米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同で行ってきた土星探査ミッション「カッシーニ・ホイヘンス計画」の最大のヤマ場である「ホイヘンス突入・着陸」が2005年1月14日、大成功を迎えました。会見で「アームストロングの月面到達以来の快挙」と関係者が語るように、素晴らしい内容でした。以下、WebTVを見ながらのメモを基にハイライトをまとめておきます。 (下部にはミッションのタイムテーブルも記載してます) なお、ニュース映像の一部はESAサイト・“Watch the event”(ページ右上)で見ることが可能です。(カッシーニ・ホイヘンス計画公式ページは→ NASA ESA) |
|
14日日本時間17:00 ESA特番、開始 欧州宇宙機関(ESA)製作のTVプログラムが始まる。これと同様のTVメディアとしてはNASAのNASA TVがある。いま視聴しているチャンネルはNASA TVだが、ESAプログラムをそのまま中継している。ちなみにESAやNASAのTVプログラムは放送衛星を使っても流されている。 番組は日本時間17:00(世界時08:00)に始まった。司会進行は白髪の“おっちゃん”(名前、わかんない(^^;)。歯切れとテンポのよい、スムーズな運びで視聴者を惹きつける。テーブルには他にゲストが着き、背後のスクリーンにはミッション関連の画像や、ESA管制部(European Space Operation Center ドイツ・ダルムシュタット)の模様などが映し出されている。 この時間は土星と衛星タイタンの基本情報の紹介、「カッシーニ・ホイヘンスミッション」の全体像の解説等が行われる。タイタンが地球の月よりも大きいこと、分厚い大気と濃いエアロゾルに覆われ地表が見えないこと、ひょっとしたら液体メタンが存在するかもしれないこと等が、ゲストを交えて解説される。 17:30、一旦放送終了。 長い一日が始まった。 |
|
19:00 中継再開 特番の再開、ウィンドウズメディアで視聴。しかし画像は出るものの、音声が出ない…そのまま6分ほど待つ。画面は司会を中心に、ホイヘンスミッションのブリーフが行われている。 「おぃ!音声がでてねーぞ!」とメールしてやろうかという衝動に駆られるが(笑)、リアルプレーヤー版で再生すると、音声が出ている!「はぁ〜どうなってんの!?」と思っているうちに、Wメディアの方も音声が正常に出るようになった。司会のおっちゃん、既にテンション高め?(笑) ※リアルプレーヤーで見なかったのは、込み入っててストリームがとぎれ気味だったからです。。 |
※おっちゃんはゲストを紹介する際、「このミッションに何年関わってきましたか?」と必ず聞いていました。「いや〜、12年です」等と答えるゲストの表情が印象的。 この計画にエンジニア人生の大半をかけた人もいます。大勢の人が、様々な想いを込めてきた、その総仕上げの日なのです。 |
ホイヘンス開発に関するレポート ホイヘンスの開発に関するレポート(苦労話)。大気圏突入におけるハイGを再現する「ハイGテスト」で20Gまでテストが行われたこと(遠心加速器で振り回す)や、高温への耐久性チェック(炉で過熱する)、スウェーデンにおけるパラシュートのデザインチェックなど。 また、最大の懸念であった、ホイヘンス−カッシーニ間のドップラーシフト問題の克服に関し、担当チーフを質問攻め。チーフは、「この問題が生じたとき私はかなり考え、対策を協議し、結論を引き出した。しかし、私の力は僅か。チームのみんなが一丸となって克服した(写真・右下)」と力強い。 しかし司会のおっちゃん、田原総一朗並みの勢いで「大丈夫ですね!?」と何度もダメ押しをする。右手の平をたてて前に突き出すリアクションがないだけ(笑)。担当者はややたじたじで「バッチリ、大丈夫です!」と答える。ドイツ語?なまり。 ※「ドップラーシフト問題」…ホイヘンスの通信関係にドップラー効果対策が施して無く、当初の予定でいくとホイヘンスからの電波をカッシーニが受け取れないという事態。2000年秋に判明。詳細と対策はこちら(英語) |
|
19:34 信号、受信! 司会を中心とした解説が続く。テーブルの後ろにはESA管制部からのライブ映像が流れているが、画面向かってテーブルの左側に座るゲストがその映像をちらりと見て目頭を押さえる。司会は何も気付かずに進めるが、数秒後「管制部から新たな動きがあったようです」と、右のゲストの解説をやや遮りながら速報、画面が管制部に切り替わる。 管制部からの中継。先ほど、グリーンバンク電波望遠鏡がホイヘンスからの直接波を受信したとの第一報!「はっきりとした力強いシグナルで、間違いない」とだめ押し。シグナル受信確認の直後、歓声があがり、関係者は安堵と喜びに包まれているという。右写真・偉そうに座っているアナタは誰?(笑) ※ゲストが目頭を押さえた映像を見て、“なんかまずいんじゃ…”と思いましたよ。予定時刻はとっくに過ぎていたし。ビーグル2の再来かと。ハラハラさせやがって(笑) (ビーグル2…ESAの失敗した火星着陸機) |
※グリーンバンク他、世界各地の大型電波望遠鏡が受信にあたりました。直接波は“キャリアー”と呼ばれる信号で、データそのものは含まれていません。ホイヘンスの降下の間、カッシーニとの通信は途絶しており、ホイヘンスの消息を確認する手がかりはこのキャリアー波のみです。 |
解説が続く… タイタンを発見したクリスチャン・ホイヘンスがタイムスリップして登場。「あれは25才の時でした…」とタイタン発見の時の興奮を語る寸劇(写真)。 他、過去の土星探査ミッション(ボイジャー2号など)の思い出を司会を交えたトーク。 21時30分から記者会見の予定とのこと。それまでライブ中断。 |
|
21:30 記者会見 ESA報道ルームにおいて、今日2度目の記者会見。21:30、進行役の女性が“Ladies and gentlmen, please take your seat, thank you”とアナウンス。記者達が席へと座り始めるが、話を続けている人も(写真・左上)(…世間話は後からしようぜよ(笑))。2134 全員が着席したところで、記者会見が始まった。 司会による挨拶(右上)の後まず、「ホイヘンスが今日、タイタンへ突入しました…」と型どおりのスタート。続いてミッション責任者が、企画から25年間に渡るミッションであること、世界中の研究所で、数千人が関わったということ、などを綴る。グリーンバンク電波天文台で受信されるシグナルには、厳粛な、荘厳な感じがしたという感想なども披露。現在もなお、オーストラリア・パークスのJPL大型電波望遠鏡でシグナルを受信中との発表。この直後、大きな拍手がわき起こった。「この後数時間で何が起こるか楽しみだ」という関係者のコメントが印象的。 会見で担当者は“Baby is out of womb”(赤ちゃんが生まれた)と表現、その喜びと共に、これからどんなデータが得られるのか、どんな事実がもたらされるのか期待をときめかせている。 記者達は銘々、様々な表情で会見を聞き入っている。メモを取るもの(下)もいれば、猛スピードでPC(Think Pad?)をたたく女性記者も…。 一通りブリーフが終わると、質疑応答へと移った。しかし、殆ど質問はでない…“Any question?”と司会が促すと、3名が質問にたった。1人目は音声が悪く何を質問したのかわからなかったが、2人目は「突入は地上から見えたのですか?」という質問だった(と思う)。「天気が悪くて望遠鏡が向けられなかった。火の玉は見えませんでしたよ」と冗談気味に解説するが…ウケず。。3人目は「グリーンバンクで直接した電波を、どうやってホイヘンスからのシグナルだと見分けるのですか?」という質問。「かなりイイ質問ですねー」という切り出しに続き、「ドップラーシフトで判断します」と解説。 「他に質問はありませんか?」という促しにも手が上がらず、21:49分、会見終了。次の会見ではデータの速報を披露する予定とのこと。ライブも一旦終わる。 |
※2人目の質問の内容はちょっと聞こえないところもあって、やや不確実です。違っているかも…。ただ、タイタンの突入を地上から光学望遠鏡で観察しようと言うプランはあり、遂行されています。大気圏突入の際、高温でプラズマ=ファイアボール(火の玉)が形成されるため、それを光学望遠鏡で捉えようという試み。使用する望遠鏡はハワイ・マウナケア山頂のケック天文台の“双子”望遠鏡。1基の口径は10mで、これは世界最大です。 |
22:30 ESA特番、再開 司会の例のおっちゃんが現れ(左上)“We have good news, Dream is alive”と満面の笑みでトーク。現在もデータは送信されてきているとレポート。スタジオにはゲストとして各部門のチーフが3人並んでいる。まず各々に感想を聞く…大気エアロゾル測定器の主任はフランス人のじいちゃんで、フランス語なまりで「素晴らしい」と笑み。ホイヘンスの電波を直接受信する主目的は、正確な位置を把握し、大気の運動を明らかにすることと説明。 続いてホイヘンスに搭載の各機器に関する詳細な披露が始まる。しかしエアロゾル測定器の説明では、フランス語と英語のチャンポンで何を言っているのかよくわからない。隣のゲストも時折、難しい顔を…と気付いたらついに、フランス語オンリーに(爆)。司会のおっちゃんが通訳しながらインタビュー(笑)。 続いてガスクロマトグラフ質量分析計の説明。どのように大気を採取し、物質を分離するかということをわかりやすく解説(中・左)。その後、レーダー(?)担当が開発における苦労話を披露(左下)。また、“超低温魔法瓶”でタイタンと同じ超低温環境を作りだし、各種パーツを試験する記録映像など。 23:03、管制部からのレポートが入る(右下)。着陸は21:45であったことが確認された。現在なお、順調にシグナルが受信されており、ホイヘンスは地表で確実に生きていることをレポート。「あとどのくらい送信されてくるのか?」という司会の問いかけに、「あと約1時間」と。また、大気圏突入の地球からの直接観察に関して、「今のところファイアーボールの確認の情報は入っていない。マウナケアの望遠鏡では見えなかったようだ」とのこと。 その後、未来のタイタン探査(飛行船を浮かべて飛び回り、ローバーをおろし、サンプルを採取する)などのヴィジョンの紹介のあと、終了。 ※土星はこの時、日本ではほぼ天頂、ハワイではやや西よりに輝いているのが見えます。 |
中・エアゾル担当、右端・ガス担当 |
0:01 ESA特番、再開 カッシーニ、地球へ ホイヘンスからのデータは着陸から2時間以上経過した今なお、地球で受信されている。一方、カッシーニは地球へデータを送信すべく、アンテナをホイヘンスから地球へと既に向け直している。プレイバックは1時間以内に到達予定。 |
※ホイヘンスからの送信が続いていても、カッシーニはプログラムに従い、アンテナを地球に向け直します。 |
0:26 地球との交信、確立 ホイヘンスから地球へのシグナルが到達、管制部で拍手が起こる。ただ、「この段階ではまだ何とも言えない…データがまだ来ていないからだ」と関係者は冷静。データの到達まではもう暫く時間がかかるとのこと。。 |
※カッシーニはホイヘンスから送られたデータを蓄積していました。その量、約500MB。これを今度は地球へ向けてプレイバック(再生)します。 |
1:08 緊張みなぎる管制部 カッシーニからの最初のデータがまもなく到達する予定。人々がコンソール(操作卓)に集まりモニターをのぞき込む。はやる気持ちと緊張が管制部を覆い、皆声が小さい。もうそろそろ来てもよい頃なのだが… ※予定では01:10頃には到達するはずでしたが、これを過ぎてもなおデータが来ませんでした。見ている私もだんだんハラハラしてきました(汗)。 |
|
01:20 データ、到達! コンソールに着席し、ヘッドセットをつけたヒゲの男性(右写真)が左手で画面を指しながら、何か呟き始め、次の瞬間、周囲から“Oh!? Ya! Oh~ka~y!!”ホイヘンスからの最初のデータが到達、管制部は大歓声と拍手の渦!人々の顔に安堵と笑みが戻る! |
|
01:35 記者会見 ESAメディアルームでの記者会見。冒頭、“This morning we had an engineering success, and this afternoon scientific success”という第一声に対し、会場は大拍手に!“We are the first visitor in Titan”という表現も印象的。 ホイヘンスはいまなお電波を出していることをレポート。“Long after touch down, more than two hours…”と息をつくと、聴衆から再び歓声と拍手。 エンジニアリングの極みを称え、関わった全ての人たちに対する謝辞とお祝いを述べる。次に女性関係者(赤服)が「我々は歴史の目撃者になった」と続き、ヨーロッパと米国の協力の下で達成されたこと、今日の日を祝うことを強調。しかしその後いつのまにかドイツ語になり、何を言っているのかチンプンカンプン(笑) 会見で、現在“チャンネルB”での受信が異常なく行われている。パラシュートは予定時刻の15秒以内に展開されたこと、地表から高度50キロの地点でホイヘンス内部の温度が25度であることなどがレポート。 なお、“チャンネルA”で送られるはずのデータが送られてきていない。これはドップラー風速計測に関するデータであるが、その他のデータはチャンネルBで問題なく送信されており、この点(チャンネルA)を除けば充分な量のデータが得られたと報告。 「画像や、音など…具体的なデータはいつ見せてもらえるのか?今夜か、明日か?」という質問に対し、今夜だという返答(日本時間では15日朝)。 02:25 記者会見終了 |
※チャンネルAからのデータは結局得られず、これに含まれていたドップラーウインド計測データは失われたとのこと。また、このチャンネルで送られてくる予定の画像も失われたそうです(約350枚)。 ※この会見の時にもなお、地球ではホイヘンスの信号を受信できていましたが、母船・カッシーニの視界からは既に外れていました。 |
日本時間15日05:00 最初の画像を公表(現地時間 14日夜) ESAは記者会見で最初の画像を公開。全部で300枚以上撮影されたものの中の3枚とのこと。 左上は、最初に撮影されたタイタンの地表。高度16キロで撮影されたものとのことで、海岸線とも解釈できるラインが上下に貫いているが、右側の黒い部分が液体なのかどうかはまだ不明とのこと。また、川か渓谷のようなラインが無数に走っているのがわかる。「何か液体のものが存在するかもしれないが、現段階では何も言えない」と解説。 左下は別の1枚。中央に、明らかに滑らかである地形が見て取れるこれが何なのかはまだ不明。 右の写真は、着陸後の地表の様子。遙かに地平線が見えるが、かすんでいる。手前は岩がゴツゴツしている。一見、火星の地表のように見える。 ※この後、数時間後に追加リリース予定でしたが、結局19:00となりました。 |
|
19:05 最後の記者会見 “Good morning from ESA control room”という挨拶で始まった、ホイヘンスミッションに関する最後の公式記者会見。ここでは各観測機器から得られたデータの速報と、現段階でわかる概要の解説。 科学データ(SSP)に関するダウンリンクには3時間36分要したと公表。これには9つのセンサーで得られたデータが入っているが、残念ながら、1つのセンサーは着陸後に壊れたようで、そのデータは入っていなかったとのこと。続いて、各科学観測部門の責任者による簡単な会見。 まず、グリーンバンク電波天文台で最初に得られたシグナルに関して。横に置かれたスクリーンに、受信されたシグナルが映し出される。説明するチーフは「もう言うまでもなく、この力強い、一本の高い線がホイヘンスのトーンシグナルだ」と説明(写真)。 また、VLBI(超長基線電波干渉計)によるデータのCGプレゼン。ここで示されたデータは2つの電波望遠鏡による干渉データであり、これらを組み合わせることでホイヘンスの動きを詳しく解析することが可能と解説。 続いて、加速度センサーによる機体にかかったGに関して。大気圏突入の際、最高で13Gが計測されたと発表。また、地表に突き刺さる“ペネトレーター”も充分に機能したとのこと。 次に、エアロゾル関連について。昨日のフランス人のじいちゃんが説明するが、やはりフランス語なまりが強く、英語であるのは確かだが何を言っているのかわからない…(^^; 続いて大気圧力と温度などに関して。突入90分後の温度が−180℃以下であったとのこと。圧力のピークの位置など、興味深いデータが得られた模様。 次に、サウンドに関して。ホイヘンスにはマイクが搭載してあったが、このマイクで得られた音を披露。ただし、かなりの部分のデータが抜けており、コンプリートに再現することは不可能であったので、抜けた部分を人為的に修正したとのこと。 まず、降下中に得られたサウンドを披露。「ザー」というシグナルが続く。ノイズの背景に何か聞こえる。周期的なサウンド… 続いて、地表で得られたサウンド。これはテクノ風に加工してあったが、その変化に併せてサウンド担当チーフが手振りをする。その動きが見事に「曲」にマッチしていて、会場爆笑。大ウケ!最後に、降下中に得られたサウンドに関して、その背後に周期的なサウンド、擬態すれば「ゥイーアーティェモ!」という感じのサウンドの繰り返しが聞こえるのだが、これは「彼のポンプの音です」とジョークをカマして終了。ポンプ、ややウケ(※エアロゾル測定器はポンプで大気を吸入します。彼とは、フランス人じいちゃんのこと(笑))。 ※音が聞けますhttp://www.esa.int/export/esaCP/SEM85Q71Y3E_index_0.html 更に続く。今度はガスクロマトグラフ質量分析計のチーフが登場。高度18ないし20キロの地点でメタンの濃度が高くなっているが、これはメタンの雲の存在を暗示するものではないかという初期分析。また、窒素は同位体比に関して、16Nの割合が高いという報告。 次に、いよいよお待たせ、画像の出番。昨日のリリースに続いて、今日は新たに4枚の画像がリリースされた。 まず、降下中に得られた鳥瞰図的スナップ(1枚目)。隆起加減の地形が上に広がり、下には滑らかな状態が広がる。この暗い部分の詳細はまだ不明。高度8キロから撮影されたもの。解像度20メートル。 お次は、昨日公表された地表の画像にスケールをはめ込んだもの(2枚目)。それに続き、地表のパノラマ画像(3枚目)が公開、歓声と拍手が上がる!これを見ながら、これまでの局部的な拡大図がどこに対応するのかを解説し、また一部を指しながら、「ここにメタン(or エタン)の霧のようなものが漂っているのではないか」という初期推測を披露。 4枚目にカラーの画像が出る。これはスペクトルデータから割り出して着色したもので、実際にカラー撮影したものではない。実際の色にできるだけ近づけてあるという。 一通り発表が終わり、質疑応答に入る。 「地表に水の氷や氷に覆われている部分があるのか?」という質問。これに対し、「まだわからない。CNNにはそのように出ていたようだが、はっきりとしたことはわからない」と返答(※CNNニュースには確かに、氷のロックがあると出てました…これってCNN記者の推測と思いこみということ?)。 今回は興奮から1日経ったということもあって、やや突っ込んだ質問が続く… 前列のじいちゃん(記者というより、科学者?)が質問・「エタンとメタン、アセチレン…検出されているのは何ですか?」 これに対し「メタンのみです」と返答。ところがこのじいちゃんが突っ込む… じい「多くの炭化水素があるというのでは…」 チーフ「いや、現段階ではメタンだけが検出です」 じい「しかし今までの話じゃ、いろんな炭化水素があるって言ってたよね!?」 チーフ「いや、それはあくまで“予測”であり“希望”です。これからの詳細な分析で明らかになります」 食い下がるじいちゃんを振り放すが、かなり苦しそう…。 なお、地表のイメージからはアルベド(反射率)が計測できるので、実験室で作り出したタイタン地表と同じ環境で炭化水素を調べることで、どんな物質が覆っているかを判断することができるという、多少突っ込んだ説明も披露。 集中砲火にいたたまれなくなったのか、ミッション責任者が、「今はミッションを達成したエンジニアリングを祝う場であります…」と話の流れを修正しようとする。サイエンスは今はやめて欲しいのアリアリ。ややキレ気味。。 「他に質問は?」という問いに対し、サウンドの音域に関する質問(なるほど、“エンジニアリング”だ)。これにさっきウケを取ったサウンド部門のチーフが「先ほどの音は現実の音ではない」に続けて「我々の聞こえる可聴範囲に周波数を置き換えたものです。これは、本来は雷を捉える目的で、大気中の電子の振る舞いを記録するものでして…それをサウンド化したものです」と解説。 ここでなんと、フランス人じいちゃんが助っ人!「…彼がさっき、ポンプの音だと言ったのも、勿論、ジョークですからね」と笑いながらだめ押し。 20:06に会見の途中であったがwebTVでの中継は終了。 最初の中継からほぼ丸1日経過。全てのイベントが終了しました |
グリーンバンク受信のシグナル 加速度センサーの記録 ペネトレーターからのデータ 大気圧及び温度グラフ ガスクロマトグラフのデータ ※ホイヘンス撮影の画像はESAのHPより ※今後、更なる発表が楽しみですね! |
ミッション担当の主な関係者たち ホイヘンスミッションを主導した主な関係者。統括責任者はLebreton氏で、上の解説中、“フランス人じいちゃん”とあるのはIsrael氏。サウンドを「彼(Israel氏)のポンプの音だ」とジョークしたのはLunine氏。その他、チーフ一覧はこちら。 ホイヘンスミッションチーム ホイヘンスインベスティゲーター |
||||
Jean-Pierre Lebreton
ホイヘンスミッション責任者(ESAミッションスペシャリスト 専門:惑星科学・プラズマ物理) |
Guy Israel, エアロゾル担当 (Service d'Aeronomie, Centre National de la Recherche Scientifique, France) |
Martin Tomasko, カメラ及びスペクトロメーター担当 (University of Arizona,USA) |
Hasso Niemann, ガスクロマトグラフ質量分析計担当 (NASA's Goddard Spaceflight Center) |
Jonathan Lunine, タイタン大気及び表面調査担当 (University of Arizona, USA) |
ホイヘンス突入までのタイムテーブル (時刻は日本時間・これは“地球時間”です。実際のイベントは約70分前に起こったことになります。またこのテーブルは「予定」であり、実際は多少異なります) |
|
14:51 | タイマーが起動し、電子機器のスイッチが入る タイマーが作動し、ホイヘンスのオンボード機器が“眠り”から覚め起動を始める。データ送信機はローパワーモードでスタンバイ。 |
17:09 | カッシーニ、大型パラボラをタイタンへ向ける ホイヘンスからのデータを受信するため、パラボラアンテナをタイタンへ向け始める。12分後、完了。 |
17:24 | カッシーニからの通信、途絶 カッシーニとのXバンドでの通信が途絶。この後、全ての行程はオンボードプログラムに従い行われる。地上との交信は途絶えるため、ホイヘンスが大気圏突入に耐え抜いたか、きちんと降下しているか否かは地上の大型望遠鏡群での直接受信により確認される(データの受信は不可能だが、ビーコンの受信は可)。 |
19:13 | ホイヘンス、“インターフェース高度”に到達 インターフェース高度は地表から高度1270キロの地点と定義されているところ。この高度までタイタン大気は広がっていると見なされている。この後、時速2万キロで大気圏突入、耐熱シールドは約3500℃まで上昇の予定。 |
19:16 | 耐熱シールド、最高温度 ホイヘンスの耐熱シールドが最高温度で、機体に加わる力が16Gに達しているころ。 |
19:17 | パイロットパラシュート、展開 速度が秒速400メートルまで落ちたこの時点で、パイロットシュートを展開。高度180キロ。パイロットシュートは直径2.6メートルの小さなもので、探査機のリアカバーを外すのが目的。展開から2.5秒後にリアカバーを引きはがし、その後直径8.3メートルのメインシュートが展開する。 |
19:18 | ホイヘンス、カッシーニへの送信を開始。耐熱シールドを分離。 高度160キロで耐熱シールドを分離。パイロットシュート展開の42秒後、ガスクロマトグラフ質量分析計及びエアロゾルコレクターが展開し、各種大気成分測定器をつけたブームが伸びる。また、搭載カメラが最初のパノラマ画像を撮影、以後これは着地まで継続。底部に取り付けられた地表観測装置に電源が入り、起動を開始する。 |
19:32 | メインシュート分離、ドラッグシュート展開 Tドラッグシュートは直径3メートル。この時点で高度125キロであるが、メインシュートだと降下が遅く、地表到達前にバッテリー切れとなる。従ってやや速度を上げるため、より小型のシュートを展開する。 |
19:49 | 地表センサー、起動 地表まであと60キロ。上記の行程まで、ホイヘンスに搭載のタイマーに従って進行してきたが、この後は地表までの距離を測定しながら各プロセスを進めていく。 |
20:56 | “アイシング・イフェクト” タイタンの超低温がホイヘンスに影響を与え始める頃。この低温が機器にどのような影響を与えるかは、実際のところわからない。 |
20:57 | ガスクロマトグラフ質量分析計、大気サンプルを収集 ホイヘンスに搭載された機器が全て同時に起動するのはこれが最後。ホイヘンスは降下時に毎分1〜20回転の割合でスピンしているが、これにより降下地点のパノラマ画像が得られるものと期待されている。 |
21:19 | カッシーニ、タイタンへ再接近 カッシーニ、タイタン上空に最接近。距離6万キロ、時速2万キロ。 |
21:30 | カメラの傍につけられたランプ、点灯 地表を照らすランプが灯される。これは撮影カメラにもそうだが、特にスペクトロメーターにとって、地表の正確な構成物質を割り出すために重要なもの。 |
21:34 | 着地! ホイヘンス、秒速6メートル程度で着地。地表は岩石質か、氷の上か、或いは液体メタンの上か、ついに明らかに。観測機器が地表の状態を分析し、カッシーニに送信する。なお、液体の上だった場合、底部につけられたソナーでその深度も測定される。カッシーニは着地後、最悪でも3分程度は活動できるように設計されている。 |
23:44 | カッシーニ、ホイヘンスからのデータ受信、終了 ホイヘンスがカッシーニの視界から外れるため、これ以上のデータ受信は不可能。 |
23:54 | カッシーニ、パラボラを地球へ向ける 3分後に姿勢制御、完了。 |
24:14 | 最初のデータが地球に到達 各地の大型電波望遠鏡でホイヘンスからのデータを受信する。万を記して、これから数時間かけてプレイバック(再送)が2度行われる(つまり、データ送信は計3回)。データは直ちに担当研究者に送られ、画像を含む最初の速報が日本時間15日早朝に予定されている。 |
検索でこちらへ来られた方へ
トップページはこちらです→インデックスへ