに大気の状態を判断することが可能。カメラは各々1メガピクセルCCDセンサーで、地上高は2m。右上の画像は、カメラが乗るマストのチェック。マストはびっくり箱から飛び出すような感じで上に伸びる。
サーマル・アンド・エボルブド-ガス・アナライザー(Thermal and Evolved-Gas
Analyzer; TEGA)
サンプルを加熱し気体を発生させ、それを分析する機器。サンプルに熱を徐々に加え、固体から液体、気体になるときの温度を測定する一方、発生した気体は質量分析器へ導かれ組成が調べられる。
質量分析器によって有機物の有無が判明する一方、温度のデータより水氷やドライアイスの状態などを推測することが可能となる。
この機器には小さい(直径2mm、長さ1cm)“オーブン”が8個備えられており、それぞれ1回きりの使用。スコップですくわれたサンプルはふるいを通してオーブンに導かれ、一杯になったところでフタが閉じられる。その後徐々に温度を上げ、最終的に1000℃まで加熱される。
なお、質量分析器は大気の分析も行い、湿度に関するデータを得る。
マイクロスコピー・エレクトロケミストリー・アンド・コンダクティビティ・アナライザー(The
Microscopy, Electrochemistry and Conductivity Analyzer; MECA)
長い名前だが、これは4種類の科学機器の総称。3つはシャベルですくった土壌を検査するもの(1つは化学検査、2つはマイクロ顕微鏡)で、残りの1つはロボットアームの先端についている電気伝導度の測定探針。
化学検査器(ウェット・ケミストリー)は4個のビーカー(コーヒーカップサイズ)で構成される(右)。各々1回限りの使用で、1個は地表サンプル、3個は地下土壌のそれを検査することが予定されている。溶解性の化学物質を分析するのが目的。
ビーカーの内側には26個のセンサーがつけられている。それらは役割毎に分けられており、あるものは酸性度(pH)を、あるものは塩化物イオンやマグネシウム、カルシウム、カリウムなどのイオンを測定する。対象として特に重要なものに硫酸塩があるが、これはバリウムとの反応を観察して量を推測する。深度毎のイオン濃度の差が、水の行方を探る上で重要なヒントとなることが期待されている。
ところでその化学検査器は、非常に精巧な動きをする。土壌をビーカーに入れる前に、まず、液体の水を注ぐ。この水は25cm3(大さじ山盛り2杯分くらい)程の氷混じりの土壌を別の容器で溶解し、絞り出されるもの。この時点でイオンが水に溶解しているが、これがビーカーに導かれる。水は規定量まで入れられるが、ここまでに約1〜2時間を要する。(06.27.2008記・下線について: 当初のリリースにはこう記してありますが、最新の画像を見ると、水タンクがついています…どうやら水は地球の純水を用いているようで…?)
次に、化学薬品が詰められた錠剤サイズの小さい“るつぼ”を1個投入し、規定の濃度までイオンを濃縮する。その後、1cm3(茶さじ5分の1)のサンプル土壌が混ぜられ、各種測定が始まる。これには何時間もかかり、ここまでに丸1日を要する。
翌日、ニトロベンゼンの入った2個目の“るつぼ”が投入され、酸性度の上昇に対する各イオンの変化を見る。最後にバリウム塩の入った3個の“るつぼ”が入れられ、硫酸塩化合物の析出を観察する。
以上、化学検査は1回2日を要するものであるが、極めて重要なデータを提供するものである。
一方、マイクロ顕微鏡は光学顕微鏡と原子間力顕微鏡(AFM)のペアで構成される。AFMは一般にはなじみのないタイプの顕微鏡で、微小探針がついたカンチレバーで試料面と探針との微かな原子間力を検出することにより、表面状態を原子の大きさ以下のレベルで観察する精密装置である(右)。
探針&カンチレバーは8本並んでおり、サンプルに触れるのは一度に1本。表面をなぞるように触れることもできれば、リストを効かせて叩くこともできる。
また、光学顕微鏡は2ミクロンの解像度でサンプルを観察する。
電気伝導度を測定する探針(左下)はアームの先端についており(右下)、直接土壌に突き刺して使用する。伝導度を調べれば、土壌に含まれる氷などの水分の割合や状態などを詳しく知ることができる。
この探針は、風速を感知するセンサーとして用いることも可能である。MECAの専門的な詳細はこちらへ
http://planetary.chem.tufts.edu/MECA-JGR2003-108-E7-p5077.pdf
メテオロジカル・ステーション(Meteorological Station; MS)
その名の通り、ちょっとした気象観測装置。いわば、“ミニ測候所”である。気温や気圧、大気透明度などを測定し、水の循環を考える上でのデータを提供する。長さ1.2mのマスト(下)の3箇所にクロメル−コンスタンタン熱電対温度センサーがつけられており、地上付近での温度変化を捉える。また、マストの頂上(地上高2.2m)には小さなチューブがついており、それが風で揺れることで風向風速を推測する。
一方、大気透明度などの測定はレーザーで行われる。レーザーは垂直に発射され、大気中に漂うダストなどにより散乱されて戻ってきた分を真横の受光センサーで検出する。左下はその装置一式であるが、口径が大きいのが受光センサーであることに注意(右図はセンサーのフタが開かれた状態を表している)。
マーズ・デサント・イメジャー(Mars Decent Imager; MARDI)
大気圏突入後、耐熱シールドが外れた後に地上を撮影し、その情報を収集する重要なカメラである(左下)。テーブルの隅の下部に取り付けられている(右下)。なお、カメラボディの隅には小型のマイクロフォンが装着されており、降下時に集音を行う(風を切る音?)。
着陸地点に関する画像は事前に火星周回機で得られているが、このカメラはより間近で地表を捉え、着陸地点の環境に関する情報を提供する。これは今後の科学観測プランを立てる上でも重要なものになる。
当初20枚ほど撮影する予定になっていたが、打ち上げ3週間前の7月上旬、1枚のみの撮影に限ることが決定された。これは、撮影した画像をインターフェースボードに流すと、ジャイロのデータを破壊する可能性があることが判明したため。このボードは探査機の様々なデータを処理するもの。MARDI
は撮影した画像を1枚だけなら自身のRAMに記憶しておくことができるため、それに限ることになった。
既に探査機は出来上がっており、バラしてボードを交換する時間もないために決定された、苦肉の策である。撮影は、周回探査機によるそれの解像度を上回った時点で行われる。なお、このカメラ、そしてマイクは、着陸後には使用されない予定。
以上、科学機器を簡単にまとめてみた。これらのうち、「RAC」、及び「MARDI」はマーズ・サーベイヤー2001ミッションで使用されるものをそのまま受け継ぎ、「MECA」は一部パーツを再利用した上でバージョンアップされたものが使われている。
着陸機には“おまけ”として、DVDが貼り付けられている(右)。このDVDには火星に想いを寄せた著名人のメッセージの他、インターネットで世界中から集められた個人の名前(70ヶ国を超える国々から約25万人)が書き込まれている。
著名人にはカール・セーガンやアーサー・クラーク、パーシバル・ローウェルやアイザック・アシモフなどの故人も含まれている。「ヴィジョン・オブ・マーズ」と呼ばれるこのDVDプロジェクトは、米惑星協会によって実施された。
◇
続いて、打ち上げから火星着陸までを見てみよう。
打ち上げは「デルタU7925」ロケットで行われる。射場はケープ・カナベラル空軍基地の17A射点で、ロンチウィンドウは8月3日から24日の22日間。最初の15日間に打ち上げられると来年5月25日に、最後の7日間に打ち上げられると来年6月5日に火星へ到着する。(下・ロンチシステムの模式図)
ロケットには9本の固体補助ロケットが装着されているが、離陸時には6本が燃焼する。残りの3本は6本の燃焼終了後(打ち上げから1分経過)に着火。初段は打ち上げ4分23秒後に燃焼終了し、その40秒後に切り離され、第2段が燃焼開始。その後フェアリングが外れ、打ち上げから9分20秒後、第2段は燃焼を一旦停止する。
この時点でロケットは高度167kmのパーキング軌道を飛行。地球一周に達する直前に第2段を再点火し、火星へ向けた遷移軌道へ移る。ちなみにパーキング軌道のコースティングは約72分から85分間(打ち上げ日で異なる)であるが、これは過去のデルタUロケット打ち上げの中では最長。第2段の2回目の燃焼は約2分間。
ここで、探査機を載せたスピンテーブルの小型ロケットが点火、毎分70回転のスピンが加えられる。続いて第2段が切り離され、第3段であるキックモーターが点火、87秒間の燃焼で火星へ向けて加速する。これらが終了すると、おもり付きのワイヤーが伸び、回転を減速する(ちょうど、スケーターが両腕を広げると回転が落ちるのと同じ)。
第3段が切り離されると、クルーズステージの太陽電池が展開される。
フェニックスは地球から火星まで、ほぼ180度を隔てて飛行する軌道を描いて飛行する(右図・「ホーマン軌道」にほぼ近いコース)。これは約10ヶ月を要するが、最近打ち上げられてきた「マーズ・オデッセイ」や2台の火星探査車などと比べると4ヶ月ほど余分に時間を要する軌道である。
道中、6回の軌道修正(TCM−1〜6)が予定されている。第1回目は打ち上げから6日後で、以後、実際の飛行ルートと予定ルートとの比較検討の上、実施される。最後の軌道修正(TCM−6)は大気圏突入の22時間前であるが、必要であれば、突入8時間前に実施するオプションがある。
飛行中はシステム全体の監視に加え、大気圏突入フェーズなどのリハーサルも行われる。
着陸地点は決定しており、北緯68度、東経233度付近の北極圏「ボレアレス平原」(Vastitas
Borealis)。この緯度は地球に例えると北アラスカやグリーンランド中部あたりに相当する。ここは冬の間、ドライアイスの霜に覆われ「極冠」の一部になる場所。フェニックスの到着時は春の終わり頃で、霜は消え去り太陽光が夜遅くまで照らすため、長時間活動に有利である。
着陸地点の決定には、マーズ・リコネッサンス・オービターで撮影された画像が利用されている。2006年中頃には、最有力候補は「リージョンB」と呼ばれる、東経120度〜140度の範囲であった。だが、同年10月にリコネッサンス・オービターが撮影した高解像度画像では、35cmほどの岩石がゴロゴロしていることが判明、リスクが高いとして却下された。
一方、別の「リージョンD」と呼ばれる、東経230度〜250度の範囲には危険性を伴う岩石などが皆無に等しく、ここに決定されたのであった。
大気圏突入7分前にクルーズステージが分離、着陸機を包んだシェルが火星へと突っ込んでいく。耐熱シールドが大気上層に突入する際、機体の速度は秒速5.7km。最大Gは9.3に達する。
着陸まで残り203秒・高度12.6kmで、パラシュートを展開する。その25秒後、耐熱シールドを切り離し、着陸脚を展開。程なくして、着陸レーダーが作動を開始する。
着陸31秒前・高度880mで、バックシェルから着陸機が分離。そのまま落下し、タッチダウン10秒前に逆噴射エンジンを吹かして速度を落とし、着陸する。エンジンは、脚のセンサーが地表に触れた際に停止するようになっており、レーダーに頼っていない。
着陸15分後、太陽電池パネルを展開する。(下・着陸シーケンスの模式図)。
タッチダウンがエアバッグではなく、1976年の「バイキング」探査機で用いられたのと同様に、逆噴射エンジンで行われるのが特徴的だ。大気圏突入から着陸までは約8分。皆を緊張させる最もクリティカルなフェーズであり、最後の10秒間のフルスラストが最大の山場となる。ちなみにエアバッグが採用されないのは、探査機が巨大だからだ。
なお、火星着陸機を送り込む際のリスクの1つが、大規模な砂嵐だ。過去のミッションでも、火星到着時に砂嵐に遭遇した探査機があり、例えば上述のバイキング。だがバイキングは火星を周回する母船に入ったまま軌道上で待機し、砂嵐が収まったときに火星面への降下を行った。
一方、砂嵐の直撃を受けたことが原因で壊れたと考えられている探査機がある。1971年12月に火星へ着陸を試みたソ連の「マルス3号」だ。同探査機は技術の問題上、周回軌道上からの着陸機降下が不可能で、火星周回軌道に入る前に母船から切り離す必要があった。着陸機はタッチダウンに成功したものの、信号を20秒ほど送ってきたところで途絶えてしまっている。当時、火星面では大規模な砂嵐が発生しており、これがロストの原因と考えられている。
フェニックスの時にはそのようなリスクはないのか?フェニックスはマルス3号同様、砂嵐の有無に関わらず突入しなければならない。当然生じる懸念だが、リスクは小さいとミッションチームは考えている。というのも、火星面での砂嵐発生は南半球が夏の時に集中しており、フェニックスの到着時は北半球が夏であるからだ。ただ、確率がゼロということではないわけで、もちろん注意深く観察は続けられている。
(下は今年6月、火星の南半球に発生した大規模な砂嵐。マーズ・オデッセイによるデータで、左が6月23日、右が7月8日。赤い部分が砂により透明度が落ちている領域。6月中旬頃から砂が立ち始め、7月第一週がピークだった模様。)
◇
ところで、探査機を火星に送るにあたり、守られるべき重要な事がある。それは、地球の微生物を火星に持ち込まないということである。
そのため、着陸機、およびパラシュートにバックシェルは、全て滅菌が行われる。滅菌レベルは1平方メートルあたり300芽胞以下、総計30万芽胞以下とされている。「芽胞」は細菌の一部が形作る、環境耐久性の極めて強い形態であり、特に注意を払わねばならない対象とされている。
よく知られているのは、機体を高温で滅菌する作業である。専用の高温槽に入れられ、110℃〜146℃の温度で50時間ベーキングされるものであるが、それ以外にも、普段からアルコールなどで頻繁に消毒が行われている。また、機体に組み付けられる前の科学機器などは滅菌ケースに保管されている。
今回のフェニックス・ミッションで特徴的なのは、ロボットアームに巻かれた保護ラップだ。一般には「テドラーフィルム」と呼ばれ、様々なところで用いられているもの。スプリングとアルミチューブカバーで固定されており、着陸後スプリングが外れてフリーになる。
◇
ミッション期間は3ヶ月間が予定されているが、機能に問題が無ければ(他、追加予算が認められれば)、更に延長されるだろう。これは現在も活動している火星探査機と同様のことで、火星探査車など、3ヶ月の予定が実に3年半も走り続けている。
だがフェニックスは、最長でも1年弱である。なぜなら冬に入ると、そこは太陽光の当たらない北極圏だからだ。火星の1年は地球のほぼ2年で、春夏秋冬は地球時間で各々半年ずつ続く。着陸するのが初夏の頃であるから、晩秋まで活動可能としても10ヶ月程度であろう。
フェニックスが送ってくる、晩秋を迎えた火星の北極圏はどのような光景だろうか。地平線すれすれを動いていく太陽…自身の影が、長く長く地表に落ちていく。
フェニックスが地球と最後の交信を交わすと、厳しい冬へと突入していく。太陽電池は機能せず、バッテリーもすぐにあがってしまう…機能を停止したフェニックスは、暗黒の中でドライアイスに覆われ、凍り付くことが宿命づけられているのだ。
厳冬期は−100℃に達する。次の春、フェニックスが凍り漬けから甦る確率は極めてゼロに近いと言えよう。火の鳥も、高温には耐えても低温には耐えられそうにない…。
◇
フェニックスは今年5月7日、ケネディー宇宙センターへ到着、同センターの「危険搭載貨物修理施設」(Payload Hazardous Servicing Facility; PHSF)へと運び込まれた。現在も(7月13日時点)PHSFで作業が進められている。ここではスピンテストやバランステスト、第3段ロケットとの結合などが行われる。
(左下・5月7日、ケネディー到着。右下・PHSFへ運び込まれ、クリーンルームでコンテナから出されたところ)
(耐熱シールドの分離テスト) (スピンバランステスト)
(太陽電池パネル展開テスト) (太陽光照射テスト)
(デルタロケットの準備。左・初段の組み立て、中央・第2段ロケット、右・機体側面に描かれたミッションロゴ)
7月10日にはNASAワシントン本部で公式会見が行われ、ミッションの始動が正式に宣言された。会見にはメディアも詰めかけ、約1時間の間に活発な質疑応答が交わされた。
火星の極地の風景、そしてショベルで掘った土壌、楽しみですね。
【Reference】
“Phoenix Mars Mission”, Univ of Arizona http://phoenix.lpl.arizona.edu/index.php (ミッション公式サイト)
“Visions of Mars: A Message to the Future”, The Planetary Society
http://www.planetary.org/programs/projects/international_mission_participation/messages/vom.html
【最新情報】 以下、日々リリースされる情報を追加しています。下に行くほど過去のものになります。
[追加 05.25. 2010]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」が、物理的に破壊されていることが確認されました。発表の写真を見れば、一目瞭然です…
当サイトでもまとめておきたいですが、今なかなか時間が。。^^;
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2010-175
[追加 05.14. 2010]
☆火星の北半球は13日、夏至を迎えました。北極域に着陸しているNASAの火星着陸探査機「フェニックス」が越冬できたかどうかの確認が、周回探査機「オデッセイ」を経由して度々行われてきましたが、これまでのところ信号を確認できず。この試み、最後となる傾聴が今月17〜21日に行われることが決定しました。
詳しくはこちらへ【NASA 05.13】
[追加 04.13. 2010]
☆今年2月に行われたものに引き続き、今月5日から9日にかけて、NASAの火星周回探査機「オデッセイ」による、火星着陸探査機「フェニックス」の信号音傾聴が実施されましたが、なにも受信することがなかったそうです。
この後、再度リスニングを行うかを協議によって決めるとのことです。詳しくはこちらへ【NASA 04.13】
[追加 04.02. 2010]
☆北極域に着陸し、厳冬の中で音信を絶ったNASAの火星着陸探査機「フェニックス」に対する、3度目のリスニングが今月5日〜9日の間、試みられます。
フェニックスの地は現在夏で、ドライアイスの氷も溶けてしまいました。探査機は越冬可能に造ってはありませんが、ひょっとしたら…との期待で、電波を再び発信していないかリスニングが行われています。聞き耳をたてるのは周回探査機「マーズ・オデッセイ」。前回は2月に行われ、60回上空を通過する間にリスニングが行われましたが、シグナル発信を確認することはありませんでした。
なお今回が最後とされていますが、あと1回試みる話が出ているそうです。かの地は5月13日に夏至を迎えますが、それに合わせて受信を行ってみようとのこと。詳しくはこちらへ【Universetoday 03.31】
[追加 02.25. 2010]
☆火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」による、火星着陸機「フェニックス」からの信号傍受の試みが今月22日より再開されています。最初の試みは先月行われましたが反応無し。今回は26日までですが、まだ朗報はありません…。
ちなみに3回目のリスニング期間は4月上旬に設定されています。詳しくはこちらへ【NASA】
[追加 02.10. 2010]
☆NASAの火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」は、先月末に引き続き、第2回目の「フェニックス」傾聴を実施する。期間は今月22日から26日で、この間フェニックスの上空を60回通過し、シグナルを発していないか受信を試みる。ネタ元はこちら【JPL 02.09】
[追加 01.11. 2010]
☆今月18日より、NASAの火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が、北極域に着陸している探査機「フェニックス」との交信を試みる。
火星着陸探査機「フェニックス」は一昨年5月26日、北極域に着陸した。この年の11月に交信が途切れるまでの5ヶ月間、土壌分析で大きな成果を上げたことは記憶に新しい。かの地はその後冬を迎え、フェニックスはドライアイス漬けになっていた。(下は周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今月6日に撮影したフェニックス。緑枠の中央がそうで、ドライアイスはかなり消え失せ、伸びた影が見えている。)
火星の北半球は昨年10月26日、春分を迎えた。北極にも日照が戻りつつあり、フェニックスも解放されつつある。太陽電池にも光があたり、短絡的に言えば、活動を再開することが期待できる。ひょっとしたらフェニックスは越冬に成功するのではないか…このことは、フェニックスが活動を停止する前から言われていたが、可能性は極めて低い。
探査機のハードウェアは越冬仕様にはなっていない。厳冬期にはマイナス100℃まで下がり、ぶ厚いドライアイスに覆われると言われており、ハードウェアは破壊されるというのが大方の見方である。
ただ、ひょっとしたら、という淡い期待もある。フェニックスのメモリーには、もし活動を再開したら、定期的にシグナルを発信し周回探査機のどれかとコンタクトを取るように仕向けるようなプログラムが入れてある。今月、オデッセイが3日連続で、日に10回、フェニックスの上空を通過するという機会があり、集中リスニングが行われるのである。
もしもシグナルが捉えられたら、フェニックスの状態確認が行われることになっている。詳しくはこちらへ【NASA 01.11】
[追加 10.28. 2009]
☆26日、火星の北半球は春分を迎えました。北極域に着陸した火星着陸探査機「フェニックス」はまだドライアイス漬けになっていると思われますが、これから徐々に解凍されていくことでしょう。下は火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した着陸地点付近。(左は撮影時期がちょっとわかりませんが(氷漬けになる直前?)右は冬真っ盛りの7月30日のようです)
右の画像では、バックシェルやパラシュートは確認できませんが、フェニックス本体は確認できているようです(下はその拡大図)。
大きいサイズやコメントはこちらへ【Unmanned Spaceflight.com 10.26】
[追加 07.02. 2009]
☆久しぶりに、火星着陸探査機「フェニックス」関連の話題が^^ 昨年5ヶ月間の活動で取得されたデータの分析結果が「サイエンス」誌に発表されているそうです。
活動期間中に報じられた発見をきちんとまとめた論文のようですが、それ以外に目をひくのは…
○土壌中に10分の数パーセントの過塩素酸が検出された。これが大気中の水蒸気を、火星の気温でも液体にとどまれるほど高濃度な塩水が可能なほどに吸っている可能性がある。
○上空で降水が観測されたが、これは冬期には地上まで達し、水氷が地表に成長している可能性がある。
○土壌に炭素ベースの有機物が含まれていたかどうかは、結局わからない。オーブンでの加熱の際、過塩素酸が分解し、有機物の検出を阻害した可能性がある。
○295℃以下のレンジでの水蒸気は確認されなかった。これは、土の粒子どうしをくっつける水分はゼロであることを意味しているという。
詳しくはこちらへ【phoenix 07.02】
[追加 03.18. 2009]
☆昨年5月〜11月にかけて活動した火星着陸探査機「フェニックス」で取得された画像の分析から、液体の水が脚についていたという結論が引き出されました。(下の緑の部分が、水の“しずく”だという)
フェニックスの活動した場所の気温と大気圧であれば、塩分の濃さも関連して、水が液体でいることができる可能性があるとのこと。詳しくはこちらへ【University of Michigan 03.17】
[追加 01.03. 2009]
☆下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が先月21日に取得した画像で、火星着陸探査機「フェニックス」とその周辺の状況。撮影時の太陽高度は14度で、この画像はフェニックスの活動停止以来初めて取得されたもの。擬似画像であり、撮影時には霜は降りていなかったが、その寒々しさを感じさせる画は、本格的な冬にいよいよ入りつつあることを表現している。
MRO運用チームによると、「フェニックスの監視は続けないのか?」という質問が多く寄せられているという。答はイエスであり、着陸地点が氷結等によってどのように変化していくかを追い続けているという。詳しくはこちらやこちらへ【NASA 01.02】
[追加 12.15. 2008]
☆活動終了が先月宣言された火星着陸探査機「フェニックス」のデータを解析している運用チームは、地下の氷が気候の長周期変動と密接に関わっていることにより強い確証を得つつあるという。NASAが発表した。
フェニックスの着陸した場所では、表土の下に氷層が広がっていることがわかっているが、これまでに取得されたデータと理論モデルとの照合で、大気中の水蒸気が表土を通って氷層と相互作用を行っていることに強い確信を持ちつつあるという。現在、フェニックスの地は非常に低温で極端に乾燥しているが、過去の今より暖かい時代には、土壌中の化学状態を変化させるに充分な湿度を保持し得たと考えられるという。
(下・今年10月20日に撮影された“スノウ・ホワイト”と呼ばれた溝の擬似カラー画像。フェニックスが活動を停止する10日ほど前のもので、気温は最低マイナス89℃、最高マイナス46℃。溝の表面に霜が降りており、それが強調されている。)
火星の自転軸の方向は地球のそれと比べ、安定していない。したがって現在より大きく傾いていた時代があり、その時極地方は温暖だったと考えられている。傾きは数十万年から数百万年の周期で変動していると見られ、過去1千万年を通して変動は何度もあり、またこれからもそのような変動が何度もあるとされている。
「フェニックス周辺の土の下の氷は、太古の海の状態を閉じこめてはいません。」と語るのは、ロボットアームチームを率いるレイ・アービッドソン氏。水蒸気は土層を通り、大気と平衡状態にあり、気候の変動がそのまま氷に作用していると主張する。
詳しくはこちらへ【NASA 12.15】
[追加 12.03. 2008]
☆先月2日の通信を最後に活動を停止したと見られているNASAの火星着陸探査機「フェニックス」との交信試みが、先月29日を最後に打ち切られた。NASAが1日、発表した。
フェニックスは今年5月下旬に北極域に着陸、予定期間を2ヶ月も超える長期にわたり活動を続けていた。着陸当時、かの地は太陽高度の高い夏季であったが、季節の推移と共に太陽高度は低下、太陽電池発電量が低下し、いずれ活動を停止することは予定されていた。
先月2日、周回機「マーズ・オデッセイ」を経由し、データがごく僅か受信されたのが最後の交信となった。「不安定な気象状態が、交信途絶に寄与したと言えますが、そのような状態であったため、再度探査機とのコンタクトが取れるのではないかと期待もしていました」と語るのは、フェニックス計画マネジャーのクリス・レビッキー氏。運用チームは当初、11月下旬まで運用できるものとみていたが、砂嵐の影響が予想以上に大きかったようである。
その後も2機の周回機「マーズ・オデッセイ」と「マーズ・リコネッサンス・オービター」を介しての交信が試みられてきたが、先月下旬より地球と火星は「合」の状態(地球−太陽−火星)になり、各探査機との通信が著しく制限される状態に入る。これに伴い、先月29日で試みを打ち切ることが決定されたという。
通信制限は今月中旬に解消するが、もはやフェニックスの地は低温と日照量不足で、再起動する可能性はほぼないとみられている。詳しくはこちらへ【Phoenix 12.01】
[追加 11.12. 2008]
☆フェニックスの運用停止発表を要約しておきます…
NASAは米東部時10日午後4時(日本時間11日午前6時)より会見を行い、今年5月より火星の北極域で活動を続けてきたNASAの火星着陸探査機「フェニックス・マーズ・ランダー」の活動が終了したことを宣言した。
フェニックスは太陽高度の低下および砂嵐による発電量の減少に対応するため、先月28日よりサバイバルモードに入った。これはバッテリー温存と発電量減少に対応するための措置で、ヒーターを段階的にオフにしていく延命措置であった。これにより、12月ぐらいまでは主に気象データの取得が続けられるものと見込まれていた。
いずれ終わりが来ることはわかっていたが、それは突然だった。
サバイバルモードに移行しようとした直後、フェニックスはセーフモードにダウン。電力不足に反応した機体の自律措置であったが、バッテリーがほぼ底をついた状態だったと見られる。翌日のコンタクトも不通であったが、翌々日に交信が回復、その状態からフェニックスは、太陽光が当たっている間のみ機能しているのではないかと考えられた。
その後もコンタクトは続いたが、今月2日に交わしたのを最後に、シグナルが一切受信されなかった。太陽光の減少に加え、砂嵐の影響が予想外に強かったと見られている。「砂嵐が寿命を3週間縮めました」と語るのは、ミッションマネジャーのバリー・ゴールドスタイン氏。もはや機能回復することはないと判断され、運用チームはミッションの終了を宣言した。この後もしばらく、シグナルの受信は続けられるが、可能性は低いだろう。
フェニックスは予定の3ヶ月の倍近い、6ヶ月弱の間活動をした。その間、水氷を目で見える形で確認したのを始め、土壌がアルカリであること、過去に水があったことを強く示唆する物質が検出されたことなど、大きな成果を残している。分析装置「TEGA」や「MECA」で取得されたデータは今後、精密な分析が行われる予定で、さらなる発見があるかも知れない。
火星時間で152日間、フェニックスは25000フレームを超える画像を取得し、顕微鏡による観察も成功した。気象観測装置は大気の状態を継続的に捉え続けた。
この後、来年4月には太陽が地平線より全く上に出ない極夜に入る。機体全体がドライアイスに覆われ、大気温はマイナス180℃まで低下する。次に太陽が出現し、フェニックスの活動に充分な光量が戻るのは来年10月。フェニックスには太陽電池の発電が復活したら地球とコンタクトを開始するようプログラムが仕込まれているが、氷漬けの間に低温破壊を食らい、その可能性は極めて小さいものと見られている。
詳しくはこちらやこちらへ【NASA/Spaceflight Now 11.10】
…下は10月27日に取得された画像で、左は地表、右は上空の雲の様子。この日に撮影された画像が最後のもので、科学運用そのものも最後となりました。
下は10月25日に取得された、ロボットアームカメラの画像。同カメラの画像はこれが最後。アームは伝導度測定プローブを地表に指した状態で固定され、伝導度の測定は継続される予定でした。
[追加 11.12. 2008]
☆ついに、力尽きたようです…
NASAは日本時間11日午前6時より会見を行い、火星着陸探査機「フェニックス」のシグナルが途絶え、ミッションはほぼ終了したと発表した。
フェニックスからの最後の信号は2日に受信された。過酷さを増す環境の中で、最後は太陽光が当たっている間のみ機能していたと考えられている。
運用チームは今後も耳をすまし続けるが、新たにシグナルが受信される可能性は低いと考えている。詳しくはこちらへ【NASA 11.10】
…運用チームとしてはもう少し頑張れると思っていたところでしょうけど、砂嵐の影響が予想以上に大きかったようで。。
[追加 11.03. 2008]
☆NASAの火星探査機「フェニックス」とは10月30日以降、毎日のコンタクトが成立している。31日から今月3日にかけて取得された情報によると、フェニックスは午後ないし夜に電力ゼロに陥るが、翌朝太陽光の照射と共に機能を開始しているという。
かの地は日々太陽高度が減少を続けており、その上砂嵐も頻繁に発生しており、それらのために太陽光量は急速に低下している。
「これは我々が予期していたシナリオと全く同じです」と語るのは、フェニックス計画責任者のバリー・ゴールドスタイン氏。ただそれは、砂嵐のおかげで予想よりも数週間早く到来したという。
終わりの日はいつ来てもおかしくないという。だが、気象観測データを可能な限り取得すると、運用チームは頑張っている。詳しくはこちらへ【Phoenix 11.03】
[追加 10.31. 2008]
☆下で報じたフェニックス不通の続報…フェニックスはマーズ・オデッセイとの交信に成功!管制部で機体の状況把握が続けられているそうです。詳しくはこちらへ【NASA 10.31】
[追加 10.31. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」、その予断を許さない状態は続いている。運用チームは29日夜と30日朝に火星周回探査機を中継したコンタクトを試みたが、いずれも失敗したという。
チームによると、現在もっとも考えられる状態として、一日2時間のみ、周回機からのコールを待つモードに入っているのではないかと考えている。これはプリセットされていた安全モードであるが、もしこれが正しければ、探査機は電力の低下に伴いある段階からオンとオフを繰り返している状態にあることになる。
「我々は周回機運用チームと連携を取り、フェニックスからのレスポンスを取るべく可能な限りシグナルを送るつもりです」と語るのは、フェニックス計画の責任者バリー・ゴールドスタイン氏。
フェニックスに中継する周回機には、NASAのマーズ・オデッセイとリコネッサンス・オービターが使用されている。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 10.31】
[追加 10.30. 2008]
☆28日からサバイバルミッションに入ったNASAの火星探査機「フェニックス」であるが、28日遅くに電力不足のためダウン、セーフモードに入った。このようなダウンが起こることは考えられていたが、システムがB系統に切り替わったうえで2このバッテリーのうち1つがシャットダウン。このような動作は想定外だったという。
セーフモードでは最低限以外の活動を停止し、地球からの指示を待っている。運用チームはバッテリーチャージを開始するコマンドを探査機に送ることができたため、バッテリーが完全にいかれたわけではなさそうである。なおシステムのシャットダウンは、28日に実行されたヒーター停止の最中に発生した。
現在、フェニックスが居る北極域の最高気温は−45℃で、最低気温は−96℃前後。火星到着以来、探査機が経験する最も低い温度の更新が続いている。中規模の砂嵐は頻繁に起こり、上空には雲が広がること多く、太陽が地平線から顔を出している時間も短くなっていることも含め、太陽電池発電量は急速に低下を続けている。また温度の低下により、バッテリーヒーターが初めて電源オンになったが、皮肉にもこれが電力需要増となっている。
バッテリーのチャージには数日かかる模様で、予定されていた活動は11月に入ってからになりそうとのこと。
フェニックスがあとどのくらい持ち堪えるか…不安定な気象状態など人の手ではどうしようもない要素が強まっているため、終わりが来るのは明日かも知れないし数週間先かも知れないし、何とも言えない状態にあると運用チームは語っている。詳しくはこちらへ【Phoenix 10.29】
[追加 10.29. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」は28日より、サバイバルミッションに入った。これは、日増しに低下する電力と気温に、可能な限り耐えるための措置である。
今年5月26日に北極域に着陸し、当初予定の90日間ミッションを仕上げ、延長ミッションに入っていたフェニックス。今月26日でちょうど5ヶ月間の活動に達したところである。しかしかの地は夏から秋に向かいつつあり、日照時間と南中高度の低下と共に、太陽電池発電量および気温がぐんぐん低下している。探査機には機器を保温するためのヒーターが備えられているが、電力低下とは裏腹に、ヒーターの使用量が伸びている状況にある。
いずれフェニックスは活動を停止するわけだが、可能な限り機能を維持するため、運用チームは28日よりサバイバル運用を開始した。それは今後数週間にわたり、ヒーターを徐々に停止していくというものである。これは、メインカメラと気象観測装置を最後まで機能させるべく、施される処置である。
28日(日本時間29日)、運用チームは4系統のヒーターのうちの1つ目を停止するコマンドを送信する。このヒーターはロボットアーム、アーム搭載カメラ、分析装置「TEGA」を保温するためのもの。ロボットアームによるサンプル収集はもはや予定されておらず、地中や大気の伝導度を測定するプローブ「TECP」を土壌に挿した状態で停止される。このプローブは保温を要しないため、今後もデータを送り続けることになる。
電力が更に低下すると、2番目のヒーターが停止される。このヒーターは点火開始ユニットを保温するためのもので、このユニット自体、着陸後は使われることがなかった。この停止により4,5日運用分の電力を確保することができる。
これに続き、3番目のヒータが停止される。これはメインカメラ(Surface Stereo
Imager)と気象観測装置を保温するためのもの。これらの機器は自身が充分な熱を発するため、ヒーターを停止しても機能するものと期待されている。
最後に、機体とバッテリーを保温する2つのバイタルヒーターのうち1つが停止される。最後の1つは最後までオンのままだが、どの時点でフェニックスの機能が停止するかは、神のみぞ知る。
この方針により、フェニックスは11月下旬から12月半ば頃までは持ち堪えるのではないかと運用チームは考えている。というのも、11月28日から12月13日まで火星と地球は「合」の状態(地球から見て火星が太陽の向こう側)にあり、交信ができないのだが、それに備える準備も始めているからだ。4番目のヒーター停止が合の前に行われるのか後に行われるのか、現段階では何とも言えないとしている。詳しくはこちらへ【Phoenix 10.28】
…フェニックスミッションも、最終章に入りましたね。どこまで持ち堪えるのか…
[追加 10.21. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」は、分析装置への土壌サンプル投入を全て完了した。現在分析に向けての準備が進められているが、運用チームは電力低下を心配している。
下は19日に取得された画像。左上奥にMECAが、手前にTEGAが見えているがどちらも泥だらけ。中央奥には記念DVDが。
ロボットアームは目下、“Upper Cupboard”、“Stone Soup”と呼ばれている溝を掘り下げている。その後ここをカメラで撮影し、周辺氷盤の全体像を得るためのデータを取得する。(下・今年8月における該当箇所の様子)
フェニックスに残された時間はもはや僅か。運用チームは最後のギリギリまで頑張る意気込みのようだ。詳しくはこちらへ【Phoenix 10.21】
[追加 10.18. 2008]
☆活動停止が迫りつつある火星探査機「フェニックス」は、13日(Sol 137)、分析装置「TEGA」の8台あるオーブンのうち“第6オーブン”に土壌サンプルを入れることに成功した。
第6オーブンへのサンプル投下は“ボーナス”として行われたもの。ミッションで予定されていたオーブン分析は既に達成されている。これで計6台のオーブンが使用されたことになる。(下は17日に撮影されたもの。オーブンが4台見えており、左から第7、6、5、4と番号がつけられている。第6と5は扉がわずかに開いた状態ですが…端のすき間に土をこぼし、無理矢理なかに入れたっぽいですね。@管理人)
一方、10日から11日にかけて、局所的に発生した砂嵐に見舞われたが無事に乗り切った。この砂嵐は西から東に向けて進行し、フェニックスのいる場所を通過した11日には太陽電池パネルの発電量が著しく低下した。(下・13日に撮影された風景。50秒おきに撮影された画像をつなげた動画がこちらにあります。徐々に空が明るくなっていく様や、いくつものダストデビルが走り抜けていく様子がリアルでダイナミックです。)
砂嵐通過の際、土壌掘削などの作業は中断されたが、カメラによる周辺の撮影は続けられ、大気の変化や運動のようすが取得された。また、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)による上空からの追跡観測も行われた。(下・MROが取得した画像で、砂嵐が通過した後の模様。フェニックスは10時の方向に見えるドットで示されている。それにしても、砂嵐が極を中心に放射状に分布しているのが興味深いですねぇ@管理人)
通過後は発電量も回復し、通常の運用に戻っている。詳しくはこちらやこちらへ【Phoenix 10.14/10.17】
[追加 10.14. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」がSol136(10月12日)に撮影した画像をふと眺めていて…中に見える、ちょっとした塊みたいなもの…氷ですかねぇ?
大きいサイズはこちらへ【Phoenix 10.12】
[追加 10.08. 2008]
☆NASAの火星探査機「フェニックス」は、目前に迫ったタイムアウトにむけて、土の掘削、分析に大忙しである。
これまでの2週間でフェニックスは、“ヘッドレス”と呼ばれているVHSテープ大の岩をロボットアームで動かすことに成功、その下の土をすくい、原子間力顕微鏡での観察を行った。
運用チームは、この岩の下に濃縮した塩類がないか興味を持っている。地球の北極では、水が蒸発すると岩の周囲やその下には塩類が濃縮している様が観察される。これと同じことが火星の北極でも起こっているのではないかとチームは踏んでいるわけだ。
一方、ロボットアーム&シャベルによる土壌サンプルの収集と分析装置への投入も行われた。週末には“スノウ・ホワイト”と呼ばれる溝を掘り、すくった土を分析装置「TEGA」へ落とすことに成功した。チームは今後、TEGAのふるいを振動させるコマンドを送り、土を内部へ落とす作業を行う予定である。
(下はTEGAの現在の状態で、8台あるオーブンのうちの4台が写っています。サンプルは右端に投下されたようですね。ちょっと前に、これら4台を全て使う旨の発表があったはずですが、中央の2台、扉は開くのに失敗した感じがありますが…左端は“無傷”…しっかし全体的に泥だらけでこれは一体。。)
また、土の下に広がる氷盤の掘削も行われた。7日には“ラ・マンチャ”と呼ばれる溝の掘削を行い、氷の調査が行われた(下)。チームは他の溝でも同様のことを行い、氷盤の分布を把握しようと考えている。
秋に入ったかの地は日照時間が減少を続けており、フェニックスの活動も厳しい制限を受けつつある。10月下旬までにはロボットアームの活動はできないまでに電力が低下するものとみられており、その後は気象観測のみを続けることになる模様。しかしこの活動も、年末までには終了する。
下は今月7日に取得された画像。擬似カラーで、青みがかったところは霜が降りていることを示している。この画像でも少しわかるが、上空は雲が広がっている。夏至を過ぎて気温が下がり始めて以来、上空には雲が広がりやすく、地表には霜が降りたり、つむじ風がまいたりするようになっている。(気温の大きな変化が大気循環をダイナミックなものにしているのでしょうかね@管理人)
なお、フェニックスには“Lazarus mode”と呼ばれるリブートプログラムが内蔵されている。このプログラムは太陽電池からの電力が供給されたと同時にシステム全体をリブートし、地球とコンタクトを取ろうと仕向けるものである。フェニックスが冬を越え、再び太陽光を浴びたときに生き返るのか…運用チームは、可能性は限りなくゼロに近いと考えている。
詳しくはこちらやこちらへ【Phoenix/Space.com 10.08】
…フェニックス自体への霜の貼りつきはまだないようです。探査機はヒーターで温められていますので、電力が切れるまではないようで…つまり自分を覆う霜を撮影した画像は見られないということで…。
[追加 09.25. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」は、岩石「ヘッドレス」の移動に成功した。
ヘッドレスは、VHSテープほどの大きさの岩で、22日、シャベルでの移動に成功した。全ての行程は事前にアップロードされたプログラムに従って行われたが、トラブルが生じることもなく、岩は目論見通りの場所へ移されていることが確認された。(下・移動後のヘッドレス。溝を横にふさぐ格好で入っているのがそれでしょうが…火星時で正午過ぎに撮影されたものですので影がなく、分かりづらいです…)
運用チームは今後、ヘッドレスが元あった場所を掘り、氷の状態を調べる予定である。詳しくはこちらへ【NASA 09.23】
[追加 09.23. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」は、運用チームが「ヘッドレス」と呼んでいる岩を動かしてみる作業に入った。これはロボットアームで行うもので、岩を動かすのはミッション期間中で初めてのことである。
この岩はVHSテープほどの大きさと形をしたもので、その下に何があるのか、チームは楽しみにしている。
もともとロボットアームは、岩をどかすような行動を想定して作られてはいない。20日、運用チームはヘッドレスに隣接する溝を広げ、21日夜、その溝の中に岩をすべり落とすようコマンドを送信した。
全てがうまくいけば、岩の下が露出するはずである。この下を掘り氷盤の状態をさぐることで、氷が大気中の水蒸気と平衡状態にあるか否かを知ることができるものと彼らは期待している。
詳しくはこちらへ【Phoenix 09.22】
[追加 09.17. 2008]
☆下は、火星探査機「フェニックス」が今月16日(Sol 111)に撮影した画像で、中央左に見えている黒く細い物体は耐熱シールド。
この耐熱シールドはフェニックスの南東側、約150メートルのところに落ちている。そのすぐ右に、バウンスした痕跡ある。詳しくはこちらへ【NASA 09.17】
[追加 09.10. 2008]
☆下は今月1日(Sol 97)、火星探査機「フェニックス」が撮影した着陸機の真下の様子。着陸からほぼ100日が経過してのものだが、最初の頃(Sol
8)に撮影された時(下段画像)と比較して、着陸脚にくっついた粒々がやや成長しているのがわかる。
科学チームはこの現象の説明にいくつかの可能性を考えている。例えば、塩が付着、大気中の水分を吸収し凍ったというものなどである。
一方、地表の白かった部分の一部が土で覆われているように見えるが、氷が蒸発してしまった結果かも知れない。詳しくはこちらへ【photo: Phoenix】
☆火星でも夏が過ぎていきます…電力低下がはっきりとしてきましたので、ミッションも急がれます…
火星探査機「フェニックス」運用チームは、現在4つ残っている分析装置「TEGA」に次々と土を投入、加熱実験とデータの収集を行うことを決定した。これまでTEGAに土が投入され、加熱、生じたガスの分析を待って次の行動を決定していたが、ミッションが維持できる期間に先が見えてきたため、少しでも多くの分析をこなすよう決定されたもの。
現在かの地は夏至を過ぎ白夜は終わり、太陽電池電力の低下はひびはっきりとしている。白夜の期間は3500ワット時あった発電量が、現在では2500ワット時まで落ちている。
一方、4つある分析装置「MECA」のうち使用されていない最後の1つに、「スノー・ホワイト」と呼ばれる溝(右)から収集される土を投入、分析することも決定された。
詳しくはこちらへ【Phoenix 09.09】
[追加 09.01. 2008]
☆NASAの火星探査機「フェニックス」は順調に活動を続けており、先月末から掘っている最も深い溝よりサンプルを収集し、分析装置「MECA」に投入、分析を開始した。
また、先月29日には上空の雲の動きを観測した。下は10分間に取得された画像をつなぎ合わせて作られた動画である。
雲は水氷の結晶からなるのは明らかだという。まるで地球の雲のようですね!詳しくはこちらへ【Phoenix 09.01】
[追加 08.26. 2008]
☆一方、北半球では夏がピークを過ぎていきます…
下は、火星の北極圏で活動を続けている着陸探査機「フェニックス」が今月26日に撮影した日の出の瞬間。
かの地ではこれまで白夜が続いてきたが、今月22日、太陽が完全に地平線の下に沈むようになった。夏の終わり、の始まりである。
この画像は現時時刻で午前0時51分に撮影されたもの。太陽が地平線の下に沈んでいるのは僅か75分間であった。大きいサイズはこちら【Phoenix 08.26】
☆NASAの火星探査機「フェニックス」の次のサンプリングターゲットは、現在掘削が進められている溝から採取される予定であるが、この溝はこれまでのものより3倍の深さに達するものである。
また、今月26日、着陸機は90火星日(Sol 90)を迎えた。火星での90日間は当初予定されていたミッション期間であり、ひとつの節目となる。だが既に報じられているように、ミッションの延長が決定されており、来月にわたって活動を継続する予定だ。
「当初予定していた活動期間達成を目前にして、私たちは皆、ミッションが順調に進んできたことにスリルを感じています」と語るのは、NASAジェット推進研究所側の責任者であるバリー・ゴールドスタイン氏。
これまでの掘削では、ポリゴンの中央では深さ5センチで氷盤に打ち当たっている。一方、現在掘っているポリゴンとポリゴンの境界では、18センチ掘った今も氷盤に当たっていない(上の画像)。運用チームはこの境界を物質が集積している場所と考えており、今後、土壌分析を行う予定としている。詳しくはこちらへ【Phoenix 08.25】
[追加 08.21. 2008]
☆NASAの火星探査機「フェニックス」は順調に活動を続けている。ミッションも延長され、エンジニアチームは着陸機周辺の土壌の掘削を続けるにあたり、次のターゲット選定を進めている。
最近掘られた溝に、“Burn Alive 3”と名付けられたものがある。チームはこの溝のサイドを氷盤の上1センチのところまではぎ取る予定である。表面から氷盤まで土の深さは2センチであり、1センチはちょうどその半分。このことで土壌の垂直プロフィールを観察することができるものと期待されている。(下・掘削フィールドを中央から2枚に切り分けて並べたもの。元の画像はこちらへ)
一方、フェニックスの着陸している場所は、地球の極地でも見られるような、六角形の構造パターンが広がっているところ。フェニックスのスコップは六角形の“内部”(土が盛り上がっている)にも、“辺”(くぼんでいる)にも手が届くため、両方を詳しく調べることができる。運用チームは、辺をできるだけ深く掘ってみるというプランも立てているという。(例えば上段画像の“Cupbord”と呼ばれた部分はそのくぼみにあたり、ここを掘り進むプランがある。)
このような掘削で取得されたサンプルはTEGAやMECAに放り込まれ、分析実験が行われることになっている。詳しくはこちらへ【Phoenix 08.20】
…“Neverland”も2段堀になっていますが、ここも垂直プロフィールを観察するためかな?
[追加 08.11. 2008]
☆NASAの火星探査機「フェニックス」は順調に作業を進めている。掘削により溝の幅を広げ、一晩かけた土壌の伝導性調査、それに分析装置「TEGA」への土壌投入が行われている。
フェニックスは7日、“Rosy Red”と呼ばれる溝から土壌を収集し、TEGAのNo.5オーブンへと投入した。このオーブンの扉の展開は不完全であるが、土壌はスクリーンの上に落ちた。最初にスクリーンを通ったそれはごく僅かで、翌8日、振動を加えられたが、それでも十分ではなかった。だが9日にはオーブンの内部に十分な量の落下が確認されたという。
詳しくはこちらへ【Phoenix 08.10】
[追加 08.06. 2008]
☆火星探査機『Phoenix』(フェニックス)の湿式化学調査チームが発見したのは、過塩素酸塩と呼ばれる、塩素と酸素で構成される分子の一種だった模様だ。この発見は思いもよらないものだったが、これによって火星に生命が存在する可能性は増えもしないし減りもしない、とチームでは合意しているという。
さらに、今回の計画を率いる研究者Peter Smith氏は、記者たちとのテレビ会議で次のように述べた。「どちらかといえば肯定的な方になるだろう」
Smith氏は次のように述べている。「この酸化体(酸化剤)に含まれるエネルギーを使って生きている微生物は存在する。過塩素酸塩の存在自体は、生命が存在するかということにとって肯定的でも否定的でもない」
過塩素酸塩について参考になる場所の1つが、チリのアタカマ砂漠だ。ここは地球上で最も乾燥した場所の1つであり、火星地表に類似する場所として研究されている。そしてこの場所では、一部の微生物が過塩素酸塩の分子をエネルギー源にしている。
過塩素酸塩は強酸性で、殺菌にも使われる物質だが、酸性環境下で生息する好酸性菌も存在する。中にはpH1以下の条件で至適生育を示す生物(古細菌)も存在する。
Phoenix計画は、火星の北極付近で生命が生息できる可能性を検討するためのプロジェクトとして2005年に開始が発表されたものだ。水の存在は確認されたが、生命の基本構成要素である有機分子を証明するものは見つかっていない。
探査機に搭載された顕微鏡による目視検査以外に、探査機が生命を検出する手段はない。
先述したように、過塩素酸塩の存在は、微生物が火星で生息しているという可能性にプラスであれマイナスであれほとんど影響を与えないが、火星の土壌で過塩素酸塩分子の存在が確認できたことは、計画に参加する科学者の1人、Michael Hechtが言うように、火星の科学の「新しい章を開く」ものだ。
特に、過塩素酸塩が溶けやすいという事実は、かつては火星表面を自由に流れていたと考えられる水に何が起きたのかを科学者が推測するのに役立つと考えられる。
「過塩素酸塩は、水の歴史について非常に多くのことを教えてくれるだろう」と、Phoenix計画に参加する米航空宇宙局(NASA)エイムズ研究所の研究者、Richard Quinn氏は述べた。「Phoenixが活動する区域だけでなく、火星の他の部分についても」
科学者たちが予定よりも早く記者会見を開いたのは、自分たちの発見に関して飛び交う噂(日本語版記事)を鎮めるためだという。したがって、通常の手順すべてを踏んでいるわけではない。続きはこちらへ【Wired Vision 08.06】
☆米航空宇宙局(NASA)は4日、火星地表面の土から、高濃度の「過塩素酸塩」を検出したと発表した。「過塩素酸塩」は強力な酸化剤で、地球上では火薬などに使われる、非常に毒性の高い物質。この物質の存在により、生命体の存在は難しいのではないかと見られている。しかし、火星探査機を打ち上げる際にも使っている物質のため、詳しく分析して地球から運ばれたものかどうかを調べる。
NASAによると、1970年代に火星探査を実施したバイキング計画では、火星の土は「酸化性が高い」ことが確認されており、この結果をもって生命体が存在する可能性は非常に低いと結論づけていた。「過塩素酸塩」の存在はこれを裏付ける結果となる。
しかし、現在も観測を続ける探査機「マーズ・オデッセイ」が2001年、氷が豊富に存在することを報告してきたことから、生命体の存在に期待が高まっていた。
NASAは今後、「過塩素酸塩」が火星地表面上に広く存在するのか、地球から持ち込まれて局所的に分布してるのかを詳しく調べる。
また、「過塩素酸塩」が土中に分布しているからといって、生命体の存在が否定されたわけではなく、地中の帯水層などに潜んでいる可能性もあるとしている。【CNN
08.05】
…日本時間6日午前3時に行われた会見での発表(アリゾナ大/NASAのリリース)では、「過塩素酸塩の発見は、生命にとって良くも悪くもない」と慎重な姿勢です。「現在はまだ分析の途中段階だが、非常に世間の関心が高いことなので発表した」といい、過塩素酸の存在イコール生命が存在しないというわけではないということを強調しています。
以前、TEGAによる分析では酸素の放出が確認されたといいますが、その酸素は過塩素酸の分解で生じたものの可能性も考えられているようで。現段階ではとにかく何とも言えない、詳しい結果報告はまだまだ先になりそうですね。(管理人)
[追加 08.04. 2008]
☆NASAは米東部時5日午後2時(日本時間6日午前3時)、火星探査機「フェニックス」による土壌分析の結果を発表する。先日から噂されている“重大発表”とみられるが、議論の余地が残されたものになるようである。
この発表では、フェニックスに搭載されている「MECA」(Microscopy, Electrochemistry,
and Conductivity Analyzer)による土壌の化学分析結果が披露される予定。先月、MECAで2つのサンプルが検定されたが、そのうちのひとつからは地球の土壌とよく似たデータを検出したが、もうひとつからはそうではないデータが得られたという。
詳しくはこちらやこちらへ【NASA/Spaceref 08.04】
…なお、「ホワイトハウスには事前説明があった」という事柄を関係者は否定しています。詳しくはこちらへ
[追加 08.02. 2008]
☆米専門誌アビエーション・ウイーク(電子版)は1日、米航空宇宙局(NASA)が、火星の生命存在の可能性に関する重大な発見を8月半ばにも発表する計画だと報じた。
同誌は、この重大な発見が、火星で水の検出に成功した米探査機フェニックスに搭載された分析装置MECAで得られたと指摘。分析は現在も進行中で、発表が9月にずれこむ可能性もあるが、NASAはすでにホワイトハウスにも説明したとしている。
水の確認などを発表した7月31日の記者会見で、NASAはMECAの成果に関する質問を避けるため、担当の研究者を出席させなかったという。
フェニックスは、生命の検出を目的とした装置は積んでいないが、MECAには、2マイクロ・メートルまで見分ける光学顕微鏡とさらに解像度の高い「原子間力顕微鏡」が設置されており、細菌が視野に入れば撮影できる。【読売
08.02】
…別の報道によると、生命の存在そのものの発見ではないようです。土壌が生命を宿す地球の土に似た特性であるということがわかったようで…
☆米航空宇宙局(NASA)の火星探査機「フェニックス」が、火星地表で水を直接確認したことを受け、NASAは9月末までのフェニックスの活動中、あと2回の土壌掘削と分析に挑戦する方針を明らかにした。水に続き、生命の存在の可能性を示す有機物の発見を目指す。
NASAによると、フェニックスが現在活動している場所は、水だけではなく、土壌中に生命のもとになる物質や死骸(しがい)の痕跡が存在する可能性がある興味深い地点という。フェニックスの活動予定期間は今月下旬までだったが、太陽電池の状態が良好なため、期間を5週間延ばした。NASAの担当者は「われわれはまだ有機物を見つけていない。今後もデータの解析に全力を挙げたい」と述べた。
フェニックスはロボットアームのスコップを使って、地表から約5センチ掘って土壌を採取し、分析装置に投入。土壌を加熱したところ、混じっていた氷が水蒸気になったことが確認された。地球以外の天体で、生命存在に欠かせない水が直接確認されたのは初めてで、今後、火星での生命の存在を裏付けるには、生命の生息に必要な豊富な水環境と有機物の確認が焦点になる。【毎日
08.02】
[追加 08.01. 2008]
☆フェニックスの周辺、360°カラーパノラマがリリースされました^^
…その他の画像など詳細はこちらへ
☆なるほど、TEGAってこういう仕組みにっているのか…とてもわかりやすいCGがこちらへ
☆火星で6月19日(米国時間)に発見された氷(日本語版記事)について、科学者たちは非常に詳しい分析を続けており、その熱心さはほとんどそれを「味わう」ほどだ。
そして、実際「味」がわかった。
氷のサンプルを火星探査機『Phoenix』の分析器に入れることに何度か失敗したあと、科学者たちは30日(米国時間)、サンプルを分析器[固体から発生する蒸気の成分を分析する器具]に入れることに成功した。
その結果が本日(米国時間7月31日)に発表され、この白くて固いサンプルは、予想されていたように、凍った水であることが確認された。
「水の存在を示す証拠はこれまでにも確認されていたが、実際に水に触れ、味わったのは今回が初めてだ」と、William
Boynton氏は、NASAのリリースで述べている。Boynton氏は、今回の『Thermal and
Evolved-Gas Analyzer』プロジェクトを率いる、アリゾナ大学に所属する科学者だ。続きはこちらへ【WiredVision 08.01】
[追加 07.24. 2008]
☆下は、NASAの火星探査機「フェニックス」が今月上旬から中旬にかけて取得した画像を合成して作成されたもの。時刻は火星時間の深夜で、極北の地で地平線の下に沈まない太陽の動きが見事に表現されている。
太陽も数日にまたがって撮影されたものを貼り合わせたものであるため、その軌跡はきれいなアーチにはなっていない。時刻のスパンは午後10時から午前2時(火星時)。
フェニックスは現在、氷盤の研磨とサンプル収集本番を間近に控えているが、本番は最も冷え込む午前6時(火星時)頃に行われる予定となっている。これは通常の行動開始時刻(午前9時)より3時間早い。これは、削り取った氷の昇華スピードをできるだけ抑えるためのものである。
現在、日中の最高気温が−30℃、最低気温が−80℃。50℃の温度差があるこの過酷な環境で、フェニックスはその最も低温な時間帯に重要な行動を行おうとしている。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.23】
[追加 07.23. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」は順調に活動を続けている。21日から22日にかけては連続33時間の運用を行った。一昼夜を通した運用はミッション開始以来、これが初めてである。
フェニックスはこの間、ロボットアームによる硬い氷盤の研磨や、大気の観測などを行っていた。大気観測は、周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」と連動して行われた。
一方、20日には24時間以上に渡って土壌の伝導度を調べるプローブをつきたて、データを収集した。機能は完璧で、氷の変化に起因する動きがなかったか、得られたデータの分析が続けられている(下・プローブを離した直後に撮影された一枚。くっきりと跡が残ってます)。
フェニックス管制チームは氷盤を削るテストを続けてきたが、手法に確証が持てたとのことで、いよいよ試料を採取し分析装置「TEGA」へ流し込む。TEGAは試料をオーブンで加熱し発生した気体を調べるもので、既に用いられる予定のオーブンのドアは開かれている(下・4列並んでいるオーブンの一番奥の扉が開いている。うっすらとフィルターメッシュが見えている)。
詳しくはこちらへ【Phoenix 07.22】
[追加 07.17. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」は、電動ヤスリによる氷盤の掘削とスコップによる収集に成功した。
下は、スコップの中に溜まっているサンプル。数時間の間隔を置いて変化が見られたという。
下は、掘削後の溝。溝の左上の方に、鼻の穴のように見える2個の穴が、掘削の跡。穴の間隔は約1センチ。
サンプルは分析装置「TEGA」に運ばれ分析が行われるのだが、掘削、採集、運搬の間に氷が昇華して消えてしまわないかという懸念がある。しかし今回のテストでは、数時間の間では消失してしまわないことが判明したわけで、チームは非常に満足しているという。
運用チームは再度の掘削および採集テストを行う予定で、サンプルの変化も観察される予定。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.16】
[追加 07.16. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」がいよいよ、ヤスリによる氷盤の研磨採集を開始する。
フェニックスは活動を順調に続けており、先週のスコップによる掘削では、表層のすぐ下で極めて硬い層にぶち当たった。管制チームはこれが氷の層と考えており、スコップの背後にあるヤスリで削り取る方針で、地上試験を繰り返してきた。
「フェニックスの開発段階で、我々はこの電動ヤスリを追加したのです。」と語るのは、NASAジェット推進研究所のフェニックス計画マネジャーであるバリー・ゴールドスタイン氏。「いま我々が火星で直面している状況は、正にこのヤスリの出番なのです。このハニービー・ロボティクス社製の電動ヤスリは英雄的な活躍を見せてくれるものと信じています」と語りは熱い。
下は、ヤスリのクローズアップ。使用する際はこれを下にして地面に押し当て、棒ヤスリを回転させる。タングステン鋼製の棒は水平から斜めへと角度を変えることが出来、サンプルを掘り進むことができる。研磨が終わるとスコップでそれをすくい、分析器へと運ぶ。
火曜日に送信されるコマンドには、1センチ間隔で2ヶ所研磨するような命令が入れられている。一連のプロセスは随時カメラで撮影されチェックが行われ、また、すくった後のサンプルがどのように変化するかも観察されることになっている。
最終的には、再度採取されたサンプルが分析装置「TEGA」へと投入され、分析が行われる。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.15】
[追加 07.11. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」は10日、挿して電気伝導度を測定する装置を土壌に差し込んだ。火星でこの装置が土壌に突き刺されるのは初めてである。
この装置はフォークのような形をしている(下)。一列に並んだ4本の針を突き刺し伝導度を測定することで、その場所の水分含有量や状態を推測することができるというもの。針の長さは1.5センチ。
土に突き刺す直前の様子。4本針の影がくっきり映っている。
大気にかざすことで水蒸気量の測定をすることもでき、これは既に何度か実行されていた。
一方、原子間力顕微鏡も初めて使用された。これは微小探針がついたカンチレバーで試料面と探針との微かな原子間力を検出することにより、表面状態を髪の毛の100分の1以下のスケールで観察する精密装置である。
なお、「MECA」による第2回目の試料分析で取得されたデータの解析、ならびにスコップによる硬い氷層のサンプリング手法のテストは続けられている。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.10】
[追加 07.11. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」が5月26日の大気圏突入・着陸の際、火星を周回している「マーズ・リコネッサンス・オービター」が大気層を降下する探査機の撮影に成功したが、その後の画像分析で、落下する耐熱シールドとおぼしき影の検出に成功したという。
耐熱シールドはパラシュート展開時に分離されるが、分離後に自由落下するそれが写っていたという。
MRO搭載の高分解能望遠カメラ「HiRISE」の画像分析チームは、上の黒い点が耐熱シールドで間違いないと考えている。大きいサイズなど詳しくはこちらへ【HiRISE 07.10】
[追加 07.09. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」は順調に活動を続け、7日新たな土壌採集を始めたが、いよいよ硬い氷の層にぶちあたったようである。
フェニックスは分析装置「TEGA」へ投入するための氷混じりの土を採取するべく、スコップテストを行っている。担当主任のレイ・アービッドソン氏は、「フェニックスがぶつかった硬い表層を掘るのは、歩道を剥ぐのとは異なった難しさがあります」と語る。
土を採取する手段は3つある。ひとつはこれまで通り、チタンブレードを備えたスコップですくう方法、ひとつはスコップの底に取り付けられた、タングステンカーバイド製のブレードで表面を削る方法、そしてもうひとつはスコップの背に取り付けられた高速運動するヤスリを使用する方法だ。
「氷や氷を含んだ土はとても硬いと踏んでいましたが、確かにそのようです。細かい氷土を得るために、ヤスリを使う用意をしているところです。」とアービッドソン氏。試料はTEGAへと運ばれる。
7日、溝の底を削りすくい上げる作業が行われたが、スコップの中には何も入っていなかった。削ることでできた坑が、これまでに掘られたものよりも小さいことがサンプル収集を難しくしていることもあるという。「ほうき無し、ちりとりだけでちりを拾おうとするものですよ」とエンジニアの一人は語る(下・表土はきれいにはぎ取られていますが…下は物凄く硬いのか…刃が立たないとはこのこと?)。
この作業では50回のこすり取りが2セット実行された。それでもスコップの中はからっぽだった。現在、ヤスリを用いる方向で地上試験が行われており、最善の方法が検討されている。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.08】
[追加 07.08. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」は、スコップにすくっていた土を分析装置「MECA」の「ウェット・ケミストリー・ラボ」(WCL)の中に投入した。6日夜に送られてきた信号で確認された。
フェニックスがWCLに土を投下するのは2度目。WCLは4個備えられており、そのうちの2個目が使用された。(上は土の投下が終わった段階で撮影された画像とのこと。一番手前のWCLは最初(2週間前)に使用されたもので、今回はその隣のものが使用された。しかし…こぼれたものであろうはずの土が見えませんねぇ…)
今後、約2日かけて分析が行われる予定であり、データは第1回目の分析結果と比較検討される。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.07】
[追加 07.05. 2008]
☆米国は4日、独立記念日を迎え、週末と合わせて連休となっているが、火星探査機「フェニックス」には休みがない。ミッション運用チームは休暇を取るが、アリゾナ大学やジェット推進研究所、ロッキードマーチンの最少遂行人員は探査機の活動を見守っている。
探査機はこの間、気象観測やパノラマ写真の撮影などを、あらかじめ流し込まれたプログラムに従って続ける予定である。
ところで、週明けにもスコップで新たな土壌採取が行われる予定である。今度は氷をたっぷり含んだ土が採取され、分析装置「TEGA」に投入される予定。
ところでTEGAには、前回の長時間振動の影響とみられる配線のショートが確認されており、検討が続けられてきたが、再度TEGAを用いた場合、別のショートが生じる可能性があると結論づけられた。ショートには手の施しようが無く、そのため最新の注意を払いながら運用が行われることになり、次回の運用が最後になる可能性もありうるとしている。
現在、スコップの中には今週初めにすくわれた土が入っているが、これは恐らく既に乾ききっていると思われるため、資料の一部は光学顕微鏡へ、残りはウェット・ケミストリー・ラボへと回される予定であるという。週明け、新たに氷をたっぷり含んでいると思われる土を採取し、TEGAの第0番オーブンへと投入されることになっているが、すくってから投入までに氷が昇華してしまわないか、事前テストが行われるとのことである。詳しくはこちらへ【Phoenix 07.02】
[追加 06.27. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」の活動は順調で、先日から行われてきた分析機器「MECA」に搭載の「ウェット・ケミストリー・ラボ」(WCL)による第1回目の土壌化学分析が、滞りなく終了を迎えるようである。
「化学データに溢れていますよ」と語るのは、MECA担当の研究員であるマイケル・ヘクト氏。「湿らせた火星の土に含まれている化学物質が何なのか、酸性度はどうなのか、分析に向かうところです。昨日取得されたデータをもって、生命の可能性について具体的な話ができるようになるでしょう。」
WCLは4台搭載されており、その1台に土を投入し、分析が進められてきた。全行程は2日間にわたって行われるが、目下、その80%が完了したところだという。(下・WCL本体。上から土を投下し、下のビーカーへ導く)
(下はカットアウェイと稼働アニメーション。水タンクから水が注がれ、そこへ土が投入される。ビーカーには電極がついており、各種分析が行われる。投入から分析完了までに丸2日を要する。)
「この土は、地球の南極のドライバレーに見られるそれと非常に似通っているようです。」と語るのは、研究員の一人であるSam
Kounaves氏。「アルカリ性の強さには驚きです。深さ1インチのところでpHが8〜9です。また、さまざまなタイプの塩が検出されていますが、詳しい分析はまだこれからです。」
一方、加熱分析装置「TEGA」で得られたデータの分析も引き続き行われている。また、360度パノラマの、55%のカラー画像が出来上がったとのこと。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.26】
[追加 06.26 2008]
☆火星探査機「フェニックス」はすくった土サンプルを分析装置「MECA」の「ウェット・ケミストリー・ラボ」(WCL)の中に投入した。この装置は数日かけてサンプルを測定するもので、土壌中のミネラル分析を行うことで、生命の可能性を探ろうというもの。
一方、オーブンの中にサンプルを投入・加熱によって生じたガスを分析する「TEGA」に関して、先週、運用チームは2つ目の扉にオープンコマンドを送信したが、半開きであったことが明らかにされた。TEGAは8個のオーブンを備えており、個々のサンプル投入口は観音扉で閉じている。最初(1個目)の運用では、扉がやはり半開きで、しかも投下土壌がふるいをなかなか通らなかったのは記憶に新しい。
チームの分析によると、機械的な干渉により、このオーブン、そして更に3つの扉がフルオープンしない可能性があるようである。ただ、ここ数日間に実験室で行われたシミュレーション試験では、そのような状況下でもロボットアームはサンプルをきちんと投入することができそうであるという。
加えて、最初の運用でふるいをかなり振動させたことにより、オーブン周りの回路にショートが発生している可能性もあるといい、運用チームは今後のTEGA運用に慎重な構えを見せている。
ちなみにその際得られたデータの解析は、現在まだ続行中とのこと。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.25】
[追加 06.25 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」は順調に活動を続けている。24日には、ロボットアームを分析装置「MECA」の一部をなす「ウェット・ケミストリー・ラボ」の近くに位置させた。
スコップがすくった土サンプルは、着陸からちょうど30日を迎える25日にラボへと投下され、分析が始まる予定。このラボでは塩や酸性度などの化学分析が行われる。
長方形型をしたMECAはラボの他に顕微装置を備えている。上の画像はMECA後部にあるラボの真上にスコップが配置している様子。先日使用された顕微装置はMECA前部にある。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.24】
[追加 06.22 2008]
☆下は、20日(Sol 25)に撮影された分析装置「TEGA」。最初に土が投下されたとき(下段画像)と比べ、スクリーンも見えており、中へ土が落ちているのが明らか。
…土が乾いてサラサラになったとか?大きいサイズはこちら【photo: Phoenix】
[追加 06.21 2008]
☆NASAは21日未明(日本時間)、プレスリリースを行い、火星探査機「フェニックス」によって認められた白い物質は氷であると発表した。
下はその際、新たに発表されたカラー画像。左下に見えていた白いサイコロ大の物質が完全に消え失せているのがわかる。
塩はこのような振る舞いは見せない。またこれがドライアイスの可能性もない。ドライアイスであれば、現在の環境下では不安定であり、あっという間に消滅してしまう。
一方、下は新たに行われた掘削。やはり白く輝く物質が見えており、今後更に発見が続くのではないかとフェニックスチームは胸を躍らせている。
詳しくはこちらへ【Phoenix 06.20】
[追加 06.20. 2008]
☆NASAの火星探査機「フェニックス」の掘削によって出現した白い物質。研究者達はこれが、ほぼ氷で間違いないと自信を深めている。
「氷に違いありません」と語るのは、フェニックス計画責任者のペーター・スミス氏。「小さい塊は数日の間に消え失せてしまいました。これはそれが氷であったことの完璧な証拠です。それが塩ではないかという疑問がありましたが、塩はそのような振る舞いは見せません」
白い物質は4日前の15日における掘削で姿を現した。運用チームは19日に再度そこを見たところ、明らかにサイズが小さくなっていたのだ。消えてしまった塊もある。これは、氷が大気に露出し昇華していることを強く示唆している。
(右は、15日と19日に取得された画像をアニメーションにしたもの。左下に見えていた複数の小さな塊は完全に消え失せる。)
一方、別の場所の掘削を行ったところ、ショベルが硬い面に当たったという。新たな氷層に当たったのではないかと、チームは興奮しているという。
ところで、先日発生したソフトウェアの不具合に関して、機体開発に携わったロッキード・マーチン社でパッチが作成されているという。不具合の原因は完全に掌握されているといい、担当チームは自信に満ちているようだ。
フェニックス計画は極めて順調で、当初のスケジュールカレンダーよりも早いペースで運用が続けられているという。詳しくはこちらへ【NASA 06.19】
[追加 06.19. 2008]
☆火星着陸探査機「フェニックス」の活動は順調に続いている。分析装置「TEGA」は問題なく機能し、先日採取された砂の分析が続けられていた。しかし今回の分析では、水分を検出することはできなかったという。16日NASAが開いたテレカンファレンスで明らかにされた。
一方、ロボットアームは順調に活動を続けており、土壌の掘削を続けている。12日(Sol
18)には2本並行に掘られた溝の間を更に掘って両者をつなげ、それを「ドード・ゴールディロックス」と命名した。これはつなげられる前の2本それぞれつけられていた名を単にまとめただけのものである。
下は、この溝の深さを色で表現したもの。浅い部分は暖色系、深い部分は寒色系で着色されている。(この形、おろし金を連想…@管理人)
長辺35センチ、短辺22センチ、最大深さ7〜8センチのおろし金の中には白く輝いて見える部分があるが、これが塩なのか氷なのかは気になるところ。詳細な分析は不可欠だが、しかしこのまま暫くほったらかしにしておくだけでも、情報は引き出せる。「もし氷であれば、時間の経過と共に変化するはずです。氷なら昇華していくはずですから。」と語るのは、レイ・アービッドソン研究員。
その白い物質は浅い部分(そしてこれは着陸機から離れた側)のみに見えていることから、層をなして掘削領域全体に広がっているものではないことがわかる。
一方、17日には通常量を上回るデータが生成され、それがフラッシュメモリーに流し込まれ、先に蓄積されていた科学データの一部が失われるというトラブルが発生したことも明らかにされた。失われたデータは、画像など再度取得すればよい類の、優先度の低いものであるという。
エンジニアチームは目下、この現象について調査を続けている。
「探査機は至って元気ですが、この問題が解決するまで、慎重に事を進めています」と語るのは、ジェット推進研究所(JPL)のフェニックスプロジェクトマネジャー、バリー・ゴールドスタイン氏。
通常フェニックスがコンピュータファイルを管理するために生成するデータは一日に僅かな量で、これは高優先度でフラッシュメモリーに記憶される。ところが火曜日はこのデータ量が多く、フラッシュメモリーの残域が少なくなった。カメラなどのセンサーに蓄積された科学データはフラッシュメモリーに移されるのだが、その一部が入りきれなくなったのである。
結局、夜を迎え電源を落とした際、フラッシュに入りきれなかったデータは失われたというわけである。
科学チームは現在、フラッシュを用いる必要のない科学観測を続けている。殆どの科学観測はその日(Sol)のうちにダウンリンクされるが、画像など、一部のデータはその日のダウンリンクが間に合わず、フラッシュ内で一泊させる必要がある。
詳しくはこちらやこちらへ【NASA 06.16/06.18】
…今こそ、着陸機床下の、あの露出した白い物質を覗きこんでみるべきでは…
[追加 06.14. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」は火星着陸から20日が経過し、順調に作業を続けている。下は10日(Sol
16)のサンプル採取の際に撮影された画像のカラーバージョン。太陽電池パネルに少し赤みが…ダストを被り始めてるようですね。
13日には、機器「MECA」が備える光学顕微鏡およびサンプル加熱分析装置「TEGA」による分析が始まった。火星の土壌が分析装置内でテストされるのは、バイキングミッション以来のこと。下は、「MECA」のプレパラートに土がこぼされる場面と、顕微鏡で捉えられた粒子。髪の毛の10分の1以下の粒子がざっと1000粒ほど確認できるという。うち、鉱物と認識できるのが少なくとも4個あるとのこと。
MECA担当研究員のひとり、トム・パイク氏は、「我々は土の歴史を見ているのかも知れません。火山ガラス粒子が風化し微粒子になったように見えます。」と語っている。
粒子は、着陸時に採取された大気浮遊のダスト粒子とよく似ているという。これはつまり、地表面の砂が大気中に充分拡散していることを示している。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.13】
[追加 06.12. 2008]
☆事態一転…先日から苦戦していたはずの、火星探査機「フェニックス」の観測機器「TEGA」の“オーブン”が、予定通り砂で一杯になったことが確認された。
フェニックスは6日、スコップで土壌をすくい、TEGAに備えられた8個のオーブンの1つ(No.4オーブン)に注ぎ込もうとしたが、再三のふるい作業にも関わらず、それを通過しない事態にあった(下・TEGAの装置一式)。
だが昨日、サンプルがそのスクリーンを通過したことが確認されたという。「オーブンは満杯になりました。10秒しかかかりませんでしたよ」と語るのは研究員の一人、ビル・ボイントン氏。
スクリーンを振動させることによるふるい作業は6日、8日、および9日に行われたが、ほんの僅かの砂しか通過させることができずにいた。ここへきてあっさりと満杯になったことに、ボイントン氏は、これまで行われた度重なる振動作業の効果が今出たか、スクリーンの上に土壌が乗せられたことでその特性が変化したかのことが考えられると語っている。
また、フェニックスミッション責任者のペーター・スミス氏は「何らかの非常に興味深い、我々がまだ知らないような事が土砂に起こったのでしょう。」と語っている。
詳しくはこちらへ【Phoenix 06.11】
[追加 06.10. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」の運用チームは土壌サンプルの問題について、活路を見出した。チームは昨日、すくった土壌をドサッとこぼすのではなく、スコップを小刻みにふるわせ散布することに成功した。
画像は、テスト散布後に撮影されたもの。スコップの背中には電動やすり(先々、氷層に当たった際に削るためのもの)が装着されており、アームとスコップを固定した状態でモーターを動かし、振動させることで実行された。
テスト散布は顕微鏡分析セット“MECA”(Microscopy, Electrochemistry
and Conductivity Analyzer)の上に行われた。この箱の手前に見える窓は光学顕微鏡のプレパラートに相当する部分で、今後、この部分に同じ手法で土が散布され、観測が行われる予定。
この方法、既に数ヶ月前に考案されていたもの。今回、現場で大成功だったことに、チームも喜びを隠せないようだ。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.10】
☆火星探査機「フェニックス」の土砂分析に関して、分析装置“TEGA”の上に被さった土砂をふるいの下に落とすべく運用チームは再度振動を試みたが、殆ど落ちることがなかったという。
振動は20分間加えられたが、スクリーンの下に落ちたのはごく微量であったという。土の持つこの予想以上の特性に、チームも驚きを隠せないでいる。
(下は、TEGAの土砂を受け止める開口部モデルで、本来は付いているスクリーンが取り外された状態。スクリューの付いた横棒が見えるが、これが上下に振動することでネジ頭がスクリーンをたたき振動を起こす仕組み。スクリューの直下には小さな穴があいているが、ふるいにかけられて落ちた粒子がここを通って“オーブン”へと導かれていく。スクリューがどのような役割を果たすのかはわかりません…)
(…しかしこの仕組みとあの粘っこい?土では、今後もオーブンまで達する砂は殆ど見込めないのでは…?)
「もう一度振動を加え、それでもうまくいかないときは、別のサンプリング方法で土壌をすくい、別のオーブンを用いることになるだろう」とチームのひとりは語っている。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.09】
[追加 06.09. 2008]
☆下は、火星着陸探査機「フェニックス」の化学分析機器「TEGA」を側面から見た様子。TEGAの受土口は斜めになっており、投下された土が被さっているのがわかります。
DVDの上にも少し土がこぼれていますね。これを上から見たのが、先日リリースされた下の画像。
土は、受土口に取り付けられたスクリーンを全く透過していないことがわかっています。今後、スクリーンの再度振動を試みるとのことです。詳しくはこちらへ【phoenix 06.08】
[追加 06.08. 2008]
☆先日、土壌サンプルの掘削と分析装置「TEGA」への投下に成功した火星探査機「フェニックス」であるが、スクリーン(ふるい)を透過したサンプルが全くないことが判明した。
TEGAは8個の“オーブン”を備え、それぞれが独立して稼働する。サンプルは一番上の観音開き構造の窓から投入されるが、そこには1ミリまでの粒子が透過するスクリーンがある。サンプル投下後、スクリーンは5分間振動し、粒子をふるいにかける。
内部には赤外線センサーが仕込まれておりサンプルの透過を確認するが、しかし、一切の反応がなかったのだという。
運用チームは、土がかたまり、パウダー状になっていなかったのだろうと考えているが、詳細はまだわからない。今後の運用に関しては、すくい上げる前にスコップで押すなどしてキメを細かくしておくなどの方向性が検討されている。
詳しくはこちらへ【Phoenix 06.07】
[追加 06.07. 2008]
☆火星着陸探査機「フェニックス」は6日、地球からのコマンドに従い土壌をすくい、分析装置「TEGA」に流し込んだ。
フェニックスは6日、地球からのコマンドを受信、即日ロボットアームを稼働し、「ベイビー・ベア」と呼ばれているサンプルターゲットをすくい、それを「サーマル・アンド・エボルブド・ガスアナライザー」(TEGA)に流し込むことに成功した。スコップは約2〜4センチほど掘削したという。
下は、TEGAに流し込んだ直後。TEGAの8個ある“オーブン”のひとつの開口部が先日開かれており、そこに落とされた。サンプルはふるいを通って内部に入り、電熱器で過熱され、発生したガスの分析が行われる。
隣の開口部に少し被さっているようですが、大丈夫なのかな…
分析は数日から1週間かけて行われる予定。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.06】
[追加 06.06. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」が3日撮影した顕微画像が公開された。これは、「MECA」(Microscopy, Electrochemistry, and Conductivity Analyzer)と呼ばれる分析機器を構成するマイクロ顕微鏡(OM)で撮影されたもの。
下の画像で、左は火星への飛行中に撮影されたテスト画像で、右は今月3日(Sol
9)に撮影されたもの。右のものには微粒子が写っているが、この粒子は着陸フェーズで地表から舞い上がったものが資料台に付着したと考えられている(地球で機器の内部に潜り込んでいたダストの可能性も考えられるが、特徴から火星の砂粒子であることは間違いなさそうとのこと)。
挙げられている3つのうち、一番上の透明なものは、先日スコップで土をすくった際に認められた白い物質(塩or氷)の可能性もあるのではないかとチームは考えている。
下は、OMの概要。左一番上はフェニックスのステレオカメラで撮影された画像で、それ以外は地球で撮影された拡大画像。丸い円(直径3ミリ)のひとつひとつがサンプルのつく基板(通常の顕微鏡で言うところのプレパラートに相当ですね)で、塗られたネバネバ物質がサンプルを確保する。顕微カメラの視野に入るのは赤い四角形の領域。
一方、土をすくい、分析器「TEGA」に運ぶようコマンドが送信され、フェニックスはこれを受信した。このコマンドはそもそも前日に送信されるものだったが、中継を担っていたマーズ・オデッセイがセーフモードに落ち、フェニックスに達していなかったもの。今回はマーズ・リコネッサンス・オービターを経由して送られている。
なお、オデッセイのダウンは、メモリーに強い宇宙線が飛び込むことに起因する、しばしば見られる現象と考えられている。詳しくはこちらへ【phoenix 06.05】
[追加 06.05. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」の運用チームは、今週2度行われた一連の土壌すくいテストで、本番採取への自信を深めたようである。
ただ、本番は木曜日(米東部時)以降に行われることになるようである。というのも、データを中継する火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が水曜日(同)セーフモードに落ちたためである。フェニックスは地球からのコマンドを受信することができなかったが、既にアップされていたプログラムに従い、予定されていた行動を完了した。
(下は米東部時・火曜日(Sol 9)に取得された画像の一枚。スコップの掘った跡の中に少し白っぽい部分がある。これが塩なのか氷なのか現時点では不明。深さなどの概要はこちら)
オデッセイ運用チームは現在、セーフモードに入った理由を探っている。なお、この間のデータ中継は「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が担う。MROもフェニックス着陸直後にセーフモードにダウンしたが、その後繰り返し行われたテストで問題は生じないことが確認されている。
下は、予定されている本番採取のエリア。サンプリングは3ヶ所が予定されており、それぞれ暫定的に名前が付けられている。
(下・現在スコップが掘っている場所と掘削可能範囲。詳しくはこちらへ)
採取された土は、サーマル・アンド・エボルブド・ガスアナライザー(TEGA)に流し込まれ、分析が行われる。詳しくはこちらへ【NASA 06.04】
[追加 06.04. 2008]
☆火星着陸探査機「フェニックス」を操る運用チームは、先日行われた土壌スコップテストを再度行うことを決定した。最初のスコップテストは日曜日に行われたが、土壌をこぼす際、一部の土がスコップ内にくっついて離れなかったという。
「我々は慎重に進めています」と語るのは、ミッション責任者のペーター・スミス氏。「サンプルをデッキ上の分析器に投下する前に、土がどのように振る舞うのかしっかり把握しておきたいのです」
一方、デッキ上の分析器の一つ「サーマル・アンド・エボルブド−ガス・アナライザー」(TEGA)のフタの1つが展開された。TEGAは資料に熱を加え、発生するガスを分析する装置。独立した8個の“オーブン”があり、どれも1回使い切り。今回展開されたのはそのうちの1つのフタで、バネの力で観音開きするようにできている。だが一方は完全に展開したものの、もう一方が半開きで止まっていることが明らかになった(下)。
しかしチームによると、これくらい開いていれば運用上の問題はないという。ただ、より正確な土砂投下が要求されるのは間違いなさそうである。詳しくはこちらへ【Phoenix 06.03】
☆フェニックスのスコップが、土をこぼしたところでしょうか…↓
順調に活動を続けているようですね。大きいサイズはこちらへ【Phoenix 06.02】
[追加 06.03. 2008]
☆火星着陸探査機「フェニックス」が着陸成功してからちょうど1週間。自慢のショベルは土をすくい上げることに成功した(下)。画像は、ロボットアームに取り付けられたカメラで撮影されたものである。
これは、ロボットアーム&ショベルの動作テストで行われた。土はこの後、設定された場所にこぼすことに成功している。運用チームは今週末、再度土をすくい、今度は分析装置に運ぶことを計画している。
土の中には明るく輝くものが含まれている。「これはひょっとしたら氷か塩かもしれません。今後採集されるサンプルを分析してみたくてたまらないものです。」と語るのは、ロボットアーム担当の研究員レイ・アービッドソン氏。詳しくはこちらへ【phoenix 06.02】
[追加 06.02. 2008]
☆31日、NASAの火星着陸探査機「フェニックス」のロボットアーム先端に取り付けられた小型スコップが地表にタッチした。スコップが地表に触れたのは初めてである。
スコップがその痕跡を押し残した部分は、暫定的に“イェティ”(雪男)と名付けられた(下)。もちろん、ヒマラヤの雪男が残したという足跡からの類推だ。フェニックスの周辺はおとぎ話や神話に登場するキャラクターにちなんだ名前が付けられる予定になっている。
(下はスコップに取り付けられているカメラが撮影した、着陸機の真下に出現した氷の塊と思われる物体の拡大画像。この周囲は“雪の女王”と名付けられている。非常に滑らかである。)
「今回のファーストタッチは、ロボットアームが我々の手中にあることを意味します。今後のサンプル収集と分析装置への運搬を控えて幸先いいですね。」と語るのは、地表活動責任者のデビッド・スペンサー氏。詳しくはこちらへ【phoenix 06.01】
[追加 06.01. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」が25日に着陸した際、逆噴射エンジンの噴気が地上を吹き払い、氷とおぼしき露頭が出現したことが明らかとなった。
下は、ロボットアームの先に取り付けられているカメラが撮影した画像。エンジンの真下付近の砂地が吹き払われ、塊らしき物体が見えている。
「我々は岩か、あるいは氷を見ている可能性があります」と語るのは、運用チームのひとりであるレイ・アービッドソン氏。今後、カラー画像を作成し、その輝度を見ることで氷かどうか判断できるという。
一方、昨日のチェックで、分析装置のひとつがショートを起こしている可能性が明らかとなった。この分析装置は「サーマル・アンド・エボルブド-ガス・アナライザー」と呼ばれるもので、サンプルを加熱し気体を発生させ、それを分析する機器。サンプルに熱を徐々に加え、固体から液体、気体になるときの温度を測定する一方、発生した気体は質量分析器へ導かれ組成が調べられる。
電流の振る舞いなどから、回路がショートしている可能性があるのは、質量分析器のあたりと見られている。運用チームは更なる状況把握に努めているところだという。詳しくはこちらへ【NASA 05.30】
[追加 05.30. 2008]
☆下は、フェニックス周辺のパノラマ画像。ほぼ完全なものができあがったようですね。
360度、本当に真っ平らな場所のようで…。デッキ上ではアームが少しだけ腕を持ち上げています。詳しくはこちらへ【NASA 05.29】
[追加 05.29. 2008]
☆日本時間29日午前11時、NASAは、フェニックスがコマンド通りにロボットアームを動かしたことを確認したと発表した。下はアームが固定されていた場所を撮影したもので、横たわっていたアームがその場から動いていることが明らか。(大きいサイズはこちらへ)
コマンドはオデッセイを経由してアップされている。ロボットアームを動かす作業は明日にかけて行われる予定。また、周辺の撮影も順調に進んでおり、新たに取得された画像を繋いで作成されたパノラマも公開されている(大きいサイズはこちらへ)。
☆下は、火星着陸探査機「フェニックス」の着陸ポイント。緑のドットで表されたのがそれで、赤い円はかなり絞り込まれていた推測領域。青の楕円は、到着以前に設定されていた着陸予定範囲。
フェニックスは、画像では左上から右下に向かって大気中を降下していった。送られてくる信号を基にはじき出された距離から着陸ポイントが同定されたが、そこは予定範囲のギリギリであった。
先日公開された降下中の画像では奥に大きなハイムダール・クレーターが見えていたが、上の画像では着陸ポイントの右側にそれが見えている。詳しくはこちらへ【NASA 05.27】
[追加 05.28. 2008]
☆下は、フェニックスに乗せられているカラーキャリブレーションターゲット。このターゲットは2個つけられており、カラー画像を作成する際のマーカーとなる重要なもの。
大きさはホッケーパックの半分ほどで、セントラルフロリダ大学のダン・ブリット教授のチームが作成したもの(下)。3年ほど前に開発を開始、チャンバーにて強烈な紫外線や低圧という過酷な環境を模擬し、テストを行ってきた。
このようなキャリブレーションターゲットは、過去の火星着陸機にも搭載されてきた。
ところで、火星は非常に砂ぼこりがひどいところ。これまでの探査機も時間の経過と共に砂を被り、特に太陽電池の電力低下は運用チームをハラハラさせたりする。下は火星探査車「オポチュニティ」のそれであるが、砂ぼこりを被ってしまい、色の境界もはっきりわからなくなってしまっている。
そこでブリット氏らは、パックの中に強力な磁石を仕込んでみた。火星の砂が磁性を帯びていることに注目、磁石の力でカラーの上に積もらないように工夫したのである。磁石の磁力は冷蔵庫扉の100倍の強さ(…これってネオジムですかねぇ?@管理人)。ターゲットにこのような細工が施されたのは今回のミッションが初めて。
なお、カラーチップと磁石は、デンマーク・コペンハーゲン大学から提供されたものとのこと。ちなみにブリット氏はかつて、マーズ・パスファインダー計画で撮像部門の責任者も務めたことがある。詳しくはこちらへ【University of Central Florida】
…磁石の力で火星の砂を寄せ付けないという部分、詳しくわかりません…カラーチップの上に積もった砂を脇に吸い寄せるのか、それとも砂が反磁性で、強力磁力バリアで砂を寄せ付けないのか…@管理人
☆下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が撮影した、着陸しているフェニックス。2枚の太陽電池パネルがきちんと展開されているのがよくわかる。
完璧な着陸を達成し、その後のチェックでも何ら問題がない中、フェニックスサイエンスチームは早くもロボットアームを動かしたがっている。そこで27日、MRO経由でフェニックスにコマンドが送られたが、しかし、MROはそれをフェニックスに中継しなかったため、アームを動かすことはできなかった。
現在MROのUHF中継システムは待機モードに落ちており、フェニックスとの交信はマーズ・オデッセイを介して行われている。目下原因追求が続けられているが、もし万一MROの中継システムの回復が絶望的であるようなことがあれば、その分のタスクはオデッセイに加わることになる。なお、MROの他の機能には一切問題はない。
一方、MROが撮影した降下中のフェニックスで新たな映像が公開された。下がそれで、ハイムダール・クレーターを背景に、パラシュートに吊られたフェニックスの降下する姿が映っている。
クレーターの直径は約10km。画像を見るとその中に向けて落下していくように見えるが、実際はクレーターの手前20kmの地点に着陸している。
下は、MROが撮影した着陸地点一帯。一番上にフェニックスが見え、その右下の黒い点は耐熱シールドが命中した場所。一番下にパラシュートとバックシェルが落ちている。耐熱シールドやバックシェルがバウンスし飛び散った土砂の様子もよくわかる。
パラシュートとフェニックスとの距離はおよそ300メートルとのこと。
下は、拡大されたもの。パラシュートのしわの様子やバックシェルの明暗もわかって感動ものですね!
一方、気象観測マストは着陸後1時間以内に起動し、現在コンスタントに観測を続けている。最初の18時間に取得されたデータが地球に送信され、概要が公開された。
それによると、気温は最低−80℃、最高−30℃。平均気圧は8.55ヘクトパスカル。風速は時速20km(秒速5.6m)で風向は北東。今後、湿度や視程などの観測も始まる見込み。
また、新たに撮影された画像も受信された。下は着陸直後(Sol0)に撮影されたロボットアームと、翌日(Sol1)に撮影されたそれ。ロボットアームはバイオバリヤーシートに包まれていたのだが、そのシートが解けているのがわかる。
写っているのはアームの“ひじ”の部分。Sol0にはシートがまだ少し引っかかっているように見えるが、Sol1にはきちんと剥がれている。シートには何ら問題はないという。
探査機は、過去の着陸機と同様、打ち上げの前に徹底した滅菌処理が行われるが、地下を掘り下げ資料に直接触れるスコップを先端に取り付けたアームだけは、バイオバリヤーシートに完全密封されていた。
さらに、DVDのカラー画像も公開された。星条旗もしっかり写っている。デッキは地上高1メートル。砂などは見あたらず、クリーンだ。
(砂は殆ど舞い上がらなかったのでしょうかねぇ?星条旗が色あせて見えることから、カラーといえども擬似カラーであることがわかります。@管理人)
詳しくはこちらやこちら、こちらやこちらへ【NASA 05.27】
☆火星探査機「フェニックス」の撮影した画像がつなぎ合わされたもの。
まだ撮れていない部分(?)が今後繋がれると、完璧なパノラマになりますね。大きいサイズはこちらへ【NASA 05.27】
[追加 05.27. 2008]
☆フェニックスの撮影した画像の公開が続いています。下は向こうに見える丘陵。そこまでひたすら平らな大地が続いています。
別のビュー。向こうの白いものは、バックシェルの一部でしょうか…?
デッキの一部と、自身の影。カメラマストがまっすぐ伸びているのがわかります
風向風速などを計測する、気象観測マストの先端。マストもきちんと伸びていることが確認されています。
下のDVDには火星に想いを寄せた著名人のメッセージの他、インターネットで世界中から集められた個人の名前(70ヶ国を超える国々から約25万人)が書き込まれています。著名人にはカール・セーガンやアーサー・クラーク、パーシバル・ローウェルやアイザック・アシモフなどの故人も含まれており、「ヴィジョン・オブ・マーズ」と呼ばれるこのDVDプロジェクトは、米惑星協会によって実施されました。
その他の画像はこちらへ【NASA/JPL-Caltech/University of Arizona 05.27】
☆これはまたスゴイ!
昨日着陸に成功したNASAの火星探査機「フェニックス」がパラシュートを展開して降下する様子を、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影することに成功していた。
処理を施され、パラシュート&ワイヤーの具合が多少わかるようになったもの。
これはリコネッサンス・オービターの高解像度望遠カメラ(HiRISE)で撮影されたもの。もちろん、火星を降下中の探査機が撮影されるのは初めてのことである。
リコネッサンス・オービターのHiRISEは通常ほぼ真下を向いているが、この時リコネッサンス・オービターの視界からフェニックスは遠ざかりつつあった。このためカメラだけの動きでは足らず、機体全体を傾けてフェニックスを追う必要があった。リコネッサンス・オービターの運用チームは、「これほどの角度に傾けたのは初めてです」と語っている。
「全く、言葉も出ませんでした」と語るのは、フェニックス計画マネジャーのバリー・ゴールドスタイン氏。この画像は今後、降下フェーズの再解析に利用する予定とのこと。
詳細はこちらへ【NASA 05.26】
[追加 05.26. 2008]
☆90年代以降に火星へ着陸した、そしてこれから予定されているNASAの探査機ファミリー。
こうして比較すると、2010年に予定されている「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)の大きさがわかりますね。差し渡しではフェニックスに劣りますが、重量はその倍を超えます。MSLは史上最大のパラシュートを用いて降下し、さらにスカイクレーンと呼ばれる飛行体に吊られて着陸する予定になっています。【Image:
NASA 05.21】
☆下は、昨日のフェニックス着陸フェーズにおける、各周回機の軌道状況。フェニックスの到着に合わせて真上を飛行するよう、各探査機の軌道は昨年から調節されてきました。
大きいサイズはこちらへ【photo: NASA 05.25】
[追加 05.26. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス・マーズ・ランダー」は日本時間26日午前8時53分、火星の北極域に着陸した。場所は緯度68度、経度234度の地点と見られている。
フェニックスは午前8時39分、クルーズステージを分離し大気圏突入姿勢を取り、同46分、大気圏突入を開始した。全ての機器は正常で、各過程は予想と1分も違わず、NASA・TVによるライブで伝わってくる管制部のクルーには、緊張した面持ちの中にも余裕が感じられていた。
なお、突入の数時間前より火星に対する相対速度が急上昇していたが(下)、これは火星の重力に強く引かれていることを意味していた。
大気圏突入時のフェニックスは時速2万キロ。耐熱シールドは高温に耐え、フェニックスは減速降下。一部始終は頭上を飛行するマーズ・オデッセイによって地球にリレーされた。
同50分、マッハ1.7の速度でパラシュートを展開、更に減速。シュート展開後、耐熱シールドを分離し、着陸レーダーを起動した。シュート展開の際、管制クルーに拍手。
同53分ちょい過ぎ、フェニックスはバックシェルから切り離され、逆噴射スラスターを吹かしながらの降下へ。速度は時速8km程度まで抑えられ、53分44秒、タッチダウン!タッチダウンが確認されると、歓声がわき上がった。(予定と20秒と違わぬ、あまりにも完璧なEDL(突入・降下・着地)であったので、少々拍子抜けでもありました@管理人)
着陸の1分後、オデッセイが可視範囲から外れたためフェニックスとのライブ交信は一旦途絶。この20分後、自動モードにて太陽電池パネルを展開した。
その後、オデッセイから送られてきたテレメトリーを解析した結果、フェニックスは殆ど水平に、かつ、太陽電池に最も光を受けるような向きに静止していることが確認された。
日本時間10時50分、オデッセイ経由の交信を再開、オンボードメモリーに記録されたデータが送信されてきた。この中にはカメラで撮像された最初の画像が含まれていた。
展開された太陽電池パネル。オデッセイの最初の仕事は、展開確認のためにパネルを撮影することでした。
着陸脚の一部。少し砂を巻き上げたのがわかりますがそれもごく僅かで、また、めり込んでもいません。
デッキ上、ロボットアームの一部。アームはクリーンルームで滅菌後、汚染を防ぐために特殊なラッピングがなされていましたが、それもきちんと剥がれたことが確認されました。これが剥がれなかったら…何のために行ったのか…
最初はモノクロ画像がリリースされましたが、暫くして擬似カラー画像がリリースされました。着陸した場所は、当初の予想通り、本当に滑らかな土地ですね
なお、今後、マーズ・リコネッサンス・オービターによるフェニックスの撮影も試みられる予定とのこと。詳しくはこちらへ【NASA 05.26】
[追加 05.25. 2008]
☆フェニックス管制チーム、着陸8時間前の最終軌道微調整チャンスをパスする決定。全ての機器は正常で、このまま大気圏突入へと向かう。火星着陸は地球時間・午前8時53分(日本時)が予定されている(実際にはこの15分前に着陸)。【NASA
05.25 日本時・午後10時半発表】
☆下は、フェニックス着陸予定ターゲットエリアを、米・ロングアイランドと比較したもの。細長い楕円の長軸は約70kmとされています。
これが日本で言えば…琵琶湖とその周辺地域ほどになりそうですね。形状から言えば、香川県(こちら)がちょうど同じくらいかと…
フェニックス公式サイト
http://phoenix.lpl.arizona.edu/
サイエンスチームブログ
http://www.nasa.gov/mission_pages/phoenix/blogs/index.html
NASA・TV
http://www.nasa.gov/multimedia/nasatv/index.html
SpaceflightNow
Mission Status center
http://spaceflightnow.com/mars/phoenix/status.html
着陸時の火星(Mars24により生成)。火星時では16時40分頃。
[追加 05.24. 2008]
☆火星探査機「フェニックス」の着陸まで、もう間もなく。下は、リリースされている画像の一部より。
フェニックスは矢印の先の楕円の中に着陸する。表面の氷やドライアイスは飛んでしまっているが、少し掘った地下には凍結したそれが残っていると考えられている。
フェニックス、等速降下。パラシュートを切り離した後、パルスジェットスラスターを吹かしながら降下。タッチダウンが成功したら、逆噴射スラスターによる着陸は「バイキング2号」以来、32年ぶりとなる。
フェニックスは着陸から20分経過後、太陽電池パネルを展開する(パネルの形状がNASA開発中のオリオン宇宙船のそれと酷似していますが、これは両者とも製作元がロッキード・マーチン社だからでしょうねぇ)。20分待つのは、着陸後に舞い上がった砂ぼこりが落ち着くのを待つため。
その他の画像はこちらへ【photo: NASA】
[追加 05.23. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス・マーズ・ランダー」の着陸まで、残すところあと3日と迫った。フェニックスは現在300万マイルの地点を飛行中で、機体には何ら問題は生じていない(下・日本時23日正午前の位置)。
「ナビチームによる最新の計算によると、現在のままで飛行して着陸する予想地点は、当初のターゲットエリアの中心から8マイル以内に収まりそうです。」と語るのは、ジェット推進研究所のプロジェクトマネジャー、バリー・ゴールドスタイン氏。「我々は土曜日に、最後の軌道微修正をパスすることを本決定することになるでしょう。どちらにしても、その後も軌道をモニターし続けます。大気圏突入8時間前には不測の事態に備えた軌道修正も用意されていますが、まずそのようなことは無いと考えています。」と強気だ。
探査機は、「魔の7分間」と呼ばれるミッション最大の山場へ向かいつつある。これは大気圏突入から着陸までの時間で(下図)、過去にはこの際に失われた探査機も多い。今回のフェニックスと同様のミッションを予定していた「マーズ・ポーラー・ランダー」(99年)も、大気圏突入後に消息を絶っている。
日曜日にはインディアナポリススピードウェイで恒例の500マイルレースが行われるが、それが終わった頃、フェニックスは火星に時速12750マイルで突入する。この速度は、500マイルなど僅か2分22秒で駆け抜ける速さだ。「魔の7分間」の始まりである。
過去、火星着陸は11の探査機が試みてきたが、成功したのは僅か5つに過ぎない(バイキング1&2号、パスファインダー、オポチュニティ&スピリット。マルス3は認められないようで…@管理人)。
JPL管制部が最短で着陸信号を受け取る時刻は、米東部時25日午後7時53分(日本時・26日午前8時53分)。
「今週火曜日、アリゾナ大学で最後のミーティングを行いました。今週はドレスリハーサルを行っています。」と語るのはフェニックスミッション責任者で同大のペーター・スミス氏。サイエンスチームは着陸機が着陸した後の活動に備え、火星の1日=24時間40分に体を慣らし始めている。
詳しくはこちらへ【NASA 05.22】
[追加 05.20. 2008]
☆イベント告知依頼がありましたので掲載します
火星探査機フェニックス着陸ライブを、インターネットのNASAテレビライブ放送で一緒に楽しみましょう。お気軽にご参加ください。Skypeに接続しませんか。当日チャットで楽しみましょう。主催者Skype名は
spaceref です。会議参加者登録の連絡をください。
日時:2008年5月26日(月曜) 午前9時〜午後1時頃(予定)
場所:横浜駅西口徒歩2分のネットカフェ
飲食酒類も可能(各自負担)
詳しくは、http://www.spaceref.co.jp/postmail.html にてメールアドレス、及びメッセージ欄に「参加希望」と記載してお送りください。フェニックス着陸日時が変更になる可能性もありますので、最新情報を逐一お送りいたします。また、最悪の状況によりましては、この集まりが中止になる場合もあります。予めご了承ください。【当サイト・ゲストブック投稿
05.18】
[追加 05.17. 2008]
☆NASAは、日本時間26日朝に予定されている火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」に関連するイベントのタイムテーブル概要を発表している。以下、それより一部抜粋したものであるが、最終軌道修正などで時刻は多少前後すること有り。なお、NASA・TVを通して、ジェット推進研究所(JPL)管制部のライブ中継が行われる(詳しくはこちらのリリースへ)。
日本時間26日
午前0時46分 軌道修正(TCM6X)(必要あれば)
午前4時 ニュースブリーフィング
午前7時 JPLよりコメント無しライブストリーム開始(NASA・TV)
午前7時30分 JPLよりコメントつき、同上
午前8時16分 推進系加圧
同 38分 マーズ・オデッセイ経由での信号中継開始
同 米グリーンバンク電波望遠鏡によるUHFダイレクト受信開始
同 39分 クルーズステージ分離
同 40分 大気圏突入姿勢へ
同 46分33秒 大気圏突入開始
同 47〜49分付近 ブラックアウト
同 50分15秒±13秒 パラシュート展開
同 50分30秒±13秒 耐熱シールド分離
同 51分30秒±13秒 着陸脚展開
同 着陸レーダー始動
同 53分09秒±46秒 着陸機、バックシェルより分離、落下
同 53分08秒〜14秒 アンテナ切り替えに伴うギャップ
同 53分12秒 着陸スラスター、推力アップ
同 53分34秒±46秒 等速落下フェーズ、開始
同 53分52秒±46秒 着陸
同 54分52秒±46秒 着陸機送信停止
午前9時13分 太陽電池展開(テレメトリーは停止中、自動モード)
同 28分 マーズ・リコネッサンス・オービターによる降下中記録された
テレメトリーのプレイバック開始。
同 30分 マーズ・エクスプレスによるテレメトリーのプレイバック
午前10時43分〜11時02分 フェニックスからのエンジニアリングデータ等、
マーズ・オデッセイによる中継。恐らく、最初の画像が含まれ
ている。データアクセス可能になるまで更に30分。全てがう
まくいけば、管制室の画面に最初の画像が登場するはず。
それは太陽電池の画像である(フェニックスの最初の仕事
は、パネル展開の確認のためその撮影を行い送信すること
である)。
全てがスムーズに進めば、着陸後の8〜10日間は機器のチェックと電力および熱システムの把握が行われる。その後、土壌サンプルおよび分析が開始される。詳しくはこちらへ【NASA 05.14】
[追加 05.14. 2008]
☆NASAは日本時間14日午前0時より会見を行い、日本時26日朝に予定されている火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」の着陸地点など詳細を公開した。
下はフェニックスの着陸ターゲット域の土壌質と岩石密度を色覚化したもの。グリーンの部分は殆ど岩がないところで、ターゲット楕円のかなりの部分が被っている。
下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が昨年12月28日に撮影した、着陸予定地点周辺の拡大図。予定地点を少し外れたところは大きな岩が散らばっている…針の穴を射抜くようなチャレンジ!(大きいサイズはこちら)
詳しくはこちらへ【NASA 05.13】
[追加 05.09. 2008]
☆着陸へ残すところあと2週間と迫り、順調に飛行を続けているNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」について、10日に予定されていた軌道修正マニューバがパスされた。
フェニックスは極めて順調に飛行を続けている。ジェット推進研究所(JPL)のフェニックス・ナビゲーションチームは先週、これまでのフライトデータを分析した結果、10日のマニューバを割愛する案を提示し、マネジメントチームがこれを受けた。なお、次の軌道修正は17日に予定されている。
ちなみに、最後の軌道修正チャンスは着陸の24時間前とのこと。現時点での着陸ターゲット時刻は日本時間26日午前8時53分。着陸確認信号はその15分20秒後に地球に到達する見込み。詳しくはこちらへ【NASA 05.09】
[追加 05.09. 2008]
☆到着まで残すところあと2週間ちょいとなった、NASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」。13日には着陸イベントに関するブリーフィングも予定されている。
下は先月20日、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した着陸地点を含む地域。フェニックスは北緯68度、西経127度を中心とする楕円域(図中)の中に着陸する予定となっている。
ちなみにこの画像が撮影されたとき、楕円の中につむじ風(dust devil)が発生していた。下は拡大画像で、2つのつむじ風が見えている(矢印)。この地域は現在、春が終わろうとしている頃で、つむじ風の発生も増えている。
つむじ風のひとつは高さ590m、もう一方は390mであり、影も写っている。
数週間前まではドライアイスの霜にびっしり覆われていたところ。中央にポツポツ見える白点は、かろうじて残っているそれである。詳しくはこちらへ【NASA 05.06】
…以前発表になっていた予定地点(こちら)とは経度がだいぶ異なります…変更になったようですね。(5/14追加: やはり元の場所で良さそうです…上の記事は何かおかしいようで…)
[追加 04.20. 2008]
☆NASAの火星着陸探査機「フェニックス」の火星到着まであと1ヶ月。来月25日朝(日本時間)、同探査機は北極域に着陸する。下は予定されている地点で、楕円の中のどこかに着地する。
楕円が3つ描かれているのは、打ち上げ時期によって着陸可能地点が変化することを現している。西北西から西南西(左上から右下)に向けて伸びているのはロンチウィンドウ(07年8月3日〜)の前期に打ち上げられた場合の着陸範囲で、遅くなるにつれ左下から右上にずれていく。また、土地の特徴の違いが色で表されている(大きいサイズ)。
打ち上げは8月4日だったので、着陸予定範囲は最初の楕円の中になる。現在、マーズ・リコネッサンス・オービターの観測データを基に、更なる絞り込みが行われている。詳しくはこちら【image: NASA】
[追加 04.10. 2008]
☆来月25日の火星着陸を目指して飛行中のNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」が10日、軌道修正を行った。
フェニックスは火星の北極地方への着陸を目指しており、着陸場所はおおざっぱではあるがほぼ定まっている。非公式に“グリーン・バレー”と呼ばれているその地域は火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」による写真観測が続けられており、今後取得されるデータを基に、更に絞り込まれる予定。詳しくはこちらへ【NASA 04.10】
[追加 02.28. 2008]
☆昨夏に打ち上げられたNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」は順調に飛行を続けており、火星突入まであと3ヶ月と迫った。既に火星を周回している3機の探査機も、着陸支援に向けて準備が続けられている。
フェニックスは昨年8月4日に打ち上げられた。同機は北極圏という、かつてない高緯度に着陸し、土壌分析や気象観測を行うのが目的。飛行中、搭載機器のキャリブレーションなどが行われてきた。
米東部夏時・5月25日午後7時36分(日本時・同26日午前8時36分)頃、火星面に着陸する予定となっている。
ところで、フェニックスは地球との直接交信は行わず、火星周回を続ける3機の探査機「マーズ・オデッセイ」「マーズ・リコネッサンス・オービター」及び「マーズ・エクスプレス」をリレーしてデータのやり取りをおこなう。火星到着・着陸という重要局面に備え、これらの軌道修正も行われつつある。
「着陸フェーズにおける各種テレメトリーで、機体がどのような状態にあるのかを知ることができます」と語るのは、フェニックスプロジェクト副マネジャーのデビッド・スペンサー氏。このデータは、着陸の際に何らかのトラブルが合った場合に有効に役立つ上、将来の更なる機体改良にも生かされる。
かつてNASAは、このことで苦い思いを経験している。1999年末、フェニックスと殆ど同じ任務を帯びた探査機「マーズ・ポーラー・ランダー」が着陸に失敗、しかもテレメトリー送信機を搭載していなかったため、どのフェーズでどのようなトラブルが起こったのか当初は全くわからず、究明に時間を要したのだ。
マーズ・オデッセイのミッションマネジャーであるボブ・メーゼ氏は「オデッセイのポジションと軌道を、当日にフェニックスの真上に来るよう、正確にコントロールしています。もしアジャストを行わなければ、フェニックス到着時にはちょうど180度反対側を飛行していたはずです」と語る。
一方、マーズ・リコネッサンス・オービターの方はやや大きな軌道修正を行っている。今月6日にスラスター噴射でそれは行われ、4月に最低1回のそれが予定されている。マーズ・エクスプレスも軌道修正が行われた。更には、火星面で活動中の探査車「オポチュニティ」と「スピリット」も動員され、コミュニケーションテストで利用される。
フェニックスの大気圏突入から着陸まで、その発する信号はオデッセイがリアルタイムで地球へリレーすることになっている。一方、リコネッサンス・オービターとエクスプレスはバックアップとしてオンボードメモリーに記録し、後にプレイバックされる。バックアップ受信は着陸10分前に開始とのこと。
各オービターはフェニックスの着陸後、3ヶ月間にわたってリレー活動を担う。詳しくはこちらへ【JPL 02.28】
☆下の殺風景な土地は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した、着陸探査機「マーズ・フェニックス」の着陸予定地の一角。フェニックスは今年5月25日、ここを含む細長い楕円領域のどこかに着陸する予定である。
この地は現在、冬から春に向かいつつあり、地平線に太陽が戻ってきたばかり。太陽の南中高度はまだ10°程度で、岩が長い影を落としている。現在は深さ1フィート(33センチ)程度のドライアイスが被っているが、徐々に高くなる高度と気温で、昇華し、今見る様子とはだいぶ感じが違ってくる。
ちなみに上の画像では、ドライアイスの上に砂が被っているため、本来の白さが見えていない。
フェニックスの活動期間は3ヶ月が予定されているが、それを終えてなお機器が順調であれば、延長されるかもしれない。しかし仮に探査機がそのまま持ち堪えても、最長1年程度。というのも秋に入るとドライアイスが成長を始め、太陽高度も低下し電力がストップするからだ。−100℃に達する極北の越冬は不可能である。画像の大きいサイズはこちらへ【photo: HiRISE】
[追加 10.30. 2007]
☆今月24日、火星を目指して飛行を続ける着陸探査機「マーズ・フェニックス」の軌道修正が行われ、成功した。45.9秒間のスラスター噴射であったが、これは打ち上げから2度目の軌道修正。
もともとこの日の1週間前に予定されていたが、今月6日、宇宙線がメモリーチップに飛び込んだ結果、全体がセーフモードに落ちるという出来事があり、その後のリカバリー作業が入念に行われていたこともあり、延期されていた。
もしこの軌道修正を行わなかったとしたら、探査機は火星から95000kmの地点をかすめていったはずである。
なお、先月は科学分析器「Thermal and Evolved-Gas Analyzer」に熱が加えられ、水蒸気を飛ばす作業が2度行われた。同機器に対するこの“焼き”(ベーキング)作業があと一度、着陸の前に予定されている。詳しくはこちらへ【NASA 10.30】
[追加 09.17. 2007]
☆火星では、その自転軸の揺らぎにより、氷河期が地球のそれよりも遙かにダイナミックであったという仮説が提唱された。
これは、ハワイ大学のノルバート・シュレーゴーファー氏によって提唱されたもので、「ネーチャー」誌今月13日号に論文が記載されている。
地球の場合、自転軸の傾きは月の存在のおかげでほぼ23度で安定しているが、25度の値を持つ火星の場合、±10度ほどの幅で揺らぐことが知られている。この揺らぎは太陽光の当たり具合を大きく変化させ、このため極地方の氷のかなりの部分が約12万年で移動すると考えられている。
「来年5月に火星に到着するフェニックス探査機が、2種類の氷を見つけ出すことを期待しているんですよ」と語るのは、シュレーゴーファー氏。「氷は地表で形成され、そして地下へ潜り、隠されていると考えています」と主張する。
近年、探査機の観測により、火星にも地球のような大規模な氷河期があったことが明らかになった。だが、現在もなお極冠から離れたところに予想以上の氷が残されている理由について、正確なモデルはまだ確立されていない。
現在極域には、極冠に“古い氷”と、その周辺に“新しい氷”の2タイプが存在する。
シュレーゴーファー氏の仮説は、これをうまく説明しようというもので、下のイラストはその模式図である。
火星は約400ないし500万年前、その殆どの部分が氷に覆われていた氷河期であったと考えられている(左端)。その後の地軸の変化により“乾燥期”を迎え、高緯度の一部を除き、殆どが後退してしまう(左から2番目)。これまでの説では、再び地軸が傾き“湿潤期”を迎え(右から2番目)、大量の雪が降り積もり、地軸が再度元に戻った現在(右端)は、地下に残されたその雪の名残を“新しい氷”として見ているのだろう考えられている。
ところが新説によると、“湿潤期”に降り積もった大量の雪はその殆どが大気中に逃げたという。“湿潤期”には実はそれほど“湿潤”とならず、したがって雪もそれほど降らなかったとする代わり、水分が地下に吸収・拡散され、それが氷の層へ成長したのだろうと主張している。
上はシュレーゴーファー氏が主張する高緯度地域の土壌モデル。乾燥土が表面を覆っているが、緯度60度付近以上の地下には“新しい氷”の層が形成されている。この氷層は土の間(soil
pores)にしみこんだ水分が凍ったもの。一方、73度以上では太古の昔に形成された“古い氷”がそのまま残されている。
モデルに従えば、フェニックスが地表を50cmほど掘れば、“新しい氷”に突き当たることになる。水分と土の割合を調べれば、このモデルの妥当性を検証することができるというわけだ。
詳しくはこちらへ【Institute for Astronomy University of Hawaii 09.12】
[追加 09.09. 2007]
☆火星へ向かって順調に飛行を続けているNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」より、最初の画像が送られてきた。下がそれであるが、ロボットアームの先に装着されているカメラが目の前のシャベルの内側を撮影したものである。
これは科学機器チェックアウトの一環で撮影されたもので、今月6日に地球にダウンロードされた。照明である赤色LEDで照らされて浮かび上がった姿であるが、実際の見え具合よりも強調されている。ピンぼけもノイズもない完璧な画像に、関係者も満足している。
詳しくはこちらへ【University of Arizona 09.07】
[追加 09.05. 2007]
☆先月4日に打ち上げられたNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」は順調に飛行を続けている。先日、着陸フェーズで要となる2つの電子機器のチェックアウトが完了した。
チェックが完了したのは、着陸レーダーとUHF通信機器。着陸レーダーは大気圏突入後、着陸までの3分間に作動し、地表との距離を測定する。一方通信機器は、既に火星を周回している探査機との交信を行うもの。フェニックスは周回探査機を中継器として地球と交信する仕様になっている。
次にこのUHF通信機に電源が入るのは、大気圏突入の直前である。なお、火星到着までは、クルージング・ステージに搭載されているXバンド通信機で地球とダイレクト交信が行われる。
上述の2つの機器は、先月24日にテストが行われた。その4日前には搭載されている科学観測機器のチェックアウトが実行され、そこではガス分析器(Thermal
and Evolved-Gas Analyzer)のテストが行われた。更に4つの科学機器のチェックが、次の軌道修正が行われる来月16日までに行われる予定となっている。詳しくはこちらへ【NASA 09.04】
[追加 08.11. 2007]
☆今月4日に打ち上げられたNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」の第一回目の軌道修正が10日行われ、予定されていた3分17秒間のスラスター噴射に成功した。
これは、6回予定されている軌道修正のうちの最初のもので、かつ最も長いスラスター噴射。今回及び今年10月中旬に予定されている2回目の噴射を行わなければ、火星から95万kmの地点を通り過ぎてしまうことになる。
この大きな軌道修正は、故意と用意されているもの。打ち上げ後、探査機のすぐ後方を打ち上げロケット上段・キックモーターが追ってくるが、それが火星へ突入するのを避けるため、マニューバ無しの飛行では火星を逸れるような軌道へ投入されていたからである。詳しくはこちらへ【NASA 08.10】
[追加 08.04. 2007]
☆米東部時・4日午前5時26分34秒(日本時・同午後6時26分34秒)、ケープカナベラル空軍基地第17A射点より、NASAの火星着陸探査機「フェニックス」が打ち上げられた。
打ち上げロケットは9本の固体補助ロケットが装着されたデルタU7925。夜明け前の空に、轟音と共に舞い上がっていった。(動画はこちら)
午前5時26分34秒、リフトオフ!!メインエンジン+固体補助ロケット6本点火!
T+35秒 : デルタU、超音速へ
T+45秒 : 固体補助ロケット、最大スラスト
T+56秒 : Max Q(最大空気抵抗)
T+1分12秒 : 固体補助ロケット分離。直前に残りの3本に点火済み
T+2分14秒 : 3本の固体補助ロケット、分離
T+4分27秒 : 初段、燃焼終了・分離。第2段点火!
T+5分25秒 : フェアリング、分離
T+6分30秒 : 高度130km、飛行順調
T+9分28秒 : 第2段停止、パーキング軌道コースティング開始
T+33分 : テレメトリー値正常。NASAスポークスマン、ジョージ・ディラー氏「全てプリティ・グッのようだ」
T+35分 : 打ち上げ公式時刻発表。値は午前5時26分34.596秒。
わずか1秒のロンチウィンドウの中間値!
T+45分 : コースティングの中間。今回のコースティングは史上最長
T+74分 : 第2段・再燃焼開始(のはず)
T+75分 : 第2段燃焼確認!
T+76分30秒: 第2段、燃焼終了。
T+78分8秒 : 第3段・キックモーター、点火!
T+79分35秒: 第3段、燃焼終了。
T+84分30秒: 第3段、分離。フェニックス、火星へ(管制部の映像はこちら)
T+90分20秒: フェニックスからのシグナル、NASA深宇宙ネットワーク・ゴールドストーン局で受信!
フェニックスは太陽電池パネルを太陽へ向けるなど、姿勢制御中
T+98分 : NASA、打ち上げ成功を公式宣言!
「全くスペクタクルなジョブだったよ。皆、スリル満点だった!」フェニックス・プロジェクトマネジャー、バリー・ゴールドスタイン氏。(詳細はこちら)【NASA/Spaceflight Now 08.04】
下は、フェニックスが着陸を目指している「リージョンD」と呼ばれている地域。
[追加 08.03. 2007]
☆火星着陸探査機「フェニックス」に搭載されている原子間力顕微鏡 ( AFM ) は、ナノテクノロジーで最先端を行く「ナノサーフ」社とバーゼル、ヌーシャテル両大学の共同開発で作られた。火星の悪条件にも耐えられる特別なAFMだという。
2002年の「マーズ・オデッセイ」の探査で、火星の北極付近に大量の氷が発見された。今回の目的は、これを採集することだ。フェニックス・マーズ・ランダーに搭載されている2.35メートルのロボットアームで火星の地面を掘削し、採集された氷や土は即時、ポータブルラボラトリーで分析されることになっている。
火星の空中に浮遊するちりは、1万倍に拡大できる光顕微鏡で観察される。これより小さい物質の分析には、スイスの技術を施したAFMが活躍する。AFMは、1000万分の1の大きさの物質まで捉えることができる顕微鏡で、その基礎技術はチューリヒのIBM研究所で誕生したものだ。
1000万分の1の氷?「ラッキーにも採集できたらということです。ロボットアームが氷を採集中に空中で蒸発してしまうことでしょうから」とヌーシャテル大学のウルス・シュタウファ教授は説明する。ちりの表面から流れ出る水や沸騰する水自体の分析は不可能だが、その痕跡はしっかりととらえることができる。
「1999年のことでした。NASAから火星でも作動するAFMの開発ができるかと聞いてきたのです」とバーゼル大学のハンス・ルドルフ・ヒトバー教授とシュタウファ教授は回想する。当時、両教授は連邦工科大学
( ETH ) のマイクロ&ナノシステムテクノロジー ( MINAST )
で研究していた。バーゼル大学からのスピンオフ企業であるナノサーフも、当時からの研究パートナーだ。開発は超スピードで行われ、2000年10月には6台をアメリカに納めることができた。
しかし、アメリカの火星探査計画は、1999年12月3日の火星南極墜落事故により一時中断され、スイスで開発されたAFMの火星旅行もお預け状態になったのである。再びNASAからの問い合わせがあったのは、2003年になってからだった。
続きはこちらへ【Swissinfo 日本語版 08.03】
[追加 08.02. 2007]
☆NASAは欧州宇宙機構(ESA)に対し、火星着陸探査機「フェニックス」の着陸フェーズにおけるテレメトリー中継を同機構の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」でもサポートしてもらう旨、要請した。
マーズ・エクスプレスは2003年12月より火星を周回している、ESAが開発・運用する探査機。同探査機には小型着陸機「ビーグル2」が搭載されていたが、ビーグル2は大気圏突入以降、シグナルを送ってくることはなく、失敗に終わっている。
フェニックスは来年5月に火星の北極域に着陸、土壌分析などの観測を行う予定が、同機との交信は地球とダイレクトパスで行われるのではなく、既に火星を周回している探査機を経由して行われることになっている。稼働中の周回探査機にはNASAの「マーズ・オデッセイ」、「マーズ・リコネッサンス・オービター」、ESAの「マーズ・エクスプレス」があり、基本的に前者2機を利用することになっているが、着陸フェーズでは念のため「エクスプレス」もサポートすることになった。
大気圏突入から着陸までの約13分間は、最もクリティカルなフェーズ。エクスプレスは比較的細い楕円軌道を描いて周回しており、長時間同じ領域を可視範囲に入れることが可能。そのため、確実なテレメトリー受信が保証できる。また、エクスプレスにはビーグル2との通信機器が搭載されており、それがフェニックスにも力を発揮するものと期待されている。
なお、着陸後の運用でもサポートする案が出ている。詳しくはこちらへ【ESA 08.01】
[追加 08.01. 2007]
☆3日夕方(日本時間)に予定されていたNASAの火星着陸探査機「フェニックス」の打ち上げが24時間延期された。改めて設定された時刻は4日午後6時26分34秒と同7時2分59秒(日本時間)。
延期の理由は第2段への燃料注入が予定されている1日(日本時間)は悪天候が予測されており、この日に注入完了の見込みが無いため。注入は2日午前には終了すると見込まれているが、当初予定の打ち上げは厳しいとのこと。
詳しくはこちらへ【NASA 07.31】
[追加 07.28. 2007]
☆3日に打ち上げが予定されている火星着陸探査機「フェニックス」の整備が続いています。27日、探査機にフェアリングが被せられました。【photo:
NASA KSC 07.27】
ところでフェニックスの探査活動に関し、修正点が…↓
ミシガン大学の大気学準教授で、フェニックス・チームの一員であるニルトン・レンノ氏らが最近行った風洞実験によると、現在予定されている設定では、スコップから投下した土壌のかなりが風で吹き飛ばされる可能性があることが判明した。ただ、投下の高さを下げることで充分対応できるものだという。
(下・ロボットアームを伸ばした想像図。テーブルの上には各種化学分析装置が並んでおり、それらの上に土壌を投下することになっている。)
フェニックスは火星の北極域に着陸し、土壌をロボットアームの先のスコップですくい、化学装置に投下し分析を行う。レンノ氏らは風洞にロボットアームを持ち込み、現地で実際に吹いているとされる風速を起こして土壌の投下実験を行った。
フェニックスが着陸を予定している場所は秒速5mの風が平均して吹いていると考えられている。そこで探査機は、すくった土壌や氷を分析器から高さ10センチのところで投下する予定になっているが、その場合、かなりが風で横に飛ばされ、分析器に入らないことが判明したという。
この結果、スコップを2センチの高さまで近づけるか、風が弱い時を見計らって投下する方法が提案された。
研究チームは、様々な条件で風洞実験を繰り返している。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 07.27】
[追加 07.27. 2007]
☆円筒コンテナから出された機体が、ロケット第2段に据え付けられました。
上のフォトでは、バックシェルに開いたスラスター口(2つの長方形)がよく見えています。【photo:
NASA KSC 07.23】
[追加 07.25. 2007]
☆火星着陸探査機「フェニックス」が23日早朝、「危険搭載貨物修理施設」を出発し、射点17Aへ入りました。
射点17Aに到着すると、クレーンに吊されトップへ。その後、既に組み上がっているデルタUロケット・第2段との結合作業が行われました。
【photo: NASA KSC】
[追加 07.21. 2007]
☆ケネディー宇宙センター・「危険搭載貨物修理施設」にて作業が行われていた火星着陸探査機「フェニックス」の、射点17Aへ向けた搬送が始まりました。
きれいにラッピングされたあと、輸送コンテナに格納されます
このあと、出発です。【photo: NASA KSC 07.20】
[追加 07.19. 2007]
☆準備が着々と進められる火星着陸探査機「フェニックス」。19日、耐熱シールドが装着されました。
打ち上げは日本時間・来月3日夕が予定されています。【photo: NASA KSC】
[追加 07.17. 2007]
☆下は、来月3日打ち上げ予定の火星着陸探査機「フェニックス」が、第3段・キックモーターに装着されるところ。17日、「危険搭載貨物修理施設」にて作業が行われました。
慎重に組み合わせられます(上)。スプリングのようなものは分離の際押し出すものですかねぇ…? 打ち上げに向け、作業は順調に進んでいるようです。【photo:
NASA KSC 07.17】
[追加 07.13. 2007]
☆下は、「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した、火星着陸探査機「フェニックス」の着陸候補地の一角(66.6N,
249.8E)。撮影日は昨年11月6日。
非常に滑らかそうな所です…いわゆる「リージョンD」と呼ばれる一帯の一角。下は当初の候補に挙がっていて、その後却下された「リージョンB」の一角。
あまり状態のよい場所とは言えなさそうです。他の候補一覧はこちらへ【photo: NASA/JPL/University of Arizona】
[追加 07.09. 2007]
☆NASAは10日午前0時半(日本時間)よりワシントン本部にて、来月3日に打ち上げが予定されている火星着陸探査機「フェニックス」(下)に関する記者会見を行い、ミッションの始動を広く告知した。
「フェニックス」ミッションは、火星の北半球高緯度に着陸し、地表を掘削、水などの存在を直接確かめるという野心的な試みであり、「マーズ・スカウト」プログラムの第一弾となる。「マーズ・スカウト」は2001年に創設されたもので、低予算で実行可能な火星探査プログラムを公募し、NASAが選定を行い、実行に移すというプログラム。フェニックスは2003年にセレクトされた。なお、第2弾は今年1月に2提案まで絞り込まれており、年末に最終チョイスされる予定。
探査の目的は、極域の土壌が生命を宿すことが可能な環境なのか、水の存在はどうなっているのか、気象状態はどうなのかという3点にある。特に極域の地下には水の存在が判明しており、直接掘ることで新たな発見があるかも知れない。また、極域の大気運動を観測することで、それが他の地域とどのように関連しているか探る手がかりを得ることができる。
詳しくはこちらやこちらへ【NASA 07.09】
…会見では、先日報じられた降下カメラと処理系に関する質問が出ていました。撮像は1枚に限りそれを参照するという方針ですが、当初は降下の各段階で、全部で20枚ほど撮影する予定だったとのことです。インターフェースに画像を流し込むとジャイロのデータに影響を及ぼす可能性があるといい、危険回避のためのやむを得ない判断とのこと。また、到着時に砂嵐が発生していたらという質問には、砂嵐は南半球が夏の場合に発生する確率が高く、到着時は北半球が夏であり、リスクは小さいと考えているとのことでした。
なお、この会見に先立ち、先月26日、報道陣に機体が公開されています(下)
[追加 07.05. 2007]
☆来月3日に打ち上げが予定されているNASAの火星着陸探査機「フェニックス」のテストにおいて、データ処理系に問題が見つかった。これにより、着陸までのクリティカルな3分間における撮像シーケンスが変更された。
問題点が見つかったのはカメラではなく、インターフェースカードの一枚。これは探査機の各部からのデータを受け取り処理するパートの一部。フェニックスは着陸フェーズにおいて地上の撮影を行い自身を認識するが、撮影された画像がこのカードにはいると、別の重要なデータを一部損失してしまう可能性があることが判明したという。
このリスクは無視できないレベルであるという。だが探査機は既に組み上がっており、残り3週間でバラしてカードを差し替えることもできないという。
そこで、降下予定地点の撮影を1枚だけに限定し、それに委ねることを決定したという。1枚だけなら撮像装置自身のメモリーに保存でき、インターフェースを通さずに済むためである。またこれが、ミッション全体に与える影響もないという。詳しくはこちらへ【Spaceref 07.05】
[追加 06.26. 2007]
☆下は、8月3日に打ち上げが予定されている火星着陸探査機「フェニックス」が、ケネディー宇宙センターの「危険搭載貨物修理施設」(Payload
Hazardous Servicing Facility)にてテストを受けているところ。太陽電池パネルに対するイルミネーションテストが行われています。
テストが終わった後、パネルが折りたたまれていきます(上)。フェニックスは来年5月に火星の北極域へ着陸、土壌や大気の調査などを行う予定です。【photo:
NASA KSC】
[追加 06.14. 2007]
☆下は、ケネディー宇宙センターのクリーンルームで最終工程が進められている火星着陸機「フェニックス」。写真は今月上旬のもので、機体の重心検出と確認が行われているところ。耐熱シールドはまだ被せられておらず、探査機の底部が上を向いている。引っ込んだ着陸脚がよくわかる。
フェニックスは今年8月に打ち上げられる予定。【photo: NASA】
[追加 05.08. 2007]
☆今年8月3日に打ち上げが予定されているNASAの「マーズ・フェニックス」探査機が、7日、コロラド州バックレー空軍基地よりC17輸送機でケネディー宇宙センターに運び込まれた。
(上・「フェニック」が入った大型コンテナ。作業員が中の温度や湿度をチェックしているところ。この大型コンテナは「マーズ・リコネッサンス・オービター」や「カッシーニ」の輸送にも使われた【photo:
David Sanders / arizona daily star】)
3億8600万ドルが投じられるこのミッションは、新たに低予算で火星の研究を行なう試み「マーズ・スカウト」プログラムにおける初のミッション。2002年に火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が北極付近に大量の氷が存在する証拠を発見しており、これを直接検証すべく、「フェニックス」がロボットアームを使って凍った地面を掘り起こし、分析用の土壌サンプルをすくいあげ、調査を行う。
ミッションのゴーサインは2005年6月に出され、準備が進められてきた。「フェニックス」とは「不死鳥」の意味だが、ここでは2つの意味がある。1つはお蔵入りになっていた未使用の探査機パーツを利用するということ、もう1つは、失敗ミッションに再チャレンジするという意味である。
この探査機には、2001年に予定されていた火星探査ミッション「マーズ・サーベイヤー」着陸機として製造されたパーツが利用されている。
1999年、別の火星探査ミッション「マーズ・ポーラー・ランダー」の失敗を受けて「サーベイヤー」も打ち切られ、一度はお蔵入りとなった。だが、ミッションチームは2002年の「マーズ・オデッセイ」による発見に再チャレンジの可能性を見出し、「マーズ・スカウト」プログラムに申請、ゴーサインが出たのであった。「フェニックス」の探査目的は、「ポーラー・ランダー」と被っている。
ちなみに「フェニックス」の着陸地点は、現在活動中の「マーズ・リコネッサンス・オービター」により取得された画像を基に決められる。
探査機はコロラド州デンバーの「ロッキードマーチン・スペースシステムズ」社によって組み立てられてきた。昨年末には作業中の様子がリリースされている(下・太陽電池の展開テスト)。
ケネディでは今後、耐熱シールドの取り付けと試験、その他の最終工程が予定されている。全てが順調に進むと、8月3日早朝(現地時)、ボーイング・デルタU7925で17A射点を飛び立つ予定。詳しくはこちらへ【NASA 05.08】
[追加 11.29. 2006]
☆来年8月に打ち上げが予定されているNASAの火星着陸探査機「マーズ・フェニックス」の組立作業中の様子がリリースされた。
画像は今年9月、コロラド州デンバーのロッキードマーチン・スペースシステムズにおいて組み立て作業中の同探査機。この画像は、円形の太陽電池の展開がテストされているところ。
フェニックスは北極圏の凍結した大地に着陸し、土壌を採取、生命の痕跡などを探る。このミッションは99年に失敗した「マーズ・ポーラー・ランダー」のリベンジ戦でもあり、「フェニックス」(不死鳥)にはそのような甦り・再起の意味が込められている。詳しくはこちらへ【NASA 11.29】
[追加 11.07. 2006]
☆来年打ち上げが予定されているNASAの火星探査機「マーズ・フェニックス」に、名前を記録したDVDが搭載される。現在、米惑星協会のサイトで登録を受け付け中。締め切りは2007年2月1日とのこと。
このDVDにはアーサー・クラークやカール・セーガンらのメッセージなども収録される予定(どうやら動画のようですね@管理人)。フェニックスは07年8月に打ち上げられ、08年5月に火星に到着する。【Planetary
Society】
…このミッションはかつて失敗した「マーズ・ポーラー・ランダー」のリベンジミッションと位置づけられており、“甦り”の意を込めて「フェニックス」(不死鳥)と名付けられています。
[追加 04.26. 2006]
☆2007年8月に着陸機の打ち上げが予定されているNASAの「マーズ・フェニックス」計画が、新たな局面に入った。
これは、NASAジェット推進研究所(JPL)、ロッキードマーチンスペースシステムズ、アリゾナ大学が中心となり推進しているミッション。火星の北極に着陸機を送り込み、地表を掘るなどして水や有機物の存在を調査するというもの。
これまで、各種観測機器が個別に組み立てられてきたが、いよいよ、ボディへの組み合わせ作業が始まった。
この着陸機は、マーズ・ローバーのエアバッグとは異なり、ガス噴射による軟着陸を目指す。
この「マーズ・フェニックス」の「フェニックス」はもちろん、「不死鳥」の意。1999年12月、同様のミッションを担った「マーズ・ポーラー・ランダー」探査機が着陸に失敗したのだったが、「マーズ・フェニックス」にはこのリベンジを図る気持ちが込められている。2003年、ミッションの正式決定がなされている。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 04.26】
[追加 04.05. 2006]
☆2007年の打ち上げが予定されているNASAの火星探査機「フェニックス」の製造は着々と進んでいるようです。この探査機は、火星の北極地方に着陸し、土壌をシャベルで掘り、化学成分を調査するというものです(バイキング探査機の極地版てとこですかね@管理人)。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 04.05】
[追加 06.03. 2005]
☆米航空宇宙局(NASA)は2日、長いロボットアームを装備した探査機を火星の北極に着陸させ、存在する可能性のある水や生命の手がかりを探る「フェニックス」計画に続行の許可を出すと発表した。
3億8600万ドルが投じられるこのミッションでは、探査機が2008年5月に火星の北極に着陸する予定になっている(右)。2002年に火星周回探査機『マーズ・オデッセイ』が北極付近に大量の氷が存在する証拠を発見しており、これを直接検証すべく、フェニックスがロボットアームを使って凍った地面を掘り起こし、分析用の土壌サンプルをすくいあげ、調査するというもの。
また、フェニックスは、新たに低予算で火星の研究を行なう試み『マーズ・スカウト』プログラムにおける初のミッションとなる。
予定では今後2年間にわたり、探査機と搭載機器の開発を行なう。またNASAが今年8月に打ち上げを予定している火星周回機『マーズ・リコネッサンス・オービター』が収集する情報に基づき、北半球における着陸地点の選定を行なう予定。
ミッションの調査責任者を務める、アリゾナ大学のピーター・スミス氏は「フェニックス・ミッションでは、地球上の永久凍土に覆われた地域と似通った火星北部の平地における未知の地域を調査する」と話した。
ところで、まさにその名のとおり、フェニックス(不死鳥)はかつてのミッションで葬り去られていた状態から見事に復活した。この着陸機は、そもそも2001年に行なわれた『マーズ・サーベイヤー2001』プログラムの一部として開発されたが、1999年に『マーズ・ポーラー・ランダー』が失敗したことで、このプログラムは断念されていた。
フェニックスは2003年8月に正式に選択され、ゴーサインが出されていた。今回は計画の精査によりそれがタイムラインに沿って実行可能と判断され、ハードウェア開発の許可とプランの充実が正式に許可されたのである。【NASA/
Spaceflight Now 06.03】