レッドチェイサー

ニュース・ログ 追加: 01.16. 2016

2007年1月からのニュース・ログです。元のページはこちらへ

<追加情報 01.16. 2015>

欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」に相乗りする形で火星に到着、母機から切り離され着陸を試みたもののその後の通信が開通しなかった着陸機「ビーグル2」が発見された。ESAが16日に会見、発表した。

ビーグル2は2003年12月19日に母機エクスプレスから切り離され、6日後のクリスマスに火星へと突入したとされてきた。「されてきた」というのも、分離から着陸まではビーコン等のシグナルを送信する仕様にはなっておらず、25日の交信開始時刻になってもシグナルは確認されず、その後、別の周回探査機からのコンタクトを試みるという“捜索”という形になったが成果は出ず、いわば生死不明の状態でロストと見なされたものであった。その後、大気中で炎上して蒸発してしまったとの説が大方の見方となっていたようである。なにせテレメトリーも一切ないという、何が起こったのか知るよしがなかった。

ところが10年の月日が経った最近、現在火星を周回している火星探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)の高解像度望遠カメラで、その姿が捉えられた。写っていたのは、太陽電池パネルの一部を開いて、そこに座っているビーグル2の姿であった。

 

「ビーグル2が着陸成功していたのはとても嬉しいです。MROのカメラチームが発見に注いでくれたエネルギーに感激しています」と語るのは、ESAのサイエンス・ロボティック探査部門長のAlvaro Gimenez氏。

「ビーグルに何が起こったのかはわからないままです。ただいまわかるのは着陸に成功していたということですが、それあ素晴らしいニュースです。」と語るのは、当時のマーズ・エクスプレス計画責任者であったルドルフ・シュミット氏。

     

画像はその姿であるが、4つのパネルのうち1つか2つ、多くて3つが開いているのがわかる。(あと、“モグラ”と呼ばれていた掘削ドリルアームっぽいものもちゃんと伸びているように見えますねぇ。(管理人))

詳細はこちらへ。【ESA 01.16.2015】

<追加情報 06.12. 2012>

米航空宇宙局(NASA)は11日、火星探査車「キュリオシティー」が日本時間8月6日午後2時半ごろに火星の「ゲール・クレーター」へ着陸すると発表した。

同クレーターは、火星の赤道よりやや南で、水が存在したと考えられる古い時代の地層が露出しており、生命の痕跡の発見につながる可能性があるという。

キュリオシティーは全長約3メートル、重さ約900キロ・グラムの6輪車で、乗用車並みの大きさ。昨年11月に打ち上げられた。着陸時には衝撃を最小限に抑えるため、探査車をつり下げた下降装置が上空約20メートルを飛びながら、ワイヤで探査車をゆっくり地上に下ろす。【読売 06.12】

…史上最大のパラシュートによる減速シーンもありますが、「スカイクレーン」と呼ばれるこの下降装置が最大の山場ですよね。プロモーション動画を見てもハラハラします…この挑戦的なシステムの成功を祈りましょう。

<追加情報 05.24. 2011>

NASAは、2004年1月3日より火星上で走り回っていた火星探査車「スピリット」との交信回復を断念すると公式に発表した。

スピリットは同型車「オポチュニティ」と共に、90日の活動期間の予定で火星上を走り回り、水の痕跡など地質調査を行うために送りこまれたラジコンカー。今や言うまでもないが、予定3ヵ月どころか、スピリットは6年以上も活動を続けていたのだが、2010年3月22日のコンタクトを最後に、通信が途絶えていた。

スピリットが走る地域は、赤道に近いところを走るオポチュニティに比べてやや緯度があり、そのため受ける季節変化の影響が大きい。当時スピリットは砂地に足を取られ、走行できないどころか姿勢を変えることもできず、迫り来る冬に備えて太陽電池を適切な方向へむけることができずにいた。このための電力低下が懸念されていたが、それが現実のものとなり、10年3月22日をもってコンタクトが取れなくなったのであった。

かの地に春が戻り、太陽光量が増しつつあった昨年秋頃よりコンタクトの試みが開始されたが、応答なしの状態が続いていた。NASAは現地での夏至を越えた今でも交信が回復しないことなどを踏まえて、今後の試みを断念したようである。

なお、オポチュニティの方は今でも元気に走り続けている。詳しくはこちらへ【NASA 05.24】

…スピリット、お疲れさまでした。

<追加情報 08.18. 2010>

越冬を続けてきたNASAの火星探査車「スピリット」からの応答は、未だ得られずの状態が続いています。

身動きの取れなくなったスピリットは車体を適切な方向へ向けることができなかったため、ただでさえ日射量が少ない冬の間の太陽電池発電量が下限を切り、セーフモードに落ちていると考えられています。"考えられている"というのも、まだ生きているのか、ヒーターも機能しなくなり低温で破壊されてしまっているのか、正確なところは誰にもわからない状態なのです。

現在、春を迎えつつあるかの地には太陽光が戻りつつあり、スピリットが正常の場合、予測では既に機能を回復していることになっています。ただその場合でも、自らシグナルを発するのではなく地球からの信号を待ち続ける状態です。

予定では、火星上で昼の間、1時間当たり20分間の受信モードに入っているはずです。ただ、冬の間に内部時計もおかしくなってしまっていたら、もはやスピリットには昼夜はわかりませんから、どのタイミングで受信モードに入っているか管制部にも判断がつきません。そのため、複数のコマンドを、スピリットが起きているであろうタイミングを推察して打ち続けています。もしこのコマンドをスピリットが拾ったら、すぐリスポンスをするよう、命令が組み込んであります。

詳しくはこちらへ【NASA 08.18】

<追加情報 07.31. 2010>

火星探査車スピリットとの交信回復の可能性が小さいかも知れない。

スピリットは砂地に車輪を取られ身動きが出来ない状態で、定点観測を続けてきた。かの地は昨年末に冬に入ったが、車体が動かせないため太陽電池パネルを適切な方向に向けて備えることができなかった(下は昨年11月24日、前方ハザードカメラで撮影された一枚。左前輪が殆ど埋まってしまっている)。

    

そのため、低下する電力に耐えきれず、今年3月22日に最後の交信が行われて以降、現在まで不通の状態にある。車はバッテリーなどヴァイタルパートのみを保温する冬眠モードの状態に置かれており、春が来て電力が回復したらシグナルを発するように指示がされていた。

現在春を迎え、理論的には今月23日頃には交信可能まで電力が回復しているはずという。26日より、こちらからコマンドをうち、それに対する応答がないか繰り返されているが、まだ反応がない。

シミュレーションでは乗り切れるはずということになっているというが、なにせ未知の領域であり、可能性の厳しさも理解されている。来年3月に夏至を迎えるが、それまでに応答がなければ、以後の復活は絶望的ということになる。詳しくはこちらへ【NASA 07.30】

<追加情報 04.09. 2010>

2008年に火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が、大規模な雪崩の様子を撮影し話題になりましたが、先頃、再び雪崩が撮影されました。これは2008年の観測を分析し条件を把握、タイミングを狙って撮影されたもの。お見事!
 

大きいサイズはこちらへ【photo: NASA】

<追加情報 03.31. 2010>

先日、火星探査車「スピリット」が近いうちに冬眠モードに落ちるだろうと報じられていましたが、ついに落ちたようです。直近では30日にコンタクトが図られましたが、無反応だったそうです。

スピリットのいる場所は冬に向かいつつあり、太陽電池発電量が低下しています。探査車は自己を保全するため、ヒーターとバッテリー温存のために、ヴァイタルパート以外の装置をオフに落としています。こうしてじっと耐え続け、バッテリー充電量が充分になった時には地球とコンタクトを取ろうとします。

今後、ヴァイタルパートも温度が下がり始めますが、設計の耐性下限を下回ることはないそうです。ただこれは新品車の場合であって、運用7年目の同車の劣化がどのくらい進んでいるかにもよります。なんとか乗り切って欲しいですね。詳しくはこちらへ【NASA 03.31】

<追加情報 03.25. 2010>

NASAの火星探査車「オポチュニティ」が24日、走行距離20キロを突破した。

この日、67メートルを走行、通算距離20.0433キロに達した。同車は2004年1月に到着、もともと3ヵ月間・600メートルの運用予定であったが、現在7年目の運用真っ直中である。

ところで、姉妹車「スピリット」は走行を断念し、定点運用が続けられている。かの地は迫り来る冬のために太陽電池発電量も低下を続け、現在は週1回の交信が行われるなど限定的な運用が実施されている。

スピリットは間もなく冬眠モードに落ち、数ヶ月間交信が途絶える可能性があるという。詳しくはこちらへ【NASA 03.24】

下の記事で、オポチュニティがクレーターから飛び出したと思われる岩石を探査標的に定めたとご紹介しましたが、現在同車は小さなクレーターの傍を探査中です。下の画像は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)が撮影したもので、オポチュニティが写っています。

 

“コンセプシオン”と呼ばれているこのクレーターの直径は10メートル。できてまだそう長くないと考えられ、飛び散った土砂が周囲に散っているのもよくわかります。詳しくはこちらへ【NASA 03.24】

<追加情報 03.25. 2010>

火星面で7年目の活動を継続中のNASAの火星探査車「オポチュニティ」に、新しいソフトウェアが組み込まれた。これは、調査すべき価値のありそうな岩石を自分で判断するというものである。

オポチュニティは、まず広角ナビゲーションカメラで撮影した画像をチェックし、形や色など予め仕込まれておいた判断基準に照らし合わせ、それに合う岩石を選別する。続いてナローアングルカメラでそれに迫り、各種フィルターを通した撮影を実行する。

このシステムは“AEGIS”(Autonomous Exploration for Gathering Increased Science)と呼ばれている。

下は、このソフトで初めて抽出されたターゲットである。フットボールサイズで日焼けした色、層状の模様をなした表面のそれは、近隣のクレーターから飛び出したもののようであるという。オポチュニティは今月4日、ワイドアングルカメラで撮影した視野の中に存在する50を超える岩の中から、条件に最も合ったこれを選択したのであり、まさに運用チームが狙っているような対象であったという。
  

このシステムの開発には数年がかかったといい、これにより、見落としがちな対象を識別できるものと期待されている。詳しくはこちらへ【NASA 03.23】

<追加情報 03.10. 2010>

太古の昔に刻まれた火星の“河床”地形は流水ではなく、溶岩流で形成されたとする最新の研究成果が発表された。

地球の水辺周辺には峡谷や扇状地のような地形が見られるが、火星でも類似した地形が以前から確認されていた。水の存在は生命誕生の必須条件である。火星で生命の痕跡を探すなら、かつての水の存在を想起させる地形を調べるのが最適だと考えられてきた。

火星の火山地帯の1つ、タルシス高地にはアスクラエウスという火山がある。近くには全長270キロの河床が走っているが、最新の高解像度画像によると水の浸食で形成された地形ではない可能性が出てきたのだ。

アメリカのメリーランド州グリーンベルトにあるNASAゴダード宇宙飛行センターの職員で、今回の研究の共著者であるジェイコブ・ブリーチャー氏は次のように話す。「流水が地表を削ったのではなく、数百万年前に溶岩流が固まり、最高40メートルの尾根が形成されたようだ」。

この河床地形は所々が天蓋で覆われているほか、溶岩洞によく見られる噴出口が流れに沿って並んでいる。地球の溶岩洞は、度重なる噴火活動による溶岩流出が長く続くうちに形成される。溶岩流の表面は早期に冷えて固まるが、内部は冷え切らずに流れ続け、その流路が空洞となって残るのである。

ブリーチャー氏は次のように解説する。「地球の川沿いにはないが、火山周辺では必ず見られる地形だ。この河床が溶岩流で形成された動かぬ証拠である。しかし、かつての水の存在が否定されたわけではない」。

ただし、水の存在時期や場所については再考が必要になるだろう。続きはこちらへ【ナショナルジオグラフィクス 03.10】

<追加情報 03.04. 2010>

火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」による4日の衛星フォボスへの接近は成功しました。表面からの最接近距離は67キロで、これは史上最近。ただし撮影よりも電波伝搬を利用した観測に力が入れられ、このデータを基にして内部の組成などを詳しく推測する予定とのことです。詳しくはこちらへ【ESA 03.04】

<追加情報 01.28. 2010>

先日6年目の活動に入り、砂地で身動きが取れなくなっていたNASAの火星探査車「スピリット」について、今後は定点観測を行うことを運用チームは決定した。

度々報じられているように、スピリットは昨年の春より砂地に足を取られて身動きができない状態が続いていた。最近では6輪のうち右前輪と右後輪の2輪が動かなくなり、車体の沈下も進むなど、苦しい状態が続いていた。(下・今月23日、フロントハズカムで撮影された一枚。左前輪は深く埋まってしまい、タイヤと砂の境目がパッと見わからない。最近、車体全体が更に3センチ沈んでいることも判明…)

            

他の機能は生きており、定点観測点として今後の運用を続けることが決められたという。かの地は現在秋中盤を迎えており、太陽高度も減少を続けている。5月には冬に入るが、越冬に備え今のうちに太陽電池パネルを適切な方角に向けておかなければならない。

運用チームの現在の最優先は、車体を傾けてパネルを北側へ向けることである(スピリットは南半球で活動しているので太陽は北の空に輝く)。現在のままでは2月中旬に電力不足に陥ると見込まれている。

思いの方向へ少しでも動かすことができれば、発電量は大きく違ってくるという。場合によっては、ロボットアームを利用して地面を掘ることで車体を動かす手法もありうるとのこと。詳しくはこちらへ【NASA 01.27】

<追加情報 01.03. 2010>

アメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「スピリット」(MER-A)が米東部標準時3日(日本時間4日)、火星へ着陸して丸6年を迎える。

NASAは火星面を移動しながら探査する無人探査車として、2003年6月と7月に同型のローバー「スピリット」(MER-A)と「オポチュニティ」(MER-B)を打ち上げた。先に打ち上げられたスピリットは2004年1月3日、火星への軟着陸に成功、その3週間後の25日にオポチュニティも軟着陸に成功した。

続きはこちらへ【sorae.jp 01.03】

<追加情報 12.25. 2009>

先日、機能停止していたと思われていた右前輪が動いて騒ぎになったNASAの火星探査車「スピリット」について、19日(Sol 2120)、走行コマンドが送信されたが、期待の右前輪は2度動いただけで、右後輪は全く反応しなかったという。

一方、残りの4輪はきちんと動き、“10メートル走行せよ”の指示に従った。ただもちろん、10メートルの走行はせず、スリップしただけで目立った移動はしなかったという。

ところで、スピリットの救出活動には時効がある。というのも、かの地には冬が迫っているからだ。10月に秋分を迎え、日照時間が短くなりつつあり、しかも太陽電池の向きが具合悪い。陽当たりのいいように北側に向けて冬を迎えたいところだが、砂地に車輪を取られて身動きが困難な状態だ。しかもその電池パネルの上には砂が積もっており、パネルは全力発電がそもそもできていない。

これまでスピリットは3度の冬を乗り越えてきた。厳冬期には電力危機に度々襲われ、交信自体を減らしての電力温存が図られてきた。

運用チームは、今のままで探査車が冬を乗り越える可能性は小さいと考えている。「今こそ、行動を起こすべき時です。なぜなら行動するエネルギーがあるからです」と語るのは、火星探査車プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。「時間が経ちすぎたら、選択肢はますます少なくなります」と続ける。

冬至は来年5月13日。カラス氏によると、3月以降、越冬問題が深刻になってくるという。詳しくはこちらこちらへ【Spaceflight Now/NASA 12.16】

<追加情報 12.18. 2009>

欧州宇宙機構(ESA)委員会は17日、同機構の描く火星探査計画「エクソマーズ」(ExoMars)にゴーサインを出した。この計画は、2016年と18年にNASAと共同で行う火星探査である。

この計画の目的は、火星環境、特に生命の存在に関する調査と、2020年代に予定している火星サンプルリターンミッションにむけた新技術の開発と実証であるという。

2016年と18年それぞれに行われる探査ミッション、前者は周回機と着陸機を飛ばし、後者では2台の探査車を走らせるというものである(下・計画の全体像)。

            

この計画には、ESA18ヶ国のうち13ヶ国が参画する。詳しくはこちらへ【ESA 12.18】

<追加情報 12.15. 2009>

奇跡が!?2006年に動かなくなった火星探査車「スピリット」の右前輪が、先日のテストで僅かに動いたことがわかった(下)。NASAが発表した。

            

スピリットは既報のように、砂地に足をとられ動けない状態が続いており、慎重な脱出オペレーションが続けられている。今月12日(Sol 2013)、車輪のテストが行われたが、2週間前に動かなくなった右後輪は相変わらず全く反応を示さなかったものの、06年3月13日に動かなくなって以来そのままだった右前輪が微かに動きをみせた。しかも抵抗値は正常だったという。

今回はモーターの抵抗値をチェックするテストであり、各車輪の僅かな動きは予期されていたが、右前輪は全く動かないものと思われていた。この車輪のチェックが最後に行われたのは作動しなくなった直後のことで、検出された高い抵抗値はモーターの断線と理解されていた。

15日には走行コマンドが送信される。この実行により、右前輪&後輪の状態がより詳しく調べられるという。詳しくはこちらへ【NASA 12.15】

<追加情報 12.11. 2009>

火星は小さい2個の衛星「フォボス」と「ダイモス」を持つ。これらは火星を周回する探査機により高解像度画像が取得されているが、先頃、2つ同時にフレームの中に撮影された。これは初めてのことである。

下がそうで、欧州宇宙機構(ESA)の周回探査機「マーズ・エクスプレス」が撮影した一枚。手前がフォボス。連続撮影を実行し、それをつなげることによる動画も作成されている。
            

これはビジュアル的なインパクトのみならず、学術的にも意味がある。衛星の軌道モデルをより洗練するための貴重なデータとなるのである。撮影は11月5日で、1分半の間に連続撮影が行われた。この時、フォボスは探査機から11800キロ、ダイモスは26200キロの距離にあった。

            

(上は各々の軌道。内側の軌道を周回する衛星がフォボスで、外側がダイモス。エクスプレスは南北に楕円を描いて周回している。)

動画と詳細はこちらへ【ESA 12.11】

砂地に足を取られ身動きが困難になっている火星探査車「スピリット」について。ジェット推進研究所(JPL)の運用チームによる救出活動が続けられているが、先月末より一層困難な状況に陥っている。というのも、右後輪の動きがかなり悪化しているのだ。

スピリットそれに姉妹車のオポチュニティは六輪車(下)。スピリットは2006年に右前輪モーターが動かなくなり、それ以来、この輪を引きずる格好、いうなら“バック前進”で走行を続けてきた。そうして今年春に深い砂地に入り込み、動けなくなってしまったのであったが、本格的な救出オペレーションに入ろうとした先月末、右後輪が動かなくなる事態が発生した。

              

先月21日、JPLのチームは走行コマンドを送り、スピリットはそれを実行したが、右後輪が動いていないことが判明。3日後のテストでは回復が認められたものの、28日には再び動かなくなった。運用チームによると、28日の現象は、21日のものとは様子が違ったという。今月8日にモーターの電気抵抗をチェックしたところ、それまでにない高い数値を示したという。

また、スピリットの電力低下も今後の懸念事項となってくる。時々傍を通るつむじ風が太陽電池に積もった砂をいい具合に吹き飛ばしてくれるのだが、オポチュニティと対照的にスピリットはその頻度が少ない。したがってそもそも発電量の低迷は著しかったのだが、季節は10月に秋分を迎え、今は日照時間も減少に向かいつつある。これまでのスピリットは、太陽電池パネルを陽当たりのよい北側へ向けて冬を越すことができたが(スピリットは南半球にある)、今回は難しい。運用チームは残りの車輪を動かして、車体をうまく傾けることができないか挑戦するようである。

詳しくはこちらへ【photo: Mars Rovers】

…先月の中旬には、左中央の車輪も一時的に動かなくなることがありました。21日の時点では、右後輪の不具合も左中央のケースと同じ類のものとチームは思ったようですが、28日にはいよいよ動かなくなってしまったようです。2006年の右前輪停止の時も電気抵抗が跳ね上がりましたが、これはモーターの断線を意味しているのだろうと考えられています。今回の右後輪も、モーターが断線したのか…?

今後の予定としては、高い電圧をかけて、振る舞いを見るようです。

<追加情報 11.13. 2009>

NASAは、火星で砂地にはまって身動きが取れなくなっている火星探査車「スピリット」の脱出を、16日から試みることを発表した。13日早朝(日本時)、NASAが発表した。

スピリットは今年4月23日より、「トロイ」と運用チームが呼んでいる場所で立ち往生している。その直前までは順調に走行を続けていたが、この一帯の砂地が深く柔らかく、車輪も空回りするようになって抜け出せなくなってしまった。

(下・スピリットのこれまでの走行ルート。「ホームプレート」と呼ばれる丘の周囲を走行してきた。)

            

このようなサンドトラップは、過去にも何度か経験し、その度に脱出してきた。しかし今回はこれまでにない厄介な砂地で、当初は楽観的だった運用チームも本腰を入れて取り組まなければならなくなったのである。ジェット推進研究所(JPL)にはトロイを模した環境が作られ、モックの探査車を実際に動かしながら、脱出手順を探る実験が続けられてきた。

            

「これは長いプロセスになりそうです。それに、試みが成功しない可能性も高いものとなりそうです」と語るのは、NASA本部で火星探査車計画を統括するDoug McCuistion氏。「最初の数週間の試行のあとでないと、スピリットが結局脱出できるのか否か判断つかない感じです。」

同探査車は6輪車であるが、最初のコマンドはそのうち5輪を前進6回転させるというものであるという。エンジニアらはひどいスリップをおこし、目に見えた前進はないものと予見している。ちなみに同車の右前輪は2006年以来、モーターの断線か何かで動かなくなっている。(下は5月初めに撮影された一枚。左の車輪には、それがまるでスポンジタイヤに見えるほどに砂がついている。かなりキメの細かい砂であるのもわかる。)

            

(下は6月に撮影された車体の下部。ロボットアームの先に取り付けられた顕微カメラでの撮影なのでピンぼけしているが、状況はよくわかる。車輪は深く埋まり、砂の一部が車底に触れている。)

            

スピリットはこの試行の翌日にデータを地球に返し、地上ではその検討が行われる。この結果次第で次の試行が行われるというやり方で、この脱出作戦が来年初めまで続けられる予定だという。詳しくはこちらへ【NASA 11.13】

<追加情報 09.25. 2009>

火星の中緯度にあるクレーターの中に、氷が発見されたそうです。

           

詳しくはこちらへ【NASA 09.24】

下の6枚の画像は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)によって撮影されたもの。各々15週間隔で撮影されたもので(上段左→右→下段左→右)、2つの青く着色された物質が徐々に消え失せていくのがわかる。

           

着色された物質は、クレーターの中の水氷。2つのクレーターは最初の画像(上段左)が撮影される前15週間以内の隕石インパクトで形成されたものと見られており、それぞれの直径は約4メートルで、深さは50センチほど。地表の下の氷が露出し、昇華していくさまと見られている。

この画像は2008年の夏に撮影されたものだが、6月4日撮影の画像にはインパクトはなく、8月10日のそれにはインパクトがあったという。

下は、2008年11月1日に撮影された画像。(公開はされていませんが)この領域も“ビフォー・アフター”が撮影されており、2008年中の隕石インパクトで生じたものということがわかっている。

            

クレーターの直径は8メートルで、周辺に飛び散った白い物質は水氷。この面積の広さがMROのスペクトロメーターで分析するには充分なもので、水氷と同定することができたという。

ちなみに火星では隕石の落下がしょっちゅう起こっており、MROでもよく見つかっている。下はその“ビフォー・アフター”の一例。

            

詳しくはこちらへ【NASA 09.24】

米航空宇宙局(NASA)の火星無人周回探査機「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」が、火星への隕石(いんせき)衝突によって地表が削られて露出した氷の撮影に成功し、NASAは25日までにその画像を公開した。

NASAは昨年、火星探査機フェニックスで高緯度に水があることを確認したが、今回氷が見つかった場所は火星の北極と赤道の中間付近。火星の赤道付近の気温は日中では20度になることもある。NASAは「予想していなかった低緯度に、氷が存在していた」としている。

MROは隕石の衝突でできた、新しい年代のクレーターを計5カ所撮影し、分光器などを使って分析を進めていた。昨年10月に撮影されたクレーター(直径6メートル、深さ1.3メートル)は、撮影時には大部分が白く覆われていた。しかし、約3カ月後の今年1月に撮影した際には、白く見える部分はほとんど消失しており、蒸発したとみられている。

アリゾナ大学のバーン准教授(惑星科学)は「氷はおそらく数千年前に、火星の気候が湿潤だった時代の名残だろう」との見方を示している。【時事 09.25】

<追加情報 09.15. 2009>

砂地に踏み込んで走行停止を余儀なくされているNASAの火星探査車「スピリット」の現状に関して、運用チームは、砂地からの脱出不可能の可能性も出てきたことを明らかにした。

プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏は「スピリットが脱出できないかもしれない可能性はとても高いものです。しかし我々は、スピリットに最善のチャンスを与えたいと思っています」と語る。

運用チームはモックアップによるテストを繰り返し、そのデータを基に数値計算を繰り返し、最善策を見出そうとしている。

            

現在のところ、今月中の脱出行動実施はないとのこと。詳しくはこちらへ【NASA 09.14】

<追加情報 09.05. 2009>

先月26日に今年4回目のシャットダウンが起こったNASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)は、現在もセーフモードの状態が続いている。

運用チームは現在、腰を据えて問題と格闘しているようである。MROのコンピュータが突然リブートしたり、バックアップに切り替わったりするような現象はこれまでもあったが、今年に入り4度も見舞われている。分析を続けているエンジニアたちは現在までに、この現象の結果で生じる脆弱性を特定、それを補強する処置を開発している最中とのこと。

MROは現在、科学観測以外の、最低限の状態を保持するモードにある。この状態はあと数週間続けられる予定とのこと。詳しくはこちらへ【NASA 09.04】

<追加情報 09.01. 2009>

砂地に足をとられ下手に身動きが取れなくなってからちょうど4ヵ月。NASAの火星探査車「スピリット」の運用チームは脱出法の模索を続けており、今月にも実行に移されると報じられているが、最近のスピリットは上空を砂嵐に見舞われているという。

スピリット(それに同型のオポチュニティ)は太陽電池をパワー源として駆動している。大気中に浮遊するダストが太陽電池パネルに堆積することでその発電量は低下するが、ときどき吹く強い風がそれを払い、回復するということを何度か繰り返していまに至っている。

オポチュニティは今年2月、発電量が220ワット時まで低下していたが、その後吹き払いが起こり、700ワット時を超える量まで回復していた。ところが8月24日(Sol 2006)、それが約半分の392ワットまで低下しているのが確認された。この5日前には722ワット時だったのだから、急激な電力低下である。

これは、スピリットのいる辺りにこのところ発生している砂嵐のため、日射量が急減したためと考えられている。砂嵐が通り過ぎたら電力はリカバリーするものとチームはみているが、注意深く観察する必要があるとしている。

(下は、スピリットの停止している場所(“トロイ”と呼ばれている)のパノラマ写真の一部。今年5月14日から6月20日までに取得された画像を合成して作成されたもの。全体と詳細はこちらへ)

            

詳しくはこちらへ【Spirit 08.25】

<追加情報 08.29. 2009>

情報がでましたね!

29日付の中国紙、北京青年報は中国初の火星探査機「蛍火1号」が10月6〜16日にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられるとの見通しを伝えた。ロシアの探査機とともにロシア側のロケットで打ち上げられるため、現在はモスクワに運ばれて最終調整中という。

打ち上げ後は約10カ月、宇宙を飛行。来年8月にロシア側探査機と切り離されて火星を回る楕円(だえん)軌道に入り、探査活動を行うことになる。【共同 08.29】

<追加情報 08.25. 2009>

砂地にはまって動けなくなっているNASAの火星探査車「スピリット」の脱出法を検討している運用チームは、現在テストで用いているモックとは別のそれをテストに投入した。

この、もう一台のモックは、科学機器もロボットアームも搭載していない。それゆえ実際よりも重量が軽いことになるが、そもそも重力が地球より小さい火星ではむしろこちらのほうが現状に近いと考えることもできる。

            

だいたい、火星でスピリットが置かれている状況とまったく同じ状態を実験室で再現することはできない。火星の重力は地球の5分の2であれば大気も違うし、砂地は極端に乾燥している。しかしベストを尽くすべく運用チームはこのモックを用いた実験に臨み、その結果はベストな手法を導くのに最大限活用されることになろう。詳しくはこちらへ【NASA 08.21】

<追加情報 08.18. 2009>

18日、NASAの火星探査車「スピリット」が2000火星日(Sol 2000)を迎えた。

もともとこの探査車ミッションはSol 90を想定して練られたものだったが、実にその22倍以上の期間、運用されているのである。ちなみに姉妹車「オポチュニティ」は来月8日にSol 2000を迎える。

スピリットは2004年1月から火星を走行し、現在までに4.8マイル(約7.7キロ)を走行。一方のオポチュニティは10.7マイル(約17.2キロ)を走行している。(下・スピリットの現在までの全行程)

            

なお、1火星日は地球の1日より約40分長い。詳しくはこちらへ【NASA 08.18】

<追加情報 08.17. 2009>

下は、今年1月29日(Sol 1783)、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)によって取得された火星探査車「オポチュニティ」の姿。オポチュニティは前日から130メートルを走破し、そのわだちもしっかりと写っている(車体から右上にかけて)。

           

砂のリップルが無数に走っているが、大した規模ではないので、探査車は楽に走行している。大きいサイズなどはこちらへ【photo: HiRISE】

<追加情報 08.01. 2009>

火星上で活動する2台の火星探査車のうち、順調に行動を続けている「オポチュニティ」は先日、隕石と思われる物体に出くわしました。

運用チームがこれに気づいたのは先月18日のこと。車体後方・250メートル先に転がっており、これを調査すべく引き返してきました。下は先月28日(Sol 1959)、フロントハズカムで撮影された一枚(大きいサイズ)。

            

下は同日、ナブカムで撮影された一枚。上の写真でもよくわかりますが、静かにちょこんと置かれたような感じです。下は硬い岩盤が広がっているような…(大きいサイズ

            

下は、オポチュニティのわだち。7月19日に撮影されたもの。同車は次の目標「エンデバー・クレーター」を目ざしてひたすら走り続けています(大サイズ)。

            

【photo: NASA】

<追加情報 07.31. 2009>

砂地に足を取られ動けなくなっているNASAの火星探査車「スピリット」について、ジェット推進研究所では脱出法の模索が続いています。幾つかの方法がサンドボックスの中で試されていますが、おおよそメドがつきつつあるようで、早ければ8月上旬から実際の脱出マニューバを始めるとのことです。

            

ただひとつ気になるのは、ちょっとした規模の砂嵐が発生しつつあること、とのこと。今のところスピリットのいる場所に影響はないとのことですが、運用チームは注意深く見守っているそうです。詳しくはこちらへ【NASA 07.30】

<追加情報 07.15. 2009>

下は、火星探査車「スピリット」が今年5月27日(Sol 1919)に取得したカラーパノラマ画像の一部。ダストデビル(つむじ風)がカラフルで、ちょっとした作品ですね。

            

カラーは、3種類の波長で取得された画像を合成して作成されますが、それぞれの波長フィルターに切り替える際にタイムラグがあり、その間にデビルが移動するため、合成するとカラフルなデビルが並んだように出来上がります。モノクロの3枚は各波長毎に撮影されたものに強調をかけたものですが、トップのカラーはこれらを合成したものです。

大きいサイズはこちらへ【NASA 07.14】

<追加情報 07.12. 2009>

下は、NASAが2011年に打ち上げを予定している火星探査車「キュリオシティ」で使用される耐熱シールド。ロッキードマーチン社が製造を請け負っていますが、製作とテストが完了し、先月開催されたパリ航空ショーで公開されました。

探査車は2枚貝構造のシールドに覆われて火星に向かいますが、写真はその下半分(フロント側)で、3800℃に達する高温に耐えるべく、PICAという素材が使用されています。ちなみに上半分(バックシェル)は昨年10月に完成しています。

            

それにしても大きいですね…空前のサイズで、直径は4.5メートル。ちなみにアポロの耐熱シールドが4.3メートルで、現在稼働中の火星探査車の場合は3メートル弱しかありませんでした。詳しくはこちらへ【Lockheed Martin】

ところで先日、キュリオシティ開発の進捗状況が報告されました。新たな技術的問題点なども明らかになったようで(報告シート)、気になる点を抜粋しますと…

            

○現在の電力設計では不足が生じる。追加のバッテリーを搭載するか、もしくは太陽電池を必要とする可能性もある。(アクチュエーターの温度をキープするために追加電力を要し、また、一部の科学機器では倍の消費電力を要することが判明)

○予算については、追加を4億ドル前後に押さえる必要があるが、予備費が容認できないほど低い(対実行費13%程度)。複数の試算モデルに基づくと、充分な予備(15M〜115Mドル)を満たすための追加資金が必要となる。

○資金捻出に伴う他への影響は、NASA惑星探査部内に留めるべし。このため、「火星探査計画に関する10年度および11年度の調整基金を減額ないし撤廃」、「ESAと合同で実行を計画している2016、18、20年の探査計画について、NASA負担分を減らす」、「将来のディスカバリーないしニューフロンティア計画を減らす」というものから、「月探査計画LADEEおよびILN(共に2018年)の先送り」といったものまでが考えられる。

○今月末までに議会に提出されるコスト関連の数値は、開発費16億3100万ドル(68%のオーバーラン)、プロジェクト総費用22億8600万ドル。

…など。詳しくはこちらへ【Spaceref 07.10】

…ESAとNASAの協力も明らかとなりましたが、早くもなかなか厳しい状況ですね。電力不足…太陽電池追加の可能性ですか。。

<追加情報 07.06. 2009>

ジェット推進研究所(JPL)では、スピリット脱出テストが続いています(下)。

           

…かなり埋まってますね。。大きいサイズはこちらへ【NASA 07.06】

<追加情報 07.02. 2009>

NASA火星探査車「スピリット」の脱出へ向けたテストが始まりました!

            

            

…JPLサイト内に特設サイト(“FreeSpirit”)が設けられているのに、意気込みを感じます^^

<追加情報 06.27. 2009>

NASAの火星探査車「スピリット」は、4月から砂地に足場をとられて身動きできない状態が続いているが、その後の詳しい調査で、土壌の特徴がこれまで踏み込んだことのないようなものであることが明らかとなった。

スピリットが砂地にはまることはこれまでも度々あったが、今回はかなりの難敵であることがわかっている。車輪を動かすとなおさら車体が潜り込み、既に車底の一部が砂地についているようでもある。

             

車輪が掘り出した土壌を分析した結果、踏み込んだ場所は三層以上の構造からなることがわかったという。科学分析器運用チームの副責任者であるレイ・アービッドソン氏は「層は玄武岩質の砂、硫酸塩リッチの砂およびケイ素リッチなそれから成ります。恐らく風と水の作用で出来上がったものでしょうけど、仮説の段階です」と語る。

これまでに得られたデータから運用チームは各種物質を調合し、火星と同じ状態の土壌を再現、探査車の脱出法の検討を始める(下・大量の材料が準備され、ミキサーで調合されます)。

             
             

詳しくはこちらへ【NASA 06.25】

<追加情報 06.24. 2009>

2005年に米航空宇宙局(NASA)の火星探査機が水の痕跡を見つけた二つのクレーターのうちの一つが、08年に大崎市鳴子温泉にちなんで「Naruko」と命名されたクレーターであることが23日、分かった。NASAの資料を分析した大崎生涯学習センター(大崎市)は、「クレーターから水が出たことが、命名の決め手になったようだ」と喜んでいる。

クレーターの水は、最近流れた痕跡を見せている。探査機による観測で発見され、06年に米科学誌サイエンスに発表された。生涯学習センターは、火星のクレーターの命名に詳しい広島県の天文家佐藤健氏からの指摘で、NASAのホームページを閲覧し、水の痕跡があるクレーターとNarukoが同じであることを確認した。

生涯学習センターによると、佐藤氏が、クレーターを命名した国際天文学連合(IAU)に問い合わせたところ「クレーターに地下水流出で作られたと思われる溝があるとのリポートがあり、温泉で知られる鳴子の名の命名は適切と考えた」などとする回答を得たという。

火星の小さなクレーターは世界の人口10万人未満の町名が選ばれるという。無作為に抽出した候補から地理的、国家的、文化的な要素を考慮して命名される。

生涯学習センター振興係長で、プラネタリウム担当の遊佐徹さん(43)は「水温は不明だが、火星にNarukoの温泉がわいたかもしれないと考えると、非常に興味深い」と話している。【河北新報 06.24】

<追加情報 06.22. 2009>

火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」の軌道変更マニューバが終了したそうです。

マーズ・オデッセイ運用チームは昨年9月以来、軌道の僅かな変更作業を続けてきた。2001年の火星周回開始以来、太陽同期軌道を飛行するオデッセイは、その直下が午後5時になるようになっていた。これは搭載されているガンマ線センサーが安定して機能するために必要な措置だったが(強い照り返しに弱い)、同センサーの運用は打ち切られた。このため、運用継続中の赤外線センサーがより高感度に直下の放射を拾えるよう、真下がお昼過ぎになるように軌道の調整が行われたのである。

昨年9月30日、スラスター噴射で軌道がドリフトするように仕向け、オデッセイは自然に軌道をずらしてきた。それから約9ヵ月後の今月9日、再度スラスターを噴射しドリフトを停止、軌道を確定した。これにより、直下の時刻は午後3時45分頃になった。

オデッセイは今後もさらなる運用が続けられ、2012年のマーズ・サイエンス・ラボラトリーあらため「キュリオシティ」でも通信リレーで活躍する見込み。詳しくはこちらへ【NASA 06.22】

<追加情報 06.04. 2009>

下は、足を取られて走行を停止している火星探査車「スピリット」の底。これはロボットアームの先にある顕微カメラで取得されたモザイク画像をつなぎ合わせて作られたもの。

            

このカメラは顕微鏡使用が主目的であり、フォーカスが合わずぼやけているが、車底の状態を知るには充分である。大きいサイズはこちらへ【NASA 06.03】

…車輪が半分以上埋まり、砂の一部が車体に接してますね。。

<追加情報 05.29 2009>

ロボットアームを三脚としてつかって、砂地から脱出してはどうか…砂にめり込み身動きが思うように取れなくなっているNASAの火星探査車「スピリット」の脱出法を提案する書いた手紙が、NASAジェット推進研究所(JPL)に届いた。

この手紙を差し出したのは7才のジュリアン君。「私たちはみなさんから沢山の提案を受けています。このことはローバーに対する関心の高さを象徴しているでしょう」と語るのは、プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。カラス氏によると、実際にロボットアームを使用した脱出法を検討しているとのことだが、ジュリアン君のやり方とは少々異なるとのこと。

詳しくはこちらへ【UniversToday 05.29】

<追加情報 05.27 2009>

NASAは27日、2011年に打上が予定されている火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)の名前に、「キュアリアサティ」(好奇心)と命名した。

この名前はカンザス州の小学生クララ・マさんが提案したもので、「好奇心は、誰の心にも燃え上がる永遠の炎。それは心を駆り立てるパッション」とウィニングエッセイに添えている。詳しくはこちらへ【NASA 05.27】

<追加情報 05.25 2009>

下は、NASAジェット推進研究所(JPL)の職員が模擬地面を準備しているところ。火星探査車「スピリット」の今後の走行方針を考える上で重要な実験が行われるところである。

              

先日も報じられたが、スピリットは今なお走行停止の状態にある。砂地に足を取られたためで、同型車「オポチュニティ」や上のような実験施設などを駆使しながら、今後の走行プランを構築しているところだという。

この“救出作戦”には周回探査機「マーズ・オデッセイ」も使用される。探査車は地球とのダイレクト交信が可能だが、オデッセイを経由した交信も利用することで、頻度を上げた運用態勢に入っている。

このようなことは過去5年以上の運用中幾度かあったが、今回は特に慎重が期されている。というのも車輪が沈み、車体が地面に接地してしまう可能性があるからだ。詳しくはこちらへ【JPL 05.18】

<追加情報 05.12 2009>

火星で5年以上も活動を続けているNASAの火星探査車「スピリット」が、砂地に足を取られ身動きが困難な状況に陥っている。

このようなことはこれまでにも何度かあったが、今回は相当軟らかく深い砂地のようで、慎重な運用を強いられているという。(下・今月6日に取得された画像。足をとられて既に2週間以上が経過している。左の車輪は砂に埋まり溝は詰まり、まるでスポンジタイヤ)

            

スピリットの右前輪はモーターが3年前に故障しており、5輪で(リアを前にして)右前輪を引きずる格好で走行を続けてきた。上の画像はフロントハズカムで撮影されたものだが、視野にはここまで走ってきたわだちが見えている。(何度も車体を前後させたのでしょうか、駆動輪(左)側が深く埋もれています@管理人)

運用チームは現在、JPLの実験室で同じような状況を再現し、モックアップで脱出法を探っている。「スピリットは非常に難しい局面にあります」と語るのは、プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。組織的かつ注意深く物事は進められており、スピリットを再び動かすのは数週間後になるだろうと語っている。

詳しくはこちらへ【NASA 05.11】

<追加情報 04.28 2009>

下は、火星探査車「スピリット」が今月8日(Sol 1871)に撮影した風景。目の前に見える“山”は運用チームに「フォン・ブラウン」と呼ばれている(もちろん非公式の名称)。

            

このところトラブルが伝えられていたスピリットであるが、現在は特に問題なく走行を続けている。「フォン・ブラウン」までの距離は約160メートルで、今後数ヶ月内のターゲットとされている。詳しくはこちらへ【NASA 04.23】

<追加情報 04.26 2009>

ロシアが開発を進めている月探査機「ルナ・グロブ」は2012年の打ち上げが予定されているが、それが難しい状況にあることが明らかとなった。ハードウェアの開発状況と予算の問題があるという。

合わせて、今年10月の打ち上げが予定されている「フォボス・グラント」も、遅延が避けられない状況が迫っているようである。

ルナ・グロブはロシアが33年ぶりに月へ向けて打ち上げる探査機となる。ペネトレーターを8本搭載し、さらに球形の軟着陸機も搭載する予定となっている(下)。

 

ペネトレーターには地震計が搭載されている。地震を観測することで内部構造を詳しく把握することが可能となる。

今年5月から6月にかけて、ロシア政府と開発担当のラボーチキン社との間で、ミッションの精査が行われることになっているが、それに先駆けて流れてくる情報によると、何らかのハードウェアの開発で困難に直面しているようである。2012年のタイムラインを守るためには、ペネトレーター&ランダーの仕様変更もあり得ることが示唆されている。

一方、火星の衛星「フォボス」のサンプルを採取し持ち帰るという「フォボス・グラント」も遅れが出ているという。どうやら遅延は不可避の状態にあるようで、次のロンチウィンドウである2011年末〜12年初めにずれ込むことになりそうである。

「このフォボス・グラントは政治的圧力の高いミッションのため、担当者らは最後のギリギリの段階で遅延を認め、詳細は闇の中ということになるのではないか」と関係者は語っている。詳しくはこちらへ【Spaceflight Now 04.26】

<追加情報 04.14 2009>

2011年に打ち上げが予定されているNASAの火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)。現在、探査車本体と周辺コンポネンツの開発が進められているが、下はパラシュートの展開実験。MSLの開発にあたり、パラシュートは難題のひとつであるが、このテストでは完璧に展開しているのがわかる。

試験はNASAエームズ宇宙センターが有する、世界最大の風洞で実行された。風洞は高さ24メートル、幅37メートルで、737ジャンボがスッポリ入るほどの空間である。

            

このパラシュートは地球外で使用されるものとしては過去最大のサイズ。パイオニア・エアロスペース社製で直径は16メートル。長さ50メートルを超えるサスペンションは80本、これがマッハ2.2の時に展開するのだが、ドラッグフォースはざっと65000ポンド。詳しくはこちらへ【NASA 04.14】

<追加情報 04.16 2009>

NASAの火星探査車「スピリット」が先週末、地球との交信の際に不安定な状態になり、コンピュータの1つがリセットするという行動を起こしていたことが明らかとなった。

これは、先週金曜(10日)から日曜(12日)にかけて行われた交信において、数回の交信セッションでイレギュラーが生じたというもの。この不安定な行動はどれもハイゲインアンテナを使用する場合に一致しており、これが絡んでいると思われているが、はっきりとした原因はまだわかっていない。

スピリットには3つの交信手段があり、ひとつは地球を向く小型高利得パラボラアンテナによる直接交信、ひとつは無指向性の固定アンテナによる低速直接交信、そしてもうひとつは別のUHF帯送受信機を用いた、火星周回機を経由しての中継交信である。

この現象の原因がわかるまで、UHF中継交信か低速交信を使用することも検討されているという。

先頃ソフトウェアのアップデートが行われたが、それに原因がある可能性も考えられているが、同型車「オポチュニティ」にもそれは使用され何ら問題が生じていないため、可能性は低いと考えられている。

「古くなっていく車体を走らせているという現実を意識しています」と語るのは、火星探査車プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。「何らかの経年効果があるのかも知れません。」

詳しくはこちらへ【JPL 04.13】

<追加情報 02.17 2009>

太陽電池発電量がギリギリ直前だったNASAの火星探査車「スピリット」のそれが、最近大きく戻したことが明らかとなった。

スピリットや同型のオポチュニティは太陽電池で駆動しているが、積もる砂塵のために発電量が低下している。それはしばしば吹き付ける強い風で吹き飛ばされるが、スピリットの場合、過去1年半そのような幸運に見舞われず、電力レベルがピンチになっていた。実際、昨年11月には砂嵐で更に電力が低下、地球との交信も制限するというサバイバルを経験している。

最新の数値によると、スピリットの発電量は210ワット時まで低下していたが、それが240ワット時まで回復しているという。活動と交信を維持するためのボーダーラインが180ワット時であり、今回の回復を運用チームは非常に喜んでいる。詳しくはこちらへ【NASA 02.12】

<追加情報 01.29 2009>

2004年1月から5年以上稼働を続けているNASAの2台の火星探査車のうち「スピリット」が今週初め、地球の指示からずれた行動を示した。現在は通常通りの行動を続けているが、管制チームはこれからテストコマンドを送り、原因を探ることにしている。

             

ちょうど1800火星日を迎えた今月25日、スピリットから送られてきたテレメトリーによると、同車は地球からの走行コマンドを受信したものの、走っていないことが判明した。原因はいくつか考えられ、例えば走行態勢に入っていなかったということが挙げられる。しかしこの日は、主要な行動記録をメモリーに保存していなかったなど、普段からすると不可解な現象が生じていた。

26日には、翌27日に太陽をカメラで捕捉するコマンドが送信された。太陽を補足することで車体の向きを把握することができるのだが、管制チームは、スピリットが走行しなかったのは車が自身の向きを把握していなかったからではないかと考えたのである。27日、スピリットが太陽を捕捉したことが確認されたが、その結果、車体の向きは予期せぬ方向を向いていたことが判明した。

「過去数日間、スピリットがどうしてこのような行動を取ったのか満足行く説明がまだできません」と語るのは、探査車への命令を書いてチェックする担当チームの責任者であるシャロン・ローバッハ氏。「我々の次の段階は、診察をすることです」と語る。

別の理由としては、宇宙線による影響が考えられるという。27日、スピリットはきちんと非揮発性メモリー(フラッシュメモリー)を使用していた。(25日には宇宙線のいたずらで行動記録をフラッシュに書き込まなかったから残らなかった?@管理人)

ただ、現在のところ、探査車は正常に機能しているという。詳しくはこちらへ【NASA 01.28】

<追加情報 01.20 2009>

NASAが進めている火星探査計画「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)における不足予算分を、火星サンプルリターン計画および外惑星探査計画費用から回してくる案が浮上した。Spaceflight Now紙が報じた。

MSLは今年打ち上げ予定だったが、昨年末になり、それを2011年に延期すると発表したばかり。ハードウェアの開発が遅れているのが原因であるが、予算も既に大幅に超過しており、それをどこから捻出するかも問題となっていた。

MSLミッション責任者のダグ・マクイスチョン氏によると、NASA顧問委員会・惑星科学小委員会に対し、それらの予算の一部をカットしMSLに回せないか提案したという。小委員会は来月にも意見を顧問委員会に提出し、その後同委員会がNASA長官に提言する流れとなっている。

NASAは2020年以降、火星サンプルリターンを実現すべく、予算をつけ、基礎研究などを始めようとしている。一方、外惑星探査計画について今年秋にもミッションがひとつ選定される予定になっている。

なお、必要とされる追加予算の大部分は火星サンプルリターンの分から確保されるという。NASAでは任意の火星ミッションの予算が不足すると、火星探査用にプールされた資金や別の火星ミッションから回されることが慣例になっており、外惑星探査計画への影響は小さいものと見られている。秋のミッション選定も予定通り行われるようである。

ただそれ故、将来、ここではぎ取ることになる資金を補填しないと、サンプルリターンなどのミッションはそれなりに縮小される可能性が出てくる。

外惑星探査計画は2010年代後半にスタートが予定されているもので、現在、木星の衛星「エウロパ」もしくは土星の衛星「タイタン」のどちらかに周回機を飛ばすという2つが最終候補に残っている。詳しくはこちらへ【Spaceflight Now 01.20】

<追加情報 01.16. 2009>

米航空宇宙局(NASA)の研究チームは15日、火星の大気中にあるメタンが、温暖な季節になると増加するのを確認したと発表した。

地中に放出源があるとみており、「深部に微生物が生息している可能性もある」としている。

研究チームはハワイのマウナケア山頂にある大型望遠鏡で火星を観測し、メタンに特有の波長の光を確認した。火星の北半球で2003年と06年、いずれも春から夏にあたる時期に、大規模なメタン噴出が見られた。うち1か所の噴出量は1万9000トンに上っていた。

噴出は、古代に氷や流水があった痕跡の残る地域で起きており、火星の表面が凍り付いてからも長年、温かい地中で微生物が生き残ってきた可能性があるという。

メタンは、生物活動のほか、鉱物と水の化学反応など地質学的な活動でも発生する。研究チームは「どちらの活動なのか、今は分からない。火星に『これが何を意味しているのか見つけてごらん』と挑戦されているようだ」と話している。【読売 01.16】

…NASAのリリースはこちら

<追加情報 01.12. 2009>

下は火星探査車「スピリット」が撮影した、無数の画像の一枚。火星では普通に見かける何の変哲もない地表の姿だが、未だ解決されない大きな謎がある…石がどのようなプロセスで等間隔に散らばったのかという問題だ。

            

この問題に挑むアリゾナ大学のジョン・ペレティエ氏らの研究チームは、弱い風によるプロセスが可能であることを数値計算で示した。この結果は、これまでに考えられてきた可能性…その昔、強風で風下へ吹き流され散らばったという説…と真っ向対立するものである。

だが、火星では風がしょっちゅう吹いているとはいえ、大きいものでソフトボール大の石を動かすことは困難。石同士の間隔は大体5ないし7センチである。

研究チームによると、風が石に吹き付ける際、風上側の砂が吹き飛ばされ、風下側へと積もるプロセスがあり得ることが示されたという。この時、石の風上側にくぼみが出来、やがてそこへ石が転がり込む。つまり石は、風上側へごく僅かだが移動したことになる。

この過程は弱い風で充分だといい、これが5回、10回、20回と続くことで風上側への移動も実現するという。一方、石が集合した状態からスタートすると、風を正面から受ける石は前へ、集団の側面にある石は横方向へ転がり、このようにして石が展開していく様がシミュレーションで示されたという。

(左は初期状態の小石分布の一例。右はシミュレーション後の分布で、黄色は小石の後ろに溜まった砂を意味しているという。風上へ移動した石もあれば風下へ動いたそれもある。)

            

彼らは石群の初期状態を1000パターン仮定して計算を実行したが、それらの90パーセントがほぼ同じような最終状態に落ち着いたという。

詳しくはこちらへ【University of Arizona 01.09】

<追加情報 12.29. 2008>

NASAの火星探査車「スピリット」および「オポチュニティ」が1月、火星での活動開始から丸5年を迎える。(下・今年10月22日にオポチュニティが取得した画像。ひたすら走り続けます…)

            

スピリットは2004年1月3日、オポチュニティは同24日、火星着陸に成功した。もともと90日間の活動予定で設計された車体であったが、実にその20倍の期間を稼働している。着陸当時、2009年に入るまで車が動くとは、誰も思っていなかった。

「アメリカの納税者は、3ヶ月がプライムミッションだと伝えられていたのです。しかし両車はその20倍もの活動をしている。これは昨今の予算編成の難しい時代には、投資に対する並外れたリターンと言えるでしょう。」と語るのは、NASA科学ミッション部門副理事のエド・ウェイラー氏。

両車は火星の環境を考察する上で重要な発見を遂げた。25万枚に達する画像を送り、走行距離は21kmに達した。山を登り、クレーターを下り、サンドトラップに足を救われ、砂嵐を乗り切り、車輪の停止などガタが目立ちながらも、果敢に走り抜けた。そして今、新たな目標地点へ向けて走り始めている。

「この2台の車は、毎日晒されている極限の環境下で、驚くほど快活なのです」と語るのはプロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。「探査車の主要部品はいつでも故障し得、それ故ミッションの終わりは突然やってくるものと認識しています。しかし一方では、プライムミッションの4倍に相当するあと1年、走り続けることができるのかも知れません。」

探査車は太陽電池により電力が供給されている。この太陽電池に砂が積もることで発電量が低下し活動不能になると考えられてもいたが、風によりしばしば砂が吹き払われることで、発電量の回復を繰り返してきた。

だがこのクリーニングは、確実性を期待できるものではない。スピリットについてはここ18ヶ月間、吹き払いを経験していない。スピリットの発電量は低下を続けているが、最大の山場は着陸以来3度目の冬を乗り切ることだった。

「この冬は、どうなるか全く先が見えませんでした」と、カラス氏は言う。ギリギリの電力量で、地球との交信も制限された中、しかし、乗り切ることに成功した。

スピリットのいる場所は現在春であり、夏にかけて太陽高度が高くなる。運用チームは現在の場所から南へ183メートルほどの場所へ移動することを検討している。その方面には調査候補対象が2つあり、ひとつは2006年の調査を裏付けるものがありそうな場所、そしてもうひとつは、“ゴダード”と呼んでいる小さなピットだ。

「ゴダードは衝突クレーターには見えません。それはひょっとしたら火口クレーターかも知れません」と語るのは、科学観測機器担当責任者のスティーブ・スクワイヤーズ氏。

一方オポチュニティの次なる目標は、「エンデバー」クレーターだ。このクレーターの直径は22kmと、オポチュニティが最近まで調査していた「ヴィクトリア」クレーターの20倍の大きさがある。現在の場所から12km離れたところにエンデバーはあり、この距離を走破すること自体がチャレンジである。

詳しくはこちらへ【NASA 12.29】

<追加情報 12.05. 2008>

火星探査車「スピリット」(MER−A)は先月上旬から中旬にかけて大規模な砂嵐に見舞われましたが、下はその際に軌道上から撮影された画像。

             

一連の画像は周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)搭載の撮像センサー「MARCI」で取得されたもの。MARCIで撮影された画像は、火星天気予報にも力を発揮しています。

MARCI運用チームは先月上旬、スピリットの西に砂嵐が出現していることを確認、スピリット運用チームに通報しました(上の写真、砂嵐が画像左(西)から右(東)へ動いていきます)。スピリットチームはこれを受け、事態に備えることができたそうです。詳しくはこちらへ【NASA 11.20】

<追加情報 12.05. 2008>

火星の地表には周期性が明確な地層があり(下)、自転軸の傾きの長期的な変化に伴う気候変動によって形成された可能性があると、米カリフォルニア工科大などの研究チームが5日付の米科学誌サイエンスに発表した。米探査機マーズ・リコネサンス・オービターで撮影した立体的な画像を分析した成果で、地球の氷期・間氷期のようなサイクルがあったと考えられるという。

                  

研究チームは、火星の「アラビア大陸」と呼ばれる地域にある4クレーターの画像を分析。このうち1つでは、10層の細い地層で構成される大規模な地層がさらに10層以上重なっており、観測できた部分は全体として1200万年以上かかって形成されたと推定された。【時事 12.05】

…NASAのリリースはこちらへ。このような変動は地球でも確認されており、地球の場合は(火星の10層と異なり)5層といいます。成因には地軸の傾きや変動が指摘されていますが、明確な答はまだ見つかっていません。

来年の秋に打ち上げが予定されていた火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)について、NASAは日本時間5日未明、打ち上げを2年遅らせ2011年秋とする決定を下した。(下・歴代探査車の模型。MSLは右端)

            

これは、ハードウェアなどの開発が間に合わないことが理由という。詳しくはこちらへ【NASA 12.04】

<追加情報 11.21. 2008>

火星の大気の薄い原因に迫るとされる新説が提唱された。これは、「マーズ・グローバル・サーベイヤー」による観測データの分析に基づくものである。

それによると、火星の大気層は風に砂が流されるがごとく穏やかに、全体的かつ継続的に減り続けているというより、むしろ、油汚れが剥がれていくように、ちょっとした規模の局所的な塊として剥がれていく傾向が強そうだという。

数十億年前、火星には大量の水があり、それはぶ厚い大気で守られていたと考えられている。研究者の中には、大気は地球のそれよりも厚かったのではないかと考えるものもいるほどだ。しかし今日、火星には希薄な大気しか存在しない。大気圧は地球の100分の1程しか無く、水は液体で存在することができない。

ではその大気はどこへいったのか?これには幾つかの説がある。例えば巨大小惑星の衝突のショックで吹き飛ばされたというものや、太陽風によりじわじわだが確実に剥がされてきたというものである。

カリフォルニア大学バークレー校のデビッド・ブレイン氏はこのほど、その中間とも言えるメカニズムを提唱した。それは、大気がちょっとした塊の状態で剥がれていくというものである。

マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)は1998年、火星の磁場が地球のようなダイポール磁場ではなく、局所的に点在するものであることを発見した。この磁場源は主に南半球に集中し、個々の磁気圏はまるで傘のように上空に向けて広がっており、大気上層部にまで達している。

これまで、この磁場傘が大気層を太陽風から守ってきたと考えられてきた。しかしMGSのデータを分析していたブレイン氏らは、全く逆の可能性があることに気づいた。つまり、磁場のある部分ほどより多くの大気が離脱しているというわけである。(下図・左から太陽風が火星に吹き付け、大気層をはぎ取っていく。その剥がれ方は一部、油汚れが飛んでいく様に似ている。また、局所磁場の存在する部分ではより活発な飛び散りが生じていると考えられる。)

            

もちろん、これはまだ仮説の段階であって、完全にプロセスが理解されたわけではない。NASAは2013年の火星探査ミッションに「MAVEN」を先日選定したが、これは大気層を精密に観測するというもの。このミッションでは大気層の剥がれ方を研究するためのデータを取得するのが主な目的となっており、その成果が待たれるところである。詳しくはこちらへ【NASA 11.21】

<追加情報 11.20. 2008>

来秋に打ち上げが予定されており、目下、名前募集中であるNASAの火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)の着陸候補地が、4ヶ所に絞られた。この後更に検討が続き、来春の会議を経て、夏に正式決定されることになる。

MSLプロジェクトの責任者たちは今月、火星研究の専門家やローバー開発エンジニアらの意見を取り入れながら、着陸候補地を4ヶ所まで絞り込んだ。それらは「Eberswalde」(湖に流れ込む川のデルタ地帯)、「Gale」(粘土と硫酸塩を含んだ堆積層の山肌)、「Holden」(扇状地や洪水堆積を含み、恐らく湖底で粘土リッチなクレーター)、そして「Mawrth」(少なくとも2種類の粘土を含む露出層と見られる)である。(下・過去の着陸探査機と4ヶ所の候補地)

            

「4ヶ所とも火星の初期の環境の変遷を調べるのに非常に適した場所となるでしょう」と語るのは、MSLプロジェクト研究員のジョン・グロジンガー氏。候補地は火星周回機「マーズ・リコネッサンス・オービター」による高解像度画像や他の観測データを基に続けられた検討で、絞られてきた。

MSLは過去のどの探査機よりも着陸精度が高く、また環境の影響を受けない原子力発電で駆動する。このため過去の探査では着陸不可能だったような場所にも降りることができる。

火星に直接降りて探査することは、科学目的とエンジニアリングのバランス関係の上になりたってきた。例えば現在活動している探査車「スピリット」と「オポチュニティ」は、平原の上に、エアバッグで着陸した。エアバッグで確実に着陸するためには、候補地はなだらかな平原でなければならない。しかも大気圏突入から着陸までは一切制御がないため、誤差を見込んだ広い範囲が平原である必要がある。

ところが科学的に高い収穫が見込めそうな場所は、得てして断崖や山麓、河川の近くだったりする…技術的リスクをできるだけ抑えながらも、成果ができるだけ沢山得られる場所に近づくというのが、バランスである。

MSLは大気圏突入後、充分に減速した後、「スカイクレーン」と呼ばれる方法で着陸地点を目指す。これは飛行体がMSLを宙づりにした格好で大気層を降下し、最後はゆっくりと地面に“置く”というやり方である。このやり方そのものが初めての試みであり、エンジニアリングチャレンジでもあるが、着陸精度は非常に高い。それ故、これまでは狙えなかったリスキーな場所もOKということになる。

例えば今回選定された4地点のうち「Gale」は、かつて「スピリット」や「オポチュニティ」の活動候補地としても名前の挙がった場所である。しかしそれらの着陸にはリスクが高すぎるとして除外されたのであった。

下は、「スカイクレーン」とMSL車体との結合テストが行われた所。両者はかみ合わさるように設計されているが、それはあくまで紙の上での話。実機が製造され、両者がきちんと合わさることが確認されたのはこれが初めてである。

           

両者はもちろん、一旦離され、それぞれさらなる組立が行われていく。詳しくはこちらこちらへ【NASA 11.19】

<追加情報 11.18. 2008>

NASAは、来年打ち上げ予定の火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)につける名前の募集を開始した。これにはウォルト・ディズニーも協賛している。(下・今年8月のMSL。車輪が取り付けられた直後とのこと)

            

応募対象は、5歳から18歳までの米国の学校に在籍する生徒及び学生となっている。応募に当たっては、その名に至ったエッセイを添えて提出しなければならない。2009年1月25日必着で、3月に9つのファイナリストがインターネットで公開され、一般人の投票が行われる。この投票は選考の一要素となる。

最終決定は4月に公表される見込みとのこと。詳しくはこちらへ。投稿サイトはこちら【NASA 11.18】

…そういえば「スピリット」と「オポチュニティ」も同様に決定されましたね^^

<追加情報 11.13. 2008>

NASAの火星探査車「スピリット」を管制する運用チームは、音沙汰無しの状態にあるスピリットに不安を募らせている。スピリットとの交信は11日以降現在まで回復していない。

スピリットは先週末より砂嵐に見舞われ、太陽電池発電量が低下。11日に、バッテリー温存のために13日まで地球にコンタクトを取らないよう仕向けるプログラムが組み込まれたばかり。そのためスピリットから何のシグナルもないということは、きちんと指示に従っていると考えられる。しかし、運用チームの不安は増している。

「心配する親の心境ですよ。」と語るのは、2台の火星探査車ミッションのプロジェクトマネジャー、ジョン・カラス氏。

チームは11日から12日にかけて夜通しスピリットのシグナルに聞き耳をたてた。もしスピリットがセーフモードに落ちれば、それを知らせる信号が送信されることになっているからだ。それ故なんの信号もないということは、11日に送信されたコマンドに従って行動を停止していることを意味していると言える。

一方、他の可能性として、探査車がセーフモードに入っている上に、バッテリー不足で通信回路が開かないという場合も想像できる。しかし実際どのような状況下にあるのか、現時点では判断つかない。

「はっきりしたことは13日にならないとわからないでしょう」とカラス氏は言う。ただ、ひとついいこととしては、火星を周回する「マーズ・リコネッサンス・オービター」の観測で砂嵐の終結が確認されたという。

ミッション総責任者のスティーブ・スクイヤーズ氏は、「辛抱強く待ち続けねばなりません。スピリットを信じ、最善を願うばかりです」と語る。詳しくはこちらこちらへ【NASA/Space.com 11.12】

<追加情報 11.12. 2008>

NASAの火星探査車「スピリット」が砂嵐のため太陽電池発電量が低下、ピンチを迎えている。

NASAは2004年より、2台の火星探査車「スピリット」と「オポチュニティ」を走らせている。年明け1月には丸5年を迎えるが、これは当初予定されていた3ヶ月を大幅に圧倒する期間。これは、北極域に降りた「フェニックス」と異なり、赤道近くを走り回っているため。

だが、オポチュニティと比べやや高緯度(南半球側)を走行するスピリットは季節の影響を受けやすく、最近は、これまで続いた冬を乗り切ることに成功していた(フェニックスが北極の白夜で活躍を続けている間、スピリットはじっと冬眠を続けていたわけですね@管理人)。現在は運用チームが「ホーム・プレート」と呼ぶ丘の斜面にあり、先月末からそこを上ろうと試みている。


(下は今月5日に取得された、リアハズカム(後部・デッキ下のハザードカメラ)の画像。スピリットは右前輪が既に壊れており、それを引きずる形で“バック”走行を続けている。この画像が進行方向ということですが…結構な斜面相手に難儀しているようです。)

               

しかしこのところ生じていた砂嵐に、スピリットはピンチを迎えている。太陽電池の上に降り積もった砂の影響もあり、発電量が大幅に低下、過去最低を迎えているという。

今月9日、スピリットは行動1725火星日を迎えたが、この日の発電量は89ワットであった。これは1日に要する電力量を遙かに下回り、2台の過去5年間の活動中、最低レベルを更新。当然バッテリー残量も低下を続けており、このままでは自動的にセーフモードへ入ってしまう。

これに対処するべく、運用チームは幾つかのヒーターを切るコマンドを送信した。また、バッテリー温存のため、13日(日本時14日)まで交信を行わない。ただ、低電力保護モードに落ちた際に発せられるシグナルへの注意は続けられるという。

ちなみにこのような砂嵐によるピンチはこれが初めてではない。昨年も大規模な砂嵐に見舞われ、オポチュニティの方が危機的な状態にあったが、どうにか乗り切ることに成功している。(下・昨年10月のスピリット。砂が積もり、地面と同化してしまっている。)

            

今回の砂嵐は既に、もしくは数日中に終息するものとの観測だが、漂う砂の降下は暫く続くと見られている。詳しくはこちらへ【NASA 11.10】

<追加情報 10.26. 2008>

下の画像は、火星探査車「オポチュニティ」が先月28日に取得した画像の一枚。

            

残されたわだち…車は荒野をひたすら走り回ります(大きいサイズ)。画像の右手には「ヴィクトリア・クレーター」が広がっています。オポチュニティは元気に活動を継続中です。【photo: NASA】

<追加情報 10.18. 2008>

欧州宇宙機構(ESA)が2013年の打ち上げを目指して開発を続けている火星探査車「ExoMars」の打ち上げが、2016年に延期となった。BBC放送が伝えた。

ExoMarsはESAのフラッグシップ級惑星探査ミッション。そもそも2011年の打ち上げが予定されていたが、設計の難しさのため2013年に延期されていた。だが今回、再度延期されたことになる。

欧州政府はESAに対し、16億ドルの予算を削減する方法を見つけるよう求めており、これにはロシアや米国に援助を求める道も含まれているという。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 10.18】

<追加情報 10.16. 2008>

ロッキード・マーチン社は先頃、来年の打ち上げが予定されているNASAの火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)に使用されるバックシェルをジェット推進研究所(JPL)に納品した。同社が公表した。

地球から火星までの飛行の間、探査車や着陸機を格納しているコンテナを「エアロシェル」というが、これは二枚貝構造になっており、その背中側を「バックシェル」という。それに対し、フロント側が「耐熱シールド」となる。

下は公開されたその全体像。作業員と比べてもその巨大さがはっきりするが、最大径は約4.5メートル。「スピリット」、「オポチュニティ」の時が約2.5メートルで、あのアポロ司令船でさえも約4メートル弱であった。

            

バックシェルはアルミハニカムをグラファイト・エポキシシートで挟んだ構造体で、その表面には耐熱材であるコルク・シリコン超軽量アブレーター(SLA561v)が貼り付けてある。この耐熱材は過去の火星ミッションでは耐熱シールドに用いられてきたが、バックシェルを覆うのは今回が初。その耐熱シールドの耐熱材にはPCIAと呼ばれる材料が用いられることになっている。

耐熱シールドは現在PCIAの貼り付け段階にあり、来年4月にJPLに搬入される予定とのこと(上で見える耐熱シールド部はダミーということですね@管理人)。

詳しくはこちらへ【Lockheed Martin 10.16】

<追加情報 10.13. 2008>

現在、火星上および周回軌道上では計6機の探査機が稼働しているが、その中で最古参の「2001 マーズ・オデッセイ」(下)が今月1日より3回目の延長ミッションに入っている。

                

マーズ・オデッセイはその名の通り、2001年から火星を周回、観測を続けてきた。地表の鉱物分布や水の痕跡調査が主たる目的であり、観測開始から間もなく、両極の地下に大量の水素の存在を確認、これは氷の存在を示唆するものと考えられている。

マーズ・オデッセイの当初ミッション期間は2年であったが、目立った故障はなく稼働を続けているため、ミッションが2年おきに延長されてきた。今回は3度目の延長となり、2010年までの継続が予定されている。

なお、この3度目の延長ミッションに関連して、周回軌道の変更が行われた。具体的には、通過する直下が午後の早い時間になるような軌道である。これは赤外線センサーがより高感度で対象物からの放射を検出できるよう、仕向けられたもの。これまでは直下が午後の遅い時間になるような軌道であったが、これはガンマ線センサーの感度との兼ね合いから定められたものだった。

軌道修正は9月30日に行われた。これは6分間のスラスター噴射によるものであったが、これは2002年のマニューバ以来の大きなものであった。

オデッセイは太陽と同期した軌道を巡っており、現在その直下は午後5時頃になるよう調整されている。今回の修正ですぐに変更されるわけではなく、今後1年ほどかけて、目的の軌道へと探査機が推移していく。来年末にあと1回のマニューバを経て、最終的な軌道へ投入される予定。この時、直下は午後2時から3時ぐらいになる。

なお、最終的に軌道が確定すると、ガンマ線センサーは運用停止される。このセンサーは熱に弱く、直下が(照り返しの弱い)午後遅い時間でないと運用できないものであるからである。

オデッセイの軌道修正用燃料はまだ充分な量がのこっており、少なくとも2015年まではもつものと考えられている。詳しくはこちらへ【NASA 10.09】

<追加情報 10.10. 2008>

大幅な予算超過が問題となっているNASAの「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)ミッションに関して10日検討会議が行われ、予定されている2009年10月の打ち上げを目指し、計画をこのまま実行する決定が下された。

MSLは探査車で火星面を走り回り、土壌や岩石の分析や気象観測などを行うというミッション。現在稼働している探査車「オポチュニティ」および「スピリット」よりも一回り大きく、原子力電池で稼働する。電力を太陽電池に依存しないため砂や季節の影響を受けることなく、また移動スピードも早いため、かつてない広範囲を調査することができるものと期待されている(下・コンセプトスケッチ)。

            

(MSLはエアバッグで着陸するには巨大過ぎ、フェニックスのように逆噴射エンジンを搭載するに相応しい構造体でもないため、“宙づり”で地表に置かれる。下はそのコンセプトで、“スカイクレーン”と呼ばれる。)

            

しかし車体が大型化する上に新機軸の盛り合わせで、そのせいもあって開発が難航。開発費も当初の見込みを3割近く超過した状態にある。

MSLの当初予算は17億ドル。昨年6月、詳細設計審査(CDR)を通過したが、その際7500万ドルの予算オーバーが確認され、これを克服するための方針変更も決定している。ただ、搭載予定の科学機器は全て搭載され、タイムラインにも変更がなかったことにチームは安堵していたところだった。

しかし現在では予算に3億ドルの超過が必要となっており、もはやミッションそのものの成立に影響を及ぼすまでになっている。

NASAの火星探査プログラムディレクターであるダグ・マッキション氏は、2009年10月の打ち上げに間に合わせるためには1.9億ドル以上の資金がいる、さもないと次のロンチウィンドウである2011年に遅れることになる、としている。しかし追加予算の取得にはホワイトハウスと議会の承認が必要となる。

火星部門の幹部はこの件で来年1月にNASAグリフィン長官と話し合うことになっている。その時までにキーとなるハードウェアやソフトウェアを目の前に準備できる段階まで進めておく必要があると、マッキション氏は語る。

詳しくはこちらへ【Space.com 10.10】

<追加情報 09.23. 2008>

火星の南北極に広がる極冠のうち、南極冠は夏場、その中心が南極点よりも大きくずれて分布している。普通に考えれば極点を中心に広がるはずであり、長年の謎であったが、このほどそのメカニズムに関して新説が提案された。

(下・南極点を中心に見た、夏季における南極冠。西半球側(向かって左側)に極冠が集中している。)

              

イタリア・惑星空間物理研究所(IFSI)のマルコ・ジュランナ氏率いる研究チームは、欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」で取得された高度50kmまでの温度分布データを詳しく分析、最も妥当と考えられるモデルを構築した。

彼らは火星の時間で秋から冬にかけての、南極におけるドライアイスの成長を追った。その結果、2種類の局所的気候が関わっていることが明らかになったという。

これら局所的気候は中緯度における大気循環を特徴づける強い西風から派生するものである。その風は、火星最大の「ヘラス盆地」(直径2300km、深さ7km)に吹き入り、風下側の急勾配なクレーター壁にぶつかり、地球で言うところの「ロスビー波」を形成しているという。

この流れは高高度へと向かい、南極点における気象システムに影響を与える。南極点付近の西半球側ではこのシステムが低圧部を形成し、逆に東半球側では高圧部を形成する。

研究チームによると、低圧部の気温が二酸化炭素の凝固点以下にしばしば達し、この結果ドライアイスの雪が降り、同時に地表ではドライアイスの霜が成長するという。一方、高圧部ではそのような温度に達しないため雪は降らず、地表での霜の成長のみが起こると考えられるという。

そしてその“雪”が被った場所は、夏季でも昇華が起きない。というのも、霜が覆った場所に比べ太陽光がより多く反射される上、霜の粒子が雪の粒子より大きく太陽光をより多く受けるため、昇華が促されるからである。

以上をまとめると、南極冠の西側は大量のドライアイスがあることに加え昇華のスピードが遅いため夏場でも残るのに対し、東側は夏場は完全に消え去るため、非対称な南極冠を見ることになると考えられる。

詳しくはこちらへ【ESA 09.22】

先日、「ヴィクトリア・クレーター」の調査を終えて中からはい出すことに成功したNASAの火星探査車「オポチュニティ」の次なる目標に、南東へ約12kmの場所にあるクレーター「エンデバー」が選定された。

このエンデバー・クレーターはヴィクトリア・クレーターの約20倍のサイズがある。また、12kmもの距離は、オポチュニティが2004年1月に走行を開始して以来走り続けてきた距離に匹敵する。(下は火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が撮影したエンデバー・クレーターの周辺。オポチュニティは左上のクレーター「エンデュランス」の近くに着陸し、走行を続けてきた。)

            

「そこにはたどり着けないかも知れませんが、科学的には正しい方角なのです」と語るのは、火星探査車ミッションの責任者であるスティーブ・スクワイヤーズ氏。そのクレーターの直径は約22kmで、これまでに運用チームが見たどのクレーターよりも大きい。そこにはヴィクトリアで見られたものよりも深い岩石層が存在すると期待されている。また、その方角に進むにつれて時代の新しい堆積層が広がっていると考えられている。

詳しくはこちらへ【NASA 09.22】

<追加情報 08.27. 2008>

下は、火星を周回する探査機「マーズ・エクスプレス」の「ビジュアル・モニタリング・カメラ」(VMC)が今年6月1日に撮影した火星。太陽光が縁のところできらめき、低解像度であるがスペクタクルな一枚。

              

VMCは科学観測用のカメラではない。マーズ・エクスプレスに相乗りしていた着陸探査機「ビーグル2」の分離を視覚的に確認するための低解像度カメラで、そのような場所に設置されているもの。しかし火星が視野に入ることも頻繁にあり、運用チームはさながら“マーズ・ウェブカム”として取得された画像をリリースしている。

下はVMCの設置場所と、分離直後のビーグル2。ビーグルは2003年12月末に切り離され着陸を目指したが、大気圏突入後に交信が開通することは無かった。着陸地点も未だ定かではなく、大気圏で燃え尽きた可能性も指摘された。右下はそのビーグルの、最後の姿である。

            

VMC“マーズ・ウェブカム”のサイトはこちらへ【ESA 08.27】

火星の「ヴィクトリア・クレーター」の内側で活動を続けてきたNASAの火星探査車「オポチュニティ」はこのほど、一連の調査を終え、クレーターの外にはい出すことに成功した。

「我々はできうること全て、そしてそれ以上を成し遂げました」と語るのは、JPLの火星探査車研究員の一人であるブルース・バナート氏。オポチュニティは目下、その周辺に転がるこぶし大の岩石の調査を行う準備に入っているという。これらは、古代の隕石衝突の際に吹き飛ばされてきたものと考えられている。

オポチュニティはヴィクトリア・クレーターに昨年9月11日に進入を開始し、ほぼ一年、その内側で活動を続けてきた。砂地が多く車輪を取られることもあったが、岩石の露頭などで分析を続け、ついには「ケープ・ベルデ」と名付けられている岬の根元まで走り進んだ。この岬は高さが6メートルである。

(下はSol 1382〜1607における軌跡。Sol 1632=約8月27日であるので、約3週間前までの走行ルートである。向こうに見える岬がケープ・ベルデ。岬にもっと近づいて調査する予定であったが、後述するように、左前輪に異常の兆候が認められたため引き返すことが決定された。)

            

(下・昨年からの走行マップ。スピリットはクレーター縁の内側をソロリソロリと降りていきながら露頭の分析などを続けていました。ある時は砂地に足を取られ、脱出に時間を要したりしています。)
            

オポチュニティは昨年9月に進入した場所から出るように走行している。ところで先月、左前輪モーターの電流にスパイクが生じるようになり、これはその後の走行プランに大きな影響を与えたようである。オポチュニティ(と姉妹車「スピリット」)は6輪であるが、「もしオポチュニティが5輪走行を余儀なくされていたら、恐らくヴィクトリア・クレーターから抜け出すことはできなかったでしょう」と、ミッションマネジャーのビル・ネルソン氏は語る。

同様の現象は2006年、「スピリット」の右前輪で発生し、間もなくこのモーターは停止した。以後スピリットは5輪で、この右前輪を引きずりながら後退する格好で走行を続けている。なお、オポチュニティの左前輪は今のところ正常である。

なお、南半球で“越冬”を続けてきたスピリットは無事に乗り切り、行動を再開した。手始めに周辺のカラーパノラマの撮影などを行っている(下・大きいサイズと詳細はこちらへ)。

            

詳しくはこちらへ【NASA 08.26】

<追加情報 08.01. 2008>

2008年7月30日、中国新聞網によれば、ロシアのフォボス・ソイル(グルント)火星探査機が中国の小型衛星を搭載して打ち上げられると、ロシア現地メディアが報じた。

中国から国家航天(宇宙)局の孫来燕(スン・ライイエン)局長を団長とする訪問団が、ロシアのモスクワ郊外のヒムキ市にあるラーヴォチキン学術生産合同企業を訪問したと、ロシアニュース.CNが29日、モスクワから伝えた。また、ロシア航空宇宙局ウェブサイトによれば、訪問期間中、中ロ両国の宇宙開発における今後の協力や計画について話し合われたという。その中で、協力の鍵となるのは火星と火星衛星の研究で、ラーヴォチキン社の制作したフォボス・ソイル探査機が中国の小型衛星を搭載して打ち上げられる計画だという。

ラーヴォチキン学術生産合同企業の責任者は、フォボス・ソイル火星探査プロジェクトにとって中国の参与は重要な意味を持っていると指摘しており、中ロ双方がフォボス・ソイルへの衛星搭載に注目しているという。【Record China 08.01】

<追加情報 07.30. 2008>

欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」は23日、衛星「フォボス」へ93kmまで近づき、かつてない高解像度画像を取得することに成功した。

            

詳しくはこちらへ【ESA 07.30】

<追加情報 07.17. 2008>

欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」が今月から来月始めにかけて、同惑星の衛星「フォボス」に数度のフライバイを行う。特に今月23日には100km弱の距離まで接近し、かつて無い高解像度画像などが取得されるものと期待されている。

このフライバイは今月12日から来月3日の間にかけて行われる。具体的な日程と接近距離は次の通り;

7月12日 563km
7月17日 273km
7月23日  97km
7月28日 361km
8月 3日 664km
(23日の接近は、フォボス2号の接近(’89)より更に近いですね@管理人)

また一連のフライバイでは、ロシアの火星探査ミッション「フォボス・グラント」で飛ばされる探査機の着陸予定地点の高解像度画像も取得される見込みとのこと。フォボス・グラントはフォボスに着陸し、土を地球に持ち帰るサンプルリターンミッションで、2009年の打ち上げを目指している。

(エクスプレスは過去にもフォボスに接近している。下は昨年1月22日のフライバイで取得された画像。火星上空にぽっかりと浮かんだ姿、そして陰影が神秘的です。)

                      

フライバイではその他にも、搭載されている各種センサーでフォボスの地表組成や温度分布などを調査する予定。詳しくはこちらへ【ESA 07.16】

<追加情報 05.24. 2008>

NASAゴダード宇宙センターからリリースされているフリーソフト“Mars24”(「火星24時」)がアップデートされた。バージョンは6.0.1。

            

このソフトは火星の昼夜をグラフィックで示してくれる便利なもの。他にも地球と火星の軌道ポジションを表示したりすることができる。スピリットやオポチュニティ、さらにフェニックスの場所も表示される。ダウンロードなど詳しい情報はこちらへ【NASA 05.22】

…上の画像は管理人のディスプレーをハードコピーしたものです。メイン画面に地球時と火星時を表示する窓、コマンドを操作する窓を重ねてあります。メインに表示される火星は各種図法が選べ、全球表示も可能。これまでに着陸した、もしくは着陸を試みた失敗探査機の場所も表示することができます(「マルス」も入っていますw)。とても面白く、便利なソフトです。

<追加情報 04.24. 2008>

NASAの火星探査車「オポチュニティ」は10日ほど前より、前部に取り付けられているロボットアームを動かせない状態が続いている。NASAが発表した。

オポチュニティはスピリットと同型の探査車で、2004年1月より現在まで、4年以上の長きにわたり活動を続けている。現在は「ヴィクトリア・クレーター」の内部に踏み込み、砂地に足を取られながらも露頭の調査活動を続けているところである。

探査車にはロボットアームが取り付けられており、その先端には研磨ドリルや顕微カメラが搭載されている。今月14日、それを動かす5個のモーターのうちの1個が動かなくなったという。そもそも2005年よりこのモーターの動きは悪くなっており、これまでやや高めの電圧を加えることで駆動されていた。

このモーターはアーム全体を動かす“肩”の部分に設置されているもの。しかも当時、アームは車体下部に格納された状態にあり、モーターが動かなければこのまま使用不能という結末に至る可能性もある。オポチュニティは最近、“Stow/Go/Unstow”(しまう/走行/伸ばす)走行法を実施していた。これは夜間の冷え込みが原因でモーターが故障した場合を考え、その日の走行が終わった際にはアームを外へ延ばしておき、格納状態で稼働不能に陥るのを避ける戦術である。

(下は、今月13日にフロントハズカムで取得された画像。手前に、横向きに引っ込められたアームが見えている。パンカムのマストの影が印象的。また、車輪のめりこみ具合から、かなり深い砂地であることもわかる。大きいサイズはこちらへ)

            

「最悪のシナリオの場合でも、オポチュニティのアームはなおも科学的調査を実行することはできます。」と語るのは、プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。

最近のモーターの特性には、抵抗値の増加が認められていた。これは機械的な障害によるものではなく、ワイヤーの劣化に起因するものだという。現在も運用チームは分析を続けており、モーターの使用可否の判断と今後の対策を検討しているという。詳しくはこちらへ【NASA 04.23】

<追加情報 04.20. 2008>

下は、欧州宇宙機構(ESA)の運用する火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」に搭載されている地下探査レーダー「MARSIS」により取得された南極冠の地下断面構造。

一番上の画像は地表画像であり、細い黄色線が探査レーダーが走査した部分。中段に示されているのがその「MARSIS」レーダーにより取得された断面構造で、地下3.7kmに堆積底が見えている。一方、下段はNASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」に搭載された地下探査レーダー「SHARAD」による走査であるが、堆積底が見えていない。

             

「MARSIS」レーダーは、地下を探査するという火星探査においては初の試みとなる野心的な装置。地下の地質学的構造から、過去の大地の動きを探ろうというものである。右の画像で、両サイドに伸びる長いダイポールアンテナ(片方25m)と、下に飛び出したモノポールアンテナ(7m)がレーダーを構成する。

このレーダー観測は地味なものであるが、かつてない成果が得られつつある。例えば、直径130〜470kmに達するクレーターが北半球の低地に多く埋もれていることが明らかとなった。200kmを超えるインパクトクレーターの存在する部分は、Noachian前期(40億年ほど前)に遡る非常に古い箇所であり、Noachian前期には、太陽系全域において、惑星に多くのクレーターが降り注いだと考えられている。

また、同種のレーダーがマーズ・リコネッサンス・オービターにも搭載されており、「SHARAD」と呼ばれている。両者は使用周波数帯が異なり、マーズ・エクスプレスは1.3〜5.5MHz帯を、リコネッサンス・オービターは15〜25MHz帯を使用。周波数が低いほど波長が長いため、使用アンテナも長くなっている(リコネッサンス・オービターのは片側10m)。

またこの周波数の違いは深度の違いにも現れ、エクスプレスの方がリコネッサンス・オービターよりも深い。そのため上の比較画像では堆積底が見えていないのだが、ただし解像度はリコネッサンス・オービターの方が上。両者のデータを上手に分析することで、詳しい地下構造が明らかになっていく。

詳しくはこちらへ【ESA 04.17】

<追加情報 02.29. 2008>

アリゾナ大学の研究チームが、火星の“ガリー”が水の流れによってできたとする主張と対立する分析結果を発表した。

ガリーとは、液体らしきものの流痕のことを指し、1999年、火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」の観測で初めて見つかった。以降、同様の地形が無数見つかっているが、形成要因についても意見が分かれ、水が流れたものというほかに、液体二酸化炭素や単なる岩石風化に伴う崩落痕とする見方などがある。

「純水の流れは除外されます」と語るのは、論文筆頭著者であるジョン・D.ペルティエ氏。彼の研究チームは、2006年12月に発表された「ガリーは水の流れで形成された」とする説に異論を唱えた。06年の発表は、流体痕のできる前後を比較し、それが水の噴出によって生じたものと結論づけている。

(下は06年の発表でリリースされたもので、ガリー形成のビフォーアフターがはっきり示されている。グローバル・サーベイヤーは約10年間の活動で、このような形成前後の現場をいくつも見つけた。その他の画像はこちら

            

ペルティエ氏の研究チームは火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」で取得された撮像データと、火星環境下における水の流れを計算したものとを比較し、ガリーを水の流れた跡とするのは無理があると結論づけた。

リコネッサンス・オービターは、グローバル・サーベイヤーより遙かに高い解像度を有しており、ガリーの形状を詳細に知ることができる。彼らは計算の結果、砂礫のような乾いた細かい粒子の流れとしたほうが合っていることを見出した。「乾いた粒子が妥当だったのですが、これには驚きましたよ。私も当初、液体水であることを証明しようとしていたのですから」と、ペルティエ氏は語る。

(右は、リコネッサンス・オービターで取得された画像と、それを再現するシミュレーション結果。右2つがシミュレーションであるが、液体水とした場合(中央)に比べ、乾燥砂礫としたもの(右端)のようが実際の形状に近い特徴を持っている。)

ただ、流出物が沈殿物を50ないし60%含んだ厚い泥である可能性もあるとしている。詳しくはこちらへ【Uiv. of Arizona 02.29】

<追加情報 02.29. 2008>

NASAが2009年打ち上げを目指して開発を続けている「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」に関し、その耐熱シールドの開発が難航、追加予算が必要であることが明らかとなった。先月12日、NASAのグリフィン長官が議会公聴会で表明した。

マーズ・サイエンス・ラボラトリーはフラッグシップ級ミッションに位置づけられている大型の火星探査プロジェクト。現在火星を走行中の探査車よりも一回り大きいもので、化学実験機器を搭載し、原子力電池で駆動する。このミッションは着陸フェーズにも“スカイクレーン”と呼ばれる新手法を用いるなど、新機軸が盛り込まれている。(下・活動するサイエンス・ラボラトリーの想像図)

            

グリフィン長官は公聴会で、大気圏突入時に使用する耐熱シールドが想定される高熱に耐えられないものであることを公表、デザインのやり直しに資金が必要であることを認めた。追加資金は2000万〜3000万ドルに達するという。ミッション全体の予算は18億ドルであるが、これは既に1億6500万ドル超過している。

また、打ち上げの遅れも懸念されている。NASAは今のところ来年の打ち上げを目標としているが、場合によっては2010年ないし2011年が検討されているという。詳しくはこちらへ【Space.com 02.29】

<追加情報 01.25. 2008>

今月25日(世界時)、火星探査車「オポチュニティ」が火星着陸4周年を迎えた。それを記念して、現在活動しているエリアのパノラマ画像が公開された。

            

オポチュニティは2004年1月25日、先発の同型車「スピリット」に遅れること22日、エアバッグで火星に着陸した。着陸地点はメリディアニ平原。何度かのバウンスの後、極めて小さなクレーターに転がり込むという“究極のホールイン・ワン”であったことが思い起こされる。

オポチュニティは昨年秋よりヴィクトリア・クレーターの西側の「ダック・ベイ」(Duck Bay)と呼ばれている一角を調査している。ここにはクレーター内部に向かってちょっとした露頭が広がっており、管制チームは慎重に操りながら急傾斜の走行と分析を続けている。

上のパノラマは昨年10月23日(Sol1332)から12月11日(Sol1379)にかけてパンカムで取得されたモザイクを合成して作成された。特徴的な“岬”が2つ見えているが、左側は「ケープ・ヴェルデ」(Cape Verde)、右奥に見えるそれは「カーボ・フリオ」(Cabo Frio)と命名されており、それぞれ高さ6メートルと15メートルである(下・拡大図)。足下には露頭が広がっている。

           

(下は「マーズ・リコネッサンス・オービター」の画像にオポチュニティの軌跡を合成したもの。広範囲サイズはこちらへ)

           

詳しくはこちらへ【NASA 01.24】

<追加情報 01.24. 2008>

ワイドショーなどでも取り上げられ話題の、火星の人魚↓

            

しっかし、よく探してきますね〜〜それにしても出来過ぎでは…偽造?(笑)以前は人頭骨に似た岩もありましたっけ。。詳しくはこちらへ【SPace.com 01.24】

<追加情報 01.17. 2008>

火星で、その大気に浮かぶ雲が地表に落とす影が撮影された。欧州宇宙機構(ESA)が発表した。

これまで火星大気に雲が生じることはよく知られてきたが、それは希薄なものと考えられていた。だが実際には、影を投げかけるほどの密度を持ったものが生じることが明らかになったのである。

この成果は、ESAが運用中の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」の「可視及び赤外線鉱物マッピングスペクトロメーター」(OMEGA)によって取得されたデータより得られたもの。

火星の大気で生じる雲には、水氷からなるものや、ドライアイスからなるものがある。火星大気の成分は二酸化炭素が主であり、また充分に低温であるので、ドライアイス性の雲が生じるのは不思議ではない。しかし、地表に影を投影するに充分な密度のそれが確認されたのは初めてのことである。

「ドライアイスの雲を真上から確認したのは初めてです。このことは、単に雲の形を判断するだけでなく、そのサイズや密度を知ることができる点で重要です。」と語るのは、論文筆頭著者のFranck Montmessin氏。論文は「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」誌に記載される。

これまでは、同探査機に搭載の「紫外および赤外線大気スペクトロメーター」(SPICAM)による観測データから、間接的に雲の特性を推し量るしかなかった。この方法では大気や地表からの放射を分離するのが難しかったのである。

SPICAMの観測結果より、雲はさほど厚いものではなく、また、細粒子でできていると考えられていた。だがOMEGAでの観測によると全く逆で、雲は高度80kmという高高度に出現している上、数百キロの幅を持っており、その上かなりの厚みを持っていたのである。

それは地球で見る、上昇気流で形成される積雲に似たものだという。

更に驚くべきことに、粒子のサイズは予想よりかなり大きかったのである。それは1ミクロン(1/1000ミリ)以上で、太陽光を減光させるに充分な密度になる。このサイズの粒子は通常、それほどの高層大気では生じないと考えられてきた。

下は、2004年6月12日にOMEGAで撮影されたドライアイス雲。雲の高度は80km。4枚はそれぞれ異なる波長で撮影されており、左から3枚目の波長4.26ミクロンで撮影されたそれは最もはっきり雲を捉えている。興味深いことに、雲自体がはっきり写っているのは波長0.5および4.26ミクロン画像のみだが、影は全ての波長で見えている。影の落ちる場所は、雲の直下から南西側に約100kmの地点。

             

「OMEGAによって撮影された雲は、40%に達する遮光率です。このことは非常に濃い影を落とし、その周辺温度に大きな影響を与えているものと考えられます。影は周辺より10℃近く温度を下げ、結果として風などの状況を変化させるでしょう。」とMontmessin氏は語る。

このドライアイス雲は殆ど赤道付近に集中しているため、赤道付近で生じる昼夜の極端な温度差が成因に絡んでいるのではないかと研究チームは考えている。「夜間の冷え込みと日中の温度上昇が大気に日周変動を起こし、それが巨視的対流を生み、上昇した二酸化炭素は上空で冷却を受けドライアイスへ変化する。しかもこの時解放される潜熱で更に大気塊は上昇する」というシナリオが考えられるという。

しかし、不明な点もある。地球では凝結核としてチリや塩分の微粒子などが考えられるが、火星ではまだ断定できないという。可能性としては高層まで巻き上げられた砂などが推定されている。

詳しくはこちらへ【ESA 01.16】

<追加情報 01.03. 2008>

NASAの火星探査車「スピリット」が3日、火星着陸から丸4年を迎えた。下はそれを記念して公開されたパノラマ画像で、昨年11月6日から9日にかけて撮影されたモザイクを合成して作成されたものである。着陸地点はパノラマほぼ中央の地平線の向こうで、右側に見える丘は「ハズバンド・ヒル」。

            

スピリットがグゼフ・クレーターの内部に劇的な着陸成功を納めてから早4年。当初ミッション期間は3ヶ月であったが、想定を大幅に超える耐久力と運用クルーの地道な努力により、これまでに7.5kmを超える走行を果たした。(下は・着陸から現在までの走行マップ。が現在の位置で、「ホーム・プレート」と呼ばれるちょっとした台地の北斜面にある。)

            

ちなみに下は、着陸後に撮影されたパノラマの一部で、エアバッグの一部が見えている。この約1ヶ月後の2月2日、NASAは東方に見える丘群を「コロンビア・ヒルズ」と命名、前年の2月1日に墜落したシャトル「コロンビア」へ捧げた。それぞれの丘には搭乗クルーの名が冠されている(下)。

            

スピリットはこの後、コロンビア・ヒルズを目指して走行。2005年から06年にかけて中央のハズバンド・ヒルを踏破することに成功した。現在いる位置は、この右端の、地平線の彼方である。詳しくはこちらへ【NASA 01.03】

<追加情報 12.27. 2007>

下は、NASAの火星探査車「スピリット」の後部ハザードカメラで取得されたイメージをつなぎ合わせて作成された動画。左上にSol が記されています。

           

スピリットは「ホーム・プレート」北側の、陽当たりのよい斜面に到達しました。詳しくはこちらへ【NASA 12.26】

<追加情報 12.25. 2007>

火星のクレーターに、惑星観測の分野で国際的に知られる日本人研究者の名が付けられることになった。その名は「Miyamoto」。国際天文学連合(IAU)が決定し、先月19日、関係者に連絡が入った。

故・宮本正太郎・京都大学名誉教授(1912〜92)。日本の天体物理学の草分けで、京都大学理学部付属花山天文台を拠点に、太陽コロナや火星大気などの研究で多くの業績を残した。アポロ計画では月面地図を作るのに協力するなど国際的に知られ、70年代には月や惑星の地名の命名委員として、水星のクレーターに「夏目漱石」の名を付けるなどした。

「Miyamoto」は火星の赤道付近にあり、直径は約160キロ。境界が不鮮明なクレーターの北半分が火星のどのような作用で生じたのかに研究者らの関心が集まり、米航空宇宙局(NASA)の探査対象の候補に挙げられているという。数十キロ北東では現在、NASAの探査車オポチュニティーが活動を続けている。(下・USGS Gazetteer of Planetary Nomenclatureより)
             

詳しくはこちらへ【朝日 12.25】

<追加情報 12.24. 2007>

NASAの火星探査車「スピリット」は、越冬拠点に到着した。同車は「ホーム・プレート」と呼ばれる大地の周辺を活動しているが、この北側の斜面に到着、ここで来たる冬を越す。

スピリットは現在、ホーム・プレートの北斜面の端で、車体を13度傾けて停車している。太陽電池は北を向いており、太陽光がよく当たるようになり、15日には260ワット時だった発電量が、19日には291ワット時まで回復している。(下・Sol1407(今月18日)にパンカムで撮影された360度パノラマモザイクの一枚。斜面を見上げているのがよくわかります)

            

運用チームは今後、斜面を下らせ、25ないし30度まで傾ける予定。詳しくはこちらへ【NASA 12.21】

<追加情報 12.21. 2007>

来月末、火星に小惑星が衝突する可能性があると、NASAが発表した。この小惑星は大きさ約50メートル。大きさだけを見ると小さいイメージもするが、これが衝突すると3メガトン規模(広島型原爆の約200発分)の衝撃が生じると試算されている。

この小惑星は今年発見された「2007WD5」と符号の付けられたもの。現在、地球と火星軌道の中間に位置するが(下図)、公転軌道が火星軌道とクロスしており、しかもこのまま行けば来月30日、火星の真横5万km以内を通過する。最接近は日本時間・同日午後8時と計算されている。

                   

「2007WD5は現在、時速27900マイルの速さで飛行しています。これから5週間、より多くの観測データを収集し、軌道を精密に描いていく予定です」と語るのは、ジェット推進研究所(JPL)のNEO(地球近傍天体)監視室の責任者ドン・ヨーマンズ氏。NEO監視プログラムはいわゆる「スペースガード」と呼ばれるもので、地球に衝突する可能性のある天体を見出し、追跡している。

当該の小惑星は今年11月20日にスカイサーベイで発見され、その後の追観測で地球へインパクトの可能性はないものの、火星への衝突があることが判明。現在の所その確率は約75分の1と、この種のものにしては極めて高い。

現段階では誤差のため厳密な軌道は断言できない。推定される通過地点をプロットしたものが右図で、黄色点の帯を描いている。

この帯の中には、火星探査車「オポチュニティ」の活動域付近も含まれている。

「このようなインパクトは数千年に1度起こるようなものでしょう」と語るのは、JPLのスティーブ・チェスリー氏。氏は、「もし火星へ衝突するとしたら、それは時速3万マイルで突っ込み、直径が半マイルほどのクレーターができる可能性があります。」と語る。半マイルほどのクレーターとは、オポチュニティが現在活動している「ヴィクトリア・クレーター」と同程度。

この衝突は1908年、シベリアのツングースカで起こった大爆発に匹敵すると見られている。ちなみにツングースカの爆発も小惑星の衝突によると見られているが、本体は地表に到達する前に空中分解してしまったと考えられている。詳しくはこちらへ【NASA 12.21】

…激突の瞬間、見えませんかねぇ?

NASAは、2011年の打ち上げを目指す火星探査計画について、その打ち上げを2011年から2013年に遅らせる決定を下した。

この探査計画は「マーズ・スカウト」プログラムで絞り込まれてきたもの。同プログラムは低予算で火星探査計画を公募し、競争原理で絞り込んでいく。今年1月、2つのミッションに絞り込まれていた。うちひとつは「Mars Atmosphere and Volatile Evolution mission」(Maven)というもので、火星の上層大気の運動や電離層の観測などを行う。主席研究員(PI)はコロラド大学のブルース・ジャコスキー博士。プロジェクトマネジメントはNASA・ゴダード宇宙センター。

一方もうひとつは「The Great Escape mission」というもので、火星大気上層の構造と運動を調査することで大気進化の基本プロセスを直接探ろうというもの。これに加え、メタンなど、生体活動によって生じる成分の調査も行う予定。PIはサウスウェスト研究所のアラン・スターン博士。マネジメントはサウスウェスト研究所。

遅延の理由に関し、一方の企画にコンセプトスタディの段階で浮上した利益相反が原因だという。それがどちらのものなのかは、公式には明らかにされていない。相反は11月に表面化し、NASAは解決を目指していたが、それが予想以上に深く、期日内の解消は無理と判断された。

評価は健全な競争原理の土俵の上で行われるべきで、一旦ミッションを練り直し、再度審議にかけることが決定された。

NASAは両ミッションチームに、2013年を目指したプランを練るよう、資金を提供する予定。再審議を来年8月に開始、最終選択が同12月に行われることになった。詳しくはこちらへ【NASA 12.21】

<追加情報 12.18. 2007>

火星は日本時間19日午前8時45分、地球へ最接近した。距離は約8800万kmで、いわゆる“中接近”である。

下は今月3日にハッブル宇宙望遠鏡で撮影された火星。大気に浮かぶ希薄な雲も良く写っている。

           

火星は約2年おきに迎える「衝」の付近で地球と接近するが、火星が比較的目立つ楕円軌道であるためその距離は大きく変動する。下はその違いをポスターにしたもの(わかりやすい大きいサイズ)。約15年〜17年に特に近づく“大接近”となり、近年では2003年に6000万kmまで接近している。

             

下は、上の各接近時にハッブルで撮影された火星。2003年の大接近ぶりがよくわかる。

           

その他の画像はこちらへ【Hubblesite 12.18】

<追加情報 12.15. 2007>

下は、火星探査車「スピリット」が、パノラマカメラ(パンカム)で撮影した自身のデッキ。今年10月26〜29日(Sol1355〜1358)に取得されたモザイクを合成して作成されたもの。

探査車は今年の夏、大規模な砂嵐に見舞われ、大量の砂を被った。画像ではそれが明らかで、デッキには砂が積もり、地表と同化している。

            

下は2005年8月27日の姿。火星面で活動を開始してから586日目(Sol 586)であるが、砂は殆ど被っていない。

            

スピリットは現在、「ホーム・プレート」と呼ばれるちょっとした丘の周辺を北へ向けて走行している。現在冬に向かいつつあり、スピリットは陽当たりのいい丘の北部斜面で越冬する予定。同車が冬越えを迎えるのは活動開始から3度目。下は周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影したホーム・プレートの画像に、2006年2月からの軌跡を黄色ラインで重ねたもの。細長い青い楕円が3度目の冬を迎える予定地となっており、12月8日(Sol1397)現在、その間近までたどり着いている(大きいサイズ)。

           

スピリットはいわゆる“冬至”を来年6月に迎える。なお、オポチュニティは赤道に近い場所を行動しているため、大きな季節変化は受けない。大きいサイズなど、詳しくはこちらへ【NASA 12.10】

<追加情報 12.12. 2007>

下は、火星面で活動中の火星探査車「オポチュニティ」の研磨装置・拡大画像。同車の研磨装置は先月中旬、コマンドミスで逆回転をし、研磨面を磨く2本のブラシのうち内側の1本が曲がってしまっている。

           

正常な状態は、下。逆回転させてしまったことにより“Rotate Brush”が曲がってしまったため、上の画像では見えていない。

           

角度を変えて見たのが、下。「曲がった」と伝えられていましたが…この画像を見る限りでは、もはやくっついていないようにも見えます。折れて落ちた?

           

ただ、研磨作業に致命的な障害ではないようです。【photo: NASA】

<追加情報 12.06. 2007>

最近はオポチュニティの話題が続きましたが、スピリットの方は元気です。

NASAの火星探査車「スピリット」は「ホーム・プレート」とニックネームが付けられた地域を、来たる冬を乗り切るための場所へ向けて走行中です。下は2004年7月から先月までの全ルート。火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」により取得された地上データに描かれたものです(大サイズ)。

            

スピリットは陽当たりのよい「ホーム・プレート」の北側で、冬を越す予定。先月は砂地に足を取られ、身動きが苦しい状態が続いていましたが、無事に乗り切っています。

下は、スピリットの前方ハザードカメラが先月18日に撮影した一枚。スピリットの右前輪は既に機能しておらず、同車はそれを引きずる格好で、バック移動を続けています。

            

タイヤの溝が写った左前輪のわだちに対し、右のそれは深く彫り込まれ、土壌が深い砂地であることを表しています(大きいサイズ)。【photo: NASA】

<追加情報 11.21. 2007>

下は15日に撮影された、研磨テストが続けられている火星探査車「オポチュニティ」のドリル部。先日、テストの最中にヒゲブラシを誤って逆回転してしまったため、2本あるブラシのひとつが回転面に垂直に曲がってしまった。。

           

下は、曲がる前の姿。ここでは見えている短い方のブラシが曲がってしまったため、上の画像では見えていない。どうやら向こう側に折れてしまったようで?

           

管制チームは現在、対処法を検討中とのこと…。大きいサイズはこちら【photo: NASA】

<追加情報 11.13. 2007>

下は、火星面で活動を続けるNASAの火星探査車「オポチュニティ」が撮影した、ロボットアームの先端に取り付けられているグラインダーツール「RAT」。ここにはグラインダーと回転ブラシ、顕微カメラが取り付けられており、これで岩石表面を研磨、拡大観察を行う(顕微カメラは180°反対側についており、使用時にはグルリと回して対象に向ける)。

           

観測対象が定まると、グラインダーとブラシを回転状態で近づけていく。先端が岩石に触れると回転数が変化するが、それらはモーターに取り付けられたエンコーダー(回転を検出するセンサー)で把握される。ところが先月下旬、不可解な動作を起こしていることが判明。分析の結果、グラインダーおよびブラシの各モーターに付随する、双方のエンコーダーが故障していることが明らかになった。(下・各部の詳細。ブラシが2本、グラインダーが1本ついている。)

           

エンコーダーの機能が失われた状態では、“安全な”研磨作業が難しい。代替策を検討した結果、先端が岩石に触れたことを検出するコンタクトスイッチの反応を利用することになったという。

今月にかけてその新手法のテストが行われており、良好な結果を得ているという。今月8日には深さ1mmの研磨が行われた(右下・拡大画像)。

           

テストは来週にかけて継続して行われる予定。詳しくはこちらへ【NASA 11.13】

<追加情報 10.29. 2007>

火星面で活動を続けるNASAの火星探査車「オポチュニティ」が先月29日(Sol1338)、火星上でちょうど2火星年目を迎えた。

同探査車は現在、ヴィクトリア・クレーターの縁で露頭の調査活動を続けている。(下の画像は「ケープ・ベルデ」と呼ばれている岬。先月20日撮影された画像データから生成された擬似カラー映像で、細部の特徴がわかりやすいように着色されている。)

            

火星の1年(1火星年)は、地球の687日(約1.9年)に相当する。したがって2火星年は、地球時間でほぼ4年に匹敵。2004年1月25日に着陸し、当初90日の活動が予定されていた探査車は、年明けに丸4年を迎える。

一方、同型車の「スピリット」は先月8日に2火星年を迎えている。詳しくはこちらへ【NASA 10.29】

<追加情報 10.24. 2007>

下は、火星探査車「オポチュニティ」が今月18日に撮影した一枚。オポチュニティは現在もヴィクトリア・クレーター内の露頭で調査活動を続けています。

           

それにしても変わらぬ急角度…ひっくり返りませんように。。大きいサイズはこちらへ【photo: NASA】

<追加情報 10.21. 2007>

下は、火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が2003年5月に取得した画像で、「Tiu Valles」と呼ばれるところの一角。

           

流体によって形成された地形であるのは明らか。流れがクレーターにぶつかり、下流に向かって涙状の堆積が形成されている。大きいサイズはこちらへ。【NASA/JPL/ASU 10.15】

<追加情報 10.16. 2007>

2004年1月より火星面で活動を続けているNASAの火星探査車「オポチュニティ」と「スピリット」の活動期間延長が決定された。(下は今月8日、「スピリット」によって撮影された一枚。同車はこの日、丸2火星年を迎えた。)

            

ミッション開始より5回目となる延長は、2009年いっぱいまで続く予定。詳しくはこちらへ【NASA 10.15】

<追加情報 10.12. 2007>

下は、NASAの火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が撮影した一枚で、2009年に予定されている火星探査ミッション「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」の着陸候補地点のひとつ。

             

この他にも、候補地が多くリリースされています。一覧はこちらへ【MRO HiRise 10.10】

<追加情報 09.28. 2007>

火星探査車「オポチュニティ」はヴィクトリア・クレーターの縁で順調に活動を続けています。最初の目標に選ばれていた露頭に降下し、鉱物分析を行う準備を進めています。

今月25日(Sol1305)、目標と定められた岩石へ接近しました。この週は周辺のチェックなどを行い、本格的な分析は週明けから行われる予定です。下はその際撮影された1枚ですが…かなり傾斜があります…25度くらいだそうです(リリースされたものを25度傾けてみました@管理人)。

            

「オポチュニティは完璧な走りを見せています。傾斜は25度に達しますが、車輪のスリップは僅か10%程度です」と、プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏は語っている。詳しくはこちらへ【NASA 09.26】

<追加情報 09.26. 2007>

下は、火星探査車「オポチュニティ」がSol1302(今月22日)に撮影した一枚。同車は現在、ヴィクトリア・クレーターの縁の部分で内部を伺っており、目の前に広がる岩石の露頭で調査を行っている。

探査車は斜面の上で停止しています。角度は大体14度くらい…結構な急斜面です。
           

      下は、今月19日に撮影された一枚。まるで石畳ですね〜
           

大きいサイズはこちらこちらへ【photo: NASA】

<追加情報 09.17. 2007>

今年6月上旬、2009年秋に打ち上げが予定されているNASAの火星探査車「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」(MSL)の詳細設計審査(CDR)が終了したことが明らかにされた。NASAが発表した。

MSLは、現在火星で活動中の火星探査車より更に大型の車で、地表を移動しながら生命反応にまつわる化学的調査を行うもの。この探査車には過去最大級の科学機器が搭載される予定であり、電力は原子力電池を用いることになっている。CDRはミッション全体の精査を行うもので、機体や科学機器の設計から予算、期間まで全てを検討し、製造段階へ進んでよいか判断を下す重要な審査である。(下・MSLのコンセプトデザイン)

 

この審査の結果、MSLでは当初予算17億ドルに対し7500万ドルの予算超過が確認され、これを克服するためいくつかの修正が行われた。

NASAの火星探査ミッション全般については、緊急の追加予算が必要になったときに備えた資金プールが存在するが、MSLの超過額すべてを賄うことはできないし、他の火星ミッションに与えるしわ寄せも避けねばならない。そのため、現在のミッション設計を崩さない範囲でいくつかの機器とプロセスが省略されることになり、その上でプールから一部資金の補填が行われることになった。

具体的には、一部設計変更や予備機器の割愛、フライトソフトウェアの一部簡素化や地上テストの変更などである。勿論これらはリスク計算も考慮した上で決定されている。

また、着陸時に地上のレファレンス撮影を行う撮像センサー「MARDI」、「MASTCAM」のズーム機能の省略、及び、岩石を削るグラインダーをブラッシングするブラシに変更することが決定された。

一方、「ChemCam」、「SAM」および「CheMin」の各科学機器開発への追加費用は認められなかった。「ChenCam」はレーザーで対象を焼き、そのスペクトル分析を行い、「SAM」は大気や土壌の化学分析、「CheMin」は鉱物化学分析を行うものである。このうち「SAM」が最も開発費を要するものとなっている。

今後、これらの科学機器開発費が超過しても、外部からの資金注入は行われない見込み。

ただ、重要な科学機器は漏らさず搭載が決定され、スケジュールの遅延やキャンセルは一切なかったため、関係者は安堵している。詳しくはこちらへ。MSL概要についてはこちらへ【NASA 09.17】

火星探査車「オポチュニティ」が今月13日に撮影した、ヴィクトリア・クレーター内部。同車は一旦後ずさりして停車中だが、これは最も踏み込んだ所で撮影された一枚(大きいサイズはこちらへ)。

            

結構急な坂なんですねぇ…まっすぐ行けばゴツゴツ地帯…オポチュニティでも走れる程度!?現在、運用チームが今後の走行プランについて検討を続けているようです。【photo: NASA】

<追加情報 09.12. 2007>

NASAの火星探査車「オポチュニティ」が11日、「ヴィクトリア・クレーター」の内部へ向けて一歩を踏み出した。管制部は同車に対し、全6輪がクレーター壁へ踏み出すまで前進をし、その後一旦バックするよう指示を出した。これは、土壌のスリップ具合を見定めるための行動である。

今回の指示には、もしスリップの度合いが40%を超えた場合、その場に停車するコマンドが含まれていた。実際にはバックの際、最後の段階でこの数値を超えたため停車、現在も前2輪はクレーター坂へ踏み入れたままである(下)。

            

同車は4m前進し、3m後退したところで停車している。上は行動終了後に前方のハザードカメラで撮影された一枚。現在、今後の行動について検討と協議が続けられている。詳しくはこちらへ【NASA 09.12】

…かなりフワフワ感がありますねぇ。クレーターの下の方ではズブリと沈み込んだりして…?

<追加情報 09.11. 2007>

下は、火星探査車「オポチュニティ」が今月9日に撮影した「ヴィクトリア・クレーター」の内部。同車は今週、クレーター内部への降下を開始する予定で、それに備えて撮影された一枚です。

            

内部の様子がよくわかります。坂の先には置いたような石が…左斜面からゴロゴロ?あるいはもしや、隕石?大きいサイズはこちらへ【photo: NASA】

<追加情報 09.06. 2007>

6月〜8月に続いていた大規模な砂嵐は収束へ向かいつつありますが、降下する砂が火星探査車へ積もることも懸念されています。しかし、つむじ風がしょっちゅう走り回っており、これがいい具合に積もった砂を吹き払ってくれます。

下は探査車「オポチュニティ」のロボットアームで、最近、風で砂が吹き払われました。吹き払われる前後で全然違いますね。

            

太陽電池に積もっていた砂も飛ばされ、発電量も大きく改善したようです。画像の大きいサイズなどはこちらへ【NASA 09.05】

<追加情報 09.03. 2007>

NASAの火星探査車「オポチュニティ」が先月29日に撮影した「ヴィクトリア・クレーター」の内部。砂嵐も収まりつつある中、探査車の活動も徐々に再開されつつあります。

            

同探査車はこのクレーター内へ進入、調査を行う予定になっています。見た目では大した傾斜ではなさそうですが、実際は結構急なようで…下はカメラを右へ振って撮影されたクレーター縁です↓

            

<追加情報 08.24. 2007>

NASAの火星探査車「オポチュニティ」と「スピリット」が、6週間ぶりに走行を開始した。両探査車は6月より発生した大規模な砂嵐に阻まれ、行動が厳しく制限されてきた。(下・今月21日(Sol1271)の走行後、撮影された画像。目の前にビクトリア・クレーターが広がる。)

             

大気は砂嵐で巻き上げられた砂のため透明度が著しく低下、一時は太陽電池の発電電力が危機的状況の一歩手前まで落ち込んでいた。ただ、ここ2週間ほど新たな砂嵐の発生は確認されて折らず、大気の透明度も回復しつつある。

オポチュニティの発電電力は23日、300ワットまで回復した。これは最悪を迎えていた5週間前の倍に相当するが、まだ砂嵐が発生する前の半分である。大気はクリーンアップされつつあるが、探査車に積もる砂にも注意を払っている。

オポチュニティは21日、ビクトリア・クレーターの縁へ向けて13.38mの走行を行った(上)。これは走行テストの他に、太陽光がよく当たる傾斜側へ移動することにより電力を確保しようという目的もある。オポチュニティはビクトリア・クレーター内へ進入することが決まっている。詳しくはこちらへ【NASA 08.24】

<追加情報 08.22. 2007>

火星探査車「スピリット」の観測によると、砂嵐は収束の方向にある気配を感じさせている。空の透明度は回復基調にあるが、降下する砂が太陽電池の上に積もり続けているため、発電出力は一定の値を保ったままである。

予想では、このまま数ヶ月のうちに砂嵐は収まるとされている。ただ活動は現在も制限されており、今後も暫くは透明度の観測などに限られる見込み。詳しくはこちらへ【NASA 08.20】

<追加情報 08.20. 2007>

下は、火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が取得した、南半球の砂嵐状況。上段は今月上旬、下段は中旬。

             
            

上旬には収束の気配がありましたが、中旬にかけて再び拡大の様子が…もう暫く落ち着く気配がなさそうですね。。最新データはこちらへ【photo: NASA】

<追加情報 08.08. 2007>

6月中旬から大規模な砂嵐に見舞われ行動が極めて制限されているNASAの火星探査車「スピリット」と「オポチュニティ」について、両者の状況ともやや改善の兆しが見受けられるという。

スピリットは約3週間ぶりにロボットアームを動かし、目前の岩の顕微写真撮影体勢を取った(下)。

            

太陽電池の発電量は、スピリットが8月6日(Sol 1276)現在で295ワット時、オポチュニティが5日(Sol 1255)現在で243ワット時。先週がそれぞれ261および128ワット時であったのと比較して、かなりの改善である。ただ、砂嵐が始まる前の700ワット時レベルと比べるとまだまだ予断を許さない。

ただ、発電量の増加のためバッテリーのコンスタントなチャージが始まり、スピリットの方はほぼフルの状態。懸念されていたオポチュニティの車体温度も−37℃から−33.4℃まで上昇しているという。

ただ、状況が厳しいことに変わりなく、今後も慎重に運用を続けるという。詳しくはこちらへ【NASA 08.07】

<追加情報 08.01. 2007>

大規模な砂嵐に耐えているNASAの火星探査車「オポチュニティ」の最新状況について、管制チームは新たな緊張に包まれている。

30日に取得された最新のテレメトリーによると、砂嵐による大気の透明度が7月中旬に迎えた最悪時とほぼ変わらない程度に達し、太陽電池は必要最小限の電力をかろうじて発電できる状態という。

現在、オポチュニティは透明度などごく限られた観測以外は停止され、地球との交信も3日に1回と制限された運用が続けられている。ただ車体の冷却は深刻で、夜間は−37℃まで低下するが、これはヒーター緊急稼働の3℃手前。もしヒーターがオンとなれば電力消費量が発電量を上回り、バッテリーがあがってしまう。

これを避けるため、電子機器の1日あたりの運用時間を若干延長することを決定した。電子機器はそれ自体が熱を出し、その熱は車体を温めてもいる。だがもし大気透明度が悪く太陽電池で充分な発電を確保できなければ、正味が赤字となってしまうのは間違いない。

もしバッテリーの残量が危険ラインを割り込んだら、オポチュニティは冬眠モードに入ってしまう。この場合、太陽電池の電力が回復するまで一切を受け付けなくなる。独自に発電量をチェックし、発電量が規定に回復するまで、数日、数週間、あるいは数ヶ月間でも眠り続けることになる。

管制チームは、このリスクと隣り合わせで運用をせざるを得ないことを懸念している。詳しくはこちらへ【NASA 07.31】

<追加情報 07.26. 2007>

大規模な砂嵐のため地球とのコンタクトも著しく制限されているNASAの火星探査車「オポチュニティ」について、発電電力レベルがやや回復していると発表があった。

これは、26日に取得された最新のテレメトリーによるもの。一方、オポチュニティより状況が軽かった「スピリット」の方が、オポチュニティよりひどい砂嵐に見舞われているという。ただ、オポチュニティが先週経験した最悪の状況よりは軽いとのこと。

オポチュニティの発電量は日量200ワット時と、先週の128ワット時に比べだいぶ改善されている。大気透明度の計測が再開されたが、交信頻度は現状維持のもと、慎重な運用を当面継続するとしている。

砂嵐の収束時期については、現時点では予測が立たないと関係者は語っている。

両探査車は熱源として電力ヒーターとプルトニウム238を含む固形物体を8個搭載している。冷え込む夜間はヒーターとプルトニウム崩壊熱で乗り越えることができるが、プルトニウムだけでは厳しい。ただ、オポチュニティは2004年の運用当初からヒーターを完全にオフにすることができない不具合を抱えており、逆にその分が余計な消費電力となっている。

そのため、発電量の減少下ではバッテリー温存を優先するため、送信機の運用が制限されている。詳しくはこちらへ【NASA 07.26】

<追加情報 07.24. 2007>

大規模な砂嵐に見舞われ身動きが取れなくなっている火星探査車「オポチュニティ」が23日、地球にデータを送信、状況はやや改善の方向へ向かっていることが明らかとなった。

オポチュニティには先週末、発電力低下に伴うバッテリー切れを避けるため、地球との交信を3日に1回へ削減する措置が採られていた。23日、オポチュニティは必要最小限のデータを送ってきたが、それによると、電力状況はやや改善の方向に向いているという。

オポチュニティとの次回の交信は26日が予定されているが、管制チームは24日にコマンドを送信するかもしれないとしている。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 07.24】

<追加情報 07.21. 2007>

下は、火星探査車「スピリット」が1230火星日(今年6月19日)に撮影した一枚。右上につむじ風が走っていくのが見えます。
            

右から左へと走っているようですね。大きいサイズはこちらへ【photo: NASA MarsRovers】

<追加情報 07.21. 2007>

火星面で3年半もの長期にわたり活動を続けるNASAの火星探査車「オポチュニティ」と「スピリット」は、最大級の試練に見舞われている。それは砂嵐だ。

先日より既報だが、ここ1ヶ月近く、火星面では大規模な砂嵐が発生している。太陽光を遮る砂嵐は太陽電池で電力をまかなっている2台にとって重要な問題で、特にオポチュニティの活動域では太陽光の99%が遮蔽されることもあり、死活問題となっている。この最悪の状況は、今後あと数日間ほど続くものとみられている。「我々はこの困難を耐え抜くべく模索していますが、そもそも両車はこの強烈な砂嵐に耐えるように設計されてはいません」と語るのは、NASAサイエンス部門幹部のアラン・スターン氏。

もし今後も深い砂嵐が続けば、電力低下に伴い車体の温度管理が困難となり、危機的な状況に陥る可能性がある。

(下・オポチュニティが6月14日から1ヶ月間にわたって撮影した連続写真。空が火山灰に覆われたような感じで…)

            

砂嵐が始まる前、オポチュニティの発電量は日量700ワット時であったが、砂嵐発生後は400ワット時以下にまで落ち込んでいる。そのため運用チームは殆どの活動をやめ、その場に停止させる状態が続いている。

特に今月17日には、オポチュニティの電力は148ワット時まで低下。これは現状維持に必要とされる最小リミットであるが、18日には更に128ワットまで降下した。ちなみにスピリットの方は、オポチュニティに比べると砂嵐の程度はまだ軽い。

(火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が6月22日(上段)と7月17日(下段)に撮影した火星面。地形の特徴など殆どわからなくなっています。)

            

19日までオポチュニティは一切の活動を停止していたが、それでも電力消費量が発電量を上回っている状態であった。更なる上は、地球との交信を割愛、バッテリーを温存する策を採るしか無く、18日、オポチュニティに翌2日間の交信をカットするようプログラムが送信された。

バッテリー温存のために交信をスキップするのは、今回が初めてである。この処方により、消費電力を日量130ワット時以下に抑えることができる。

現在直面している困難は、乗り越えられなかったらその時点でミッション終了となってしまうもの。幸いにも19日には発電量にやや回復が見られているが、ミッションチームは注意深く砂嵐を観察しながら、運用を続けている。詳しくはこちらへ【NASA MarsRovers 07.20】

<追加情報 07.17. 2007>

大規模な砂嵐が続く火星面では、火星探査車「スピリット」と「オポチュニティ」が注意深く活動を続けています。砂嵐は大気中に広がり太陽光を遮り、特にオポチュニティはこのまま電力レベルが低下すると交信時間も削減する必要が出てきそうとのことです。

下はオポチュニティが撮影した最近(Sol 1233)の様子。大気が砂でかすんでいます。

           

一方、下はスピリットが撮影した一枚。大気のかすみがよくわかります。

            

オポチュニティは砂嵐が収まり次第、30m程移動し、そこからヴィクトリア・クレーター内部への降下を開始する予定です。詳しくはこちらへ【NASA Mars Exploration Rovers】

<追加情報 07.13. 2007>

火星の南極冠に存在する永久水氷(water-ice)に関する詳細な分析がリリースされた。端的に言えば、約5万1000年周期で水が両極を行ったり来たりしているシナリオが考えられるという。

「これはとてもゆっくりとした循環です」と語るのは、今回の論文筆頭著者であるFrank Montmessin氏。これは、欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」に搭載されている「可視光・赤外線鉱物スペクトロメータ 」(OMEGA)により観測されたデータを解析して、明らかになった

マーズ・エクスプレスの観測で南極冠には既に、それまでは未検出だった永久水氷の堆積層が確認されている(2004年)。彼らはこの堆積層の形成過程について詳細な考察を行い、1つのシナリオを描き出した。

OMEGAによる観測データを分析すると、堆積層は基本的に3種類に分類できるという。それらは「ドライアイス混じりの水氷」、「広範囲にわたる水氷のパッチ」、そして「ドライアイスが薄く積もった堆積」である。

(下は、OMEGAが取得したデータに基づく図。「ユニット1」はドライアイス混じりの水氷、「ユニット2」が水氷のパッチ、「ユニット3」がドライアイスが薄く積もった堆積層である。)
            

最初のタイプの発見は、長年唱えられてきた「CO2が水氷をトラップしている」という説を支持するものであるが、しかし、残りの2タイプはCO2トラップとは無関係である。このような違いはなぜ生じるのか?

「我々は、それらのタイプの水氷は、両極を行ったり来たりしているものと考えています。それは約51000年の周期であり、この周期は火星の歳差周期に相当します」と、Montmessin氏は言う。歳差とは、自転軸がゆっくり“味噌すり運動”をすることだ。回転するコマがゆっくりふらつくのも同様である。

地球の自転軸も歳差運動をしており、その周期は約25800年。北極星の位置が少しずつ変化していくのもこの運動のためである(1万年ちょっと経つと、こと座ベガが北極星になるという話でも知られる)。

ところで、火星の公転軌道は地球のそれと比べ、だいぶつぶれた楕円軌道を描いている。そのため近日点と遠日点における太陽からの距離の違いは大きく、これは太陽からの受光量にも差をもたらす。両者の差は5000万kmに達するが、これは太陽−地球間距離の約3割にも相当する。

季節の変化は基本的に自転軸の傾きが原因で生じる現象である。だが火星の場合、これに上述の差を加えることで、観測される状態と水の循環を説明しようというのが彼らの試みだ。

現在、火星の南半球が冬の時、公転軌道上での位置は遠日点付近に、北半球が冬の時、近日点付近に来ている(右・詳しくはこちらへ)。

(ちなみにしたがって、同じ夏とはいえ、南半球の夏の方が北半球のそれよりも30Kも気温が高いです@管理人)

Montmessin氏の研究チームは、状態が現在とほぼ逆であった21000年前まで遡って数値計算を行った。2万年前から1万年前までの1万年間、北極の水氷は不安定な状態で、水蒸気となり南極に容易く移ることが判明したという。南極では年1ミリの割合で堆積が続き、1万年の間に6メートルの堆積層が出来上がったという。

続く1万年前から現代までの間、今度は逆のプロセスが生じているという。南極域の水氷は不安定になり北極域に移っており、1000年前、ドライアイスに水氷がトラップ(CO2 cold trap)されるようになったと考えられるという。

          

上の図で、左は南極域における現在の水氷降着量を表しており、右は21500年前のそれを表している。現在の水氷降着は僅かであるが、2万年前は広範囲で非常に高い割合だったことが示されている。

下の図は、1万年前から現在までの、南極域の水氷とドライアイスの変化を示す模式図。(1)南極域で水氷が大きく成長、(2)南極域での消滅が始まり、水蒸気が北極域へ、(3)ドライアイスが水氷の昇華を妨げている。

           

南極域における水氷の拡張は2万年前前後がピークで、その後、後退が始まる。1000年前頃に何らかの理由でCO2層が水氷の昇華にブレーキをかけ始め、現在に至っている。詳しくはこちらへ【ESA 07.13】

…太陽から最も離れたときに冬である方が氷の堆積は厚いような気がしますが、計算では逆なんですねぇ。

<追加情報 07.13. 2007>

火星面では大規模な砂嵐が続いています。砂嵐は先月末、赤道・メリディアニ平原の西部で発生し、その後急速に広がっていきました。下は火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」による、南半球の透明度マップ。赤いところほど透明度が低いところです。

            

ピークは今月上旬だったようで、下は今月5日から9日に取得されたデータ。赤い領域が最大級です。

            

火星探査車も精力的にダストの観測を行っているようです。ヴィクトリア・クレーターの縁にいるオポチュニティはまだ行動に出れないようです…

その他、最新データはこちらへ【NASA/JPL/Arizona State University 07.13】

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」が今年5月5日に撮影した、南半球の一角(54.6S, 17.5E)。

            

上の中には、流体の流れ出した痕跡と言われる「ガリー」、砂丘、つむじ風の走った跡、明るい岩石の堆積が写っている。これらの特徴は火星面ではお馴染みのものだが、一枚のフレームに全てが存在するのは珍しい。

画面中央上・白く見えているのがガリーで、長年の間に堆積したものと考えられている。その周辺を含む黒い部分は砂丘で、複雑な風の流れが存在するとみられている。一方、右下の白い部分は明るい岩石の堆積。

画面全体に走る黒い筋は、つむじ風の走った跡。詳しくはこちらへ【photo: NASA/JPL/University of Arizona】

<追加情報 07.06. 2007>

下は、火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」(MRO)の高解像度カメラ「HiRISE」によって撮影された、「ヴィクトリア・クレーター」の一部。走り回っているラインは火星探査車「オポチュニティ」が残したわだち。2本が並行に走っている様子がはっきり写っています^^(大きいサイズではっきり)

            

撮影されたのは、先月6日。大きいサイズはこちらへ【photo: HiRISE】

<追加情報 07.03. 2007>

火星面では現在、一週間以上にわたる大規模な砂嵐が発生しており、2台の火星探査車の運用チームは神経質になっている。両車は太陽電池で駆動しており、砂が与える影響が懸念されるからだ。

                

先日発表された、オポチュニティのビクトリア・クレーター内への降下も、時期が遅れそうとの発表がなされた。砂嵐は最低あと一週間は続くとの予想が出されている。オポチュニティは現在「ダック・ベイ」の傍に停車しており、クレーター内への降下に備えているところである。

「砂嵐は両車に影響を与えており、オポチュニティは電力レベルが低下しています。我々は注意深く見守っていますが、クレーター内への降下は今月13日以降に遅れそうです」と語るのは、JPLのローバー・プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。(下は火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が撮影した砂嵐の一部。大きいサイズはこちらへ)

           

「大気の不透明度が小さくなりつつあるというデータがあります。嵐は恐らく、ピークを過ぎ、最悪の状況を脱しつつあるのではと考えています。今はただ、待つほかありません」とカラス氏は語る。詳しくはこちらへ【NASA 07.03】

<追加情報 07.01. 2007>

下は火星探査車「オポチュニティ」が1204火星日(6月14日)に撮影した一枚。この日、「ケープ・ベルデ」へと走行し、「ダック・ベイ」内のステレオ撮影を行った。

            

ダック・ベイは、オポチュニティが降下する予定の場所。走行ルートなどの検討が続けられている。【photo: NASA】

<追加情報 06.28. 2007>

NASAは29日午前2時(日本時間)、火星の「ビクトリア・クレーター」周辺で活動を続けている火星探査車「オポチュニティ」を、同クレーター内に向かわせることを正式に発表した。

注意深く降下し、全てがうまくいけば、再びクレーターの外へはい上がってくることもできるだろうという。「再び外へ出ることができるか否か、それはかなり不透明ですが、しかし、クレーター底に調査する価値が秘められていることに確信を持ち、運用チームに許可を下しました」と語るのは、NASA副理事で科学ミッション部門責任者のアラン・スターン博士。

クレーター壁を降下していくことで、より古い地質に迫ることができると見られている。

           

「ダック・ベイ(Duck Bay)が進入口としてベストな候補と考えられます」と語るのは、プロジェクトマネジャーのジョン・カラス氏。ここは傾斜が15ないし20度で、岩盤が露出した、安全走行ができる場所と考えられるという。下はオポチュニティが撮影したダック・ベイの一部。同車が「ビクトリア・クレーター」で最初にたどり着いたのがここであった。

           

クレーターをはい上がれる可能性は、6輪が問題なく作動したら可能と判断されている。ただ、車はとっくに設計耐久を過ぎており、同型車の「スピリット」は1輪機能しない。オポチュニティはまだ全輪駆動するが、スピリットの故障前に見られたものと似た症状が出始めているとされる。

オポチュニティが降下していく様子を描いたアニメーションはこちら。詳しくはこちらへ【NASA 06.28】

<追加情報 06.26. 2007>

NASAは米東部時・今月28日午後1時(日本時・29日午前2時)、火星探査車「オポチュニティ」の「ビクトリア・クレーター」内への走行の科学的目的とミッション・リスクに関する電話記者会見を行う。

オポチュニティは現在、ビクトリア・クレーターの周辺で地層の調査などを行っている(下・最近の行動軌跡)。最近、ミッションチームの間ではクレーター内への走行可能性が議論され続けていた。

            

会見にはNASAの副理事で科学ミッション部門責任者のアラン・スターン博士らが列席する。詳しくはこちらへ【NASA 06.26】

…ついに、大きな賭にでたようですね。5月頃から議論されてきたようですが…。どこからどのように降りていくのか非常に興味がありますが…ひっくり返らなければよいですが。。

<追加情報 06.22. 2007>

下は、火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が撮影した地表の一部。場所は南極域に近い南緯62.8度、 東経128.5度。

           

黒い部分が口を開けたサカナに見えなくもありません^^; あるいはオーブン手袋か。。詳細はこちらへ【NASA/JPL/Arizona State University 06.22】

<追加情報 06.12. 2007>

火星面で3年半近く活動を続けるNASAの火星探査車「スピリット」と「オポチュニティ」が計測した気温データをグラフ化したものが公開された。1日の最高・最低気温の差が100℃を超えます!

                    スピリットの左前・車体下の日陰における温度変化
           
 
                   オポチュニティの左前・車体下の日陰における温度変化
           

両者とも赤道付近を走行しているが、スピリットの方がオポチュニティよりも赤道より離れているため、季節に伴う気温差が大きくなっている。

極寒は車体の各部、特にモーターに対して大きな影響を与える。例えばオポチュニティのアームを駆動する車体側モーターは低温が原因で機能しなくなったと見られている。一方、最近、オポチュニティの右前輪が“重い”状態が続いているが、低温で潤滑油がうまく流れないのが原因ではないかと考えられている。

オポチュニティの症状は既に機能しないスピリットの右前輪にも見られたもの。詳しくはこちらへ【NASA/MER 06.12】

<追加情報 05.21. 2007>

現在も活動中のNASA火星探査車「スピリット」が、シリカ(二酸化ケイ素)を高濃度に含有する土壌を発見した。濃度は90%に達するといい、シリカがこれほど凝縮された土壌が火星で発見されたのは初めてである。

研究チームはシリカの凝縮には水が必要と考えており、これはかつて火星に海が存在した証の1つであると主張している。

(下は先月20日にスピリットが撮影した土壌で、白い部分はシリカが凝縮している部分。スピリットは6輪のうち1輪が機能を停止しており、引きずる格好で走行している。そのため土壌を深くえぐるようなわだちが残ることが多く、逆に土壌分析には好都合となっている。)

            

スピリットは2004年1月の活動開始以来、水の存在を示唆すると見られる硫黄を多く含む土壌や鉱物、それに火山の爆発的噴火を示唆する痕跡などを発見してきた。今回の発見についてジェット推進研究所(JPL)の地質学者であるアルバート・イェン氏は「これは水が存在したことを示す、最もはっきりした証拠の1つです」と語る。

二酸化ケイ素は地球上では大量に存在し、いわば土壌そのもの。様々なタイプの結晶形を有するが、今回見つかった火星のそれは結晶になっていないという。このシリカが高濃度に凝縮した原因として、太古の火山噴火で出たマグマが海水と接した結果や、温泉などが考えられるという。詳しくはこちらへ【NASA 05.21】

<追加情報 05.03. 2007>

カナダのハイテク企業「オプテック」社が同国宇宙庁に提案していた火星探査計画が、同庁により選定された。

これは「PRIME」(Phobos Reconnaissance and International Mars Exploration)と命名されているミッションで、火星の衛星「フォボス」を精査するのが目的。ミッションでは高解像度カメラで表面を調査するほか、同衛星への着陸も試みるというもの。他国の参加による国際ミッションとされている。

カナダ宇宙庁は、昨年提出されていた12の提案中から選択した。

フォボスは謎に包まれた衛星の1つで、太古の太陽系の情報をとどめていると考えられている。これまでロシアがフォボスへの接近観測を行ったことがあるが、充分な情報が得られる前に探査機との通信が途絶えてしまっている。

70年代には米国の「バイキング」ミッションの周回機が接近、観測を行っている(右・その際に得られた映像)。

一方、このミッションを成功させることが、宇宙開発シーンにおけるカナダの地位向上にも繋がると関係者は期待している。

ところで、着陸地点は既に仮提案されている。それは「フォボス・モノリス」として知られる巨大な物体の近くだという。この岩石は研究者らの興味をひくもので、フォボスの堆積層を調べるに好都合な唯一の場所と考えられている。

                   

詳しくはこちらへ【Spaceref 05.03】

…89年にソ連のフォボス探査機が失敗して以来、ロシアは再びこの衛星へ挑もうと「フォボス・ソイル」ミッションを立ち上げています。フォボス・ソイルは土壌を地球に持ち帰ろうというものですが、カナダのミッションもこれまた楽しみですね。ロシア&相乗り中国、カナダ…こりゃ、フォボス探査もラッシュが…


<追加情報 04.14. 2007>

火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーが昨年11月に消息を絶った問題を調査していた米航空宇宙局(NASA)は13日、コンピューターシステムに絡む人為的ミスにより太陽電池パネルが故障し、探査機は活動を継続できなくなったとみられるとの暫定的な調査結果を明らかにした。

NASAや米メディアによると、交信を絶つ前にコンピューターに間違った制御信号が送られており、これが太陽電池パネルの無力化の遠因になった。昨年11月にNASAが定期のコンピューター調整のために信号を送ったところ、以前に送られた不適切な信号の影響で探査機のコンピューターが警報を鳴らした。

その後、太陽電池パネルは太陽光に直接向き合う角度を取り、過熱によって電池が故障、探査機は活動不能となった。警報が送信された際、探査機の状態が安定していることも同時に示されたため、NASA側は適切な処置を施さなかった。【時事 04.14】

…NASAのプレスリリースはこちら

<追加情報 04.12. 2007>

NASAの火星探査車「スピリット」が、火星のつむじ風のベストショットを捉えた(下)。

            

これは、今年2月26日、搭載のナビゲーションカメラで撮影されたもの。渦の様子がはっきりと捉えられている。連続撮影が行われ、それをつなぎ合わせることで作成された動画も公開されている。

なお、動画の最後の方では移動速度が速くなっているが、これは渦の実際の速度がアップしたわけではなく、撮影の時間間隔が長くなったため(コマ送りのような状態)である。

動画など詳細はこちらへ【NASA 04.12】

<追加情報 04.10. 2007>

今月5日、モスクワの宇宙関連企業・ラボーチキン社にて、ロシアの火星探査機「フォボス・ソイル」の製作会議が行われた。会議では各部門の担当長が集まり、作業の進行状況を報告、意見の交換や今後について話し合いが行われた。また、次の会合を来月中に持つことで合意した。

            

「フォボス・ソイル」はロシアが計画している火星探査で、衛星「フォボス」に着陸、土壌を持ち帰るという野心的なミッション。同国の宇宙開発ビジョン2006−2015における優先事項の1つであり、NPOラボーチキン社が監督・主導する。

             

ロシアが火星探査を試みるのは96年の「マルス96」以来。「マルス96」は米欧が参画する国際共同ミッションであったが、打ち上げロケット「プロトン」の不具合によって火星遷移軌道への投入に失敗している。

同国が最後に火星へ探査機を到達させたのは、1988−89年の「フォボス2号」。同探査機はフォボスの至近距離まで接近し、レーザーによる土壌調査などを予定していたが
89年3月27日、フォボスまで200km足らずを残して通信が途絶えた。「1号」は打ち上げ(88年7月)の2ヶ月後、コマンドミスで失われている。

(右はラボーチキン博物館に展示されているフォボスのモックアップ)

「フォボス・ソイル」は2009年の打ち上げが目標とされている。この計画には中国も参画を表明、今年3月26日には協定書へのサインが行われている。

中国は打ち上げロケットに同国の小型火星周回衛星を相乗りさせ、また、香港理工大学の製作する表土分析システムがフォボス・ソイル探査機に搭載される予定。詳しくはこちらへ【Roscosmos 04.10】

<追加情報 04.02. 2007>

北アリゾナ大学(NAU)の研究チームが、火星に洞窟らしきものを発見した。現在開発中の、洞窟を発見する新技術を適用することで見出されたという。

NAUのグレン・クッシェンおよびジュドソン・ウィン両氏らの研究チームは、火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」により撮影された画像中に、フットボール競技場に匹敵する大きさの“穴”を発見した。洞窟の入り口の可能性が高いという。

「もし火星に生命が存在するのであれば、洞窟内はその格好のチャンスです」とウィン氏は語る。NAU大学院生の氏は「米地質調査所・地球−火星洞窟探査プログラム」のプロジェクトリーダーでもある。

洞窟は地表と異なり、強烈な放射線から守られた空間。生命にとって地表より好都合な環境である。

彼らはマーズ・オデッセイの可視光・赤外線撮像センサー「TEMIS」のデータを分析していたところ、不自然な7個の黒点に気づいたという。これらはリムなどクレーターの特徴を備えていなかったという。(下・その7個の穴)

           

「地球−火星洞窟探査プログラム」では、上空から撮影した赤外線画像より、未知の洞窟を探し出す技術を開発している。洞窟の中は温度がほぼ一定であり、昼夜の温度変化に対する洞窟入り口付近のリスポンスが周辺よりも迅速であることを利用し、対象環境を長時間観測することでそれを浮き彫りにすることができる。

ちょうどそれは、冷たい中に浮かぶホットスポット、また、暖かい中に浮かぶコールドスポットとして見える。

原理の有効性を確かめる第一段階では、ニューメキシコで実験を行い、確かに洞窟の存在を認めることができたという(テスト画像)。ちなみに第2段階では、火星に似た環境下でのテストを行い、同時にどの波長が最も有効かを見出していくという。

(下・このテクニックをTHEMISのデータに利用した例。Aは通常の可視光画像。Bは火星時・午後に、Cは早朝におけるTHEMISの映像。Bでは周辺よりもやや温度が低く(暗)、Cでは周辺よりも高い(明)のがわかる。)

            

穴の直径はおおよそ100〜250m、深さは130mに達するものとみられている(縦坑ですね)。それぞれはメンバーの愛する人たちの名にちなんで「Dena」、「Chloe」、「Wendy」、「Annie」、「Abbey」、「Nikki」、「Jeanne」と呼ばれている。

彼らと指導教官らは、テキサスで先月中旬に催された「第38回月・惑星科学会議」で発見報告を行った。詳しくはこちらこちらへ【NAU 03.29/Space.com 04.02】

<追加情報 04.02. 2007>

下は、火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が撮影した一枚。場所は32.0N、107.0E。

              

一瞬、ヒョウタンツギを連想しましたが、キャプションを見ると「melting snowman」とのこと…。それにしてもなめらかなクレーター底とリムです。自然の造形美。大きいサイズはこちらへ【NASA/JPL/ASU 04.02】

<追加情報 03.30. 2007>

左は、NASAの火星周回探査機「マーズ・オデッセイ2001」が撮影した画像。場所は70.4N・341.3E(右)。

                 

一瞬、雪だるまを連想しましたが、リリースのキャプションにも「perfect snowman」とコメントが…。それにしても完璧なクレーターですね。中はなめらかに埋まっているようで、まるで小麦粉を振ったような…。大きいサイズはこちら【NASA/JPL/MOLA 03.30】

<追加情報 03.15. 2007>

火星の南極域には、非常にぶ厚い水の氷が存在する可能性があることが明らかになった。この氷の層の全てが溶解したとすると、火星面を覆い尽くし、その深さは11mにも達するという。

これは、欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」が搭載する地下探査レーダー「MARSIS」の観測データを分析した結果、明らかになったもの。エクスプレスは南極域を、300本を超えるレーダー走査で“スライス”し、データを収集。それで浮かび上がったのは、深いところでは厚さ3.7kmに達するぶ厚い氷の存在を示唆する地下構造だった。

(下の上下2段画像で、上段はMARSISによる観測で得られた地下のエコーイメージ。一方、下段は該当地表の高度図で、白線は探査機の飛行路を示している。ちなみに高度図は、「マーズ・グローバル・サーベイヤー」で得られていたもの。スライス幅は約1250km。)

            

(エコーイメージは地下深くに及ぶ層の存在を示しており、氷と岩盤の境界面と考えられる部分が白線で映し出されている(最深部は約3.5km)。この白線は途中で消滅しているが、その理由は不明とのこと。)

「堆積層の広さは、ヨーロッパ大陸の大部分に匹敵するものです。存在する水の量はこれまでも推測されていましたが、はっきりと断言できる数値ではありませんでした。」と語るのは、NASAジェット推進研究所(JPL)のジェフリー・プロート博士。

堆積層は極冠のサイズを大きく超えて広がっているという。極冠からはみ出した部分の堆積層は砂などのダストが覆い隠していると考えられており、その少なくとも90%は凍った水であるという。詳しくはこちらへ【ESA 03.15】

<追加情報 02.25. 2007>

2014年の「67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ」(Churyumov-Gerasimenko)彗星(以下、CG彗星)接近を目指して飛行を続けている欧州宇宙機構(ESA)の探査機「ロゼッタ」。2004年3月2日、アリアン5ロケットによって打ち上げられた同探査機は、11年後の到着を目指し、火星や地球への複数回のフライバイを行う。そのうち、火星フライバイを今月25日成功させ、スペクタクルな映像を送り届けてきた。

ロゼッタは、サイズ2.8m×2.1m×2.0mの方形で、重量は打ち上げ時4.67トン(燃料込)。太陽電池を広げた幅は32mで、直径2.2mのハイゲインパラボラアンテナを備える。

地球に3回、火星に1回のフライバイを行い、2014年夏にCG彗星へ接近する。また、接近までの道中、1つ以上の小惑星に接近することが予定されている。地球への第1回目のフライバイは2005年11月に成功し、その後順調に飛行を続けてきた。

ロゼッタは重量約100kgの小型着陸機「ファイレ」を搭載しており、2014年11月に母船より切り離され、着陸が試みられることになっている。ミッション最大のハイライトであり、これが成功すれば、彗星に着陸する初の探査機となる予定(下・想像図)。太陽電池により最低65分間の駆動が保証され、9つのセンサーとドリルを搭載、地表の土壌分析を行う。

           

さて、下の画像は着陸機「ファイレ」に搭載されている撮像センサー「CIVA」により、最接近の4分後に撮影された母機の一部と火星。これまでに撮影されたことのない、まるでSFのような壮観な光景。

           

なお、母機の装置は最接近の前後数時間、電源が落とされていた。上の画像はオートモードでファイレが撮影したもので、電源も自蔵バッテリーにより供給された。これは、実際の彗星着陸の際のリハーサルにもなった。

下は最接近の前日、約24万kmの地点より撮影された天然色の火星。母機の撮像センサー「OSIRIS」によって撮影されたもので、白く漂っているのは大気中の雲である。

           

下は緑と赤のフィルターを通した画像を元に得られた一枚。大気の垂直分布が極めてよくわかる。

           

その他、詳細はこちらへ【ESA 02.25】

<追加情報 02.07. 2007>

6日、火星探査車「オポチュニティ」は着陸以来の通算走行距離が10kmに達した。この日は1080火星日を迎え、オポチュニティは約50.5mを走行、周辺の撮影を行った。

              

オポチュニティは「ビクトリア・クレーター」のリムを順調に走行し、随時科学調査を続けている。パノラマ画像など詳しくはこちらへ【NASA/JPL-Caltech 02.07】

下は、火星探査車「オポチュニティ」が撮影した画像より作成された一枚。

            

長く伸びた影に味があります。大きいサイズはこちらへ【photo: NASA】

<追加情報 01.29. 2007>

画像は、火星探査車「オポチュニティ」が撮影した火星大気に浮かぶ雲の様子。昨年10月2日(Sol 956)、32秒間隔で撮影された10フレームをつなぎ合わせられたもので、流れる雲の様子がよくわかる。方角は北東とのこと。

                     

雲は画面中央でわき出すように発生している。雲の動きに伴う空気の流れとは別に、雲の発生に関わる空気塊が定常していたものと見られている。

なお、正確な雲の高度はわからない。推定幅も大きく、低くて5km、高くて25km程度であろうと見られている。風速も、高度が低い場合は2.5m/s、高い場合は12.5m/sと考えられている。大きいサイズなどはこちらへ【NASA/JPL 01.29】

<追加情報 01.22. 2007>

NASAの火星探査車・活動3周年を記念して行われていたフォトコンテストの結果が発表されています(こちら)。トップは下の画像で、総票数の25.8%を集めました。

            

このシーンは火星の夕焼けで、「スピリット」が2005年5月19日に撮影したもの。火星の夕焼けは青いのが特徴です。さらに、このシーンにスピリットを合成したのが下で、同年11月にリリースされました。

                           夕日に佇むスピリット、何を想う…
             

なお、火星探査車の最近の行動は以下の通り…最初はスピリットで、次はオポチュニティです。

             

             

<追加情報 01.20. 2007>

下は、NASAの火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」が撮影した風筋。

             

この近辺は、年間を通して風の吹き方が一定方向なんでしょうか。そもそも火星大気の動きがどうなっているのか興味あります…このような痕跡から、大循環の平均値などが読み取れる…?大きいサイズはこちら【photo: NASA】

下は、火星探査車「オポチュニティ」が今月14日(Sol 1058)に撮影したヴィクトリア・クレーターの縁で撮影した光景。クレーター底の砂地が、風で波立ってます。

             

はっきりと刻まれた轍。新雪ならぬ、新砂に踏み入れる気持ちよさ〜(?)

             

最近まで、オポチュニティとスピリットは、一度にせいぜい2ステップ程度の自律行動プランしか立てることができませんでしたが、先日インストールされた“Field D-Star”と呼ばれるソフトウェアでは、50m先までの地形と障害を把握し、行動プランを立てることができるようになりました。詳しくはこちらへ【NASA 01.19】

<追加情報 01.12. 2007>

下は、火星探査車「オポチュニティ」が今月4日(Sol 1049)に撮影した一枚。なめらかな砂地の上に転がる岩は、そっとそこに置かれたような感じがします。まるで庭園のように見えますね。ひょっとして隕石?この辺では先日も隕石が見つかりました。

            

この前日(Sol 1048)、オポチュニティはセーフモードにダウンし、予定されていたスケジュールがキャンセルになりました。機能はこの日に回復し、エラーのチェックとテストが行われました。大きいサイズはこちら。【photo: NASA】

<追加情報 01.09. 2007>

ワシントンのNASA本部で開かれている火星探査ミッションフォーラム「Mars Exploration Program Analysis Group」(MEPAG)の会合で、昨年11月から更新不能に陥っている火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」について、更新不能に陥ったのはフライトソフトウェアのエラーによるものであるという報告がなされた。

報告によると、昨年7月に組み込まれたソフトウェアに含まれていたエラーが原因とのこと。このソフトは2つのフライトプロセッサーにシンクロしようとしたが、2つのメモリーアドレスが上書きされ間違っていたという。探査機がセーフモードに陥った際、バッテリーのラジエターが太陽の方を向いてしまい、温度が上昇、バッテリーが壊れてしまったという。詳しくはこちらへ。MEPAGのサイトはこちら。【SpaceRef 01.09】

<追加情報 01.08. 2007>

8日、NASAは選考を続けていた将来の火星探査ミッションについて、それを2つにまで絞り込んだ。両者には補助金が与えられ、プランの煮詰めが行われる予定。

一方、これとあわせて、ESAの火星探査ミッションに参画する米国の研究者や、将来の火星探査に貢献するセンサー技術の開発へ補助金を与える決定をした。

このほど選択された2つのミッションは、大気を詳しく調査し、気候の変化などを掴むのが目的で、革新的かつ安価で火星探査を行うというコンセプトの下で設立されている「マーズ・スカウト」プログラムの一環。このプログラムは公募によって火星探査案を集め、競争原理で絞り込んでいくというものである。

ちなみに、これと似たようなプログラムに「ディスカバリー・プログラム」がある。これも同様のやり方で、太陽系探査ミッションを公募、選定していくというもの。昨年10月下旬にはいくつかのミッションが選定に残り、その中には日本の「はやぶさ2」のライバルになりうる小惑星探査ミッション「OSIRIS」が入っている。こちらはまだ、最終決定は出ていない。

さて、今後9ヶ月間にわたって行われる煮詰め作業の予算として、それぞれに200万ドルが提供される予定。NASAは最終的に1つを選ぶことになるが、それは今年末に予定されている。こうして選ばれたミッションには上限4億7500万ドルが付与され、2011年の打ち上げを目指す。

選定されたミッションは、以下の通り。

「Mars Atmosphere and Volatile Evolution mission」(Maven)

火星大気に関して、関連分野では初となる観測を行う。また、上層大気の運動や電離層の観測を行う。主席研究員(PI)はコロラド大学のブルース・ジャコスキー博士。プロジェクトマネジメントはNASA・ゴダード宇宙センター。

「The Great Escape mission」

火星大気上層の構造と運動を調査することで、火星大気の進化の基本プロセスを直接探ろうというもの。これに加え、メタンなど、生体活動によって生じる成分の調査も行う予定。PIはサウスウェスト研究所のアラン・スターン博士。マネジメントはサウスウェスト研究所。

他、センサーなどについて、詳細はこちらへ【NASA 01.08】

…スターン博士は、冥王星と火星、二本立てですか。体力あるわ〜(笑

<追加情報 01.04. 2007>

下は、火星探査車「スピリット」が撮影した「マクマード・パノラマ」の一部。

           

カメラが捉えている方角は東。わだちの様子から、“Tyrone”と名付けられた部分で引き返し、こちらの方へ走ってきたのがよくわかる(引き返したのは、走破が困難と判断されたため)。深く掘られた溝は右前輪によるもので、この車輪はモーターの故障で既に機能を停止している。現在スピリットは、右前輪を引きずる、すなわち後退する形で走行を続けている。

なお、この画像は擬似カラーであり、実際の色とは異なっている。詳細はこちらへ。大きすぎるサイズ画像はこちらへ【JPL】

<追加情報 01.03. 2007>

3日、火星探査車「スピリット」が火星に着陸して丸3年を迎えた。探査車は未だ健在で、いよいよ4年目の活動に入った。一方、「オポチュニティ」が今月25日、スピリットに引き続き、3年を迎える(下・2004年1月25日、オポチュニティからの着陸信号を受信して歓声に包まれたJPL管制部)。

            

これを記念して、NASA/JPLではフォトコンテストが行われている。ノミネートされている16枚のフォトの中から投票するシステム。詳しくはこちらへ【NASA/JPL 01.03】