奇跡だった?初フライト

初版: 07.13.2001

1903年12月17日、米・ノースカロライナ州キティホーク。自転車製造業を営むライト兄弟がこの日、世界初の有人動力飛行機「フライヤー号」のテスト飛行を行い、見事、成功した。最初の飛行は12秒、二度目は59秒、260mの記録を樹立。しかし同機は同日、突風にあおられ大破、二度と空に浮かぶことは無かった。(写真はレプリカ)

その100周年を2年半後に控えた2001年。米国では現在、少なくとも3つの団体がフライヤー号の復元と飛行再現に向けた研究を続けている。米航空宇宙学会(AIAA)ロサンゼルス支部が抱える「ライト・フライヤー・プロジェクト」もその1つ。彼らはフライヤー号の6分の1模型等の風洞実験を通してデータを収集、それをもとにコンピュータで当時のフライヤー号と同じ状況を再現、その(画面上での)操縦に米空軍のパイロット達が挑んだ。

ところが、飛行はド素人のはずのライト兄弟でさえ59秒もの飛行を達成したにもかかわらず、戦闘機のプロ達の殆どは何と、1秒も経たずに墜落。練習を積むことでどうにか飛行できた者もいたが、それでもコンピュータ制御に頼って機体を安定させていたのだ。参加した空軍少佐は、「彼らがこれを飛ばしたなんて、信じられない」と語る。

チーム責任者Jack Cherne氏は「ライト兄弟の飛行は殆ど奇跡だった」に続けて、「我々も同じ体験をしたいが、死にたくもない」と語る。同チームは来夏にも、再現飛行用の機体の作成を開始するが、翼の形やエンジンには改良を加える予定。【CNN】

<追加情報 12.18. 2003>

米国のライト兄弟による人類初の動力飛行から100周年を記念し、米ノースカロライナ州キティホークで開かれた式典で17日午後(日本時間18日未明)、兄弟の複葉機「フライヤー」を忠実に復元した飛行機が当時の再現飛行に挑戦したが、離陸に失敗。100年前のライト兄弟の偉大さをあらためて印象付けた。

復元した飛行機の最初の挑戦飛行は17日午後零時半(日本時間同午前2時半)前。当時と同様に滑走用に作られた50メートルほどの木のレールの終点近くで、パイロットのケビン・コチャスバーガーさんが昇降舵(だ)を操作して飛び上がろうとしたが、機体は持ち上がらず、水たまりの中に突っ込んでストップ。息をのんで見つめていた約3万人の観衆のため息に会場は包まれた。

主催者側は「離陸の途中で急に風が弱くなったため」と失敗の理由を説明。午後4時ごろにも再度の挑戦を試みたが、風が弱く断念した。

なお、ブッシュ大統領は式典でのスピーチで、ライト兄弟の発明の才能を賞賛し「ライト兄弟が持っていた忍耐強さ、持続性、何事も前向きにとらえる精神、創意工夫の心は尊敬に値する。ライト兄弟の発明品は世界に広く伝わるものとなったが、彼らはアメリカ人なのだ」と述べた。

当地では6日間にわたるセレモニーが行われ、人類で初めて月面を歩いたニール・アームストロング氏とバズ・オルドウィン氏、また1962年と98年の2回にわたり宇宙飛行をしたジョン・グレン氏も訪れた。【共同/CNN】