宇宙には様々な天体があるが、昨年発見された、ちょっと変わった天体をご紹介します。
太陽系には無数の小惑星がある。小惑星とは、サイズが大きくても数百キロ程度の岩石や氷の固まり。主に火星と木星の軌道の間に多く分布している(アステロイドベルト)が、中には太陽の傍までやってくるなど、変わった軌道を描くものも多い。
昨年発見された“2002 AA29”とナンバー付けられた小惑星はその中でも、これまで無かったような軌道を描くことが判明している。それは、あたかも地球に“まとわりついて”いるかのような動き方をするのだ。
この小惑星は大きさが僅か60m程のものだが、地球に極めて近い軌道上を走って、太陽の周囲を公転している。従って、地球の引力の影響も大きく受け、ある時は地球よりも内側に、またあるときは地球よりも外側に移るような動き方をする。
これをわかりやすく連続させてみると、図のようになる。黄色い丸が太陽、青い曲線が地球軌道で、地球自身も小さく円盤状に描かれている。その青い軌道の周囲を、らせんを描いている緑色の曲線が、この小惑星の動きを表している…地球にまとわりついているのがよくわかる。
この動き、月のように“地球の周囲を公転”していることにはならないことに、ご注意。らせんを描きながら、あくまで“太陽を公転”しているのだ。(ただし約600年後、40年間の期限付きで、地球の周囲を回る“第2の月”となるのだとか)。また、地球と衝突することは決して無いという。
なお、この動きを関係者は“cat-and-mouse game”と表現している。「ネコとネズミの追いかけっこ」とでもなるのだろうが…ユーモアは無いが、やはり“ハエがまとわりつく”と言った方がわかりやすいかも(笑)。【Reuters/NASA】
☆関連記事☆ (06.09. 2006)
小惑星「2003YN107」、この小惑星は、ほぼ1年の周期で地球の周囲を回っている。大きさは僅か20mで、肉眼で見ることはできないが、確かにそこにいる。しかもこれは、7年も前からなのだ。
2003YN107は1999年から、地球の周囲でコークスクリューを描くような振る舞いを見せている。この小惑星は地球に近接するNEO天体の1つであるが、地球に衝突するなどの可能性はない。それにしてもこの天体は、風変わりな軌道を描いている。
殆どのNEO天体は地球とフライバイするだけだ。つまり、接近後、飛び去っていく。ところが2003YN107は、地球に接近した後、その場に“留まる”のだ。この小惑星の公転軌道は地球のそれとほぼ一致し、地球と一緒に1年で太陽を公転する間、地球軌道の内と外を出たり入ったりするというわけだ(そういえば、土星の衛星「ヤヌス」と「エピメテウス」の動きがこれに似ているでしょうか…@管理人)。
このような小惑星は「Earth Coorbital Asteroids」、略して「coorbitals」と呼ばれている。ほぼ地球の公転軌道と一致する軌道を有し、時々、地球の傍で歩みを共にするような性質をもっているのだ。もちろん、地球の重力圏に捕獲されるわけではないので、地球の周囲を公転はしない。ただ、見た目、地球を周回しているように見えるだけである。
このような小惑星はこれまでに少なくとも4個見つかっており、それぞれ「2003YN107」、「2002AA29」、「2004GU9」及び「2001GO2」である。
(左端は2002AA29の画像で、中央はその地球近傍における軌道の姿。地球軌道の内と外とを出たり入ったり、らせんを描くようにまとわりついている。右端はその全体像。動画とその詳細はこちらへ)。
目下、地球近傍をふらついているのは「2003YN107」と「2004GU9」の2つ。このうち驚かされるのは「2004GU9」。大きさ200mと比較的大きなこの小惑星は、既に過去500年もの間地球にまとわりつき、更にあと500年もこの状態を維持するという。これはもはや“周回している”と言っても、ある意味間違いでもないかもしれない。
ただ、「2003YN107」の方も面白いイベントを迎えようとしている。今月10日、地球近傍から離脱を開始するのだ。ただ、この小惑星は60年後、再び地球近傍に帰ってくる(2003YN107のパラメータはこちら。地球からの距離などが出ています)。
非常に面白い小惑星だが、地球からはそう簡単に見ることはできない。だがいつの日か、そこを訪れることが可能になる日がくるかも知れない。そしてその時、我々の前にその“月”はどのような姿を見せてくれるのだろうか…。詳しくはこちらへ【NASA 06.09】