地球外生命探査

初版: 01.07.2001 追加: 10.18. 2010

西暦2001年・・21世紀がついに来た。確か、あと2年もすれば鉄腕アトムが登場するはずだ。木星への有人探査船も出発するはず。世界中のホテルは各部屋、異星人仕様に、オリンピックも「地球代表選手」となる。更に100年後の22世紀には例の「ネコ型ロボット」も出現するはずだ。が・・・

1960年代、21世紀は夢の世紀として描かれていた。当時一世を風靡した「鉄腕アトム」の舞台設定は2003年、A・C・クラーク原作のSF映画「2001年宇宙の旅」は木星探査船のコンピュータ「HAL」が人間に対し反乱を起こす物語だった。藤子不二雄のアニメ「21エモン」は流行らないホテルの息子が主人公の話。東京都は「東京地区」となり、地球はさまざまな星からの客でごった返している。

しかし、実際はどうだろう。1980年代に入り、科学の進歩には限界が見えてきた。事実、80年に「鉄腕アトム」をリメイクする際、手塚治虫は21世紀社会の設定に苦心したという。そして今年、宇宙時代のイメージを抱いてきた21世紀にいざ踏み入れたものの、人類はまだ地球の庭先でうろうろするのが精一杯。国の内外でIT云々が叫ばれるが、さほど日常生活習慣に変化はない。むしろ、繁雑化した社会構造への疲れのほうが目立ち始めている。近年、人工知能とロボットの進歩は早いが、22世紀のドラえもんは、やはり到底無理のような気がするのは私だけではないだろう?(笑)。

「2001年宇宙の旅」のメインファクターは、黒い長方形の物体「モノリス」。人類進化200万年の幾つかの節目に必ず目の前に出現するこの物体は、人間の知性の理解を超えた超知性の存在を示唆するものでもあった。では、そのような「地球外文明」は果たして存在するのだろうか?

SFや一部のUFOフリークに限らず、昔から宇宙人とのコンタクトは真剣に考えられてきた。現に1970年代に打ち上げられたいくつかの惑星探査機には宇宙人に宛てた手紙(地球のあらゆる音と言葉を吹き込んだ金色のレコード盤)が積まれ、一方、誰が解読するかもわからないメッセージを地球から強力な送信機で送信する試みも行われた。もちろん、返事はまだ来ていない。

”SETI”(セチ)という言葉がある。これは”Search for Extra-Terrestrial Intelligence”の頭文字をとったもので、「地球外知的生命探査」と呼ばれる計画であり、80年代末から今日、世界中で盛んになっている。以前は”CETI” (Communications for ~) と表記していたのだが、「相手がいないのに『コミュニケーション』ではおかしいだろう」という理由で書き換えられたのだった。

探査、といってもUFOの残骸や地球人に化けた異星人を探すのではない。具体的には、地球外からやってくる無数の電磁波の中に、知的生物が出したと思われるものが含まれていないかどうか、分析するのだ。

ハーバード大学のホロヴィッツ教授が率いるSETIグループは現在、プエルトリコにある世界最大のアレシボ電波望遠鏡(左写真)を用いて、そのような探査を進めている。「文明が見つかれば、喜ばしいことだ。彼らが我々とコンタクトを取りたがっていれば、もっと喜ばしいことだ」と、教授は語る。

一方、SETIで有名なものは、カリフォルニアにあるSETI研究所が指揮を執る”フェニックス計画”と呼ばれるものである。これは、アレシボ望遠鏡を一年間に5週間借用し行われるもので、このような大型施設が1つの計画、特にこのような探査のために丸5週間貸し出されるというのは特例の部類に入る。

一方、近年有名になったものに、”セレンディップ計画”というものがある。電波望遠鏡で集められたデータは加工され、インターネットを通じて世界260万人のパソコンにダウンロードされる。そして個々人が事前に準備しておいたソフトで調査する、というものである。260万人は民間ボランティアであり、「数で稼いでチェック漏れを防ぐ」という発想で、誰もが参加できるという点が面白い。参加登録とソフトの準備は随時可能だ(関連サイトSETI@home)。

しかし果たして、本当にいるのだろうか?1950年という早い時期に、ノーベル賞物理学者エンリコ・フェルミは次のような論理を展開した。「もし、地球外知的生物がいたるところにいたとしたら、なぜ我々は彼らとコンタクトを取れないのだろうか?」これは「フェルミパラドックス」として知られている。また、「銀河系の歴史の早い時期に知的文明が存在していたら、既に銀河系内は植民され尽くされていてもいいはずだ」と考える学者もいる。だが、「文明を持つ知的生物が、必ずしも外部に向かって進出するとは限らない、あるいはまだそのレベルに達していない」という議論は成り立たないだろうか?例えば、アフリカやパプアニューギニア、アマゾンには、部族外の世界には全く興味のない民族がいる。また、現に地球人は未だ、隣の火星にすら辿り着いていない。

次のような疑問が湧く人もいるだろう。「地球外文明を探すこと自体への意味は、なんだろうか?」人間は程度の差こそあれ、誰しも自分の祖先というものに興味がある。まだ見たことのない世界に対し強い好奇心を抱くものもある。例えば「大航海時代」は、それが特に際立った世紀に過ぎない。

仮に宇宙人の存在が確認され、彼らとコンタクトが取れたとする。知識人の多くは「人類の価値観が大きく変化する」と語るが、果たしてどうだろうか?確かに最初の1年はマスコミを中心に大騒ぎするだろうが、その後は元に落ち着き、さほど日常における変化はないような気もする。

一方、「知的生物は地球人以外に存在しない」ということが何らかの方法で完全に証明されたとしたら、むしろ、そのことの方がより重大だと思われる。なぜなら、宇宙唯一の知的生物、すなわち我々が、我々自身を生かすも滅ぼすも、我々自身の行動と責任次第なのだから。


【以下、関連追加記事です。下に行くほど古くなります。】

★追加情報 (10.18, 2010)

国連が宇宙人と最初に接触する担当者を任命――。英サンデー・タイムズ紙などがこのほど掲載したこんな記事が話題を呼んだが、任命されたという当の本人が否定。初の「宇宙人担当大使」の人事話は幻に終わった。

記事は国連が、ウィーンにある国連宇宙空間事務所(UNOOSA)の所長で、マレーシアの天体物理学者マズラン・オスマンさんを、火星人などが地球に最初に到達した際に人類を代表して接触する「宇宙人担当大使」に任命したと報じた。

さらに、オスマン所長が科学会議で「これまでより地球外生物(ET)の発見の可能性は高まっている。国連はどんな最初の接触にも、人類からの返答を用意する必要がある」と表明する予定だとも報じられた。

ところが、オスマン所長は14日、国連本部での記者会見で報道を否定。宇宙空間の平和利用を話し合う国連の委員会でワーキンググループを設置し、小惑星などの「地球近郊の物体」による地球への脅威にどう対応するかの勧告をまとめ、国連総会に提出すると説明した。

宇宙人の存在についてオスマン所長は、宇宙のどこかに生物がいる可能性は否定できないとしながらも、「ここで言う『生物』とは細菌の可能性だ。委員会で『生物』について話し合う時、緑色をした宇宙人について話すわけではない」と答えた。【朝日 10.18】

★追加情報 (04.28, 2010)

2010年4月25日、英国の宇宙物理学者スティーブン・ホーキング博士は、「宇宙人は存在するだろうが、接触は破滅的な結果をもたらしかねない。積極的なコンタクトは避けるべきだ」と発言、話題となっている。27日、黄河新聞網が伝えた。

ホーキング博士は広大な宇宙において、宇宙人が存在しない確率のほうが小さいと指摘した。銀河系に宇宙人がいない確率は1兆分の1。宇宙全体で考えれば、10の25乗分の1という、まさに天文学的な数値となる。

一方で宇宙人が地球に来ているかどうかについては不明だが、もし地球を訪問しているとするならば、その科学力は地球人の想像を遙かに超えたもの。地球人に干渉するのも簡単で、「コロンブスのアメリカ大陸発見は、アメリカ先住民にとって不幸なことだった。同じことになってしまう」と指摘した。逆に宇宙人が地球人に存在を悟られたくないと考えた場合、身を隠すだけの科学力も十分にあるはずで、コンタクトできないだろうと話している。【Record China 04.28】

…博士はかねてからETには懐疑的、仮にいても接触するべきではないとのスタンスですね。「白人にマンハッタンをタダ同然で渡した先住民のようにならなければよいが」との発言も過去にはありました。

★追加情報 (11.06, 2009)

下は、1924年、米海軍長官(SECNAV)によって発せられた命令電報。全ての海軍通信所(ALNAVSTA)に対し、火星からの電波と思われるような不可解なラジオ波はいかなるものも拾い上げよ、との達しである。

            

電文の概要: 「全ての海軍通信所へ。海軍は、火星が地球へラジオコンタクトを図る可能性を信じている天文学者たちに協力しようと思う。彼ら(火星)が最も近づく間、全ての通信所は、通常とは異なる信号に注意し拾い上げたらレポートせよ。また、できるだけ広範囲の周波数帯をカバーせよ。期間は8月21日24時から8月24日24時である。」

この年は、およそ15年毎に巡る火星大接近の年。しかも1804年以来の近さであり、同8月22日、衝を迎えた火星は地球から5578万キロの距離まで接近した。

当時は今と違い、火星文明の存在を信じる人が多かった時代。この“作戦”では余計な雑音電波を抑える行動もとられ、一般のラジオ局も対象となった。だが、彼らを停波させることは2日とできなかったという。

ちなみに下は、1920年代中期(22〜26年)に米国で発行されたラジオ雑誌「ポピュラー・レディオ」の広告記事。火星接近に乗じた広告のようです。

                  

詳しくはこちらこちらへ。テレグラムの詳細はこちらへ【MarsToday/Letters of Note 11.06】

…当時はテレビが出る前の世の中で、ラジオは重要な情報娯楽源でしたから、ラジオ局にとっては3日も停波なんてあり得なかったことでしょう(広告もたくさん抱えていたでしょうしw)。オーソン・ウェールズのラジオドラマ「宇宙戦争」がパニックを引き起こしたことはよく知られていますが、これは1938年のこと。つまり、海軍の協力からさらに14年も先のことです。

真面目な天文学者には協力せず、エンタメな火星人襲来ドラマで世間をパニックに陥れたとは、商業ラジオらしいですね^^;

上のポピュラー記事は、同誌販売プロモート用のチラシ(新聞にでも挟まれたかな?)。中央の濃い黒字文には「火星が8月23日に地球に最接近します。(中略)ポピュラー・レディオ誌を読んで情報を仕入れましょう。8月号、ナウオン新聞売店」とあります。文字がぼやけて読むのがかなり困難ですが、右枠の中はどうやらこの火星人通信を受信するためのコツのようで、赤字で「電池式真空管を用いよ」、「よい受信コンディションのためには」、「初心者向け、受信機の組み立て方記事」、「受信愛好家(BCL)向けの役立つヒント」と読め、ポピュラー誌にはこれらが満載ですよとアピール。左下のクーポン券は、これまた管理人の憶測ですが、定期購読の割引券かも知れません。

ちなみに、「宇宙戦争」ではそもそもパニックは起こらなかったという話もあります。新興メディア・ラジオの出現を驚異に感じた新聞メディアが(ラジオに規制を与えるきっかけとするために)作ったでっちあげという説も。【管理人】

★追加情報 (08.18, 2009)

英国立公文書館が17日に公開した文書で、1996年に英国内で未確認飛行物体(UFO)の目撃情報が増加したのは、米人気ドラマ「Xファイル」などが影響した可能性があることが分かった。

英国防省が15年間かけてまとめた4000ページを超える同文書によると、1995年に117件だったUFOの目撃情報は1996年には609件に増加。これは時期的に、「Xファイル」が人気となったりSF映画「インデペンデンス・デイ」が公開されたのと一致する。

国防省では、多くの目撃情報はありふれた事柄で説明できるものの約10%は「説明がつかない」ため、情報の記録を続けてきたとしている。【ロイター 08.17】

★追加情報 (10.20, 2008)

英国防省は20日、1986年から92年までに報告された未確認飛行物体(UFO)目撃証言をまとめた文書を公開した。4500ページにわたり、数千件の証言が掲載されている。

同省はUFO証言文書の国立公文書館への移管を4年計画で進めており、今回の公開はその一環。今年5月には第一弾として、78年から87年までの文書が一般公開されていた。

新たな文書の中には、イタリア航空会社のパイロットが91年4月、飛行中に「薄茶色の、ミサイル型の物体」を見たとの報告などが含まれている。国防省の調査でミサイルだった可能性は排除され、「UFOだったとみられる」との結論に至ったという。

また、米空軍パイロットが英東部上空で、正体不明の飛行物体を撃墜するよう指示を受けたとの報告もある。しかし、撃墜する前に物体はレーダーから姿を消してしまった。パイロットは翌日事情を聴きに来た人物から、「最高機密なので口外しないように」と命じられたという。

このほか、上空に変わった光が見えた、という市民からの通報などが多数掲載されている。光の色や形、動きなどはさまざまだ。

国防省はこうした報告を、「敵国などによる領空侵犯があったかどうか」という視点からのみ検討し、侵犯の事実がなかったと判明した場合は調査を打ち切るという。同省は「UFOの問題にそれ以上の関心はなく、地球外生命が存在するかどうかにも回答は試みない」との立場。結果として、多くの目撃証言で「物体は結局なんだったのか」という疑問が解けず、なぞは残ったままとなっている。【CNN 10.20】

★追加情報 (07.25, 2008)

米航空宇宙局(NASA)の元宇宙飛行士が英国の音楽専門ラジオ局のインタビューで、政府は宇宙人の存在を隠ぺいしていると発言。米英メディアが相次いで報じる騒ぎに発展した。

この元宇宙飛行士は、1971年に打ち上げられたアポロ14号の元乗組員エドガー・ミッチェル氏(77)。

同氏は23日の放送で、政府は過去60年近くにわたり宇宙人の存在を隠してきたが、「われわれのうちの何人かは一部情報について説明を受ける幸運に浴した」と説明。宇宙人は「奇妙で小さな人々」と呼ばれているなどと語った。【時事 07.25】

★追加情報 (05.14, 2008)

英国防省の旧機密文書によると、同国には地球外生命体が到来したとの報告が数多くあり、未確認飛行物体(UFO)の目撃情報については、1977年に米映画「未知との遭遇」が公開されて以降倍増したことが分かった。

同省が14日、国立公文書館のウェブサイトで、1978年から現在までのUFO関連文書を公開した。http://www.nationalarchives.gov.uk/ufos

それによると、UFOの形状や大きさ、色はさまざまである一方、地球外生命体は一様に緑色だったという。

しかし、同省ではこうした目撃情報の90%は日常のありふれた事柄で説明がつくとしており、残り10%については、不可解だが国防上の脅威ではないとしている。【ロイター 05.14】

★追加情報 (12.18, 2007)

地球外から飛来してきた未確認飛行物体(UFO)について、政府は18日、「これまで存在を確認していない」とする見解を閣議で決定した。

文部科学省によると、政府がUFOの有無に関して正式な見解をまとめて公表するのは、これが初めてという。

山根隆治参議院議員(民主)から提出された質問主意書に対し、答弁書を閣議決定した。それによると、政府はUFOの存在を確認していないとしたうえで、「特段の情報収集、外国との情報交換、研究などは行っていない」とし、「我が国に飛来した場合の対応についても特段の検討を行っていない」と説明している。

航空自衛隊は、日本の領空に侵入するおそれのある正体不明の航跡を探知した場合に戦闘機を緊急発進させるが、「鳥など航空機以外の物体を発見することはあるが、UFOを発見した事例は承知していない」と答えた。【読売 12.18】

町村信孝官房長官は18日午後の記者会見で、未確認飛行物体(UFO)について政府が存在を確認していないとの答弁書を作成したことについて、「政府答弁は政府答弁であり、私は個人的には、こういうものは絶対いると思っております」と語った。【産経 12.18】

★追加情報 (11.14, 2007)

7カ国19人の元パイロットと元政府関係者が12日(米国時間)、米国政府に対し、未確認飛行物体を見たという報告は安易に放置すべきものではなく、国家の安全保障に関わる懸念事項であるとして、調査を再開するよう求めた(ロイターの記事によると、米空軍は1947年から1969年の『Blue Book』プロジェクトにおいて、1万2618件のUFO報告を調査し、特に問題はないものとして終了した)。

この人々を、よくいるUFOマニアと片付けるのは難しい。多くが軍隊の経験者であり、UFOと直接接触したと主張する人もいる。

元空軍パイロットでアリゾナ州知事も務めたFife Symington氏は、1997年にUFOを見たという。詳しくはこちらへ【WiredVision 11.14】

★追加情報 (11.04, 2007)

宇宙人からの信号を探す「地球外知的生命体探査(SETI)」に参加する国内の研究者ら66人が4日、兵庫県立西はりま天文台(同県佐用町)に集まり、宇宙人と“コンタクト”できた場合に通報する日本の「国家当局」をどこにするかを話し合った。

国際天文学連合(IAU)の原則では、発見時は確実な信号だと判断されるまで公開は厳禁で、発見者は「関連する国家当局」に連絡することになっている。

話し合いでは、国立天文台や総務省などが候補に挙がったが、「当局が情報を独占して事実を隠ぺいしてしまうかもしれない」とIAUの原則に疑問を投げかける声が相次いだ。【読売 11.04】

★追加情報 (02.18, 2006)

「生命を宿す惑星系を有する有力恒星のリスト」を作った研究者がいる。米カーネギー研究所の天文学者マーガレット・ターンブル女史だ。女史はセントルイスで催されたAmerican Association for the Advancement of Scienceの2006年総会で、“habstars”と名付けた、生命が誕生しうる可能性がある惑星系を有する恒星のリストを発表した。

2003年、女史の研究チームは“habitable stellar systems”と呼ぶ、17129個の有力恒星を載せた一覧を発表しているが、今回はその中から更に絞り込んだ。

ターンブル女史は地球外生命探査(SETI)の有力ターゲットとして5つの恒星を、また、地球型惑星の探査に有力な5つの恒星をトップに掲げている。選択の基準は恒星自身の特徴に依っており、それらは互いに全て同じものというわけではなく、また、全て太陽と同じというわけでもない。(恒星自身の特徴に依る…例えば太陽は連星系をなしていませんが、女史の選択基準には連星系であるかどうかなどは関係なく、単一の恒星としてみて該当するかを判断しているようです。下の方で挙げてあるalpha Centauri Bはその一例です@管理人)

その基準には、“年齢”に関するものがいくつか含まれている。恒星は誕生してから最低でも30億年は経過しているというもので、惑星上での複雑な生命進化に必要とされる充分な時間である。また、多くのフレアを生じる傾向にある変光星なども、除外されている。更には、太陽質量の1.5倍以上を有する恒星も除かれている。

女史らはまた、恒星の“金属性”にも着目している。恒星とその惑星系は同じダスト・ガス雲から誕生するので、恒星に鉄元素が充分に含まれなかったとしたら、(惑星を形成するために必要な)重元素の量も少ない傾向にあると考えることができる。研究チームらが候補としてあげている恒星はどれも、太陽に含まれる鉄元素の少なくとも50%を超える量を有するものである。

更には、我々の太陽と同様、主系列星にある恒星がチョイスされている(つまり、巨星や白色矮星は除外)。

地球外文明が発する電波を捉えるのが、探査としては手っ取り早い。例えばSETIはその代表例だが、現在建設が進んでいる「Allen Telescope Array」(アレン電波望遠鏡群)は非常に強力なツールとなることが期待されている。これは350の電波望遠鏡を建設し、最微弱なシグナルをキャッチしようという企てて、今年、そのうちの42基が運用に入る予定。ターンブル女史はそのような電波探査に向いた筆頭候補に、地球から26光年離れたりょうけん座の「ベータCVn」を挙げている。現在も観測が行われているが、今のところ有益なデータは何も得られていないという。

その他、候補としてあげている恒星は以下の通り。

HD10307
地球から42光年。太陽と殆ど同じ質量、温度並びに金属性を有している。

HD211415
太陽の半分の金属性を有し、僅かに温度が低い。HD10307よりやや遠方に位置する。

18 Sco
さそり座にある恒星で、最も注目を受けている惑星系候補。殆ど太陽と同じ属性を有する。

51 Pegasus
既によく知られている。1995年、スイスの天文学者が初めて惑星系の存在を見出した恒星。暫く後、米国の研究チームが木星程度の惑星が存在することを確認している。

ところで、NASAは地球型惑星を探索する「Terrestrial Planet Finder」(TPF)計画を描いており、衛星の2016年打ち上げが予定されていたが、予算緊縮の中、先送りが決定している。また、その前哨戦である「PlanetQuest」計画も、少なくとも2015年までの先送りが決定している。

女史は、TPF計画でターゲットとなりうる有力候補も挙げている。TPFでは系外の地球型惑星の撮影が目指されているため、イメージをかき消してしまわないよう、太陽よりもやや暗い恒星が適切だと女史は考えている。トップ候補はインディアン座の恒星「Indi A」で、太陽の約10分の1の輝きを放っている。以下、次の通り。

epsilon Eridani
「エリダヌス座イプシロン」と呼ばれ昔から有名。地球から10.5光年離れた、太陽より少し小さく、温度が低い恒星。

omicron2 Eridani
地球から16光年離れる、オレンジ色の恒星で、誕生から太陽とほぼ同程度の年数が経過。

alpha Centauri B
地球から最も近い恒星(4.35光年)「ケンタウルス座α星」をなす一恒星(ケンタウルス座αは3重連星)。長い間、生命誕生の条件を満たしていると考えられてきた恒星。

tau Ceti
「くじら座タウ星」として知られ、太陽と同じGスペクトルの恒星。太陽よりも金属元素は少ないが、誕生から長時間が経過しており、生命進化には充分と考えられる。

(…なんだかこうしてみると、昔から想像図でも描かれてきた恒星ばかりですね。「くじら座タウ星人」とか(笑)@管理人)…詳しくはこちらへ【Spaceref 02.18】