Food of the Apollo 11 Lunar Landing 勝手訳

初版: 10.11.2009

元のアーティクルはこちら↓
http://www.eatmedaily.com/2009/07/food-of-the-apollo-11-lunar-landing/

   

アポロ11号のフライトは人類にとって大きな飛躍として記憶されている。それはバズ・オルドリンとニール・アームストロングのホップ、ステップ、ジャンプを全世界の人々が同時に見た瞬間だった。しかしそんな魅力的でエキサイティングな月面着陸には、むしろつまらない細々したことが影を落とした。すなわちNASAによる強制休暇や科学実験、そしてもちろん、食事だ。アポロ11号に積まれた食事は1960年代末の技術の最高峰を示すものだ。それは月着陸船や月面宇宙服と匹敵するものである。リンゴソースやシチューのチューブは、食事が飛行士によって加熱されたり、銀食器で食べたりできるように廃止されたのである。

アポロクルーは熱殺菌されたチェダーチーズやホットドッグさえ食した。殺菌された宇宙船に、アメリカの一部を持ち込んだのである。そしてそう、ベーコンがあった。今日アメリカではベーコンが主食みたいなものだが、それを予兆するような出来事だ。月面で最初に人間が食した食事は角切りベーコンをおいて他になく、それは屑のことを配慮してゼラチンに包まれていたのであった。

アポロ11号の食料は、地上では心配する必要の決してないような要求を満たす必要があった。飛行前の体重はコントロールされていたが、それはそれまでのミッションでは不思議と難しいものであるとされていたことだった。右のグラフは“Nutrition Today”誌1969年秋号から引用したものである。ここにはアポロ飛行士が見舞われた大きな体重減少が描かれている。

体重をどんどん下げながら帰還した後、NASAはオルドリンが月面上で毎時300カロリーを消費していたことを明らかにした。これは軽いフィールドワークを1時間、あるいは子どもの後を追って走り回るのに匹敵する量である。激しい体重減を心配するほどの量ではないが、宇宙で生活するにはストレスとテンションを感じる量ではある。また、栄養学者たちが、カロリーを要するディーなーの確保を懸念していることは、ちょっとした心配事であった。

Apollo 11 meal pack and menu

    
    Apollo 11 meal pack. Photo via history.nasa.gov

    
     Apollo 11 Menu. View larger. Via lsda.jsc.nasa.gov

Requirements

もちろん、このようなミラコーな食事は軽く、コンパクトで、無重力で食えるものでなくてはならない。この最後の点は肝心だ:ハンバーガーは今でも禁止されている。というのも、屑が生じる可能性があるからだ(そのことが、国際宇宙ステーションでのトルティーヤ(訳注:メキシコのパンケーキ)人気に繋がっている)。ごく最近まで、全ての飲み物はストローから吸い出さなければならなかった。トマトジュースのごく小さい粒まで確実に吸わなければならない。さもなければ宇宙船に障害を起こすことになる。

宇宙食に関するもうひとつのはっきりしない問題は、それが食され飛行士の体に入った後、どう処理消化されていくのかということだった。NASAはこの問題を表現するに当たり、“低残渣”といううまい言い換えを作った。もうひとつ不愉快な事実として、初期のアポロミッションにおける飛行中の吐き気や“望ましくない生理学上の反応”が食事に起因するものだったということがある。狭いむっとしたキャビンの中で、相棒が“強い腹痛”を訴えることほど悪いことはない。

こんな困難と格闘するために、NASAは、アポロ8号で開発された“ウェットパック”フード技術を採用した。ウェットパックは熱殺菌された食べ物を湿った状態で閉じこめることができ、その結果、飛行士たちは食事を楽しむことができるのである。それはまた、彼らが食べているものを見て、匂いを嗅ぐということを可能にするものであり、ビーフやポテトの食をより進ませたのであった。

The spoon-bowl packet

   
   Apollo 11 Beef with vegetables in the spoon-bowl package, before and after rehyrdration. View larger.
   Photo via nasm.si.edu
   
    Spoon-bowl packaging schematics. Via history.nasa.gov (pdf)

フードテクノロジーにおいて、アポロ11号以降に大きく改善されたのは、スプーン・ボールパッケージの登場だ。これは食べ物を水で戻し温めて、ジッパーをあけてスプーンで食べることができるのである。湿った状態の食べ物はスプーンに貼りつく。ソーセージパティーやスカロップトポテトポーク、チキンシチューは上品にスプーンボールパックされ、アポロ11号クルーたちは味わうことができたのであった。

Beverages

アポロ11号ミッションにおける宇宙での食欲に関するもっとも意味のある詳細のいくつかが、飲み物の点からもたらされた。初めてコーヒーが持ち込まれたのであった:これは1人あたり15カップで、オルドリンはブラック、コリンズは砂糖入り、そしてアームストロングは薄めで甘いものをリクエストしていた。奇妙なことに、タング(オレンジの香りするドリンクパウダーで、初期の宇宙飛行計画では密接なものだった)は、11号には載せられなかった。

「ファーストマン: ニールAアームストロングの人生」によると、オルドリンは「他のフライトは知らないが、しかし我々の前には、飛行士たちの3人が天下り的にオレンジドリンクを与えられ、シトラスドリンクとしてオレンジとグレープフルーツのミックスが与えられた」と語っている。また、欠けていたものとしては、今では科学館のおみやげ屋の一番人気にある、アイスクリームだ。飛行士たちは一口サイズのブラウニーやパイナップルケーキを代わりのデザートとしたのである。

But how did the food taste?

    
    Apollo 11 Peaches (left). Chocolate pudding (right). View larger. Photo via nasm.si.edu

だがこのスプーン・ボールパックの話は、ひとつの疑問に行き当たる。「どんな味がしたのか」ということだ。これが驚くことに、殆どデータが残っていない。アポロ11号時にNASAの食事栄養部門でチーフを務めたマルコルム・スミス博士は“Nutrition Today”1969年秋
号にて、「アームストロング、オルドリンそしてコリンズは食事を気に入った。種類は満足いくもので、空腹を満たし彼らのパフォーマンスを支えるには十分だった」と報告しているだけだ。

オルドリンは後に、シュリンプカクテルがよかったと語っている。「シュリンプはひとつひとつ、フードパケットから取り出すのに十分な小ささのものが選ばれており、デリシャスだった!」と。ファーストマンによると、アームストロングの好んだ食べ物はスパゲッティーミートソース、スカロップトポテト、一口フルーツケーキ、グレープパンチ、そう、クラシカルなレシピの印象のあるものであった。

    
     The News Palladium, June 30, 1969. View PDF. Echoing the Obama food craze, newspapers ran article
     after article about food aboard Apollo 11. Via blogs.nature.com

Conclusion

アポロの食事に関する1974年の報告によると、大変な労力とケアが、食事には注ぎ込まれたことが明らかにされている。熱殺菌されたホットドッグや水で戻すチキンサラダといったものは、多様なバックグラウンド、興味そして能力を備えた人々からなる巨大なグループの、努力のたまものであったのである。グループのひとりひとりは優美で挑戦的で、そしてオーセンティックな宇宙探査計画に貢献しようという熱望に駆られた人々だったのである。

フードテクノロジーは、複雑なロケット工学や気候コントロールシステムに比べたらちっちゃなスペースポテトにしか見えないかも知れない。だが飛行士たちの肉体的精神的健康、ひいてはミッションの成功、はチェダーチーズやブラウニーほどの細かいディテール次第だったのである。