先月上旬、一人の天文愛好家が、地球を周回する正体不明の物体を発見した。地球に非常に接近する小惑星は度々見つかるが、今回のものは接近ではなく、「周回」つまり、地球の回りを公転しているのだ。
地球の周辺には、人工衛星やその残骸も含めて、数千に上る物体が飛行している。それらの大半はレーダー等で追跡されているのだが、今回の物体はそのリストにはなかったもの。また、その軌道の特徴から「地球の引力に捕らえられた、新しい『月』ではないか」との憶測が広がり、天文界を一躍賑わせていた。これが人工的なものではなく、天然の“岩”であれば、2番目の月ということになる。教科書も書き換えられることに…?
サイズが小さいだけに、それが岩なのか人工物なのか判断が難しく、米航空宇宙局(NASA)を中心に、アマチュア愛好家達も加わり、この天体の追跡と確認が急がれていた。その結果、先月末に結論がでたのだが…1969年に打ち上げられたアポロ12号・サターン5ロケットの第3段目であることにほぼ間違いないという。残念、岩ではなかった。
1969年〜72年にかけ、月に人間を送り込んだアポロ計画で米国は、空前の大型ロケット・サターンXを用いた。高さ100mを超える、5段構成のこのロケットの第3段目(写真)は燃焼終了後、廃棄軌道に乗せられていたのだが、12号の場合は制御ミスがあり、地球の近くを並走して太陽を公転する軌道へ。その後しばらく追跡されたが結局、行方不明になっていたのだ。
それがふらっといつのまにか、再び地球の回りを周回していた、というわけなのだが、詳しい解析の結果、来年あたり再び地球から遠ざかるようだ。帰ってきたと思ったら、また出て行くのか…。【Reuters/
photo: CNN】
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