レッドチェイサー

初版: 06.15.2003 最終追加: 12.13. 2006

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今年の夏、夜空を支配するのは、真っ赤に輝く太陽系第4惑星・火星。きっと、その名に恥じぬ輝きを見せてくれるに違いない。

火星は地球のすぐ外側を、2年弱で太陽の周りを公転する惑星である。地球は約2年数ヶ月毎に火星を追い抜く格好になり、この時、両者は最も接近。当然、目立って見えるわけで、毎度、天文ファンは大喜び(笑)。

今年の夏、その最接近を迎えるのだが、ところが今回は通常の接近とはちょっと違う。惑星の軌道は完全な円ではなく楕円を描いているのだが、そのため、通常よりも近接する場合があるのだ。今回は地球から約5600万キロまで接近するのだが、これは約6万年ぶりだという…いまいちピンとこないが、これはつまり、太陽〜地球間の距離の約3分の1程に匹敵する(これでもわかりにくいですねぇ…)。

さて、このイベントを待ち受けるのは勿論、アマチュアだけではない。研究者達もこの機会を逃さない。例えば過去の火星探査機の多くは、この最接近時を狙って打ち上げられている。最速で行けるからだ。そしてこれは、今回も同じだ。今月、3機の火星探査機が火星を目指して打ち上げられる。

今月6月2日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地より火星探査機“マーズ・エクスプレス”がソユーズロケットによって打ち上げられ、火星への旅路についた。“マーズ・エクスプレス”とは、日本語で言えばさしずめ「火星行き特別急行」とでもなるのだろう。この探査機は、欧州各国が共同で設立している欧州宇宙機関(ESA)が史上初めて送り出した火星探査機だ。これまでこの惑星に探査機を送り込んだ国は、米国と旧ソ連(ロシア)の2ヶ国だけだった。

サイズ1.5×1.8×1.4mのこの探査機の目的は、100メートル単位での高分解能マッピングと大気の組成調査、そして、地表下の構造調査であり、特に地下の構造調査は大きな期待を集めている。というのも、既に火星を周回している米国の探査機が、火星の両極付近の地下に、大量の水と思われる物体の存在をつかんでいるからだ。このエクスプレスに積まれたレーダーはこれまでにない高性能のもので、地下数メートルまでを精密に調査することができるのだ。果たして本当の水なのかどうか、決着がつくかもしれない。

さらに、このエクスプレスには着陸機“ビーグル2”が搭載されている。“ビーグル”とは、19世紀の英国の博物学者で、進化論の提唱者の1人でもあるダーウィンを、ガラパゴス諸島へと導いた調査船の名前。彼がガラパゴスで見たものが、彼の大胆な進化論の源となっており、新たな生命観をももたらした彼の栄光にあやかり、“ビーグル”の名が探査機へと引き継がれたのだ。このビーグル2の開発を担当したのが英国ということもあり、連中らしいネーミングである。

この着陸機はおわん型をしており、重量約60キロ。パラシュート等のランディング装置を除いた正味(写真・着陸した想像図)の重量は更にその半分で、この小さなボディーに顕微鏡やカメラといった各種計測器が装着されている(写真の、アームの先端)。エクスプレスの火星軌道への到着は半年後の12月6日が予定されているが、その5日前に切り離され、直接火星大気へと突っ込む。その時、時速約2万キロ。パラシュートで減速され、地表から1kmの高さで、エアバッグに包まれてパラシュートから切り離され、胴体着陸!この手法は97年、大成功を納めた米国のマーズ・パスファインダー探査機で用いられらものと同じものだ。

(右下写真は、テスト中のエアバッグ・巨大な真空漕(バキューム・チャンバー)内で行われる。勿論これが、実際に使われるもの)


おわんは着陸後、4枚の太陽電池を展開。その後、アームが伸び上がり、その先端を地表へ近づける。さらに中から「もぐら」と呼ばれる棒状の掘削機が伸びて地下へ掘削、サンプリングをおこなう。掘削するというのはこれまで過去には行われなかった意欲的な調査で、火星に生命がいるのか、或いはいたのか、何らかの答えが得られるのではないかと期待されている。ビーグルが、どのようなクリスマスプレゼントをもたらすのか、楽しみなところである。

一方、米国も負けてはいない。「マーズ・エクスプロレイション・ローバーズ計画」をひっさげ、火星へ挑む。これは、2台の自走式探査車(ローバー・写真)を火星の異なる地点に送り込み、生命活動の痕跡を探る。移動のできない欧州のビーグル2が、いわば大ホームランを狙う勝負師であるのに対し、米国のローバーは、結果を求めて動き回ることができる安打量産型。2機を送り込むのは、探索範囲を広範囲にするためであるのは勿論、どちらかがトラブルを起こした際のバックアップという意味合いも持つ。今月10日、1機目が打ち上げられ、無事、火星への軌道に乗った。今月下旬には2機目の打ち上げが予定されている。

“スピリット”及び“オポチュニティ”と命名されたゴルフカート大の大きさをしたローバーは、パラシュートで火星大気を降下し、最後はビーグル同様、エアバッグに包まれて着地する。うまくいけば、着地90分後には、ローバーが始動することになっている。

火星へ探査車が送り込まれるのは、97年のマーズ・パスファインダー以来、2度目。しかしその機動性と性能は、格段と飛躍している。パスファインダーで活躍した探査車“ソジャーナ”が、秒速5ミリでしか動けなかったの対し、ローバーは秒速5センチで動く。一日に100m動くことが可能で、これはソジャーナが3ヶ月で移動した距離に匹敵。しかも、約30cmの障害を乗り越えることもできる性能を持つ。

ちなみにローバー(レプリカ)と一緒に写っている少女は、2台の名付け親のSofi Collisちゃん(9)。名前は広く公募され、約1万人の応募の中から見事、選ばれたのだ。彼女は添付した詞の中で、孤児として生まれた自身が、アメリカンスピリットとオポチュニティ(機会・チャンス)に懸けて生きていく決意を詠んでいる。それが高く評価されたのであった。

ちなみに、1998年に日本が打上げた火星探査機「のぞみ」も来年1月、火星の軌道に到着する。これは、火星の周回軌道を周回しながら、磁場、大気の組成、電離圏の調査を行う予定。各国出そろい、ますます火星が熱くなる!… あれ、ところで、ロシアはどこへ行った?【photo: NASA】

以下、火星探査車ほか、現在活躍中の火星探査機に関する追加情報です。 下に行くほど古くなります。マーズ・リコネッサンス・オービターに関しては、別ページにあります】

<2007年〜現在> 2007年以降、現在までの追加情報はこちらへ

<追加情報 12.13. 2006>

2003年9月から火星を周回し観測を続けている欧州宇宙機構(ESA)の探査機「マーズ・エクスプレス」に搭載されている地中探査レーダー「MARSIS」による地中観測により、多くの埋もれたクレーターが存在することが明らかになった。

「MARSIS」レーダーは、地下を探査するという火星探査においては初の試みとなる野心的な装置。地下の地質学的構造から、過去の大地の動きを探ろうというものである。右の画像で、両サイドに伸びる長いダイポールアンテナ(片方25m)と、下に飛び出したモノポールアンテナ(7m)がレーダーを構成する。

レーダーの観測により、直径130〜470kmに達するクレーターが北半球の低地に多く埋もれていることが明らかとなった。「200kmを超えるインパクトクレーターの存在する部分は、Noachian前期(40億年ほど前)に遡る、非常に古い箇所です。」と語るのは、レーダーの共同主席研究員であるジェフリー・プラウト氏。Noachian前期には、太陽系全域にわたり、惑星に多くのクレーターが降り注いだと考えられている。

このことは、北半球と南半球に見られる特徴の違いは、惑星の歴史のかなり初期の段階で決まったことを示唆しているとも言える。(下の図中、北半球に白く描かれた方形は、2005年7月に行われたレーダー観測で走査された領域。その地下に見出されたクレーターは黒円で示されている。白円で示されているのは、200kmを超えるくぼみ。)
   

下は、地下レーダーで浮き上がったクレーター痕の一例。左はレーダーの走査中心がクレーターの中心と一致しているケース。クレーター壁のトップ(上部)とボトム(底部)に対応する構造からのエコーが確認され(画像上段)、それを基にリムを地上図に焼き写したのが、下段の2重点円。一方、右は走査中心がクレーター中心と一致していないケース。
   
その他の画像など、詳細はこちらへ【ESA 12.13】

…マーズ・リコネッサンス・オービターにも同様のレーダーが搭載されています。ただ、使用周波数帯が異なり、マーズ・エクスプレスは1.3〜5.5MHz帯を、リコネッサンス・オービターは15〜25MHz帯を使用します。周波数が低いほど波長が長いため、使用アンテナも長くなります(リコネッサンス・オービターのは片側10m)。

<追加情報 12.12. 2006>

11月上旬から音信不通になっているNASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」に対するコンタクトの試みは、現在もなお続けられている。年内一杯は継続される予定とのこと。【Space.com 12.12】

<追加情報 12.06. 2006>

結局一体、何が流れていたのか、あるいは今なお流れているのか…?NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が2000年6月に最初の発見をしてから今日まで、火星面にいくつもの流体痕が見つかっているが、肝心の流体そのものに関してはまだ確実にこれだと言い切れる物証が見つかっていない。しかもその流体は一体どこから来たのか、そして今なおあるのなら、どこで眠っているのか?

2000年の発見以来、多くの研究者らによって様々な仮説が立てられ、それらは科学雑誌を賑わしてきたが、これだという決定的なものはまだない。2000年、最初に提唱された仮説は、それは地下に存在する液体の水で、斜面によって切り取られた水路から垂れ流れ出したものであるというものだった。この斜面とは、例えばクレーター壁や渓谷、丘陵斜面などである。やがて調査が進むにつれ、液体の水というよりむしろ氷であり、気候変化など何らかの環境変化により溶けたものが流れ出たものではないかという考えが出るようになった。

一方、水ではなく、液体二酸化炭素ではないかと考える研究者もいる。さらには、地滑りなどのによる土壌移動、しかもサラサラな土、が液体のように振る舞い、そのような地形を作り出したのではないかという考えも提唱されている。

マーズ・グローバル・サーベイヤーの長年にわたる活動で、多くの「ガリー」と呼ばれる流体痕が見つかり、そしてその経年変化が観察されてきた。その結果蓄積されてきたのは、これらが地下の液体…地下水もしくは溶けた氷…によって出来上がったという仮説を支持するデータである。下の3つは、その一例だ。

   

左端の画像は今年1月10日に撮影された、「ダオ渓谷」の北壁に刻まれているガリー。固い岩盤の下で液体の水の通路が生じ、表面に流れ出たものと捉えることができる。矢印はその流れ出した口である。

中央の画像は2005年1月17日に撮影されたもので、クレーター壁に掘られたガリー。このような断層面に生じたガリーは、まさに地下水が作ったと考えるのが自然である。

右端の画像は今年3月31日に撮影されたもので、大クレーターのリムに形成された小クレーターのそばに形成されたガリー。一目瞭然、無数の流出痕が確認でき、これは地下水説を強く支持するものである。というのも、大クレーターが形成された際の地下構造に小クレーターが食い込むことで、その小クレーター底に水路になりうる構造が形成されたと考えることができるからだ。そしてその結果が、画像に見られる姿という訳である。小クレーターが形成されたインパクトにる熱と衝撃でガリーが形成された可能性もあるが、しかし、ガリーは小クレーターよりも遙かに若いことがわかる。というのも、小クレーターから飛び散った土壌は風化が進み、またそのクレーターそのものもだいぶ埋まっているのに対し、ガリーはシャープな形をまだ保っているからだ。

マーズ・グローバル・サーベイヤーは11月上旬よりコンタクトが取れない状態が続いており、ミッション再開は絶望的と見られているが、現在もなお交信の試みは続けられている。詳しくはこちらへ【NASA 12.06】

マーズ・グローバル・サーベイヤーは多数のガリーだけでなく、隕石の墜落痕も多く見出している。下は新たに確認された20の新クレーターのうちの2つ。新クレーターはグローバル・サーベイヤーが運用を開始した1999年5月から今年3月までの間に出現したもの。

   

左端及び中央は、今年3月13日に撮影されたもので、左端は「マーズ・リコネッサンス・オービター」により得られた色テーブルを基に着色されたもの。生じたクレーターの直径は約20メートル弱。一方、右端はクレーターの生じる前と後の比較。上段は02年2月24日に撮影されたものである(下・大きいサイズ)。

   

そのほかにリリースされたクレーター画像はこちらへ【NASA 12.06】

火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した流出痕、さらにいろいろ。詳細はこちらへ【NASA 12.06】

   

<追加情報 11.29. 2006>

今月上旬から音信不通の「マーズ・グローバル・サーベイヤー」の捜索に、ESAの火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」も投入されそうな気配です(詳しくはこちら)。そういえば、マーズ・リコネッサンス・オービターのナビゲーションカメラに、MGSがいると思われる地点に2つの点が写っていたとか…恐らくカメラに飛び込んだ宇宙線だろうという話ですが、さてさて真相は…

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」は今月7日より本格観測に入っているが、主力である超望遠撮像カメラ「HiRISE」の運用を担当しているアリゾナ大学は、これまでに得られた画像を大量にリリースしている。

下は、火星探査車「オポチュニティ」が着陸した場所周辺の様子。画像(a)はパラシュートと、探査車を保護していたバックシェルを写しだしている。バックシェルの右側に白く広がるのは、それが地上に激突した際に露出した土であろうとみられている。一方、画像(b)は地表に激突して2つにちぎれ飛んだ耐熱シールドと、そのインパクトポイント。

   

画像(c)は、オポチュニティが着陸した小さな「イーグル・クレーター」。真ん中に今なお着陸機が残されている様子がはっきりわかる。大気圏突入に耐え、パラシュートで降下、最後はエアバッグに包まれて着地したオポチュニティはゴロゴロと、この小さなクレーターに転がり込んだ。まさに“大ホールイン・ワン”であり、NASAは会見でもそのように語ったことが思い出される。

   

ただ、オポチュニティがもし走行仕様でなかったら、360度壁面の、全くつまらない風景を見るに終わっていたことだろう。2004年1月24日、このクレーターに、確かに入ったのだということを改めて感じさせてくれる。オポチュニティはここで60火星日を過ごし、地質調査を行った後、はい出し、今なお走行を続け、実に1000火星日を軽々と超えてしまった。上の画像の大きいサイズを含む、アリゾナ大学のリリースはこちらへ。その他の画像はこちらへ【Univ. of Arizona 11.29】

<追加情報 11.21. 2006>

NASAは、今月上旬から交信不能に陥っている火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」の現状に関して、NASA本部でニュース・ブリーフィングを行った。

マーズ・グローバル・サーベイヤーは、その10年にわたるミッションが終了間際にある状態にある。

同探査機は今月2日より交信を絶っている。太陽電池の方向を定めるのが困難に陥っているようで、今後、充分な電力を供給することができないようである。なお、別の原因も検討中とのこと。

「現実的に、最も可能性のある方法を試してきたわけで、(これで駄目であるということは)現在我々は、ミッションの終焉に直面していると言えます。しかし、まだあきらめてはいません」と語るのは、NASA・ジェット推進研究所(JPL)の火星探査プログラム・マネジャーのフク・リー氏。

コンタクトと探査機の状態把握の試みは、現在もなお続けられている。月曜にはマーズ・リコネッサンス・オービターの各種カメラにより、グローバル・サーベイヤーの撮影が試みられた。だがこれまでのところ、それらしき姿は写っていなかったという。

また、次の一手として、火星面で活動を続ける2台の火星探査車に向けてシグナルを送信するよう、今週末にも指令を出す予定であるという。火星探査車がそれを受信するかどうかが、ひとつの山場である。

「不具合な太陽電池、ジャイロの故障、すり切れたリアクションホイール、そのような状況下でもこれだけ動いてくれたとは、本当に驚異的なマシーンです。これを作った技術者たちや管制してきたスタッフは、このミッションとその成果を高らかに誇れるものです」と語るのは、マーズ・グローバル・サーベイヤーミッションの責任者、トム・ソープ氏。詳しくはこちらへ【NASA 11.21】

…グローバル・サーベイヤーの公式サイトはこちら。記者会見(テレコンフェレンス)が行われましたが、冒頭での現状報告には、全ては終わり、偉業を湛えるような雰囲気がありました。。

<追加情報 11.19. 2006>

先日から伝えられているMGS行方不明の続報です…

米航空宇宙局(NASA)は17日、今月初めに地球との交信を絶った火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤー(MGS)の行方を突き止めるため、火星上空で最新鋭探査機による捜索を実施した。AP通信が伝えた。超高解像度カメラで「先輩」が現れそうな場所を撮影し、機体が写っていないかどうか、画像の解析を進めている。

マーズ・グローバル・サーベイヤー(右)は96年11月7日に打ち上げられた。火星を現在周回中の米欧の4探査機の最古参で、これまでに約24万枚の画像を撮影。火星表面に水が流れていた跡を見つけたり、磁場の観測から地殻変動があった証拠をとらえたりするなど、多くの成果を上げてきた。

当初の観測計画は火星の約1年間(地球の約2年間)だったが、大きなトラブルもなく、観測計画を延長してきた。

ところが、NASAの発表では、打ち上げ10周年を目前にした今月3、4日、2日間続けて地球との交信が途絶した。5日にいったん微弱な電波を地球に送ってきたものの、以後は交信が絶えて行方不明になった。

このため、最新鋭の探査機マーズ・リコネッサンス・オービター(MRO・右)を捜索に使うことにした。昨年8月に打ち上げられ、今年9月に観測用の低軌道に入ったばかり。搭載カメラは、過去の探査機の約6倍もの解像度をもつ。

AP通信によると、画像の解析結果が出るのは週明けになる見通し。【朝日 11.19】

…MGS、無事だと良いですが…。。


<追加情報 11.13. 2006>

先週、交信不能が伝えられたNASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」について、今なお交信が回復していない状態にあるという。

報道によると、今月6日以降、2時間おきにコンタクトが図られているという。もしこのまま交信が確立しなければ、すぐ傍を飛行している「マーズ・リコネッサンス・オービター」により、グローバル・サーベイヤーを撮影、機体の姿勢などを検証する予定とのこと。詳しくはこちらへ【SpaceDaily 11.13】

<追加情報 11.07. 2006>

マーズ・グローバル・サーベイヤーがピンチ…!?

7日に打ち上げ10周年を迎えたばかりのNASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」(右)が一転、交信困難の状態にあることが明らかになった。同探査機は現役の火星探査機の中では最も古いもの。そもそも2年ほどのミッション予定だったものが、今日まで持ちこたえている。今年10月には更に延長ミッションがスタートしたばかり。

今月2日、太陽電池パネルを動かす通常のマニューバ指令を送信、その後1周回したところで、パネルの一方を動かすモーターにエラーが生じたことを返信。ただ搭載ソフトウェアはプログラム通りに機能し、バックアップのモーターコントローラーをオンにしたという。

その後、3日と4日は交信が成立せず、5日には再び受信されたものの、それにはデータが全く乗っていなかったという。探査機はセーフモードに入っていると見られている。

分析の結果、探査機は太陽電池パネルが動かなくなったときに備えて用意してあるモードに入っているようで、パネルを太陽に向けようと機体を振った結果、(アンテナの向きがずれ)地球との交信確立が難しくなっているのだろうと考えられている。

「探査機は安定した操作を維持するために本当にたくさんのシステムを備えてはいますが、今は交信を再確立することが先決なところです」とプロジェクトマネジャーのトム・ソープ氏は語る。詳しくはこちらへ【NASA 11.07】

<追加情報 11.07. 2006>

今から10年前の1996年11月7日、NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が打ち上げられた。同探査機は97年9月12日に火星に到着し、以後今日まで、赤い惑星を見続けてきた。

今月7日、同探査機の打ち上げ10周年を迎えた。

下は、7日にリリースされたもので、近頃撮影された火星の北極の姿。言うまでもなく中央右に見えるのは極冠と北極点であり、また、左側に渦巻くように漂っているのは雲

     

現在、火星の北半球は夏で、北極圏は白夜が続いている。このような渦をまいた雲が北極上空に出現するのは毎年の恒例であることがわかっている。ちなみに火星における“毎年”とは、地球では約2年毎に相当する。ほぼ10年にわたる火星周回における地道な観測の結果わかったことである。詳しくはこちらへ【NASA/JPL/Malin Space Science Systems 11.07】

<追加情報 10.25. 2006>

NASAの火星探査車「スピリット」は26日、ちょうど1000火星日の活動を迎えた。下は「マクマード・パノラマ」と名付けられた360°記念パノラマ。スピリットは現在、「ロー・リッジ」と呼ばれている低い丘を活動中だ。

    

火星の1日(1火星日)は地球時間で24時間39分35秒。当初90火星日持ちこたえさせることが目標であったが、あっという間に1000火星日に達してしまった。そもそも砂が太陽電池に積もることによる電力の低下がミッションの終了につながるものと思われていたが、時折吹くつむじ風などが砂を吹き飛ばすという予想外の結果になっている。

スピリットは現在、2度目の越冬中で、行動は最小限に抑えられ、陽当たりのよいこの丘で、電力の温存が図られている。詳しくはこちらへ【NASA 10.25】

…いつまで続くのか、これまた楽しみですね!

<追加情報 10.24. 2006>

欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」による集中観測で得られた「シドニア・メンサ」の立体3D動画CGがリリースされた。ここはいわゆる「マーズ・フェイス」もしくは「マーズ・ファラオ」として有名な地形。その動画と詳細はこちらへ【ESA 10.24】

…それにしてもマーズ・エクスプレスによる「火星の顔」の分析は充実しているような…担当者が個人的に思い入れあるのかな?(笑

<追加情報 10.20. 2006>

下は、火星探査車「オポチュニティ」が9月25日(Sol 950(火星日))に撮影した空に浮かぶ雲の様子。現地時間で午前11時37分頃。オポチュニティは現在、ヴィクトリア・クレーター周辺で活動している。大きいサイズはこちらへ【photo: NASA 】

    

…それにしても、まるで秋雲のようですね^^。説明がなかったらわからないと思います。。

ちなみに現在、地球と火星は「合」の状態にあり(右図)、地球から送信するシグナルにノイズが入る可能性があるため、各探査機はその機能を殆ど休止しています。この状態は約2年おきに訪れ、交信休止は約2週間続きます。

火星で最も長期にわたって活動しているのは火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」(MGS)で、今回の合は5回目になります。地上の管制チームは合の間はヒマというわけではなく、交信再開後に備えて準備を進めています。

なお、MGSのハイゲインアンテナ(パラボラ)は軌道投入直後から、首振り機構の一部不具合により、複雑な動き(“Beta Supplement ”)を強いられてきました(わかりやすい動画)。しかし昨年、その不具合が自然に直っていることがわかり、現在は本来の動きでコントロールされています。不具合は当初、取り付けネジに原因があると思われていましたが、この結果、配線のよじれであったのだろうと結論づけられました。現在の合の状態における管制チームと探査機の現状に関するコラムがリリースされています(こちら)【NASA 10.20】

<追加情報 10.06. 2006>

これは凄い!

火星周回探査機「マーズ・リコネッサンス・オービター」の高解像度撮像カメラ(HiRISE)が、火星探査車「オポチュニティ」とヴィクトリア・クレーター周辺の撮影を行い、その映像が公開された。

オポチュニティは現在、メリディアニ平原を走行しており、この映像が撮影される5日前に、火星着陸以来目指してきた直径800mのヴィクトリア・クレーターに到着したばかり。

この映像では、「ダック・ベイ」と名付けられた入り江、その南側に存在する先鋭な岬「ケープ・ヴェルデ」などが見えている。大きいサイズの画像で見ると、探査車自体やその轍(わだち)もわかる。加えて、探査車、さらにはカメラのマストの影までも写っているのが驚異的である。

    

この画像は今月3日に撮影されたもので、解像度は29.7cm/ピクセル。撮影時、、火星時間午後3時30分だった。詳しくはこちらへ【JPL/NASA/MRO 10.06】

…MRO、いよいよ本格的にその実力を見せつけてきましたね!

<追加情報 10.03. 2006>

NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」(MGS)の「マーズ・オービタル・カメラ」(MOC)で撮影されている画像は毎日「MOC Picture of the Day」としてリリースされているが、このサービスが今月1日から停止されている。

MGSは1997年より9年間にわたり、火星面を見つめ続けてきた。得られた画像はすべてリリースされているが、2003年4月15日より先月30日まで、毎日の画像配信サービスが続けられてきた。この期間の画像は1300ショットを超える。

ところが、今月1日よりスタートした延長ミッションでは、その予算の問題で、チームが余裕をもって日々の更新ができる状態ではない模様。今後は月4回に分けて、まとめて配信される予定とのこと。詳しくはこちらへ【SpaceRef 10.03】

…火星面の画像は地味なものですが、よく見ていると時々、面白いものもあります。

<追加情報 09.28. 2006>

火星探査車「オポチュニティ」はビクトリア・クレーターの周辺を順調に走行中で、先月27日から28日にかけてクレーターの縁に沿った、「ダック・ベイ」と名付けられた“引っ込み”に到達した。下は、そこで撮影した風景である。

    

クレーターの向こう側までは約800mの距離があり、縁はクレーターの底から約70mの高さに達する。一方、クレーター底には砂がたまっており、風で波打っている。大きい画像や詳細はこちらへ【JPL/NASA 09.28】

<追加情報 09.25. 2006>

NASAは、現在火星で探査を続けている無人周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」、「マーズ・オデッセイ」の2機と、火星地表で走行を続ける2台の探査車「オポチュニティ」と「スピリット」に対し、ミッションの延長を認め、追加予算を付与した。

マーズ・グローバル・サーベイヤーは1997年から、マーズ・オデッセイは2001年からそれぞれ火星周回軌道上を飛行しており、膨大な量のデータをもたらしている。これら2機には、向こう2年間の延長ミッションに関する予算が与えられた。一方、火星探査車は2004年1月より地表の走行を続け、地質調査を行っている。

これらの延長ミッションは今年10月1日からスタートする予定。これらの探査機による予定されていたミッションはとっくに終了しており、その長寿命、特に探査車の持久力は目を見張るものがある。詳しくはこちらへ【JPL/NASA 09.25】

<追加情報 09.21. 2006>

欧州宇宙機構(ESA)の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」は先頃、あの有名な「火星のファラオ」のステレオ画像を得ることに成功した。この“顔”は1976年7月、NASAの火星探査機「バイキング1号」によって撮影されたもので、「火星人が作ったものだ」という類の話が多数語られることになった。

     

マーズ・エクスプレスは2004年4月から今年7月にかけ、顔(右)が存在する「シドニア地方」と呼ばれる領域の撮影を何度も試みてきたが、ダストやもやのために阻まれっぱなしだった。だが今年7月22日、ついに高解像度ステレオカメラはその領域の撮影に成功、データ解析の結果得られたのが、上である。

データは周回3253周目に得られ、解像度は13.7m/ピクセル。シドニア地方は北緯40.75度・東経350.54度を中心とした領域。このとき得られたデータからは、他にも多くの貴重な情報が得られている。

「得られた画像は、本当にスペクタクルなものです」と語るのは、マーズ・エクスプレス計画に携わる研究者であるアガスチン・チカロー博士。大きいサイズや、その他の画像などの詳細はこちらへ【ESA 09.21】

<追加情報 09.19. 2006>

NASAの火星探査車「オポチュニティ」が今月18日、着陸以来ひとつの目標としてきた「ヴィクトリア・クレーター」まであと50メートルというところまでたどり着いた。下の画像はオポチュニティのナビゲーションカメラで撮影されたクレーターのリムの映像。5枚の画像をつなぎ合わせて作られている。

     

ここへ来るまで着陸から21ヶ月が経過している。当初、このクレーターにたどり着ければいいな、ぐらいの期待がされていたが、まさか本当にここまで来るとは、関係者も予想していなかったに違いない。

ヴィクトリア・クレーターはイーグル・クレーター(オポチュニティが着陸したクレーター) の約40倍の広さ、エンデュランス・クレーター(2004年、約半年間調査を続けた)の約5倍の広さを有する。

見えているリムの高さは16mほどになり、地質学的に興味深い対象として期待されている。大きいサイズはこちらへ。

     

上は、これまでの軌跡(大きいサイズ)。上の方で立ち寄った小さいクレーターがエンデュランス・クレーターで、下の大きい方がヴィクトリア・クレーター。930火星日(地球で9月5日)までの軌跡。【NASA/Mars Rover 09.19】

<追加情報 09.09. 2006>

右は、NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した、火星の北極に近い平原に存在する“リング群”(68.7°N, 288.6°W)。これはクレーターがほとんど埋まってしまった状態であるという。大きいサイズはこちらへ【NASA/JPL/MSSS 09.09】

…薄い輪ゴムのようなリングも、やはり埋まったクレーターのリムだそうです。しかしこのクレーターのでき方は・・太古の昔、バラバラになった彗星の爆撃でもあったのか・・?





<追加情報 09.03. 2006>

今月3日、NASAの火星着陸機「バイキング2号」が火星面へ軟着陸してから30周年を迎えた。これに先立つ7月20日、バイキング1号が同様を迎えたことが記憶に新しい。

下は、NASAの火星周回機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影したバイキング2号の姿。「ユートピア平原」の北緯48°西経225.7°付近に着陸している。

    
    

ちなみに、バイキング2号の正確な着陸座標は、マーズ・グローバル・サーベイヤーによるこの観測で初めて明らかにされた。これは2004年に撮影されたものである。大きいサイズはこちら【NASA/JPL/MSSS 09.03】

…ちなみにその「マーズ・グローバル・サーベイヤー」ですが、今月13日、火星周回開始9周年を迎えました。これまた驚異的ですね・・よく持ちこたえていることで。。

<追加情報 08.17. 2006>

右の画像は、火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した「Elysium Planitia」地方のクレーター。隕石の衝突によって形成されたと考えられている。

内部に見える黒い部分は風によって溜まった砂や沈殿と見られている。このクレーターのサイズは、北アリゾナにある有名な巨大隕石孔のほぼ2倍のサイズがある。【NASA/JPL/Malin Space Science Systems 08.17】




<追加情報 08.16. 2006>

火星の南極付近で、活発な噴出活動が生じていることが明らかとなった。

これは、NASAの火星周回機「マーズ・オデッセイ」が撮影した画像を解析した結果、判明したもの。春先、気温が上昇を始めると共に、地下から二酸化炭素の気体が極冠を突き破り、砂やダストも含んでジェット噴射していると考えられるという(右は想像図)。

これまでにも、春先の南極冠には色を帯びた、不可解な模様が出現することは知られていた。ただその詳しい素性は謎とされてきた。今回の発見で、南極地方ではこれまで考えられきた以上に、大規模な活動が生じていることも判明したといえる。

マーズ・オデッセイの画像解析チームの主任であるアリゾナ州立大学のフィル・クリスチャンセン氏は、「もしそこへ行ったとしたら、ドライアイスの層の上に立つことになります。周囲では二酸化炭素ガスが力強く噴出し、砂やチリを数百フィートも巻き上げていることでしょう。足下では地下で動くガスのためにブルブル振動を感じるでしょうね」と語る。

マーズ・オデッセイ、それにマーズ・グローバル・サーベイヤーによって撮影された南極冠の画像には、太陽光が戻ってくる春先になると、不可解な扇形の暗い模様や点状のスポットが映し出されてきた。その模様は幅が15m〜46mで、お互いは数百フィートの距離で分布している。その姿は数ヶ月続き、やがて消え失せるのだ。

(下画像で、Aは点状のスポット、Bは扇形の暗い模様。双方のフレームとも、幅は約3km。スポット…気持ち悪いですね^^;)

    

南半球が夏を過ぎ、秋を迎え、やがて冬になると、南極には太陽光が当たらず、二酸化炭素大気が昇華して地表にドライアイスとして積もり、これがまさに“新雪”となる。その後再び春を迎え、上述と同じことを繰り返す、というわけだ。大半の噴出が、過去に生じた場所と同じ場所で起こっている。

かつてこの模様は、気温が上昇しドライアイスが消え、地表が露出した部分であろうと考えられていた。だがマーズ・オデッセイによる赤外線観測により、模様の温度とドライアイスの温度が殆ど変わらないことが判明、この模様は地表ではなく、ドライアイスの上に積もった薄い何らかの層である可能性が高まったという。

研究チームは、この模様の正体を明らかにするため、冬の終わりから夏にかけて、この地域の画像を200枚以上撮影してきたという。

ある場所では、100日間以上スポットが出現せず、突如、一週間かそこらでゾクゾクとスポットが出現していた。扇状の模様はスポットが出現してから数日から数週間後に出現することも判明した。また、クモの巣状の細い溝(下)も出現したが、これはまた、解釈を難しくするものになった。

     

検討を重ねて作られた、これらを一度に説明するモデルは、こうだ。

「南極では、永久氷の上に、有色の砂やダストが被さり“薄膜”が形成されている。冬に入り、太陽光が当たらなくなると、二酸化炭素大気がドライアイスとなってその上に降り積もり、最終的には約1mのドライアイスの層を形成する。

やがて春になり、太陽光が当たり始めると、ドライアイスの層を透過してその下の砂の層を温め(有色なので熱を吸収)、ドライアイスの昇華を促すに充分な温度に上昇する。そうして生じたガスはどんどん圧力を増し、やがて層のもろい部分から地上目がけて吹き出すようになる。周辺のガスもその穴を目がけて殺到するため、その時砂などが層をこすり、クモの巣状の模様も形成される。」

クリスチャンセン氏らのこの研究は、「ネーチャー」8月17日号に発表されている。詳しくはこちらへ【NASA/JPL 08.16】

<追加情報 08.11. 2006>

下は、火星の衛星「デイモス」。NASAの火星周回機マーズ・グローバル・サーベイヤーが今年7月10日に撮影したものであるが、同探査機がデイモスを撮影するのは初めて。「Swift」、「Voltaire」は、クレーターの名称。

      

デイモスは今からちょうど129年前の1877年8月11日、米国の天文学者アサフ・ホールによって発見された。デイモスは火星の2つの衛星のうち外側を周回するもので、この発見から1週間もたたぬうちに、内側の衛星「フォボス」が発見されている。その他の画像はこちらへ【NASA/JPL/MSSS 08.11】

NASAの火星探査車・オポチュニティが今月7日、原因不明の不具合が生じ保護ソフトフェアが起動、セーフモードに入っていたことが明らかとなった。

これは、火星時間・午前11時19分、突如として生じたもの。保護ソフトの指令により予定されていた活動が中断され、セーフモードに入り、行動ソフトフェアのリブートが行われた。その後、オポチュニティはオートモード(その日予定されていた主たる行動を停止)に入ったという。

翌8日、コントロールチームはハイゲインアンテナを正しい方向へ向けるような指示を送信、9日にはカメラをセットするような指示を送った結果、オポチュニティは機能を回復し、10日は完全に元の状態に復旧したという。

保護プログラム起動をもたらすような不具合が何故生じたのかはまだわかっていない。【NASA/MER 08.11】

…火星探査車の行動記録は毎週リリースされています。詳しくはこちらへ。


<追加情報 08.08. 2006>

画像は、火星の赤道よりやや南側(1.6S, 105.7W)に位置する火山。NASAの火星周回機マーズ・グローバル・サーベイヤーが撮影したものですが・・なんだかベロンと散った、失敗したはんだ付けに見えてしまいます^^; (大きいサイズ) コテの温度が高すぎ。。




<追加情報 07.28. 2006>

右下の画像は、NASAの火星周回機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した、火星の北極近くのクローズアップ。撮影地点は傾斜の急な土地で、一筋の帯はドライアイスシートの季節変化によって生じたもの(大きいサイズ)。

この画像が撮影されたのは今年の6月で、北半球は春を迎えつつあるころ。冬の間に形成されたドライアイスが昇華して気体になりつつある時期で、それが帯に反映されている。
【NASA/Malin Space Science Systems 07.28】

…まるで土星のリングのような縞模様です^^!


<追加情報 07.31. 2006>

火星で時々発生する大規模な砂嵐が、過酸化水素といった酸化化合物を大量に生成し、惑星全体にまき散らしている可能性が高いことが、カリフォルニア大学バークレー校の研究者らによって指摘された。論文が「ジャーナル・アストロバイオロジー」誌の6月号に記載された。

研究者らは、実験室における実験と理論モデリングに基づき、砂嵐により生じた静電気による酸化物の生成可能性を議論してきた。同大の物理学者グレゴリー・デローリー氏によると、この生成が過去30億年間続いてきたのであれば、我々が知るような生物は全て殺傷するレベルの酸化物が堆積しているはずだという(ちょうど、地球で見られる積乱雲の雷と同じ原理。右図は火星面での現象の模式図)。

「もしこれが正しいなら、このことは、1970年代に行われたバイキングによる土壌測定の結果にも大きく反映されるべきことになります」と同氏は語る。

バイキングの最大の目標は、土壌中に生命体の痕跡を探し出すことだった。バイキングが行った土壌実験には栄養物や水の噴霧などが含まれており、これらの操作で生じた気体を分析することで、それが生物由来か否かを捉えようとした。デローリー氏らの研究結果は、バイキングの実験で生じた気体はむしろ通常の化学反応によることをより強く支持するものだという。

「生物の存在に関する最終判断はまだ下せないが、しかし、火星の土壌は非常に反応性が高いということは明らかになりました。土やダストによる、長期に渡る腐食などの影響は、クルーや器機に影響を与えかねません」と、将来の有人火星遠征に関する注意点も同氏は指摘している。

「強い紫外線に曝され、低温で、水も稀少で、酸性土壌の環境では、どんな微生物も生き延びるのは難しいのではないでしょうか」と、氏は結論づける。くわしくはこちらへ。【University of California, Berkeley 07.31】

<追加情報 07.20. 2006>

画像は、NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」(MGS)が撮影した、バイキング1号の着陸地点周辺。今月20日、バイキング1号着陸成功30周年を迎え、それを記念してリリースされたもの。これらはそもそも昨年リリースされたものであるが、30周年にあたり、MGS画像チームの計らいで再リリースされた。

    

バイキング1号自体の影をMGSで捉えることは難しいという。というのも、この地域はしばしば砂嵐などに見舞われるからとのこと。

左は、バイキング1号の着陸地点周辺。黒と白のラインで示されたのは着陸機からの視線を示しており、要の部分に着陸機が座っている。当初、バイキングチームらは黒ラインで示される視線と着陸地点を考えたが、これでは地表の風景(中央)の細部を説明することができないことが判明。MGSカメラの共同分析者であるメルトン・デービーズ氏が再分析を行ったところ、白ラインで示された状況が現実ではないかと指摘、その後、別の分析でも同様の結論が得られたという。

右の画像は着陸地点の全景。右隅の枠は拡大画像で、矢印の先に着陸機が座っているとされる。とにかく大きいサイズの画像と解説はこちら。【NASA/JPL/MSSS 07.20】

<追加情報 07.10. 2006>

先月中旬、NASAの火星探査車「スピリット」が、火星地表に落下した隕石と見られる岩石に出くわしたという話題がありましたが、先日、この周辺の大きなサイズ画像がリリースされました。(もっと大きいサイズ

      

この画像は先月16日(Sol 872)に撮影されたものです。

これら2つの隕石にはそれぞれ「孫文」(左)、「アラン・ヒルズ」(右)とニックネームが付けられています。共に南極にまつわる名称に由来しており、「孫文」は1989年に中国が設営した南極基地で、「アラン・ヒルズ」は火星から飛来したと考えられている隕石が多数見つかった一帯の名称で、1996年、ここで採取された隕石(符合ALH84001)にミミズ状の有機体とみられるものが見つかったことで有名。電子顕微鏡で見出されたこの物体は生命の化石ではないかと話題を呼び、未だに議論が続いています。

なお、両者は「オポチュニティ」探査車が見つけた「ヒート・シールド」と呼ばれている隕石と成分が似ているそうです。【NASA 07.10】

<追加情報 06.15. 2006>

下は、火星の「ハッピー・フェース」の“口”の南側に広がる地帯。NASAの火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影したもの。

     

砂状土壌の堆積で形成された地形。堆積層の下の方では縞模様がお互いを切り合っているように見えますが、これは堆積がストップし、浸食を受け、やがて再び堆積を開始…の繰り返しを示唆しているそうです。ただ、この層が風の影響で形成されたのか、或いは水の影響をうけてできたのかは、現時点ではわからないとのこと。風で吹き流されて形成された砂丘も連想させられますが、砂丘にしては規模が大きいとのこと。

なお、画面下の「dust devil」は、局地的なつむじ風。大きいサイズはこちら
【NASA/JPL/Malin Space Science Systems 06.15】

<追加情報 06.09. 2006>

先月末よりサンドトラップにかかっていた火星探査車・オポチュニティが5日(Sol 840)、脱出を完了した。

右はこの日に撮影された一枚で、車輪がだいぶ砂から抜け出し、スリップなしになろうとしているところ。脱出開始5日目となるこの日まで車輪はスリップを続け、一日僅か数センチのバックしかできなかった。詳しくはこちらへ。

…こちらの動画は必見!【NASA 06.09】


<追加情報 06.09. 2006>

右は、火星探査車・スピリットが今年4月12日(Sol 809)に撮影した一枚。手前中央に色質の異なる岩が写っているが、これは隕石と思われ、非公式に「アラン・ヒルズ」と呼ばれている。またこれと同様の岩が左端に見えており、こちらは「ツォン・シャン」(深セン)と呼ばれている(大きいサイズはこちら)。

このような、火星面に落下した隕石としては、オポチュニティがその耐熱シールドの残骸の近くで発見した「ヒート・シールド・ロック」が知られている。【NASA 06.09】

<追加情報 05.31. 2006>

火星で地道に活動を続けているNASAの火星探査車「オポチュニティ」が、またまたサンドトラップに引っかかってしまったようです・・^^;

5月29日(sol 883)、この日は24mの移動が予定されていたが、わずか1.5m程しか進むことが出来なかった。コントロールチームは翌日、送られてきた画像(右・大きいサイズ)より対策を検討したが、車輪の埋没はそう深いものでもなく、数日内には脱出が試みられる予定。詳しくはこちらへ。

オポチュニティは昨年5月にもサンドトラップにかかり、この時は脱出に1ヶ月以上を要している。【NASA 05.31】


右は火星周回探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した火星の地表の一部。クレーターの壁面とのことですが、何か流れた跡が・・。(大きいサイズと位置詳細はこちら

このような流れた跡は、地下から水が噴き出した痕跡という意見がありますが、吹き出したのは二酸化炭素だという意見もあり、まだはっきりと結論がついたわけではありません。ここでは写っていませんが、クレーターリムのてっぺんから流れた痕跡など、リムが風化で崩落した結果だという主張もあります。【photo: NASA/JPL/MSSS 05.25】

<追加情報 05.05. 2006>

次のペア画像は、NASAの火星探査車「オポチュニティ」が撮影した「ビクトリア・クレーター」のパノラマ画像(下)と、それを元に高さが強調されて描かれた画像(上)。(大きいサイズ
    

オポチュニティは現在、直径800m近くある「ビクトリア・クレーター」の中を走行している。このクレーターを走りきることができるかどうかは未知数だが、とにかく走り、様々な地質情報を収集する予定だ。

この強調画像からは、通常の画像からは微かにしかわからない地平線の特徴をよく知ることができるのだという。見た目、凄く危険な地域を走っているようにみえるが、実際は下の画像で見られるように、なだらかな地形だ。このような強調処理が最初に行われたのはバイキング2号(1976年)ランダーで得られたパノラマ画像だった。詳しくはこちらへ【NASA 05.05】

<追加情報 05.11. 2006>

右、なんとなくのっぺりして、つるつるかわいいクレーター(笑)右上のは埋まってしまっているそうです。【NASA/MGS MOC 05.11】

<追加情報 04.13. 2006>

先日既報の、右前輪の故障、かつ、現在いる領域の地質の問題によりしっかりとした走りが困難に陥っていた火星探査車「スピリット」が先週水曜、無事、冬を乗り切るために充分な領域へと達した。かの地は現在秋で、数ヶ月後には冬を迎える。日照が減少するため、冬が来る前に、少しでも陽当たりのよい場所へ移動することが急務となっていた。【NASA 04.13】

<追加情報 04.10. 2006>

画像は、火星の「ガレ」クレーターですが…幼稚園児が書いた顔に見えますね(笑)

これはESAの火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」が撮影したもので、「ハッピー・フェース」として紹介されています。詳しくはこちらへ【ESA 04.10】

             

…う〜ん、残念ながら、「人面岩」ほどのインパクトはないなぁ(笑)

<追加情報 04.04. 2006>

NASAが火星に送り込んで早2年と3ヶ月が経過した火星探査車「スピリット」。もう一台の同型車「オポチュニティ」と共に想定の9倍の長期に渡る活動を続けているが、各部にガタが目立ち始めているのは間違いない。そんな中、先月からスピリットの右前輪が機能不能に陥っていたが、結局、回復断念が決定された。

なお、オポチュニティも昨年右前輪が故障し機能を停止、車は後進しながらそれを引き摺る形で活動している。

スピリットの右前輪故障は、しかし、タイミングが悪い。現在火星面では秋から冬に向かおうとしており、太陽の日照が弱くなりつつある時期にある。スピリットは火星で2度目の冬を迎えようとしつつあり、これを乗り切ろうと、より太陽光の当たりやすい斜面へ向けて移動しようとしていた矢先であった。

(右・車輪でえぐられ露出した地表。白く見えるのは塩分で、粉末状のそれは、過去に海水が存在したことを示唆するものという)

本格的な冬にはまだ3ヶ月ほど時間があるが、既に、一日1時間程度しか移動できないほどに日照は弱まっているという。

「事態を深刻だと言うには、まだ時期尚早です」と語るのは、プロジェクトマネジャーであるジョン・カラス氏。「地形の性質が主たるファクターです」と、車輪の問題よりも、今はまだ、むしろ地質の問題が重要であることを強調している。

だが、時間との勝負になっているのは間違いない。「気候の変化は早いので、我々のトップ目標は、早く車を安全なところへ移すことになっています」と語るのは、主席研究員でコーネル大学の地質学者スティーブ・スクイヤーズ氏。

このことは、(予定されていた)尾根伝いのルートを走行するのをやめ、別のルートで陽当たりのよい斜面へと移動しなければならないことを意味するという。

ちなみに、陽当たりの問題は、赤道付近を走行しているオポチュニティには関係がない。

(下は現在スピリットが走行している付近の鳥瞰図で、ブルーの部分は高度が低く、赤い部分は高い。スピリットは左上から走行してきており、「マククール・ヒル」(McCool Hill)と名付けられた丘を目指している。)

     

(一方、右の3Dは麓から見上げるように描かれたもの(かなり大きいサイズ)。青の部分は、冬の間太陽光を一杯に受けることのできるベストな領域。グリーンの部分はその次に望ましい地帯となっている。現在スピリットは、橙〜赤の、望まれない場所に位置している。

ちなみに、地図の中に“Korolev”と見えるのは、そう、ロシア宇宙開発でおなじみの「コロリョフ」の名が冠された地帯。この辺は小石が散らばるちょっとした尾根のような地点であり、当初スピリットが目指していた所(右下の画像)。しかし車輪のトラブルのため、プランが再考されている段階である。)

スピリットは右前輪故障後、一日に10mの割合で走行していたが、その後、地質の問題でスリップを起こし走行困難になっている。管制チームは現在、より有効なルートを検討している段階という。

一方、スピリットやオポチュニティのサスペンションは、車の重量を6つの車輪に均等に加わえるように設計されており、これが平地や斜面、或いは障害を乗り越えるときの安定走行を保証している。だが、車輪を引き摺る走行に関しては話が別だ。しかもとっくに保証期限(約3ヶ月)は切れている。

スピリットの右前輪の故障は今年3月13日(Sol 779(火星日))に発生した。この時探査車は地球との交信を行うアンテナの角度を調整していたところで、車輪モーターへの電流が増加、その後流れなくなったという。検討の結果、6輪を動かす10個のモーターのうちの1つの機能停止が明らかになった。

結局、管制チームは、このモーターを回路から切り離してミッションを続行することを決定した。このことは言うまでもなく、右前輪は見捨て、今後5輪走行で乗り切らなければならないことを意味する。

ただこれは、予期されていたことでもあった。スピリットは既に予定の9倍の長きにわたり活動を続け、車輪は1300万回以上も回転しているのだ。詳しくはこちらへ【NASA MER 04.04】

…オイオイ車検切れだろ〜!って、冗談はさておき、今後のスピリットチームの活躍に注目ですね。この困難をどう克服していくのか…応援しましょう!それにしてもひょっとして…かつてのライバルが踏み込みを拒んだのか・・(笑)

<追加情報 03.16. 2006>

火星の小渓谷は水の流れによって形成されたという考えが支持を集めているが、そうではないかもしれないという調査結果を、米アリゾナ大学の研究チームが発表した。

火星を周回する火星周回機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した地質学的に若いと見られる小渓谷は、それが過去数百万年以内のそう古くない時期に起こった洪水の証拠という研究結果が5年前に「サイエンス」誌に記載されてから、研究者達はその説を支持するようになった。

(上は、グローバル・サーベイヤーが撮影したクレーターの縁から内側へ形成されている渓谷。水の流れを想像させる)

だがしかし、注視する事実が出てきた。月の渓谷に同じように見えるものが存在すると、アリゾナ大学月・惑星研究所の研究者が指摘したのだ。月には水は存在しないので、その渓谷は水なしで形成されたものと言えるのだ。

これは、グエンドリン D・バート女史が、ヒューストンで開かれた第37回月・惑星科学会議の席上、発表したものである。

「我々はみな、火星で液体の水を探し出したいのです。それは本当にエキサイティングなものですよ。もし火星に液体の水があれば、地球から水を火星へ持ち込む必要がありませんからね。それに水の存在は、火星の生命の存在可能性を大きく高めることにもなります。」と同女史は語る。

2000年の「サイエンス」誌の論文は挑発的なものだったと、女史はいう。「だが私は懐疑的でした。渓谷の形成について、他の説明はないものかと考えたのです」

昨年彼女は、月・惑星研究所のアラン・トレイマン氏の話を聞いた。そこでトレイマン氏は、火星の渓谷は恐らく風によって生じた乾いた地滑りによるもので、水ではないのではないかという可能性を指摘したのである。

近年、バート女史は、アポロが月面に降り立つに先立ち撮影された月の高解像度画像で月面の調査を行っていた。その時、全く偶然、火星の渓谷と同じ風景に出くわしたという。

(右は、月のクレーター「ドーズ」の縁に形成された渓谷。上の火星の渓谷に極めて酷似している。月には水は存在しないため、これは地滑りによって生じたと考える方が妥当である。)

「もし“乾いた地滑り”説が正しいのであれば、同じ様態を月でも見いだせるのではないかと考えていました。月には水が無いからです。そうして、我々は見いだしたのです」と彼女は語る。詳しくはこちらへ。【Univ. of Arizona 03.16】

…昨年も、グローバル・サーベイヤーが最近撮影した画像より、過去に撮影された画像では目立たなかった流路状の地形が、打って変わって非常に際だっているのが発見されました。これも乾いた地滑りと考えられています。クレーターの縁や山腹に存在する渓谷は、地滑りで形成された可能性が高そうな予感です。。

<追加情報 03.13. 2006>

これは凄いぞ…太陽系最大のグランドキャニオン!(大きいバージョン

    

ここは、火星の「マリネリス大渓谷」。火星周回機「マーズ・オデッセイ」が蓄積してきた画像データをつなぎ合わせて作られたもの。太陽系最大の渓谷で、地溝の深さは7キロ、長さは米国を横断するほどなのだとか。詳しくはこちらへ【NASA 03.13】

で、やはりというか、ついにでた

米Googleは3月13日、Webブラウザで火星を探索できる「Google Mars」を公開した。「Google Maps」「Google Moon」の火星版だ。

このサービスは同社と米アリゾナ州立大学の米航空宇宙局(NASA)研究者と共同で開発したものだ。(ちなみに上のキャニオン画像を作成したのも同大学です@管理人)

Google Marsでは、以下の3種類の画像が見られる。

Elevation:NASAの火星探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーのレーザー高度計のデータを基にした標高で色分けされた火星の地図。

Visible:マーズ・グローバル・サーベイヤーの火星軌道カメラが撮影した画像を集めたもの。このカメラは家庭用デジカメに似ており、「もしも人間が火星周辺の軌道上に立ったら、基本的にはこの画像のように見える」とGoogleは説明している。

Infrared:NASAの火星探査機マーズ・オデッセイの熱放射映像システムで撮影した赤外線写真を集めたもの。暖かい場所ほど明るく、冷たい場所ほど暗く写る。空中の雲やちりは写らないため、これまでで最も鮮明な火星全域の地図だという。

火星探査機の着陸地点や渓谷、クレーターなどを検索することもできる。

現時点ではGoogle EarthではGoogle Marsの画像は見られないが、同社は対応を進めているとしている。【IT media 03.13】

…火星の人面岩も、あるのかな?

<追加情報 02.23. 2006>

米ボストン大学の研究者たちは、太陽フレアが火星の大気上層に影響を与えているはっきりとした証拠を掴んだと発表した。今月24日発行の「Nature」誌に論文が記載された。

論文では、2001年4月に発生した太陽フレアによって放射され、地球で記録されたX線が、火星にどのように到達し、火星の電離層にどのように影響を与えたかが分析されている。観測は火星を周回しているNASAの「マーズ・グローバル・サーベイヤー」によって行われた。

火星の電離層観測は、マーズ・グローバル・サーベイヤーが地球から見て火星の向こう側に沈むときに発した電波を地球でキャッチすることで行われる。グローバル・サーベイヤーが発した電波は火星大気を通過して地球へ到達するため、大気の影響をもろに受け、逆にそれを分析することで、物理特性などを知ることができる。これは「Radio Science Experiment」と呼ばれ、99年より続けられている。

「2001年4月15日から26日にかけ、グローバル・サーベイヤーからのシグナルは、火星の電離層密度がいつになく高いことを示しており、何らかの荷電粒子(イオン、電子)生成が生じたことを示すものだった」と説明するのは、同大学の研究チームを率いるマイケル・メンディロ教授。

「地球では、気象衛星「GOES」が太陽からのX線を観測していました。で、その膨大な記録を精査したところ、グローバル・サーベイヤーが火星で電離層密度上昇を観測するちょうど数分前に、X線フレアを捉えていたことが明らかになったのです」と語るのは、チームの一員であるポール・ウィザース博士。太陽X線で生じた過剰な電子が火星大気に僅かな変化を与え、それがグローバル・サーベイヤーでキャッチされたというわけだ。

これらのX線フレアが確かに電離層に影響を与えたかどうか確認するためには、地球での観測による追加証拠が必要だった。「当時、太陽と地球、火星はほぼ一直線に配置していました。したがって、地球で観測されたX線は、それが火星で与えたのと同様に、(地球の)電離層にも影響を与えるはずだったのです」とメンディロ教授は言う。それで実際に地球の電離層について調査してみたところ、確かに影響を受けていたことが明らかになったのだという。

      

(上のグラフ、左は気象観測衛星「GOES」が2001年4月26日12〜16時(世界時)に得たX線放射強度。13時10分、フレアのピークが生じているのが示されている。これとほぼ同時刻、グリーンランド・サンドラストロームの電離層観測ポイント(ここ)で、電離層密度が急激に増加しているのが観測されている(右上グラフ)。一方、火星ではグローバル・サーベイヤーによって電離層が観測されていたが、この日は、通常よりも層密度が高かったことがはっきり示されていた。(右下グラフで、点線は平均、実線はこの日の数値。同じ太陽フレアが、2つの惑星の大気にほぼ同時に与えた影響を捕らえたのはこれが初めてである。グラフ・大きいサイズ

(また、右の画像は同26日13時13分(世界時)、太陽観測衛星SOHOの紫外線撮像望遠鏡(EIT)によって得られた波長195Å太陽面。右上でピカッと輝いているのが太陽フレア。この日、12時頃から太陽活動が活発化、ピークを迎えた後、数時間後にしぼんだ。GOESのセンサーで得られたピークとほぼ同時刻に得られた画像。大きいサイズはこちら 【photo: SOHO】)


「この研究は、比較大気学の新しい領域に立つことになる思います。2つの惑星の電離層を比較することで、1つの惑星の研究からは限界があったモデルに対する新たな視点や制限を加えることができるのです。」と、メンディロ教授は指摘している。詳しくはこちらへ【Boston Univ. 02.23】


<追加情報 02.17. 2006>

右の画像は、火星を周回している欧州宇宙機構(ESA)の「マーズ・エクスプレス」探査機が搭載している「高解像度ステレオカメラ」(HRST)が撮影した、火星の衛星・フォボスが火星面に落とした影の様子。刻々と移動していく様が捉えられており、非常に興味深い(動画(画像をつなげたもの)はこちら)。

この画像は、昨年11月10日、火星周回通算2345周目の時に得られたもの。ドイツ航空宇宙センター(DLR)の惑星調査研究所(Inst. of Planetary Research)とドイツ・ダルムシュタットに構える欧州宇宙運用センター(ESOC)の技術陣が密接にタッグを組むことで撮影が成功した。

「フォボスが火星面に落とした影」というと、非常に面白い、目を引くものだが、この観測は奥が深い。この観測により、フォボスの軌道モデルを検証することができるからだ。

2004年初頭、同様の観測で得られたデータを基にフォボスの軌道要素が見直され、精密な軌道が計算されていたが、今回の観測で、その軌道が確かなものであることが確認された。探査機やフォボスの軌道が数百メートルの誤差で確定していることが観測成功の条件となる故、予測に基づいてカメラを向け、狙い通りの画像が得られたということは、全てが高精度で正しかったことを意味する。

事実、2004年の観測で、フォボスの精密な軌道位置は、それまで計算されていた位置より12km程先行したところにあることが判明した。地球から億キロも離れたところにある小さな岩石の位置に見出された12kmのズレなど、ホコリのようなもの。この検出は凄いことである…これがなかったら、今回の撮影はあり得なかっただろう(左・フォボス、右・探査機とフォボスの位置関係)。

      

ところで、フォボスは火星の2個の衛星のうち大きい方で、27km×22kmのサイズを有し、高度6000kmをほぼ円軌道を描いて、一周7.5時間で周回している。

この影が通過する火星面に立ったとすると、フォボスが太陽の正面を駆け足で通過していくのが見えるだろう。地球でいう「日食」のようなものだが、フォボスの場合、影が斜めから入射するため、地表に映った影は楕円になる。また、見かけ上、フォボスが太陽よりも小さいため、太陽光がフォボスの影の内側へ分散してくる。このため影は、中心が濃く、周囲が淡い。

撮影時、影は時速7200kmで走りすぎ、また、探査機は極軌道を時速12600kmで飛行していた。【ESA 02.17】

<追加情報 01.26. 2006>

次の画像は、火星周回機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影したもの。左は昨年1月26日に撮影された“エイリアン・ヘッド”(大きいサイズ)で、右は昨年12月7日に撮影された台地(大きいサイズ)。エイリアン・ヘッドの方はバイキング1号の着陸地点に近いところに位置し、台地の方は「イシダス平原」と呼ばれる域に存在する。この平原にはESAの火星着陸機「ビーグル2」が挑んだが、失敗している(2003年末)。
             

エイリアンヘッドの“目”の部分は風ないし水による浸食でできたものと考えられるという。エイリアンにも見えますが、管理人はパンツを被ったしんのすけを真っ先に連想しました(笑)。あと、右の台地はアルマズカプセルを・・ホリエモン、逮捕されましたし、もう無理かな・・。【JPL/MSSS 01.26】

<追加情報 01.21. 2006>

新ブランド「火星の塩」…?

火星面で活動を続けるNASAの火星探査車「スピリット」。昨年8月、小丘「ハズバンド・ヒル」の“登頂”に成功し、現在そのすそ野まで降りてきているが、最近思いがけずにも、転回する際に車輪で掘られた地面に堆積層が露出した。
      
上画像は、幅約30cmに渡り掘り起こされた地表のクローズアップで、今月12日に撮影(ほぼ原色・大きいサイズ)。白く見えるのは、これまで確認されたことのない高輝度の物質で、粉末かつ固まり状をなしている。

分析によると、これは塩化ナトリウム、すなわち塩を含む物質と考えられるという。塩分は液体溶解の状態で移動・集積が容易く、過去における液体すなわち水の存在を示唆するものといえる。

また、画面中央に見える、半分埋もれた岩(約10cm)の調査も行い、データは分析中とのこと。研究者達はこのような岩石や土の調査を通して、水がどのような役割を演じたのかを読み取ろうとしている。

一方、昨年11月より移動が殆どできなかったもう一台の探査車「オポチュニティ」が19日、約2ヶ月ぶりに2.4mの移動に成功した。

オポチュニティは昨年11月25日、サンプルに迫って対象を分析する「アーム」が伸びた状態から動かなくなる事態に見舞われた。アームが伸びた状態だと足下の資料分析はできないし、その上、車自体を移動させることができない…移動時にアームを伸ばしていると安全走行に対しリスクが高まるからだ。


その後の調査で“肩”部分のドライブモーターのコイルの一部が断線していることが判明、駆動電圧の上昇により機能の回復が見られるものの、完全な状態ではない。エンジニア達は、腕が半分伸びた状態でどのように移動を行うべきか検討を繰り返し、19日、本格的な走行開始へ向けてテストが行われたのだった。

走行時、アームは“肘”を突き出した“エルボー”の状態になされていた(肘は180度回転させて、先端が上を向いた状態だったようです@管理人)。

(下画像はフロント・ハザードカメラで撮影されたもの。左は走行2日前(Sol 704)で、右は走行中の姿(Sol706)。アームの“肩”から“肘”の部分は殆ど動いておらず、手先だけがぐるりを上へ振り上げられた格好になっているのが明らか。)

    

一方、18日、火星の衛星「ダイモス」が太陽の目の前を通過していく現象が、オポチュニティのパノラマカメラにより観測された。またそれとは別に、ESAの火星周回機「マーズ・エクスプレス」と同時観測の形で火星大気の分析が行われた。【NASA MAR 01.21】

(下は、NASAのRaw画像倉庫から拾ってきた、ダイモス・トランジットと見られる画像。今後、太陽との位置関係により、このような太陽面通過が頻繁に見られる季節に入るそうです。この観測は天体力学の検証などにも重要なデータを与えます)
      


<追加情報 01.04. 2006>

3日、NASAの火星探査車「スピリット」が、火星に着陸して2周年を迎えた。下・左画像は最新のスピリットの姿で、自身のカメラで撮したもの。太陽電池パネルに積もったダストは少なく、これは時折つむじ風などで払われるため。(大きいサイズ

さすがに2年ということでガタがきているところも目立つが、まだ暫くは稼働しそうである。
             

ちなみに、右は火星を周回する「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影したスピリット(大きいサイズ)。ただし撮影日は、11月2日とのこと。点、ですね…(^^; これまでもこのような画像は多く撮られています。【NASA/JPL/Malin Space Science Systems 01.03】

忘れられがちですが…火星を周回しているNASAのマーズ・オデッセイ探査機の画像です・・

右は、火星を周回しているNASAの火星周回探査機「マーズ・オデッセイ」の「熱放射撮像装置」(Thermal Emission Imaging System = THEMIS)によって得られた画像の一枚。同探査機は火星を周回しながら、その地表の観測を現在も続けている。THEMISは5つの可視光波長と9つの赤外波長に感度を持ち、撮像を行う。すでに多くの発見が行われている(詳細はこちら)。

右の画像は12月26日にリリースされたもの。紹介ページには「Wind and Water?」とタイトルが付けられているが、特徴的なのは、上のクレーター内に目立つ、何かが流れた跡。極めて大きいサイズの画像でみるとよくわかるのだが、クレーターのリムから何かが吹き出し(?)、流れたような・・。リムの一部の“崩落痕”とも考えにくい。クレーターの底に向かって痕跡がくっきり残っているところを見ると、一過性のものだったのか。

火星の“流体痕跡”を巡っては、地下水という主張に対し、液体CO2の類という意見もある。9月に見出された流痕は、液体ではなく、“砂崩”という見方がなされている。さて、実態は何なのでしょうねぇ…?【NASA/JPL/ASU 文は全て管理人 01.03】

<追加情報 12.22. 2005>

火星の水を巡って、火星探査車が集めたデータの解釈が真っ二つに割れようとしています・・どうも混乱を引き起こしているようで、マーズ・ローバーの主席研究員のコメントも出てきている始末・・

NASAの火星探査車「オポチュニティ」が昨年発見した水の痕跡は、惑星科学において最も際だった進展の1つであった。しかし、先日、これまでのものとは全く異なる説が2つ登場した。

これまで広く報じられてきたように、火星にはかつて大量の水があったというされているが、しかし、先日発表された説では、オポチュニティが見たものは隕石の衝突か火山活動に根源を有するものではないのかというものである。

今月22日、これまでの“大量水存在説”と対立する2つの論文が「Nature」誌に記載された。これは、火星問題の究極の核心に迫る…そう、「火星は過去、生命を維持できるほどに暖かく、ウェットだったのか」ということだ。

ところが両者とも、オポチュニティが最初の45日間の活動で得たデータを基にして議論が展開されているのだ。このことは、同じデータから全く異なる結論が出てしまったことを意味している。

ちなみに、マーズ・ローバーの主席研究員であるコーネル大学のスティーブン・スクイヤーズ氏は、「両者の研究とも最新のデータを加味していないようだ。」と指摘する。

メリディアニ平原で活動するオポチュニティはそこで、砂岩の堆積層の確認を行い、大量の水があったと考えられる化学的分析結果を得た。

スクイヤーズ氏はSpace.com紙の取材に対し、「我々チームの常々の解釈は、水は地下に存在し、時折地表にわき出して蒸発するというものなのだ。当初からメディアは、表面水の存在を強調し、地下水のことをさほど取り上げてこなかったのだ」と語った。

さて、22日に発表された論文の1つは、「確認される堆積は、ごく僅かな酸性水や火山ガスの成分である二酸化硫黄が作用した火山灰に過ぎない」と結びつける。これは、コロラド大学のトーマス・マッコロム氏の研究チームによるもの。

「我々のシナリオでは、観測される化学物質を維持するために必要な水は、そこ数ヶ月程度の存在でしかなかったはずである。水は長くても数世紀程度のものではなかったのだろうか。このことはこれまでの、『数百万年にわたって大量の水が覆っていた』というシナリオとは非常に異なるものである。」

「我々のシナリオ形成には、表面水との長期にわたる反応を必要としない」と、マッコロム氏のチームは主張する。

同氏はまた、「メリディアニ平原は地球で言えば、ハワイのイエローストーンやイタリアのような火山地帯の一部ではなかったのだろうか。ユタ州のソルトレーク湖のイメージとは異なって」と展開する。「メリディアニは、過去の生命活動に関してはあまり面白みのないところだと我々は考えている。」

「もしマッコロム氏らのシナリオが正しいのであれば、これまで言われてきたことの可能性は大幅に小さくなることになる。」と語るのは、サウスウェストリサーチ研究所のマーク・ブロック氏。ちなみに同氏は、これらの研究には関わっておらず、「Nature」誌でコメントをする立場にある。

ところでもう一方の論文は、「隕石が、メリディアニ平原で観測された化学成分と堆積層を形成したと説明することができる」と主張する。“ブルーベリー”と例えられる球状粒子の形成も説明できるという。

(右・オポチュニティが見つけたブルーベリー粒子。あちこちで見つかっており、水の作用で出来上がったと考えられている)。

この論文を発表したのはアリゾナ州立大学のポール・クノース氏率いるチームで、ブルーベリーはあまりにも完全な球でかつ均一なサイズ過ぎて、水による形成とはかえって考えにくいと主張する。

クノース氏のチームは提唱する。「地表に沿った岩石や塩分、硫化物や海水それに氷などの乱流が隕石によって引き起こされ堆積層を残し、それが後に、残された僅かな水にさらされたのだ」、と。

このシナリオは、海や湖、帯水層の存在を仮定しなくても、観測される全ての特徴を説明することができるという。

火星には、その進化の初期の段階で大量の水が存在したことは何の疑いもないことになっており、その証拠は、現在地表に見られる大渓谷のような形で残されている。しかし彼らは、これらの地形は隕石のインパクトで氷が溶け、短期間だけ生じた突然の大洪水で形成されたものではないかと指摘する。このようなインパクトは太陽系形成初期で頻繁に起こっていたと考えられている。

「これら2つの説のシナリオに共通しているのは、表面(少なくともメリディアニ平原に)に大量の水の存在を排除し、従って、火星は一度も生命を発生させる状態には成り得なかったということだ。この結論は、メリディアニ平原には長期間にわたり海が存在していたに違いないというこれまでの解釈とは完全に対照的なものだ。」と、ブロック氏は言う。

スクイヤーズ氏は語る。「より深い理解はオポチュニティがエンデュランス・クレーターを調査したときに得られた」と。これらの調査に基づく結論はちょうど1ヶ月前に発表されたといい、この時既に、2つの論文は提出された後だったという。

「クノース氏やマッコロム氏らは論文を執筆しているとき、この最新の結論を見ることはできなかったのだ」と同氏は語る。

そのエンデュランス・クレーターで得られた調査によると、堆積層や粒子の特徴が、噴火や隕石に成因を求めた場合と完全に異なっているのだという。それらは風により運ばれたものという設定に完全に一致し、また、水による堆積の証拠を示しているという。

ただ、スクイヤーズ氏は強調する。「我々の主張は常に、水は殆ど地下にあり、時折表面に出現し池を作り、すぐに蒸発してしまうということだ」と。【Space.com 12.22】

…マーズ・ローバーの主席研究員であるスクイヤーズ氏は当初のコメントの補足をSpace.com紙に語っているようで、同紙には当初のコメントに基づく記事もリリースされています。読み比べてみると興味深いです。混乱を避けようとしているのがわかります・・。まず、元記事はこちら
http://www.space.com/scienceastronomy/opportunity_news_040302.html
(記事中、「That's the $64,000 question」とあるのは、「ミリオネア」でも意識した表現でしょうか・・?)
こちらは、その後スクイヤーズ氏の主張をしっかりと盛り込んだバージョン
http://space.com/scienceastronomy/051221_mars_dry.html

あと、「隕石衝突説」の概要を記載したアリゾナ大学のニュースリリースページはこちら

<追加情報 12.06. 2005>

火星を周回しているNASAの探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」により得られた過去6年間の観測データを分析した結果、、火星の大気に無数のオーロラが生じていたのが確認された。これはカリフォルニア大学バークレー校の物理学者達の研究による。

オーロラは地球のみならず、木星や土星などの惑星にも確認されているが、これは惑星の磁場により捕らえられた、太陽から吹き出す荷電粒子(太陽風)が大気上層で衝突することにより生じる発光現象。それ故以前は、しっかりとした磁場を持たない火星ではオーロラは生じないと見られていた。

火星の磁場は、地球のような惑星全体を包むものではなく、強い磁場の“塊”(クラスタ)が局在的に存在する。これは、火星内部ではもはや磁場の恒常的な生成は行われておらず、かつて存在したそのような磁場の残留分が散らばっているのだろうと解釈されている。各クラスタはスパン約1000km、深さ10km程度の磁化した岩盤と考えられている。

ただ、火星大気で生じるオーロラは赤や緑といった可視光ではなく、目に見えない紫外線域での発光のみである(火星大気の主成分が二酸化炭素であるため。地球の場合、酸素が赤や緑の色を出し、窒素が青を出す)。

(右の図は、過去6年間に検出されていた紫外線オーロラ、13000カウントをプロットしたもの。彼らは調査を開始して1時間もしないうちに、オーロラの痕跡を見出したという。)

火星のオーロラについては、昨年、火星を周回するESAの「マーズ・エクスプレス」探査機が火星大気中に紫外線フラッシュを検知、オーロラとして認識されたことが記憶に新しい。今回のバークレー校の研究者達による調査は、この発表に触発されたもの。グローバル・サーベイヤーには同校が作成した器機が搭載されており、これが蓄積した600万を超えるデータから拾い上げたものである。

分布は火星の磁場クラスタの分布に一致するという(正確に言うと、火星オーロラは各クラスタの磁力線の境界で生じている)。また、太陽活動の強弱にも一致しているという。

マーズ・グローバル・サーベイヤーは1997年に打ち上げられ、99年より本格観測を開始、高度400kmから火星の表面と磁場を観測し続けている。太陽同期極軌道を周回し、この特徴として、夜の側を通過する際、必ずその地表は午前2時になるというもの。

バークレー校の研究者達は、観測データをより精査し、いずれはマーズ・エクスプレスで得られているデータとドッキングさせてみることを考えているという。【SpaceDaily 12.15】

…より詳しくはこちらを。。

米航空宇宙局(NASA)は5日、昨年1月に火星に着陸した2台の無人探査車が、火星の1年間(地球の687日)にわたって地表を観測するのに成功したと発表した。

先に着陸したスピリットは3週間前、オポチュニティーは11日に2年目に突入。当初の活動予定は地球の3カ月間だった。

探査を担当するジェット推進研究所(カリフォルニア州パサデナ)のジョン・カラス博士は「探査車は火星のすべての季節を乗り切った。季節は再び晩夏になりつつあり、2度目の冬を生き残るために準備を進めている」と話した。【共同 12.06】

<追加情報 12.06. 2005>

下グラフは、火星で活動を続ける火星探査車「スピリット」と「オポチュニティ」の活動地点における、太陽高度の変化。この変化は両車の電源を担う太陽電池の発電量を極めて大きく左右する。

火星は地球と地軸の傾きが近いため、地球でみられるような、四季の変化に伴う太陽高度の変化が見られる。

グラフの横軸は火星上における経過日時(sol)を示しており、起点はスピリットが着陸した2004年1月4日(地球時間)。現在、約Sol 680に達している。(大きいサイズ

地球の1日は24時間であるが、火星は約25時間であるので、徐々に地球の時間とはずれていく。縦軸・左の数字は火星の赤道上にあった場合の発電量に対する、各車両の実際の発電量の比。赤ラインはグゼフ(Gusev)クレーターを走行するスピリットに関するそれで、青はメリディアニ(Meridiani)平原を走行するオポチュニティに関するもの。
  
ドットラインは、火星の正午の時点で太陽が天頂にくる地点の緯度の変化を示し、目盛りは縦軸・右。現在Sol680とすると、正午の時太陽が天頂に来るのは、南緯13度(−13)付近であると読める。Sol580付近が最も太陽が南に来ることから(南半球の夏至)、いま正に、南半球は太陽高度が日々低く、つまり夏から秋に向かって進んでいることがわかる。

ここで、両探査車は南半球にあることに注意。そうすると太陽電池の受光量が低下していくわけで、ドットラインの上昇につれて低下する赤・青ラインがそれを示している。太陽電池発電量の大小の差が大きいのは赤ライン、つまりスピリットの方。約2倍の幅を持ってスイングするが、これはスピリットがオポチュニティよりも高緯度を走行していることを示している。

一方、火星の公転軌道の楕円離心率は地球よりもやや大きく、太陽からの距離が比較的大きく変動する(右図・外側。内側は地球)。

火星の一年、すなわち一公転の間における距離の変化による受光量の変化を描いたのが、黒ライン。受光量は太陽からの距離の2乗に反比例し、グラフは近日点(太陽に最も近い時)を基準に2乗スケール化したもの。

太陽電池発電量は、軌道離心と季節による太陽高度の変化、双方を考慮に入れねばならない。(青と赤のラインは、両者を考慮した結果なのかな?ついでに、青いラインが頂点から下る際、やや凹んだカーブを描く理由はわからないです。オポチュニティの位置するメリディアニ平原の地形のせい・・ってあるのかなぁ?)

次に、下は太陽電池に積もっていくダストの影響により低下するスピリットの発電量を示したもの(大きいサイズ)。横軸はSolで、縦軸はダストフリーの状態に対する比。月日を重ねる毎に砂が積もり発電量は低下していくことが予測されていたが、しかし、所々“飛び上がって”回復しているところがある。
    
これはつむじ風などの大気現象により砂が吹き飛ばされるためにより生じている現象。例えばSol420付近で大きく回復しているのがわかる。【JPL 12.06】

…火星探査車が地球時間で2年もの間活動を続けているのは、バッテリーも含めて、電力供給がどうにか続いているのが大きく寄与しています。

度々記載していますが、火星探査車は“火星天文台”としても活躍しています。搭載のパノラマカメラは人間の目と同レベルの感度を持っていますから、夜空を人と同じように眺めることができます。これで得られた、例えば火星上での衛星(フォボス・ダイモス)の動きは天体力学に貴重なデータを与えます。

この“天文台”で、火星でみられる流星群の観測も行われています。

下は、今年11月18日(Sol 668)に捉えられたしし座流星群。地球上ではおなじみの流星群だが、同様の現象が火星でも見られることが予想されていた。

   

上は60秒露出の画像を9枚コンポジットしたもの(大きいサイズ)。撮影方向は天の南極(画像中央・South Celestial Pole)〜帆座(Velorum)の方角で、幾筋かの光が写っているが、これが流星の痕跡(Meteor Trail)。また、恒星は天の南極を中心に弧を描いているが、これは火星の自転のため。

なお、“Cosmic ray?”と記されているが、荷電粒子などの宇宙線が作り出した光の可能性も残されているという。

このような流星群の観測は、その力学の研究に貴重な資料となる。【JPL 12.06】

<追加情報 12.01. 2005>

欧州宇宙機構(ESA)は30日午後3時(日本時間1日午前0時)、同機構が運用中の火星周回探査機「マーズ・エクスプレス」と、今年1月に土星の衛星・タイタンに突入、地表への軟着陸を収めた探査機「ホイヘンス」から得られたデータの分析結果を公表した。これは、同日発行の雑誌「Nature」オンライン版にも記載される。

詳細はこちらへ【ESA 12.01】http://www.esa.int/SPECIALS/Results_from_Mars_Express_and_Huygens/

…かなり興味深い結果が得られていますが、あえてホイヘンス以外で注目すべきは、エクスプレスのMARSIS地中レーダーエコーでしょうか・・私はこれ、ずっと結果がリリースされるのを待っていたものでして・・。埋没したクレーターなどが発見されています。また、エクスプレスの軌道とレーダーの特性の関係で、目下のところ火星の電離層の観測が行われていますが、その特性に関してもリリースされています。

ミッションは延長されていますし、更なる発見が楽しみなところですね。


ホイヘンスでは、タイタン大気に電離層が2層存在するということが判明したという点でしょうか。

その他、あのオレンジ色のスモッグは地表まで達していることが明らかに・・このことは、これまでのタイタン大気モデルを大きく覆すもの(高度40km程度で晴れ上がるとされてきた)。ただ、下層では薄かったので、カメラで地表を撮影することができたとのこと(・・これってちょうど、黄砂のような感じですかねぇ・・)。

ホイヘンスが着地した地点は確かにぬかるみだったそうで・・ドムニュ!ってな感じでしょうか(?笑)ただ、明らかな“液体溜まり”は見あたらなかったようです(残念!)。

<追加情報 11.16. 2005>

火星の“ハズバンド・ヒル”頂上付近で調査を続けているNASAの火星探査車「スピリット」は太陽電池の状態も相変わらず(そして、予想に反して)良好で、夜間の“天体観測”も続けられている。

このところスピリットは、日中に充電を行い、夜間にカメラを作動させて星空を撮影するという、まさに火星面での“ミニ天文台”的活動も行っている。特に、火星の衛星であるフォボスとダイモスの動きの観測は、それらの力学的、物質的研究にとって貴重なデータを与えるとされている。

ところで先頃、衛星フォボスの“月食”が観測された。月食は地球上では時折見られるもので、太陽−地球−月の順に一直線に並び、太陽から見て地球の背後に月がまわることで月に日光が当たらなくなり、その結果、地球から月が見えなくなってしまう現象。

画像は、スピリットが観測したフォボスの月食。先月20日(SOL 639)に観測されたもので、パノラミックカメラ(Pancam)が刻々撮影した8枚の画像を1枚にコンポジットしたもの。この“フォボス食”は26分間続いたが、スピリットが観測したのは最初の15分間だけだった。
   

フォボスは矢印の方向へ動いていき、火星の影を示した白いアークの中に隠れていく様子が示されている。フォボスの最初の3枚の段階では、まだフォボスに太陽光が当たっているが、その後100秒間のラップをおいて撮影された4枚目は、正に影の中に入ろうとしているところ。

ところで、火星自体の影(背)に隠れて太陽光が当たらなくなっているはずにもかかわらず、微かに光って映っている(最後の3枚)のは、火星の大気で散乱された太陽光が僅かにフォボスを照らしているからと考えられている。【Mars Rover HP 11.16】

<追加情報 11.13. 2005>

特に話題や続報などがないので・・火星探査車の過去話を少し。。

下図は、火星探査車「オポチュニティ」のトラバースマップ(ジグザグ走行履歴マップ)。2004年1月の着陸から今年11月2日までの行程が示されています(火星上での1日単位を“SOL”とすると、SOL1〜SOL 630までに対応)。ブルーで書かれているのは大気圏突入の際に探査車を守っていた「ヒートシールド」や特徴的なクレーターにつけられた名称。例えば、オポチュニティは着陸したところが小さなクレーターの中だったので、そのクレーターは「イーグル・クレーター」(Eagle Crater)と名付けられています(ゴルフにあやかったようで(笑))。また、宇宙関連や海洋探検関連のフレーズなどが使われているようです。どうも、未知の分野へ乗り出した、歴史あるシップの名ばかりのようです。

(「エンデュランス」(Endurance)は英国の南極探検船の名称で、「アルゴ」(Argo)は古代の地中海探検船の名前のようで、「ジェイソン」(Jason)は沈没しているタイタニックを発見した潜水艇の名前ですが・・あとはわからないです。。)

「ボイジャー」とか「バイキング」はすぐに目にとまるフレーズですが、その中に「ボストーク」(Vostok)の名が・・!

   

「ボストーク」とは勿論、ロシアが1960年代始めに打ち上げた有人宇宙船の名称ですが、この周辺の土や岩には「ライカ」や「ガガーリン」と名付けられています。今年3月8日頃(SOL 399)に、オポチュニティはボストーク・クレーターに到着しました。このクレーターは殆ど砂に埋まっていて、岩盤が僅かに露出しているだけだったとのこと(大きいサイズのパノラマ画像はこちら

下は岩石「ガガーリン」に、ドリルで窪みがつけられたところ。アームの先が作る影の中の、円状の浅いの窪みがそれで、削られた岩が「ガガーリン」岩石です。削り取りは3月10日(SOL 401)に行われました。
   

下・左の画像は、この削られた部分の顕微写真。また、右は「ライカ」と名付けられた砂の顕微写真。これまでもよく見られていた「ブルーベリー状粒子」が確認されます。「ライカ」は最初に地球を周回した生物である犬の名前です。

   

さて、火星探査車は2台とも今だに地道に走行を続けており、このまま順調に稼働すれば、年明けには活動2周年を迎えます(火星上の時間ではほぼ1年に相当)。しかし驚異ですね、この長持ち様は・・時折起こるつむじ風は、故障を与えるどころか、太陽電池に積もった砂ぼこりを吹き払って、返って電力UPに貢献していますし。。【管理人 11.13】

<追加情報 10.27. 2005>

画像は、火星で活動中のNASA・火星探査車「スピリット」が夜間に撮影したオリオン座の姿。左端はCGで表したオリオン座で、残りの3枚が実際にスピリットが撮影したもの。10月13日、同探査車が搭載するパノラマカメラで撮影されたもので、露出はそれぞれ左から10,30、60秒。この時、火星時間で活動632日目(Sol 632)。(大きい画像はこちら

 

スピリットは火星の南半球で走行しているため、オリオン座は北半球で見るときと逆さまに見える(これは、オーストラリアで見る星座が、日本で見るものと逆さまに見えるのと同じ理屈)。露出60秒(右端)の画像で映し出されている星空は、肉眼で見たのとほぼ同じ姿。火星時刻で午前0時45分だった。
【NASA/JPL-Caltech/Cornell/Texas A&M/Space Science Institute 10.27】

<追加情報 10.13. 2005>

NASAはこのほど、火星がかつて、現在の地球に見られるような地殻運動を備えていた有力な証拠を見つけたと発表した。

具体的には、火星の地殻に地球で見られる「プレートテクトニクス」が働いていたこと。これは、火星を長年にわたって周回している火星探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」によって観測されてきた磁場のデータを分析したことでわかったという。

「プレートテクトニクス」とは、地殻は複数枚の「プレート」の集まりで、それらが動きぶつかったり離れたりすることで大規模な山脈や海溝の形成が行われるという考え。地球上では、例えば太平洋を取り巻く海溝や、ヒマラヤ山脈などの形成が代表的。

そもそも火星にプレートテクトニクス機構の存在が最初に発見されたのは1999年のことで、マーズ・グローバル・サーベイヤーが火星の南半球で観測した磁場のデータが基だった。ただ当時は、部分的なデータを基にした、あくまで局所的なものに過ぎなかった。

それから4年間にわたり、火星全球における磁場の分布が調査されてきた。下図はそれら地道な作業から得られたデータを視覚化したもので、磁力線が紫色で示されている。比較のため、左には地球の磁力線の様子が描かれており、右が火星の磁力分布。地球と大きくことなり、磁場の分布が局所的に点在しているのが明らか。

    

さらに、この磁場の向きや変化を調べることで、それぞれの磁場の動き、言い換えるなら地殻の動きを知ることができる。この詳しい分析より、地殻が動いていたことが明らかになったという。

同様のことは地球でも見られる。地球の磁場はゆっくりと動いており、更には、過去に何度か磁極の入れ替えが生じていたこともわかっている。これらの痕跡はプレートの中に“閉じこめられて”おり、その調査で見出されたものである。

次の図は、火星上空400kmを周回するマーズ・グローバル・サーベイヤーが観測した磁場のデータを基に作成された、岩盤に残された磁場の痕跡図。赤と青の帯は、互いに磁場の方向が逆であることを意味している。色の濃さは磁場の強さに対応している。

  

マントルの上昇によって内部からわき出てくる「プレート」は磁場の状態を保持する。例えば濃い赤と青の連続した帯は、次々とわき出てくるプレートに記録された磁場の変化の痕跡と読み取ることができる。また、“タルシス火山帯”(図中、緯度−30°経度210°から緯度+50°経度300°にかけて伸びる点線地帯“Tharsis”)は、プレートの下にマグマ溜まり(ホット・スポット)があり、プレートが動いていく中、定期的に噴火をすることで形成された火山の連続帯と考えることができる。これは地球の地殻現象に照らせば、太平洋の南洋諸島などに見ることができる特徴的なもの。

更に、“マリネリス・バレー”(緯度−10°経度280°“Valles Marineris”)は北米のグランドキャニオンの6倍のサイズと8倍の深さを誇る大地溝帯だが、これはプレートが引き裂かれようとしている運動によって生じていると考えることができるという。

「これは、地質学的には、さほど大変な分析ではない。しかし、プレートテクトニクスは火星面にみられる大規模構造をよく説明しているということができる」と語るのは、マーズ・グローバル・サーベイヤー磁場部門担当主席研究員であるマリオ・アクナ博士。

この結果は「Proceedings of the National Academy of Science」10月10日号に記載された。詳細や図の高画質画像はこちら【NASA 10.13】

<追加情報 10.20. 2005>

日が暮れて暫くして東の空へ見える赤い星・・これは火星。約2年2ヶ月ぶりに地球と接近する火星は、今月30日に最接近を迎える。小型望遠鏡でも空の状態が良ければ、“運河”と言われてきた黒い模様を眺めることができる。

さて、火星上では2台の火星探査車が稼働しているが、残念ながら現在は、地球を撮影することはできない。火星からみた地球は「内惑星」ということになり、火星に地球が最接近するときは、火星上からは太陽と同じ方向に見える、つまり昼に眺めることになるからだ。これは、地球上で金星を見るときの見え方と同じと言える。

  

画像で、上の2つは火星と地球の位置関係を空間的に描いたもので、地球が太陽の前を横切っていくように火星では見えることを表している。一方、下の2枚のうち左は実際に探査車が撮影した火星の昼の空であり、右はそれに地球(白い点)を合成してみたもの。

なお、火星探査車から地球を撮影することは可能で、上の白点は実際に撮影された画像を用いている。火星から地球が見えるとすると、それは朝か夕方のみで、しかも期間限定。ちょうど地球上で、金星が夕方か朝方だけしか見えないのと同じである(右はオポチュニティが撮影した地球。このとき、太陽-火星-地球のなす角は東に90°で、「東矩」と言われる状態。夕方、日没後に見られた姿)。【Photo: Mars Explanation Rovers Home 10.20】


<追加情報 09.21. 2005>

おぉぉう!何が流れたんだ!?

      

火星を周回する「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が撮影した画像から、いくつかの発見があった。21日午前2時(日本時間)よりJPLがオンラインによる会見を開いた。お題としては、

 ・ 新しい渓谷の出現
 ・ 新しくできたクレーターの発見(バイキングの撮影した画像との比較による)

とのこと。詳細はJPLのこちらのページへ【JPL 09.21】

…先日(16日)に予告されていたJPLの発表です。上の渓谷は水などの液体の流れによるものではなく、CO2の冬期凍結と夏期融解により生じた“砂崩”のようなものによるのだそうです(詳細はこちら)これって、以前から見つかっていた“何かが流れたような跡”のヒントにもなるのかな・・?

<追加情報 09.11. 2005>

火星面で稼働する「天文台」です

太陽電池の発電力が今なお充分な火星探査車が、昼間に充電した充分な電力を活かし、夜の星空を映し出している。

太陽電池に積もる細かいチリが風で上手く吹き飛ばされることにより、その発電能力が今なお充分に維持されている火星の地質を調査し続ける探査車。そのうち「スピリット」は先頃、夜間の“天体観測”を行った。

画像は先月26日、スピリットが連続撮影したもの。射手座の中を、火星の2つの衛星「フォボス」と「ダイモス」が移動していく様が映し出されている。このような光景は勿論、これまで得られたことはない。

このうち、明るい方は「フォボス」で、直径約20km、地表から約1万kmの軌道を約8時間で周回。一方暗い方は「ダイモス」で、直径約13km、地表から約2万kmの軌道を約30時間で周回している。火星は約25時間で自転するので、フォボスは火星の1日(1Sol)のうちに2公転半することになる。このため、火星上では西からフォボスは昇り、天上を駆け走って東に沈むように見える。

…画像のでっかいバージョンはこちらです。

ちなみに「フォボス」ですが、火星面に近い軌道を公転するため潮汐力が大きく、だんだんと軌道を落としていき、1億年かそこらのうちにその力で破壊されることがわかっています(そうしたら、火星の“輪”になる、かも)。また、地表に近いため、火星面のどこからでも見えるわけではありません。

あ、強い潮汐力というと、先日、土星の衛星・エンケラドスで水蒸気の噴出が見つかりましたが、これと同様(?)の現象なのか、フォボスの表面から噴出物が検出されています。これはソ連の火星探査機「フォボス2号」が検出したものですが、詳細を得る前に衛星との通信が途絶しました。

<追加情報 09.02. 2005>

先月21日、火星探査車「スピリット」が、ハズバンド・ヒルの頂上に達した。翌日、写真撮影に適した場所に移動し、約4日かけて360度パノラマ写真の撮影をおこなった。下は、ここまで到達するのにスピリットが辿った軌跡。【NASA 09.02】

  


<追加情報 08.24. 2005>

昨年1月に火星に着陸し、今日なお活動を続けている2台の火星探査車のうち「スピリット」が今月16日、「コロンビア・ヒル」と名付けられていた丘陵地帯のピークの1つ「ハズバンド・ヒル」(Husband Hill)の頂上付近に立った。

(画像は着陸直後にスピリットが撮影したコロンビア・ヒル方面。わかりにくいが、右から3つ目のピークがハズバンド・ヒル)
  

「コロンビア・ヒル」は墜落したシャトル「コロンビア」のメモリアルとして命名されたもので、「ハズバンド」はコロンビアの船長だったリック・ハズバンド氏に由来する。スピリットはここを目指し、各種調査をその道中に行いながら走り続けてきた。当初ミッションは3ヶ月と定められていたため、この丘の麓まで走るのが限界だろうと見積もられていたが、予想を遙かに超える探査車の耐久のため大幅にミッションが延長され、ついに丘を登り詰めた。標高は90メートル!着陸からの走行距離は4750メートルで、撮影した画像は59000枚を数える。

ただ現在の所、この場よりやや高いとみられるピークが近傍にあり、そちらへ今後移動する予定とのこと。

予想を遙かに超えて作動しているスピリットであるが、観測器機などの劣化は否めず、初期には12時間で終わっていたような計測に、現在では4日もかかるようになっているという。

下はそのハズバンド・ヒルの頂上からの一望。なんともいえぬ、不思議な感じがしますね。【SpaceDaily 08.24】
  

下は、着陸(左端)からここまでの軌跡。マーズ・グローバル・サーベイヤーの画像による。
  



<追加情報 07.29. 2005>

欧州宇宙機関(ESA)は29日までに、火星探査機「マーズ・エクスプレス」が高解像度カメラで撮影した、隕石が衝突したとみられるクレーターの底に白く輝く円形の氷の塊の写真を公表した。

           

ESAによると、クレーターは火星の北極付近(北緯70度、東経103度付近・右写真)にあり、直径約35キロ。周囲の縁から最深部までは約2キロある。

撮影時期は火星の北極の晩夏で、ドライアイスは気化してなくなっているはずの時期なので、水の氷とみられるという。

クレーターの底から白い塊の上部までの高さは200メートルあるが、氷の厚みが200メートルではなく、砂丘の表面を氷が覆っているらしい。周囲の縁や壁にも白い氷が確認できる。【共同/ESA 07.29】

<追加情報 06.22. 2005>

火星を周回しているESAのマーズ・エクスプレス探査機の地底探査レーダーの3本目のレーダーブームの展開が終了し、いよいよ最終チェックに入った。

このレーダーは地底の物理状態を3次元で捉え、議論を呼んでいる“地下水(氷?)”の存在の有無の決着に大きなヒントを与えるものと期待されている。【ESA 06.22】

<追加情報 06.17. 2005>

欧州宇宙機構(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」が、二本目のレーダーブームの展開に成功した(右:想像図)。

マーズ・エクスプレスは火星を順調に周回しており、3本のブームから成る地底探査レーダーの、2本目のブーム展開作業が14日から行われていた。

これに先立ち、1本目のレーダーブームの展開が先月中旬、完了している(これについては「ニュース・もっと」の【SpaceDaily 05.12】の記事をご参照ください。また、関連記事はこちら(レッド・チェイサー1)をご覧ください)。【ESA 06.17】

   ブームは小さく折りたたまれています   →  ゆっくりと展開


<追加情報 06.12. 2005>

火星を周回している欧州宇宙機構の「マーズ・エクスプレス」探査機が、火星大気で生じたオーロラを観測した。火星でオーロラが観測されたのは初のこと。

オーロラは太陽から流れ出るイオン流(太陽風)が大気分子と衝突、発行する現象。地球や木・土星、天・海王星には地場が存在するため、太陽風が地場にトラップされ、極地方へ集中的に流れ込み、大気分子と激しく衝突することで大規模なオーロラが生じている。。

一方、地場のない金星でもオーロラは観測されている。これはその原理のまま、太陽風が金星大気に吹き付けることで生じているものであるが、地場のある場合と比べ極めて淡いものである。

金星のオーロラと同じようなプロセスで火星にもオーロラが生じているという仮説はこれまでもあった。ただ近年、火星面に局地的に強い地場が見つかっており、この地場の影響でよりはっきりとしたオーロラが生じているのではないかと考えられていた。この局所的な地場は、過去、火星に地場があった名残だと考えられている。

今回の観測結果は、この仮説を確かなものとしたことになる。【ESA 06.12】

<追加情報 06.05. 2005>

4月下旬からサンドトラップに入り込み、殆ど身動きが出来なかった火星探査車・オポチュニティが、どうにか脱出に成功した。

オポチュニティは4月28日に砂地に足を取られ、殆ど身動き出来ない状態に陥った。その後、地上でのシミュレーションなどを検討した結果、ゆっくりと車輪を動かし、地道に抜け出す方針が決定され、地上から指令が送られていた。

もちろんその間も、地表や空の撮影や観測は行われていた。

オポチュニティの車輪は殆どスリップ状態で、一日20メートル移動の指示に対し、数センチ動くのがやっと。しかしねばり強い操作の結果、見事、トラップから解放されたという(写真はオポチュニティの底部カメラが撮影。かなり轍が深く、目の細かい砂地だったことが伺える)。【JPL 06.05】

…右側の轍についてですが、これは右前輪の轍と思われます。右前輪はモーターの故障で既に機能停止しており、“引きずる”形で深く溝を掘ったのでしょう。いずれにせよ足かせになったのは間違いなく、かなり難儀したのではないでしょうか・・

<追加情報 06.03. 2005>

NASAの画像倉庫から拾ってきました…下は火星を周回中のマーズ・グローバル・サーベイヤーが2004年8月に撮影した、欧州宇宙機構(ESA)の「ビーグル2」着陸機がクラッシュした地点と思われる近辺。ビーグル2は2003年12月に火星着陸を目指し突入したが、結局、着陸を示す信号を送ってこなかった(矢印の先の黒い点がクラッシュ地点)。

  

ビーグル2はエアバッグに包まれ、ホップするように火星面へ着地する構造になっていた。同様の着地機構は、NASAの火星探査車オポチュニティとスピリットでも採用されている。

ところで、クラッシュ地点の更なる拡大画像が↓

  

よく見ると、小さなクレーター…直径20メートルとのこと。ビーグル2はこのクレーターの中に落ちたのではないかと考えられている。ただ、ビーグル2サイズの機体が(パラシュートで減速せずに)クラッシュした場合でも、同程度の穴が生じるとのこと。

元からあったクレーターに落下したのか、それとも減速機構が作動せずに「激突」してクレーターが生じたのか…?

そういえば、オポチュニティも小さなクレーターの中に着陸しました。超ホールインワン…動けるから這い出しましたが、走行しないタイプだったら、相当つまらない映像で終わっていたでしょうねぇ。

<追加情報 06.03. 2005>

米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「スピリット」が昨年3月7日に撮影した謎の光る飛行物体は、流星だったことが分かった。フランス・リヨン天文研究センターや米コーネル大などの研究チームが2日付の英科学誌ネイチャーに発表した。火星で流星が観測されたのは初めて。定期的に出現する流星群の1つだという。

光る物体の軌跡は火星の地平線とほぼ平行で、長さは13〜24キロ。スピリットが200〜300キロ離れた場所からパノラマカメラで撮影したが、当初は「バイキング」2号などの既に役目を終えた探査機ではないかとみられた。

しかし、微妙なカーブなどを分析した結果、大きな楕円(だえん)軌道の「ワイズマン・スキッフ彗星(すいせい)」がまき散らしたちりに、火星が突入し、ちりが大気の摩擦で燃えて流星として見えたことが分かった。観測位置が良ければ、流星の軌跡はケフェウス座を中心として放射状に流れて見えるため、仮に「ケフェウス座流星群」と命名。計算では、次は2007年12月20日に出現するという。【時事 06.03】

…写真はその流星の写真(?)。NASAのスピリットのサイトの画像倉庫から探してきたもので、04年3月7日(火星時間で活動開始から63日目(SOL63))に撮影されたナマ画像です。

フォトリリースには2種類あり、「プレスリリース」は記事として公式発表されるものですが、それはごく一部。それらも含む、他の多くの画像全ては「レアピクチャー」として倉庫にしまわれています。閲覧は自由なので、該当しそうな近辺を探して拾ってきました。それゆえ“(?)”とつけてます。

ところで、こんな火の玉が撮影されていたという事実自体、プレスリリースされていません(よね?)。他のメディアでもみたことがないのですが…もしそうなのだとしたら、かつての「人面岩」のような、妙な憶測と飛躍を呼ばないよう、あえてリリースせずにこっそりとしまっておいたのでしょうか?(笑)どうなのだろう。。

<追加情報 05.22-25. 2005>

バンカーショット…?

サンドトラップに入り込み動けなくなっていたNASAの火星探査車・オポチュニティの“脱出”が始まっている。

写真は僅かに動かされた左前輪の画像。かなりめり込んでいるのが明らかで、担当者らは少しずつ車輪を動かして脱出を試みるという。【NASA 05.25】

これはスゴイ!!火星を周回するマーズ・グローバル・サーベイヤーが、やはり火星を周回するマーズ・エクスプレスとマーズ・オデッセイを激写しました。火星を周回する衛星が、やはり同じような衛星を撮影するのは史上初。

詳細は下をご覧ください。

http://www.msss.com/mars_images/moc/2005/05/19/

NASAの火星探査車・スピリットが撮影した火星の夕焼け(右)。火星の夕焼けは地球のものと違って、青いのが特徴的。

夕焼けの観測は火星大気の厚みやチリの拡散具合などを調べることにも有効とのこと。【NASA 05.22】

<追加情報 05.17. 2005>

砂地に入り込んで身動きができなくなっている火星探査車オポチュニティに作動指令が送られた。先月末に身動きができなくなってから初のこと。

砂地にめり込んだことが確認されて今日まで、エンジニア達はどのようにオポチュニティを動かせば“脱出”できるかを検討してきた。それに基づきコマンドが送られたわけだが、とりあえずまず2.8センチ前進、4.8ミリ横、最後に4.6ミリのバックが行われた。

この結果を解析したところ、予測通りの結果が得られたとのことで、今後更なる動作を行わせる予定という。【SpaceDaily 05.17】

<追加情報 05.12. 2005>

下で既報のマーズ・エクスプレス地底探査レーダーに関して、11日に行われた操作の結果、第一アンテナブームの展開が完了した。つまり、ブームの不完全不完全ロックは克服された。

長期間にわたり宇宙空間を飛行していることでブーム全体が冷え切っていたため、伸びが不完全なのだろうという推測の下、機体全体を転回させることによりブームに太陽光線が当たるような操舵が行われた。

この間地球との交信は不通であったが、自動モードで姿勢を制御、再び地球との交信が確立し、テレメトリーをチェックした結果、懸念された不完全ロックは確認されなかった。

低温でブームが収縮していたため、伸びきれないのだろうという推測は正しかったことになる。

なお、第二、第三アンテナの展開は、第一ブームのより正確な状態を把握した上で、数週間後にも行われる予定という。【SpaceDaily 05.12】

<追加情報 05.10. 2005>

欧州宇宙機構の火星周回衛星「マーズ・エクスプレス」に搭載された地底探査レーダーの本格稼働を間近に控え、レーダーブームの展開が行われつつあるが、2本ある長アンテナ(各20m)の1本目の展開の最終段階で異常が生じているのが確認され、予定されていた2本目の展開が延期された。

20mのアンテナブームは小さく折りたたまれているが、1本目の展開の最後の部分がしっかりロックされていないことが判明した。異常が生じた場合の手続きに従い、作業を停止して、対策と今後への影響を検討しているという。

この地底探査レーダーはマーズ・エクスプレスの真骨頂の1つ。20m×2本のブーム(ダイポール)及び7m×1本の計3本で構成され、火星の地下を3Dで解析し、また、大気上層の電離層を観測する。地下の物質分布調査では、議論になっている水の存在有無などに大きなヒントを与えるものと期待が集まっている。

探査機の火星周回は2003年12月からであり、同レーダーの展開は当初2004年春に予定されていた。しかし、ブームの展開テストを打ち上げ前に完全な形で行うことができなかったため、念を入れてコンピュータシミュレーションテストが行われてきた。ブームの展開が探査機の姿勢に与える影響、或いは展開に失敗する要因は潜んでいないか、更にもし展開に失敗したときの他への影響はいかほどか、といった要素の計算が繰り返されたという。【ESA 05.10】

<追加情報 05.07. 2005>

ジェット推進研究所(カリフォルニア州)の一室でいま、火星上で砂地に足を取られて身動きできない状態の火星探査車・オポチュニティをどう“救い出す”か、検討が続けられている(写真)。オポチュニティは直径約2.5メートル、深さ約30センチのくぼ地のような所にトラップされていると見られている(…バンカーショットですね。。)

検討には同型の模型を使い、実際に砂地に潜り込んだ状態にしておき、どのようにモーターを回転させればよいかなどが検討されている。もちろん使われる砂は、火星の土壌成分に極力近いものが再現されている。【JPL 05.07】

<追加情報 05.01. 2005>

火星面で調査を続けるNASAの無人火星探査車「オポチュニティ」が、車輪が砂地にめり込み極めて動きにくい状態にあることが明らかにされた。事態は5日前に生じていたという。

関係者によると、6輪全てがめり込み、動きにくい状態にあるという。ただ時間はかかるものの、砂地から抜け出すことは可能という。【Spacedaily.com 05.01】

<追加情報 04.17. 2005>

火星面で調査活動を続ける火星探査車「オポチュニティ」の右前輪が動かなくなるトラブルが発生した。車輪は直進方向から約7度外側へ向いた形で止まっているという。

現在、探査車は停止された状態で原因究明が続けられているが、駆動するモーターが故障したものと見られている。【SpaceDaily 04.17】

<追加情報 03.17. 2005>

火星探査車・スピリットが今月10日、調査中のグゼフクレーター付近を走行中、車体底部に備えられたナビゲーションカメラが偶然にも“つむじ風”を撮影していた。これは、火星面で史上初めて撮影されたもの。
  

拡大写真はこちら
写真には、つむじ風が移動した跡も写っている。関係者は、太陽熱で暖められた大気によってしばしば生じると考えているが、詳細ははっきりしていない。クレーターなどの地形も複雑に関係しているものとも考えられている。【NASA 03.17】

<追加情報 03.16. 2005>

火星面で活動を続けるNASAの火星探査車「オポチュニティ」に搭載された鉱物測定器に異常が生じ、この器機からのデータが得られない状態にあるという。この器機は熱放射スペクトロメーターというもので、対象鉱物の成分を調べるもの。NASAは現在使用を停止し、トラブルの原因を調査しているという。

なお、その他の器機に異常は生じていない。【Spaceflight Now 03.16】

ESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」(現在も活動中)に搭載されていた小型着陸機「ビーグル2」の着陸失敗(2003年12月)に関して、昨年4月に発行されていた調査報告書が公開された。これは内部資料として扱われていたが、諸般の事情により公開されていなかった。文書はこちら(英語)

<追加情報 02.26. 2005>

火星を周回する欧州宇宙機関(ESA)の探査機・マーズエクスプレスが撮影した火星の北極の画像が、25日にオランダで開かれた国際会議で公表された。

ロイター通信などによると、表面が氷に覆われた高さ約2000メートルに達するがけや、カルデラのような地形、火山灰によるとみられる砂丘の様子がうかがえる(写真)。

マーズエクスプレスから分離し、生命の証拠を探る予定だった子機ビーグルは2003年、着陸に失敗。会議では「火星には生物が排出したと考えられるメタンがあり、生物がいる可能性が高い。もう一度探査を行うべきだ」という意見が相次いだという。【共同/ESA 02.26】

<追加情報 01.26. 2005>

右は、火星で活動を続ける探査車・スピリットが1年前に撮影した画像と最近撮影した画像を並べたもの。明らかに、砂ホコリによって鮮やかさが異なるのがわかる。

探査車に“積もった”ホコリは1〜10マイクロメーター(髪の毛の100分の1〜10分の1)の程度。特にスピリットの走行地帯はホコリっぽいところで、もう一台の探査車・オポチュニティよりも被った量は多い。そのため、スピリットの太陽電池の電力は徐々に低下している。

被写体は、画像のカラーパターンをキャリブレート(校正)するための基準カラー。サイズは縦横8センチ。これを基に、撮影された画像の正確な色合いが調整される。【NASA 01.26】

ちょうどテレビのカラーパターンと同じですね。放送開始前に流れているアレです。

<追加情報 01.26. 2005>

NASAの火星探査車・オポチュニティが今月24日、火星面での活動1周年を迎えた。写真は火星上空を周回するマーズ・グローバル・サーベイヤーが撮影したもの。

これは昨年4月26日、91火星日に撮られた(1火星日は約25時間)。ローバーの着地点や、その軌跡などがはっきりと映っており、高度400キロから撮影された写真として驚異的なものである。

オポチュニティが走行している地域は砂が多いところであり、ダストが多い所を走行しているスピリットと比べると轍の跡が見えにくい。所々、とぎれてよく見えない所もある。【NASA/JPL 01.25】

  

Landing rocket blast effect
着地の際に吹かされた逆噴射ロケットの影響で変化した地表

Eagle Crater
エアバッグに包まれたローバーが転がり入った小クレーター。中にローバーを積んできた Lander (着陸機)が映っている。

Rover track
ローバーの移動で刻まれた轍(わだち)。所々コントラストがはっきりしなくてとぎれて見える。この先の方へ Rover (ローバー)が見える。

Backshell and Parachute
着陸機をつり下げてきたパラシュートとバックカバー

Heatshield
大気圏突入で着陸機を守った耐熱シールド

<追加情報 01.03. 2005>

火星の無人探査車オポチュニティーが、着陸地点のメリディアニ平原でバスケットボール大の隕石(いんせき)を発見したと発表した。地球外の惑星に落下した隕石が確認されたのは初めてという。

オポチュニティが火星に運ばれた際に守っていた耐熱シールドの残骸の一部の近くで見つかったことから「ヒート・シールド・ロック」と呼ばれている。

(右の画像は耐熱シールドの残骸周辺。その左手前に見える塊のようなものが隕石。拡大写真が右下)

オポチュニティーの分光装置の成分分析で、隕石は鉄やニッケルを豊富に含む鉄隕石(隕鉄)と判明した。鉄隕石は、地球のようにマントルや中心部の核などの層状構造を持った惑星が破壊され、中心部付近が破片になったと考えられている。

地球では、鉄隕石は比較的少なく、約9割が通常の岩石に似た鉱物でできた石質隕石のため、観測チームでは「これまで火星で見かけた岩石の中に、より多くの石質隕石が含まれていた可能性がある」として、さらに調査を進める方針。

<追加情報 01.03. 2005>

無人探査車スピリットの火星着陸から1年となる3日、米航空宇宙局(NASA)のオキーフ長官は会見し、2台の探査車の運用を今後もできる限り継続する方針を示した。

スピリットと、昨年1月24日に着陸したオポチュニティーは当初、3か月程度で探査を終了する計画だったが、探査期間が2度延長され、現在の見通しでは今年3月ごろまでは探査を続ける。

カリフォルニア州のNASAジェット推進研究所で行われた会見では、オキーフ長官がケーキに立てられたろうそくを吹き消し、スピリットの1周年を祝った。NASAの火星探査関連のウェブサイトは昨年、過去最高の90億回以上の訪問数を記録したという。 【読売】

<追加情報 12.25. 2004>

火星面で調査を続ける火星探査車「オポチュニティ」から得られた画像。目の前130メートルの所にある物体は、探査車が大気圏に突入した際に装置を守っていた耐熱カバーの残骸。このような画像が撮れるとは、ワクワクしますね!

ワクワクしているのは研究者達も同じで、これを精査することで、火星大気が機材に与えたダメージなどを直接測ることができると期待されている。【NASA 12.22】

…このようなデータは将来の探査活動、特に耐熱シールドの改良には極めて重要なものとなるのでしょうね。

<追加情報 10.30. 2004>

予定を2倍以上上回る期間、火星表面で探査中のNASA火星探査車「スピリット」「オポチュニティ」から送られてきた画像が30日、トータルで5万枚目をカウントした。右はその記念すべき画像だが、スピリットが撮影した、自身に搭載された「キャリブレーションボード」。

これはカメラの補正に必要な、重要なターゲットで、実はこの画像が、火星自身よりも多く撮影されている(笑)。(これはいわば基準色素で、これがどう見えるかで、火星面の色彩も補正される。大きさは直径8センチ)【NASA/JPL 10.30】

<追加情報 10.02. 2004>

写真は、97年から火星を周回しているNASAの火星探査機「マーズ・グローバル・サーベイヤー」が最近撮った一枚。火星探査車「スピリット」の着陸地、一直線に伸びる「轍」(わだち)、クレーターの縁の近くを走るスピリットの姿がくっきり写し出されている。【NASA】

マーズ・グローバル・サーベイヤーは、解像度1.2mのカメラを搭載しており、他の関連装置もしっかり捉えられている。図中の説明を少し…

Backshell …スピリットをつり下げていたカプセルの上半分
Parachute … パラシュート
Lander … スピリットを載せてきた土台
Track … 軌跡(轍)
Rover … スピリット
Heat Shield Inpact … 大気圏突入の際に覆っていた耐熱シールド

<追加情報 09.25. 2004>

太陽から風のように吹き付ける電気を帯びた微粒子が、火星の昼には高度約270キロの低空まで侵入していることが分かった。宇宙航空研究開発機構の早川基・助教授ら日米欧の共同研究チームが、欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」に搭載した分析装置で観測した成果で、24日付の米科学誌サイエンスに発表した。

この太陽風の長期的な影響で、火星にかつて存在した大気や水の大部分が流出した可能性があるという。【時事 09.25】

…火星の最大の弱点(?)は、磁場がないことです。このため、太陽風が直接大気をたたきつけますから、過去にあった(と考えられている)厚い大気や水は、宇宙空間に逃げ去ったと考えられてきました。今回の発見は、この理論を裏打ちしますね! 

<追加情報 01.25. 2004>

公式会見での席上。背後の大スクリーンに映し出されていた火星面上のローバーのアニメーションで、ローバーの走る先にあるものは…バースデーケーキ!3日後がNASA長官オキーフ氏の誕生日で、それに引っかけたアメリカンジョーク。会場は大爆笑で、ハッピバースデーの大合唱。長官はスポークスマンからレゴのローバーモデルをもらって照れ笑いしてました。日本の記者会見では考えられないシーンです(笑)【NASA TV Live 01.25】

日本時間25日午後2時5分、火星探査車「オポチュニティー」が着陸に成功した。着陸までの最終経過は次の通り(時刻は日本時間)【NASA TV Live 01.25】

13:45 ドップラーシフトより、ナビゲーションステージ切り離し成功を確認。拍手

14:00 大気圏突入 時速1万2000マイル(約2万q/h)

14:04 パラシュート展開 着陸機は亜音速へ

14:05 逆噴射ロケット始動

14:05 エアバッグに包まれて着地、シグナルを確認、歓声

14:06 力強いシグナルを確認、大歓声!

14:10 元副大統領 A・ゴア、JPL管制室で職員をねぎらう。スタッフやや歓声。

14:12 A・シュワルツネッガー、カリフォルニア知事、職員をねぎらう。大歓声(笑)

14:22 ローバーより、全く異常なしとの信号

14:24 今なおローリングを続けていることを示す信号が送られているが、多分エラーとの見方

14:35 ローバーが横倒しで停止していることを確認 エアバッグ展開の際、自動起立する予定

…映像を見ていて一瞬、あれ、シュワルツネッガー?と思いましたが、彼は知事でしたね、今。。

<追加情報 01.08. 2004>

昨年末に火星の大気圏に突入した後、行方不明になっている欧州宇宙機関(ESA)の無人火星地表探査機「ビーグル2」は7日、母船「マーズ・エクスプレス」との交信にも失敗した。科学者らは「まだ交信機会はある」として希望を捨てていないが、仮に無事着陸していたにしても交信ができなくては収集したデータを送ることはできず、欧州初の火星地表探査プロジェクトはほぼ絶望的な情勢となった。【時事 01.08】

…ただし、周回機・エクスプレスは完璧ですから、搭載された高性能レーダーの活躍には期待しましょう!

<追加情報 01.05. 2004> 

NASAのジェット推進研究所(JPL)では、火星上空の探査機マーズ・オデッセイが経由したスピリットからの写真が、大画面に映し出された。

JPLのジョン・カラス氏は、「非常に質の高い、すばらしい画像だ。信じられない。これ以上のものは望めない」と興奮した様子で語った。

スピリットは米国東部時間3日夜10時29分(日本時間4日午後1時29分)、火星大気圏へ突入した。落下速度は最高で秒速約5.3キロまで達したが、6分間かけて減速し、速度ゼロの状態で米国東部時間3日夜10時35分(日本時間4日午後1時35分)に着陸、着地信号を地球へ送信してきた。その瞬間、管制部で大歓声が起こった。

着陸地点は、火星赤道南部にある直径約150キロの「グセフ・クレーター」で、過去に湖があったと推測されている場所。着陸地点は火星赤道近くの、かつては湖だったと考えられるグセフクレーター。約3時間後に届いた60〜80枚の写真はモノクロながら、機体の向こうにごつごつした岩がころがる火星の大地が広がり、地平線までがはっきり写っていた。この瞬間も管制部で大騒ぎ!

スピリットは着陸後90分ほどかけて折り畳んでいた機器を展開したが、これまでのところ、機器に異常はみられていない。NASAの担当者は記者会見で「着陸場所は予定通り観測に最適の場所で、機体の姿勢も非常に良好だ」と述べた。スピリットは今後、約1週間かけて観測機器の機能を確認。その後約3カ月間、周囲を走り回り、カメラや試料採取装置などを使って岩石や土壌の組成を分析、水の痕跡を探る

なお、今月24日、2機目の火星着陸機「オポチュニティ」が、スピリットとは反対側に着陸する予定【各種報道】

<追加情報 12.26. 2003>

日本時間26日早朝、英国・ジョドレルバンク天文台の大型電波望遠鏡によるビーグル2への直接コンタクトが計られたが、それらしき信号はキャッチできなかった。

最悪のシナリオとして、火星面へ激突したか、或いは大気圏で燃え尽きたことも考えられる。【Reuters 12.26 10:31】

無人火星探査機「マーズ・エクスプレス」の着陸機「ビーグル2」はグリニッジ標準時25日未明(日本時間同日昼前)、火星の大気圏に突入したが、到着後に発することになっていた信号が予定の同日早朝(同午後)になっても確認できなかった。同日夜(同26日朝)に再び信号確認を試みるものの、関係者の間では、着陸に失敗した可能性があるとの懸念も浮上している。(右は着地過程)

着陸の確認手段は同機から送られてくる信号だけ。その上空を通過する米国の軌道周回探査機マーズ・オデッセイがこれを受信し、地球に中継する予定になっている。

ビーグル2の計画責任者コリン・ピリンジャー教授は信号が確認できなかった理由について、(1)予定と違う場所に着陸した(2)アンテナが誤った方向を向いている(3)オデッセイとの間で通信システムが適合しない−ことが考えられると指摘。さらにパラシュートなどに不備があり、着陸に失敗した可能性もあると分析した。【時事】

…ビーグルの開発段階では、実際に用いられる予定だったエアバッグが真空漕でテスト中に破裂するという事態もありました。また、着地点に鋭利な岩石などがあったら破裂する可能性も高くなるわけで、かなり「運任せ」のところもあります。。。現在向かっている米国のローバー(1月3日に着地予定)も気がかりです。。