ホーキング、SFファンを凹ませた!?

初版: 07.22.2004

英ケンブリッジ大学の宇宙物理学者、スティーブン・ホーキング教授が21日、アイルランド・ダブリンで開催中の国際学会で、ブラックホールに関する自説を修正する発表を行った。

ブラックホールは、重力が強すぎて光も脱出できない天体。ホーキング氏はこれまで、ブラックホールが徐々にエネルギーを放出、最終的には「蒸発」するという理論を提唱し、ブラックホールが飲み込んだ物質の情報は、ブラックホール「蒸発」時に一緒に消滅すると主張していた。

しかし、物質の情報が消滅すれば量子力学の法則に矛盾するため、ブラックホールを巡る「情報のパラドックス」として、約30年前から議論になっていた。

今回の発表でホーキング氏は、ブラックホールが「蒸発」する際に、飲み込んだ物質の情報が宇宙空間に放出されると述べ、自説を修正。「約30年間、悩まされてきた問題だったが、解決できて本当によかった」と語った。

ホーキング氏は、「ブラックホールが消滅する際、新しい『赤ちゃん宇宙』が誕生するのだと考えていたが、それは間違っていた。物質情報は、われわれのこの宇宙に留まる。SFファンをがっかりさせて申し訳ないが、もし情報がこちらの宇宙にとどまるなら、ブラックホールを使って別の宇宙に旅することは不可能だ。ブラックホールに飛び込んでも、あなたの質量エネルギーはこちらの宇宙に戻されてしまう。ごちゃごちゃっとした形で」と述べ、続けて、「あなたがどういう人間だったかの情報はそこに含まれているが、もうあなただと見分けはつかなくなっているはずだ」とジョークを述べたとき、約800人の聴衆は大笑いした。

講演を聴いていた米カリフォルニア工科大学のジョン・プレスキル氏は、1975年にホーキング氏の説に対し、物質の情報は消滅しないと反論。2人は、どちらの主張が正しいか、29年にわたって賭けをしていた。

プレスキル氏は賭けに勝ったことは喜んだが、「正直なところ、話の内容は良く理解できなかった」として、ホーキング氏が来月にも出版する予定の、詳しい論文を読むのが楽しみだ、と話している。

ホーキング氏は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病のために全身の自由が奪われ、車いすで移動している。声も出ないため、車いすについた音声合成装置で、講演した。【CNN/Reuters 07.22】