速くなった地球

初版: 05.23.2003  追加: 05.15. 2008

地球が太陽の周りを回る日数、つまり1年=365日は常識だ。しかし、正確には365.25日、つまり365日と6時間であり、このため、4年に1日、ズレが生じることになる…そこで“2月29日”を設けて、1日ずらしてあげる。この“特別な日”を入れる年を、うるう年という。

これと似たような話が、時間の世界にもある。「うるう秒」というのがそれだ。

時の刻みは、古代では太陽の昇り沈みを基準とされていた。例えば太陽が一番高く昇った瞬間を正午と定め、時刻を割り振るといったやり方だ。当時はこれでよかった。

しかし人類はやがて、地球が自転していることを知り、太陽の動きが自転による見かけのものだと知る。しかも知性がと技術が進歩すると、地球の自転速度が一定ではないことにも気づいた。つまり、「時の基準」がふらついているということになるのだ。

日常生活ではさほど気にならないふらつきも、20世紀、特に大戦後、より精密な研究や観測を行うようになると支障をきたすことになった。そこで、極めて精度の高い、“ふらつきゼロ”の超高精度基準として、セシウム原子の出す光を基とした“原子時”を導入した。これは地球の自転とはお構いなしに正確な時を刻む。だがこれを全ての時計の基準に据えるのは逆に、日常用にはちょっと大げさだ…

そこで、普段用いる時刻の基準はそれまでのものを用い、原子時計とのズレは必要に応じて「うるう秒」を入れたり抜いたりすることで調整することとし、今日に至っている。このことは視点を変えるとつまり…うるう秒を入れるということは、地球の自転は遅くなっていることを意味し、逆に抜くということは、自転が早くなっていることを意味する。

さて、このうるう秒は導入以来、ほぼ毎年1秒ずつ入れられてきた。地球の自転速度が太古の昔以来、少しずつだが遅くなっているのが原因なのだが、この4年半、全く入れる必要がない状況だという。つまり、自転が速くなっているのだ。

地球が1回転する時間は30年前に比べると、約400分の1秒程短く(=速く)なっているという。この原因として、「気候変動のため」「地球の深部で巨大地震が起きた」などの説が指摘されているが、詳細ははっきりわからないそうだ。ただこれはあくまで一時的なもので、地球の自転はもっと遅くなることが研究でわかっている。さて、再び自転がスローダウンするのはいつの日か?

<関連情報 05.15. 2008 追加>

中国・四川大地震の揺れが日本の地下を通過して地球を2周していたことが気象庁精密地震観測室(長野市)の観測で分かった。マグニチュード(M)7.8の巨大地震が深さ約10キロという浅い地点で起きた影響の強さを示している。

同観測室の三上直也室長によると、地震は日本時間の12日午後3時28分に発生。観測室敷地内の地下約40メートルに設置された広帯域地震計が約13分後、揺れの間隔(周期)が約2分という長い地震波をとらえた。その後、同6時10分、同8時40分と約2時間半間隔で2度地震波を観測した。

周期の長い地震波はエネルギーが弱まりにくい。同じ地震波が地球表面をあまり弱まらずに回ったとみられる。03年9月の北海道十勝沖地震(M8.0)でも地震波が地球を2周した。

観測室の地震計はこれより前に、地球内部を伝わる通常の地震波もとらえた。発生から約3分後に初期微動(P波)、約10分後に主要動(S波)を観測した。いずれも人が感じる大きさではなかった。

一方、地震直後には、震源から1500キロ以上離れた北京や上海などでも震度2程度の揺れがあったと、米地質調査所はインターネット調査から推定している。

岩田知孝・京都大防災研究所教授(強震動地震学)によると、これらの揺れは、周期1〜数秒のやや長めの地震波が中国大陸の地殻(深さ0〜約35キロ)内で上下に反射を繰り返しながら伝わったと考えられるという。岩田教授は「これほど長い距離を伝わる地震波は日本では珍しい。同じ厚さの地殻が水平に広がる中国大陸の特徴によるものだろう」と話している。【毎日 05.15】

<関連情報 12.27. 2006 追加>

今年12月31日、「うるう秒」が挿入される。これは23時59分59秒の後に「1秒を追加」するもので、本来あり得ない「23時59分60秒」が入り、0時0分0秒とカウントされる。

この特別な1秒は米海軍天文台によって挿入される。これまでも時々挿入されていたもので、今回は23回目の実施。ではなぜ、このようなものを遂行する必要があるのか?

人類は古代、地球の自転を時計の基準としていた。太陽が昇るのが朝で、天頂に来るときが正午、そして沈むのが夕方である。地球の自転を元にした時計の精度は1日あたり1000分の1秒で、これで殆どの人の生活は事足りる。ところが原子時計の発明により精度が飛躍的に向上し、それは1日あたり10億分の1秒にまで達するようになった。

ところで原子時計とは、セシウムや水素、水銀などの元素が放射する光の振動数を基準とした時計。現在は複数台のセシウム原子の放射を基準とした原子時計と、水素メーザーを基準とした原子時計でカウントされるタイムを平均したものが基準時刻として用いられ、これは「UTC」(Universal Time Coordinated)と呼ばれている。これを実行しているのが、米海軍天文台である。

地球の自転を元にした時計は、原子時計と比べて、一様なカウントではない。日常生活では気付かないが、地球の自転は変動しており、例えばクウェーサーの観測でその振れを知ることができ、実際にクウェーサー観測が地球自転変動の計測に用いられているほど。そこで、この地球の自転を元にした時刻と、原子時計の時刻の差を埋めるために、わざと1秒調整されているのだ。

1972年、国際協定により、原子時計を地球の自転とは独立して稼働させ、適宜、両者の差を埋めるように調節させる(Coordinated)ことになった。両者の差を10分の9秒以内に抑えるため、原子時計の方の1秒を操作することになっている。

両者の差は国際地球回転観測事業(IERS)が監視し、必要に応じてうるう秒の挿入を宣言する。1972年以来、6ヶ月から2年の間隔で、挿入が続けられてきた。今回の挿入は、7年ぶりのものになる(これだけ間隔が開いたことに関しては興味深い話があります。詳しくはこちらをご覧下さい@管理人)。

このうるう秒の挿入は、地球の自転が遅くなっていることを意味する(=遅い方へ歩調を合わせるイメージ)。当然、もし地球の自転が早くなったら、1秒抜かれることになる。

そして米海軍天文台が、この時刻調整の遂行責任を負い、ここに置かれた時計が「マスタークロック」となる。同天文台は同時に、米国防総省に標準時刻を提供し、また、米国立標準技術研究所と共に全世界へも提供することになる。

これほどの正確さを必要とする時刻は、我々の生活にも直接目に見えるところで関わっている。例えば電波時計はそうだし、GPSシステムなども深く依存しているのだ。

現在必要とされるマスタークロックの精度は、米国防省の要求もあり、一日あたり10億分の1秒以下が保たれている。これは独立して作動する60のセシウム原子時計と、15の水素メーザー時計の平均から求められている。それらは自動的に100秒間隔で互いをチェックしあっており、驚異的な信頼性と正確さが実現されている。

この海軍天文台の高精度な時刻維持は結局、地球の自転も正確にトラックしていることにもなる。【Spaceref 12.27】

…そもそも「UTC」はフランス主導で決められたため米国では嫌う向きもあります(笑)。Universal Time Coordinated、の形容詞後置修飾(=フランス語文法で見られる)を嫌っているのか、わざわざ「Coordinated Universal Time」と読み上げているラジオ局などもあります。。ちなみに「うるう年」は英語で「leap year」…“leap”はジャンプするという意ですが、平年が続く場合、同月同日の曜日は毎年1つづつずれていきますが、2/29を挟むと曜日が2つ“飛んで”しまうからというのが所以とか。したがって「うるう秒」は「leap second」となります。

<関連情報 05.20. 2005 追加>

昨年12月に発生したスマトラ沖地震の振動は地球全体に及び、少なくとも10分間続いた…19日付の米科学誌サイエンスに、米科学者らによる共同チームの研究結果が発表され、史上類をみない規模の大きさがあらためて浮き彫りとなった。

共同研究はカリフォルニア大のソーン・レイ教授が、世界の専門家十数人に呼び掛けて実施。スマトラ沖地震の被害を教訓として、より正確な津波警報システムを構築することを目的に、持ち寄ったデータを分析した。

ペンシルベニア州立大のチャールズ・アモン助教授によると、スマトラ沖地震の継続時間は500−600秒にわたった。「通常の小規模な地震なら1秒以内、中規模でも数秒間でおさまるが、今回の地震はけた違いの長さだった」と、アモン氏は強調する。

地震によって生じた海底のずれは南北1200キロ近くに及び、上下のずれ幅は平均で5メートル、最大20メートルに上ったという。9.0とされていたマグニチュードは9.1−9.3に上方修正された。

またアモン助教授によれば、スマトラ沖地震の揺れは全世界で観測された。米地質調査所などが数年前から世界各地に設置しているデジタル方式の地震計にはすべて、少なくとも1センチの振幅が記録されていたという。

レイ教授は「同様の地震は今後も起こり得る。被害を最小限にとどめるための技術を開発するのがわれわれの仕事だ」と話している。【CNN 05.20】

<関連情報 01.11. 2005 追加>

米航空宇宙局(NASA)は10日、昨年12月26日のスマトラ沖地震の影響で地球の自転速度がわずかに速まり、計算の結果、1日の長さが100万分の2・68秒短くなったとの解析結果を発表した。

地球の中心部に向け大量の物質の移動が起きたのが原因とみられ、NASAの研究者は「アイススケートの選手が両腕を体に引きつけてスピンをすると回転が速まるのと同じ原理だ」と説明している。

変化は小さ過ぎて検出できておらず、標準時への影響も「無視できる」という。研究者は衛星利用測位システム(GPS)などのデータを詳細に分析し、検出を試みるとしている。 【共同】