超新星爆発は、太陽より遙かに質量の大きい恒星が最後に起こす大爆発であるが、そのメカニズムの詳細はこれまで謎の1つだった。スーパーコンピュータによるシミュレーション解析は進歩したが、この大爆発はうまくいかない部分も多かった。しかしこのほど、爆発を引き起こすファクターに“音波”を加えると、画面の中でもスムーズに超新星爆発が起こせそうなことがわかったという。
太陽質量の20倍や、それ以上の質量を持つ恒星は、その進化の終末で超新星爆発を起こす。これは中心部分が自己の重力に耐えきれず、電子が陽子の中に溶け込むなどの超現象が生じ、一気に崩壊、まさに中心が陥没することで始まるとされる。中心の陥没後、直径10km程度の中性子星が生じると、落下してくるガス層がその表面でバウンスし、その衝撃波が内部から外部へ伝播をすることで恒星全体を吹き飛ばすと考えられてきた。
(右:「カニ星雲」として知られるM1。1054年に起きた超新星爆発の残骸で、この時の爆発は日本でも観測され、記録が残っている)
なお、崩壊の際にニュートリノが生じるのだが、これが衝撃波へエネルギーを供給しているとされてきた。
ところがこのモデルには難点がある。ニュートリノは物質との相互作用は殆どないため、楽々と恒星外部へ逃げていくが、ニュートリノエスケープは衝撃波にエネルギーを充分に与える前に恒星外へ出てしまうというケースが殆どで、その場合、衝撃波がエネルギー不足で表面に到達することができない(つまり、大爆発に至らない)という矛盾も同時に導き出してしまうのだ。
超新星爆発を研究しているアリゾナ大学のアダム・バロー氏が率いるチームは、この難点を解決するファクターとして、“音波”の存在を指摘する。彼らは最近行ったシミュレーション解析で、音波を導入するとうまく説明できることを示したという。
これまでのオーソドックスな解析は、中心に中性子星(コア)の存在を仮定し、その振る舞いは無視することで行われてきた。ところが彼らは、中性子星本体の振る舞いを考慮して解析を行ってみた。
その結果、落下してくる物質はコアに(球対象ではなく)偏った激突の仕方をし、それがコアを激しく振動させ音波を発生、それが激突した部分と反対側に伝搬する。この音波は衝撃波に加わり、恒星全体を吹き飛ばすのに充分なエネルギーを与えることが判明した。「ニュートリノが関わらなくても、爆発を起こすことが可能だよ」とバロー氏は言う。
この音波メカニズムは非常に非対称なものであるため、生じた中性子星に大きな“キック”を与える。このことは同時に、多くの中性子星が秒速1000kmを越える猛スピードで宇宙空間を動くことも説明する。またこのモデルは、軽元素どうしの融合を充分に促し、金やウラニウムといった重元素を生成することも可能とする(これまでのニュートリノモデルでは表現できなかった)。さらには、超新星爆発の残骸が非対称であることも説明するという。
また、同様のシミュレーション解析を別のチームもより詳しく行っており、やはり同じような結果を得ている。音波は、これまで謎の1つだった超新星爆発の詳細なメカニズムの大きな鍵になりそうだ。【Sky&Telescope
11.04】