2008年5月16日(金)午後4時より、鹿児島市県民交流センター大ホールにて、土井隆雄宇宙飛行士・帰国報告会が催されました。同じ催しが既に東京および筑波で開催されていましたが、土井飛行士の希望により、宇宙基地のある鹿児島でも行うことが決まったのだそうです。前日、15日には種子島で地元小学生との交流会がありました。
この報告会には3月11日〜26日の約2週間、スペースシャトル「エンデバー」(STS−123)に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)の組み立て作業に当たったクルーが参加しました。土井飛行士の他に参加したのは、船長ドミニク・L・ゴーリ飛行士、パイロットのグレゴリー・H・ジョンソン飛行士、ミッションスペシャリストのロバート・L・ベンケン、リチャード・M・リネハン、マイケル・J・フォアマンの各飛行士。
司会進行は、元KTSテレビアナウンサーの坂口果津奈さん。
まず、主催者を代表して、鹿児島県企画部・山田裕章部長による挨拶(約5分)。続いて、クルー登場、紹介(会場、拍手)。地元小学生による花束贈呈。子供達はクルーよりワッペンをもらう。この後、子供達が会場の方を向き、記念撮影。
小学生退場の際、左端の男の子はクルー全員と握手(会場爆笑)。クルーは舞台左の椅子に着席。
報告会は約60分。前半40分はスライドを交えながらミッションの進行を時系列で紹介、後半20分は質疑応答の2部立て構成。
☆前半・ミッションレポート☆
船長、ゴーリ飛行士からの挨拶。
「こんにちは、どうもありがとう。この美しい鹿児島に来れて本当に嬉しいです。エンデバーでの飛行は大成功で、日本の上も何度も飛行しました。宇宙から見る地球の姿は本当に美しいものですけど、こうして実際に鹿児島市に来ることができて、皆さんの笑顔を見ることができて嬉しいです。それでは早速、今回の飛行の報告をしたいと思います。」
スライドや動画を用いた報告が行われました。エンデバーの打ち上げからISSへのアプローチ、ドッキング、ISSでの様々な活動と続き、ドッキング解除からケネディー宇宙センターへの着陸までがわかりやすく報告されました。イメージにはNASAのフォトアーカイブス(http://spaceflight.nasa.gov/gallery/images/shuttle/sts-123/ndxpage1.html)に収められているものが多く用いられましたが、ここに収められていないものもいくつか公開されました(以下、概要)。
・シャトル打ち上げシーン
・ISSにアプローチするシャトルを撮った写真。貨物室に「きぼう」保管室、ロボットアーム「デクスター」などが見える。
・シャトルの背後、地上に広がるヒマラヤ山脈の姿(会場、「お〜〜っ」とどよめき)
・シャトルから、ISSを撮ったもの。
・船外活動の様子
・きぼうモジュール(土井さんによる解説。きぼうのサイズなど)
・宇宙ステーションから見たオーロラの画像(会場、どよめき)。土井さんによる解説(酸素原子が緑色に光っている、地上から約100kmの高さに広がっている。眼下は夜であったが、満月に近い月光に照らされて地球が輝いている)
・カナダアーム「デクスター」の紹介。「宇宙ステーションに“ガンダム”ができた」と紹介(会場、笑い)
・無重力下におけるお遊び(水玉など)。
・日没時に見られる美しい雲
・帰還時の着陸シーン
続いて、動画の紹介(以下、概要)。
・打ち上げ4時間前から始まる準備
・与圧服の検査および射点へ向かうクルー
・シャトル打ち上げ
・ISSから見たシャトル、360°バク転、ドッキングポートへのアプローチ&ドッキング
・シャトルクルー、ISSクルーと合流
・ISS組み立て作業(デクスター、きぼうモジュールの取り付け)の概要報告
・食事の風景(一番美味しかったのは日本食だったとのこと)。
・耐熱タイル補修充填剤のテスト風景
・シャトルクルー、ISSクルーとのお別れの抱擁
・アンドッキング、ISSから離脱。ISSの周囲をグルリ一周。
・大気圏突入前、貨物室ハッチ閉。
・地上から撮したシャトル。滑走路に着陸。
これにて報告終了(会場、拍手)。
☆後半・質疑応答☆
質問は観覧応募の際に予め書いてもらったもので、主なものに各飛行士が交代で答える、一問一答方式。
始めに、船長・ゴーリ飛行士の回答。
Q.宇宙飛行士になろうと思ったきっかけは?
A.私が子供だったときに父親がパイロットで、自分もパイロットになろうと思いました。でも飛ばすならシャトルの方がいいなと思って(会場、笑い)。前は飛行機のパイロットだったけど、今はシャトルを飛ばせて光栄です。
次の質問の回答は、パイロットのグレゴリー飛行士。
司会:「グレゴリー飛行士は「ボックス」と呼ばれているとのことですが、なぜそう呼ばれているのかと事前に土井さんに尋ねましたら、「ボックス…箱みたいにがっしりしているから」とのことでした。」(ボックスさん、笑いながらポーズを取る。会場、笑い)。
Q.宇宙は惑星や星などの光であかるいのですか?いつも暗いのでしょうか。
A.太陽の光が何かに反射していると言うことがない限り、ものは見えません(会場、おーっとどよめき)。太陽の光を浴びて輝く地球はとても美しいものでした。地球から目を転じると、皆さんが夜見るような星々しか見えません。
次は、船外活動をしたベンケン飛行士の回答。
Q.船外活動の際に背中に担いでいる大きなバッグの中には何が入っているのか。
A.バッグの中には、船外にいるときに必要な全てが入っています。宇宙服というものは、小さな宇宙船と同じものと考えて下さい。空気、水、バッテリー、無線機など全てが入っています。
次は、宇宙に初めて行ったフォアマン飛行士の回答。
Q.宇宙に行って一番感動したことは。
A.スペースシャトルから見て取れる我々の惑星、地球の姿。とても美しく、大切に思っている人、もの、全てがあそこにあるのだなということを考えてみて下さい。つまり、地球は大切にしなくてはならないということです。“It looks very fragile
from space” 宇宙から見たら、凄く脆い、脆弱なものなのだなと言うことです(ここで会場拍手)。
次は、土井さんへの質問。
Q.きぼうを取り付ける際に一番緊張した瞬間はいつですか。
A.きぼうを取り付けるのに一番緊張したときは、きぼうモジュールをスペースシャトルの荷物室から持ち上げるときでした。きぼうモジュールと、スペースシャトルの壁の間は、10センチしかなかったので、ちょっとでも横に揺れると壁にぶつかってしまうのです(会場、拍手)。
次は、ベンケン飛行士らと一緒に船外活動をしたリネハン宇宙飛行士の回答。
Q.地上での訓練と実際の宇宙での活動との違いはどんなときに感じるか。
A.地上での訓練は世界一大きな水槽で行います。全く宇宙にいるときと同じような感じですが、プールの中では万が一に備えてまわりにはダイバーがいるし、それに常に空気の泡がでているのです。なんで地上では水の中で訓練をするかというと、浮力によって無重力と同じ感じを作ることができるからです。
宇宙飛行の経験が豊富なゴーリ飛行士の回答。
Q.もし宇宙にいるときに病気になったらどうするのですか。
A.宇宙飛行をしているときは、船に乗っているときや飛行機に乗っているときと同じで、気分が悪くなる人がいます。そのため、必ずクルーの中に2人ほど応急処置ができる訓練を受けている人がいます。今回は、リックさんと土井さんで、薬なども沢山持って行きましたが、幸いにも気分が悪くなる人はいませんでした。
次に、グレゴリー飛行士の回答
Q.国際宇宙ステーションから、地上がどのように見えるのですか。また、鹿児島の桜島の煙は見えましたか?(会場、笑い)
A.地球の殆ど全ての地域を見ることができます。ということで、どこを何時に飛ぶのかということがわかっていれば、外を見るとそれがどこかわかります。特に昼間の時間帯の地球であれば、かなり細かいところも見えます。火山も見えます。それだけではなく、道路や滑走路、大きな建物たとえばスタジアムなども確認することができます(会場、どよめき)。
司会:ということで、鹿児島の桜島はどうだったのでしょう?(笑い)
A.桜島がどれなのかということがちゃんとわかっていたら、見えたと思います(笑い)。(会場、爆笑)
ベンケン飛行士の回答。沢山の方から寄せられた共通の質問。
Q.宇宙では、トイレはどうしているのですか。(会場、笑い)
A.きちんとインストラクションがあって、それに従ってやります。シャトルのトイレも、きちんと壊さないように扱います。トイレそのものは地球で使っているものとかわりません。ただ、取り扱いは極めて慎重に行います。皆さんは、たぶんトイレを使った後はお母さんが掃除をしてくれると思うのですが、我々にはお母さんが来てくれませんでしたので、自分たちできれいに掃除をしました(会場、笑い)。
司会:ちなみに水洗トイレだったのですか?(会場、笑い)
A.水で流す、ではないです。真空で吸って…(一瞬のジェスチャーを交え)
司会:なるほど、飛行機の中のお手洗い、のような感じですかね?
A.…あまり詳しいことは…笑 (会場、爆笑)
質問は、あと3つ。次にフォアマン飛行士の回答。
Q.宇宙での生活で不便に感じること、或いは便利に感じることはなんですか。
A.宇宙にいるときには無重力ですから、フワフワ浮かんでいるわけです。移動するときは楽ですね。重たいものもラクラク。あるいはボックスさんのように重たいものも楽に運べるわけです(会場、笑い)。不便なのは、お風呂もシャワーも浴びられないことです(会場、どよめき)。代わりにスポンジで体を拭きます。
宇宙食に関して、土井さんの回答。
Q.一番美味しかった宇宙食は何ですか?また他の国の飛行士達に人気のあったのは何でしたか?
A.どれも好きだったのですが、一番好きなのはご飯でした。お湯を入れて、ちょっと時間が経ってから食べるのですが、本当に新米のような感じでとても美味しかったです。他の飛行士達に人気があったのは、焼き鳥。それから、おいなりさん。このおいなりさんは、お湯を入れて20分から30分待たないと食べられないのですが(会場、どよめき)、待っている間がとても長く感じられました。
司会:けっこう他の皆さんから人気ありましたか、日本食?
A.とても人気がありました。ボックスさんはね、焼き鳥の串を集めるのがね、趣味になってね(会場、笑い)。
司会:串はどうされるんですか、ボックスさん?
A.(会場&ボックスさん、笑い)…孫ができたら孫にあげます。(会場、拍手&笑い)
最後の質問。リネハン飛行士の回答。
Q.宇宙から帰還した後に、地球に対する想いというのは何か変わりましたでしょうか。
A.とてもよい質問ですね。今回、ゴーリ船長と私はそれぞれ4回目の飛行だったのですけれども(会場、「へぇ〜〜〜」とどよめき)、地球に住んでいると、それが日本であってもアメリカであっても、地球はものすごく広いのだということで、自分が何をしても他の所へはあまり関係ないよなと思うと、思うのです。でも実はそうではなくて、宇宙から地球を見下ろすと本当に小さくて、こんな所にみんな住んでいるのだなということがわかります。なので、地球に戻ってくると、本当に地球を大切にしなければならない、環境も守っていかなければならない、まわりの人に親切にしなければならないと思うのです。資源も限られていますし、何といっても、地球という惑星はひとつしかないのです。
これから大切になるのは、ここにいるみんなが勉強をして、守っていかなければならないということです。というのも、私たちは歳を取っていくだけですが、これから未来を守っていくのは皆さんだからです。(会場、拍手)
司会:最後に、子供達へのメッセージを、土井さんとゴーリ船長から頂きたいと思います。
ゴーリ船長:勉強をするということは、学校を終わったらそれで終わりというものではありません。勉強は、一生涯続く冒険なのです。それは宇宙飛行士も同じです。そしてもうひとつ大切なのは、力を合わせるということです。今回のミッションもみんなで力を合わせてやったものです。力を合わせればできないことはありません。(会場、拍手)
土井飛行士:僕からは、みんなには一言だけメッセージをあげたいと思います。みんな、宇宙を目指せー!宇宙が待ってるよー!(会場、拍手)
これにて、クルー退場(会場、拍手)。閉会。
☆周辺観察記・その他☆
報告会参加のためには事前に葉書もしくはメールによる申し込みが必要でした。定員は590人とのことで、多数の場合は抽選とのことでしたが、翌日の報道によると460人とのことでしたから、申込者は全員参加できたのではないでしょうか。会場は大ホールで、前列側は地元小学生の、ステージに向かって左側は関係者用の指定席でした。関係者は宇宙少年団の方々や、他、教育委員会などの方々も多かったのではないかと思われます。
一般観客には年配の方と、大学生前後の方が多かったような気がします。管理人の年代は、さすがに平日の昼ですから少なかったようです(笑)。開演は16時からでしたが、受付は15時より。管理人は15時半頃に到着しましたが、ホールはまだクローズのままで、早くも扉の前に行列ができていました(驚)。
受付はテーブルで。事前に送られてきていた招待状(右)を提示すると、お土産をもらいました(特製クリアファイル、バッジ、ワッペン、ミニうちわ、各種パンフレット、絵はがきなど)。
私はホール中段の中央・通路に接した端に着席。開演15分前になると、観客がさらに増えてきました。小学生団体は、開演5分前に入場。
16時少し過ぎに始まりましたが、進行は非常にスムーズでした。飛行士らの前にはモニターが置いてあり、それには指示が出ていたのでしょう。質疑応答は予め募集されていたものに飛行士達が答えていくというスタイルでしたが、盛り上がりました。専門的なものはなく、素朴な疑問系のものばかりでした。
写真撮影などは不可かなと思っていましたが、そのようなアナウンスは一切無く、始まってからも多くの人がスナップを撮っていました。私も何枚か撮影を…。
終了は17時ちょい過ぎ。そのまま退場となり、帰りは高速で。インターの傍にあったガソリンスタンドが無くなっていたのはちょっとショック(…場所が便利でよく入れていたのですが)。自宅に帰ったのは久し振りに鹿児島へ日帰りしましたので少々疲れました^^;