ロード・オブ・ザ・リング

初版: 03.19.2004   追加: 12.30. 2006

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「リングの王様」といったら、やはり土星。この太陽系第6惑星は、肉眼でも星座の間に輝く姿を見ることができるが、望遠鏡で覗くと、大きく広がった輪(リング)を見ることができる。安い、小さな望遠鏡でも見ることが可能だが、双眼鏡ではかろうじて「コブ」のようなものが張り付いているのが確認できる程度。機会があればぜひ見ましょう!

現在、この土星を目指して飛行を続けている無人探査機がある。米国NASAと欧州宇宙機構ESA、並びにイタリア宇宙局の3機関が共同で開発した大型探査機「カッシーニ」で、1997年10月に打ち上げられた。これが約7年に及ぶ長い航海を終え、今年7月1日、土星へ到着する。写真は、2月下旬に撮影された、最新のもの。土星まで約7000万キロ弱の地点を飛行中で、これまで得られたどの探査機の画像よりも鮮明だという。

探査機による土星探査は、1970年代まで遡る。米国の探査機・パイオニア10号、11号による近接撮影に続き、1980〜81年のボイジャー1号、2号による大クローズアップ写真は、宇宙に興味がある人も無い人も、見る人全てを圧倒した。地球からは見ることのできなかった小さな衛星(月)、新しい輪など多くの発見が相次ぎ、同時に、新たなる謎も残した。私にとって特に印象深かったのは、外側の細い2本のリングが"ねじれて"いる様だ。一体、そんな複雑な動きを制御しているものは、何なのか…?パイオニアやボイジャーは、土星の傍を通過しただけの、通りすがりの探査機だった。現在向かっているカッシーニは、土星の周囲を周回しながら長期に渡って観測をする、言うなら"土星専用機"である。


人類が文明を築き始めた太古の時代の話。夜になると都市にも明かりはなく、満天の星空が広がっていた。彼らは毎晩星空を見上げるうちに、形を変えない星座の中を、少しずつだが確実に動き回る星があることを認識し始めた。朝夕しか見られない「金星」「水星」や、真っ赤に輝く「火星」、さらに「木星」、「土星」も定められた。ただ、その動きは当時の理解力を超越していたため、彼らは惑星の動きを「占い」に利用した。今日の星占いも、歴史は遠く、古代メソポタミア時代の占星術に遡る。

しかし、土星の「輪」の発見は、望遠鏡が発明されてからだ。西暦1610年前後、時はルネサンス。当時を代表するイタリアの科学者ガリレオ・ガリレイは、自作の望遠鏡で惑星を積極的に観察した。土星を観察した彼は、「球体の両脇に大きなコブ」があることを認識した。当時のレンズの性能では、リングもコブに見えたというわけである。彼は何年も観察するうちに、コブの大きさが年々変化し、数年周期で消えることなども発見した。しかし彼は、それがリングであることは気づかなかった。

後に、オランダの天文学者クリスタン・ホイヘンスは、よりマシな望遠鏡を作成し、土星を観察。そしてそれが薄い、平らなリングを持つことを発見、土星が輪を持つことを認識した最初の人物となった。彼はまた、土星最大の衛星「タイタン」も発見している。ちなみに高校物理の波動の章で習う「ホイヘンスの原理」のホイヘンスも、彼である。

一方、イタリア人天文学者ジョバンニ・カッシーニは、詳細な観測を続けるうちに、リングの間に"隙間"があることを発見した。上の写真で、リングの間に黒くて細い隙間があるのがわかるが、これを発見したのだ。この隙間は今日、「カッシーニのすきま」と呼ばれている。また、リングは微少な岩石やチリが集まったものからできている、と推察した。当時、「一枚の巨大な"板"である」という説もあり、真の決着がついたのはずっと後のことであったが、結果として彼の推察は正しかった。

探査機のその名「カッシーニ」は、勿論、彼にちなんで名付けられたものだ。なお余談だが、土星は密度が非常に小さい。図体の割には軽いと言うことで、水に浮いてしまうほど。これは惑星の中でも最小のものである。

カッシーニは、これまでに打ち上げられた多くの探査機の中でも、最大級の大きさに匹敵する。下写真はほぼ完成間近の姿であるが、高さが2階建ての家と同程度で、てっぺんのパラボラアンテナは直径4メートル、燃料まで含めた総重量は何と6トン!(正確には5650kg)ちなみにNASAは、「30人乗りスクールバスと同じサイズ」と表現している。ボイジャー探査機が約700sだったのと比べると、そのバカでかさがわかる。12のハイテク装置を搭載し、27の各種観測を行うことができる。システムを構成する配線は総延長12kmに達し、2万を超えるコネクターで1600に及ぶ電子基板を結んでいる。そしてこれらは、底部に搭載された3つの原子力電池で駆動する。太陽から遠いため、太陽電池は役に立たない。

ただ、カッシーニの、土星までの道のりは長かった。ボイジャーは打ち上げから約3年で土星まで到達したが、カッシーニは7年もかかった。それは、なぜか?


探査機の打ち上げと、目標までの到達は、原理的には"砲丸投げ"と同じである。選手(ロケット)が目標へ向かって砲丸(探査機)を投げ飛ばす。砲丸は慣性で、(宇宙という)フィールドをヒュ〜っと飛んでいく。砲丸は、エンジンを吹かさない(吹かしたら反則だ)…これまでの探査機はどれも、これと同じやり方で送り込まれてきた。今年話題になっている火星探査機も、勿論例外ではない。しかし、重い砲丸は当然遠くへは飛ばないし、それじゃ選手の腕力(ロケットの推力)を強くすればイイかというと、それも限界がある(笑)。

重量6トンの物体を土星まで投げ飛ばすようなロケットを、未だ地球人は持っていない。

では、どうするか?…話は簡単。砲丸投げから"ハンマー投げ"に競技を移せばいい。ハンマー投げとはあの、規定円の中でブルンブルン振り回して、絶叫と共に投げ飛ばすアレ。しかし、ハンマーならぬ探査機を、どのように"振り回す"か…これには、うまい方法がある。惑星の重力に"アシスト"してもらうのだ。

               

正確には「重力フライバイ」といい、本質もハンマー投げと厳密には違うのだが、同じようなものだと考えてもらえればいい。右の軌道図で"Launch 15 Oct 1997"が打ち上げ日時を意味し、一旦地球より内側の金星へ向かう(緑線)。金星に接近し、その重力で加速をつけたあと、赤線で示された軌道を辿り、再び金星に接近。その後、青線で示された軌道へ進み、1999年8月には地球の脇をかすめ、更に加速、同時にそれが、地球への最後の別れを告げる形となった。途中、2000年12月には木星の脇を通り過ぎ、木星の"シュート"を受け、"ゴール"となる土星を目指す!いつの間にか、例えがサッカーへ変わってしまった…まあそれはさておき、7年もかかるはずだ…。


ところが。土星へ到達するのはいいが、今度は速度を落とさなければならない。剛速球も、勢いが強すぎてキャッチャーが受け取れなければ意味がない。そこで、逆噴射エンジンを点火し、減速することになる。カッシーニの、アライブにおける一連の進行をスリリングなものに受け止めるのは、私だけだろうか。というのも実は、考えようによってはかなり危険な、賭に近い操舵が行われるのだ。

               

最初の写真をもう一度参照して頂くとわかりやすいが、現在、カッシーニは土星の下側から進入するコースを辿っている。写真には写っていないが、一番外側に細いリングがあり、それとメインリングの間の隙間を抜けて、上面へと向かう予定になっている。上の図はその時の様子を真上から表したもので、図中、カッシーニは上方から進入し、一番外の細いリングの内側を"すり抜ける"。かつて、ボイジャーがリングの脇を通過した際、小石が衝突してデータの一部が失われるというハプニングがあった。今回は、もっと衝突の可能性が高い領域を通過する…なにせ隙間を抜けるのだ。頑丈に作ってはあるだろうが…(ここを通る際は姿勢を前後180度入れ替えて、大型パラボラアンテナを「盾」として進行する)。

リングの間を抜け、上方へ出た直後、逆噴射用のメーンエンジンに点火、減速を始める(図中、赤い曲線部分。右下イラストは想像図)。この燃焼は正確に97分間行われる…通常、地球の周囲を回っている宇宙船が帰還する際に行う逆噴射など、せいぜい10分位のオーダー。対してカッシーニは、「97分」という長時間の噴射を行うのだ。実は総重量6トンのうちその半分を、この時に備えた燃料が占める。もしこれがうまくいかなかったら…カッシーニは土星の脇を突っ走り抜け、太陽系の藻屑となるだろう。

ちなみにメーンエンジンは2基搭載されており、勿論、1基は予備。7年かけて此処まできて、「エンジン故障で失敗しました」では、悔やんでも悔やみきれない。それだけは、どうしても避けなければならない。

まるでスケートリンクを滑るかのようにすれすれを突っ走り、逆噴射を終える頃、カッシーニは土星本体への最接近を迎える。ミッション全体を通して、これほどまでにリング、更には本体へ接近するのは最初で最後。従って、写真撮影を始めとして、様々な科学観測も平行して行われる。

もし、この探査機に人間が乗っていたとしたら…彼、もしくは彼女は、誰も体験したことのない、壮大なヴィジョンを目の当たりにするに違いない。

この後、土星を周回する軌道に乗ったカッシーニは様々な観測ミッションをこなす日々を過ごすことになる。土星のリングや大気、磁気圏の詳細な観測に加え、大小様々の衛星の調査を行う。右写真は、衛星「ミマス」ボイジャーによって撮影されたその姿、アッと驚かされたのは、右上のデカいクレーター。直径300kmのミマスに対し、クレーターの直径は約100km。大きな小惑星が衝突し、ミマス自体、バラバラになるのを辛うじて免れたと考えられている。

その他にも興味深い衛星は多く、2機のボイジャーによって多くのデータが得られてはいるものの、一過性のものであり、長期に渡った観測はカッシーニの腕前にかかっている。しかも、今回の計画で最大の"ヤマ場"を、来年1月に迎える。それは、土星最大の衛星「タイタン」へ着陸機を降ろすことだ。


タイタンは1655年、先に述べたホイヘンスによって発見された。これは「衛星」でありながら地球の月はおろか、水星よりも大きい。しかも惑星の衛星で唯一、厚い大気を持っている。この大気はボイジャーによって発見されたが、全面がメタンの雲に覆われているため、地表を見ることはできない。正に、秘密のベールに包まれている。

大気の95%が窒素であり、分厚いメタンの雲が漂う。しかも、表面には液化メタンの「海」があると考えられているが、本当のところは誰にもわからない。ただ、原始地球とよく似た化学組成であると言われており、そのような観点からも、直接探査に大きな期待が込められている。

着陸機は「ホイヘンス」と名付けられているが、これは勿論、タイタンを発見した彼にちなんだもの。重さ約320kgの円盤状の着陸機で、カッシーニの横腹に取り付けられており、土星まで同行する(上写真・カッシーニの左脇腹の"ベーゴマ"のような物体)。今年12月、突入の22日前にカッシーニから切り離され、その後、"小冬眠"に入る。1月に入り、タイタンを目前にして目を覚まし、活動開始。データを地球に送信しながら、大気圏へ突入する速度はマッハ20!直後、耐熱シールドは1800℃まで上昇する。

速度がだいぶ落ち着いた頃、パラシュートを展開。ゆっくりと降下を続けること約2時間、最後はスカイダイバーが着地するのと同じ位の速度で着地する。勿論その間、写真の撮影や観測データの送信を続ける。

ホイヘンスは、固体の上でも、液体の上でも、どちらにも着陸できるように作られている。何せ、陸の上か、海の上か、どちらに降りるのかわからない…「水陸両用」というわけだ。ドスンと落ちるか、ザブンといくか…いっそ「海岸」付近に着地するのが面白いと思うのだが。陸の様子も、海の様子も同時に満喫できる。しかも液化メタンの海。水とは違った波打ち際は、不思議な光景となるのは間違いない。(イラスト:降下するホイヘンスの想像図)

カッシーニの到着が待ち遠しい

【以下、カッシーニに関する追加情報です。下に行くほど古くなります】

★2007年以降、現在までの追加情報は→こちらへ


★追加情報 (12.30. 2006)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星やその衛星の最新映像がこちらにリリースされています。以下、その素晴らしい映像の一部を…

下は2006年7月31日に撮影された土星。CGのように見えますが、赤・緑・青フィルター画像を合成して作られたナチュラルカラーとのこと。

   

下は衛星「タイタン」で、その分厚い大気の縁の向こう側に写っているのは、土星の南極点付近。2005年12月26日、タイタンから約26000kmの地点で撮影された。

   

下は、これまでの観測で得られたデータを基にして作られたタイタンの地図(大きいサイズ)。ぼんやりとしている部分は今年2月から数年かけて行われるフライバイで詳細に観測が行われる予定。

   

下は、リングと衛星「エンケラドス」。エンケラドスの南極域(下部)からの噴出もよく見えている。2006年3月22日撮影。

   

リングとその下方に写るのは、衛星「エンケラドス」と「レア」。三日月の両衛星のうち、手前はエンケラドスで、向こう側がレア。2006年3月2日撮影。20分間に撮影された40枚の静止画を組み合わせて作られた動画はこちら

   

…なんとも神秘的な映像ばかりですね!

★追加情報 (12.22. 2006)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」によって得られた衛星「エンケラドス」の熱分布画像。同衛星の南極域に存在する「タイガーストリップ」と呼ばれる地溝帯からは大規模な氷やダストの噴出が発見されている。
  
噴出は2005年7月14日、同衛星へのフライバイの際に発見された。だがそれ以降、今年11月まで、同衛星を観測する上で好条件の位置関係にならなかった。

(下・2005年のフライバイの際に撮影された南極域。引っ掻き傷のような地溝帯が数本並行に走っている。カッシーニはほぼ真上・高度480kmを通過し、まさにスプレー噴射の直撃を食らったといえる。実際、ダストセンサーはパウダー状の、大量の微粒子を検出した。)

    

観測で南極域の温度が周辺よりもかなり高いことがわかる。しかも各地溝ごとに区別できる活動ではなく、極域全体で活発であることもわかる。さらに、間欠泉のように断続的なものではなく、ほぼ連続した活動であることも示唆している。

平均的な最高温度は85ケルビン(−188℃)であるが、細かい分析により、タイガーストリップに沿った極狭い、数百メートルの領域に渡って130ケルビン(−143℃)に達している部分も確認されている。詳しくはこちらへ【Cassini 12.22】

★追加情報 (12.18, 2006)

土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した10万枚を超える映像の中からベストを選ぶ第2回カッシーニ・フォトコンテストが、ジェット推進研究所(JPL)のサイト上で行われている。15枚がノミネートされており、だれでも投票することができる(こちら)。最終結果は2月上旬に発表される予定。

ちなみに、昨年行われた第1回の結果はこちら【Cassini 12.18】

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が北極上空を飛行中に撮影した画像。ダイナミックな画像が息を飲みますね^^

    

「180度トランスファ」と呼ばれる、軌道長径を180度振り回すマニューバの過程で赤道面から高く飛び上がる(こちら)ために可能なアングルです。詳しくはこちらへ【Cassini 12.18】

土星の衛星「エンケラドス」の南極域における大規模噴出について、メカニズムに新説が提唱された。

昨年、カッシーニがこの大発見をなした直後、この噴出メカニズムについて、氷で覆われた地表の地下に液体の水だまりがあり、それが大噴出を起こしているというモデルが提唱された。これはイエローストーン国立公園の間欠泉「Old Faithful」の仕組みにちなんで「Cold Faithful」と呼ばれている。

「ところがこのモデルには難点があります」と語るのは、今回新説を提唱したイリノイ大学のスーザン・キーファー教授。同教授は惑星科学、特に地球や木星の衛星「イオ」、天王星の衛星「トリトン」における噴火や噴出を研究している。

エンケラドスの噴出物には、二酸化炭素、窒素、メタンを含み、これらは併せて1割に達する。だが、窒素やメタンはエンケラドス内の圧力下に於ける液体の水には、それほど溶解しないのだ。「Cold Faithful モデル」の大きな難点の1つである。

そこでキーファー教授らが提唱するのが、「クラスレート」(包接体)と呼ばれる状態だ。クラスレートとは、ある物質が分子レベルの空間を形成し、その中に別の物質が“入っている”状態。この場合、固体の水分子たちが空間を形成し、そのすき間に前述の気体が閉じこめられている状態だ。

クラスレートが真空中に放出されたとき、中に入っている窒素やメタンのガスがバースト、氷ともども拡散しているのではないかという。このクラスレート理論は、−100℃程度のエンケラドスの地下環境にもフィットするという。詳しくはこちらへ【University of Illinois 12.14】

★追加情報 (12.12, 2006)

土星の衛星「タイタン」で、これまでに見つかった中では最も高い山が発見された。土星周回探査機「カッシーニ」による、10月25日のフライバイで明らかになった。

「シェラネバダ山脈を彷彿とさせるような類の巨大山脈があります。長さはざっと100マイルはありますね」と語るのは、アリゾナ大学のボブ・ブラウン博士。

10月25日のフライバイでは、これまでにない高解像度の赤外線画像を得ることができ、解像度は400mであった。このデータと、既に得られているレーダー観測のデータを合わせて分析することで、新たな地質学的発見を引き出すことができるのではないかと研究チームは期待している。

    

山脈は長さ150km、幅30km、高さ1.5km。表面にはメタンの“雪“もしくはその他の有機化合物が堆積していると見られている。上の画像は、既にこの地域に関して得られているレーダー画像に、赤外線データを組み合わせたもの。赤外線波長は1.3ミクロンを青、2ミクロンを緑、5ミクロンを赤で着色して表現されている。

一方、下の画像では、刻みが入った地形が浮き彫りになっている。この地形は恐らく地殻活動による力で生じたものであろうと考えられている。

    

また、右画像の下方には一筋の明るく輝く雲が写っている。これはメタンが凝縮することで生じたものであろうとみられている。このような雲は噴火によって形成されるのではないかと考えられたことがあったが、しかし、この画像を見るとその説には疑問を抱かざるを得ない。

その他、詳細や大きい画像はこちらへ。【Cassini 12.12】

★追加情報 (12.07, 2006)

「老スポークは死なず、ただ消え去るのみ…」 土星のリングの研究者たちは近年、そう考えているようだ。

「スポーク」とは、土星のリング上に出現するくさび状や放射状をした模様のことで、ボイジャーによって発見されたもの(右・ボイジャー2号が撮影したスポーク)。スポークは殆ど形を変えずにリングの上を移動しているが、不明な点が多い。ただ、土星の磁場が関わっていそうなこと、リング面が大きく開いているときには見えにくいということはわかっている。成因と正体は、リング面に衝突した微小隕石が巻き上げたチリと考えられている。

現在、土星を周回しながら観測を続けている探査機「カッシーニ」は、2004年夏の周回軌道投入からしばらくの間はリング面との位相角が大きかったためスポークに巡り会わず、軌道を変更し位相角が小さくなった05年9月、初めてカッシーニもそれを捉えることに成功した。

下は、カッシーニが今年11月1日に撮影したBリングの拡大映像で、2枚をつなぎ合わせて作成されている。左側の方に、リング模様を横切るように伸びるスポークが見えている。

    

太い2本が見えるが、上のものは長さ2500km、幅600km。下のものとの間隔は約8500kmに達する。この画像は、「スポークはまず放射状に出現し、周回するうちに幅を広げ分散、約3時間20分後にフェードアウトしてしまう」という説を支持している。「突然消えてしまう」(die)のではなく、「消えゆく」(fade away)のだ。

一番下の太いスポークはその広がり具合から、形成されて2時間15分ほどが経過したものと推測される。あと1時間もすれば消滅してしまう、「消えゆく」スポークである。

この画像は、リング面から32度の角度で撮影されたものである。詳しくはこちらへ【Cassini 12.07】

★追加情報 (12.05, 2006)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が今年10月31日撮影した衛星「エンケラドス」の姿。

    

直径500kmのこの衛星の南極域からは氷の結晶などが噴出しており、研究者たちの注目を集めている。画像でもその様子がよくわかる。(右は管理人による二階調画像。かなり遠方(衛星の直径以上?)まで噴出が出ているようですね)。大きい画像などはこちら【Cassini 12.05】

★追加情報 (12.01, 2006)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が、土星の北半球を見下ろした姿。10月30日に撮影された。画像の上半分には、リングの裏側が微かに写しだされている。

    

太陽ー土星−探査機のアングルは150度、リング面から44度。大きいサイズはこちら【Cassini 12.01】

…リングの裏側って、光が殆ど浸みて来ないんですね〜。

★追加情報 (11.16, 2006)

画像・左下は土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星のFリングと衛星プロメテウス。プロメテウスはFリングのすぐ内側を運行する衛星で、差し渡し102kmの小さな衛星。だが小さいながらFリングに与える影響は大きく、特に接近した際にはその重力でリング粒子を引っ張り、画像で見るような乱れを生じさせる。右の画像は広範囲にわたる様子(大きいサイズ)。

    

2009年にはプロメテウスの軌道がFリングを横切ることがわかっており、そのとき何が起こるのか、輪の研究者たちは非常に心待ちにしているという。詳しくはこちらへ【Cassini 11.16】

左はNASAの土星周回探査機「カッシーニ」が今年10月11日に撮影した土星の南極点に巻く巨大な渦。垂直構造がはっきりと浮かび上がっており、このような様が捉えられたのは初めてのこと。渦の高さは30〜70kmに達しており、地球で見られる台風やハリケーンとは全く異なる特徴を備える。

    

一方、右は欧州宇宙機構(ESA)の金星周回探査機「ビーナス・エクスプレス」が今年4月12日に撮影した、金星の南極点。左は可視光、右は赤外波長で捉えたもので、やはり大規模な渦を描いているのがよくわかる。

土星は水素・超低温、金星は二酸化炭素・超高温…大気の属性も全く異なる両者。その渦のメカニズム解明はこれからである。【photo:NASA/ESA】

★追加情報 (11.09, 2006)

下は土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星のBリングとAリングの一部。天然色だそうです…きれいですね〜^^(大きいサイズ)【NASA 11.09】

    

★追加情報 (11.08, 2006)

土星を周回しながら精力的に観測を続けているNASAの土星周回探査機「カッシーニ」は、その予定されている観測期間のほぼ半分を消化した。現在、予定観測が終了した後のカッシーニの扱いについて、議論が始まりつつあるという。計画では、2008年7月に当初予定を終了することになっている。

「現在、ミッションを2010年7月1日まで延長する案が出ています」と語るのは、カッシーニ計画マネジャーのロバート・ミッチェル氏。「探査機が充分に機能するのであれば、更なる延長もあり得るでしょう。」

カッシーニは、2012年頃にミッション終了の時期を迎えることになると考えられている。(姿勢制御燃料が底を尽きるのがその辺なんでしょうね@管理人)

「最もあり得そうな選択肢としては、カッシーニを、何にも衝突を起こしそうにない軌道に投入することでしょう」と、ミッチェル氏は言う。「あるいは、木星探査機ガリレオの最後ように、惑星本体に突入させるということもあり得ます」と、土星本体への突入も挙げている。ただし、土星本体に探査機を突入させることは、その手前で輪に衝突するというリスクもある。

別の選択肢として、衛星に衝突させるということも考えられる。だが、搭載されている原子力電池の放出する熱により氷を溶かしてしまうなど、衛星の環境を破壊してしまうというハイリスクがある。

さらに別の肢として、土星周回軌道を離脱させることも考えられる。離脱後は太陽系外へのコースを辿らせ、例えばカイパーベルトの観測に向かわせるという手もあり得るし、一方、太陽系内側に帰ってこさせ、木星や、あるいは太陽に命中させるという手もあり得る。中には、水星に激突させ、その表面に変化を与え、組成を調べるという案もある。タイミングが良ければ、2021年に予定されている水星探査計画「ベッピ・コロンボ」にぶつけることも可能かも知れない。ただ、土星の重力圏離脱には、衛星「タイタン」への度重なるフライバイが必要とされている。

いずれにせよ、カッシーニをその後どうするかは、現行ミッションの終了が近くなった頃に結論がでるという。詳しくはこちらへ【CNN.com 11.08】

★追加情報 (10.27, 2006)

下の画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、土星本体の影からリングが出現する部分。リングが闇から現れる部分、カミソリで切ったような影の一直線はなく、ぼんやりボカシが入った姿になっている。

    

これは、土星本体で反射された太陽光がうっすらと照らしているため。大きいサイズはこちらへ【Cassini 10.27】

★追加情報 (10.18, 2006)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が先月25日、ナローアングルカメラで撮影した「Fリング」の拡大映像。

    

Fリングは複雑なねじれやこぶがボイジャーにより発見されて以来、興味深い対象のひとつ。今回得られた画像はかつて無い解像度で撮影されたもので、複雑な形状が“ムーンレット”(微衛星)の存在によることを示唆する証拠も掴んでいるという。

微衛星とは、差し渡しが数百メートル程度のごく小さい塊で、土星のメインリングの中にも無数に散らばっていることが最近明らかになっている。このムーンレットがFリングの中にも存在し、その重力の影響でリング物質が巻き上げられたりしていると考えられる。

ちなみにFリングは、その内側に存在する衛星「プロメテウス」からも重力的な影響を受け、リング物質が乱されていることが知られている(詳細こちら)。大きい画像や詳細はこちらへ【Cassini 10.18】

★追加情報 (10.12, 2006)

米航空宇宙局(NASA)は11日、米探査機カッシーニによる観測で、土星の輪が新たに3本見つかったと発表した。

土星には、大きな輪が7本あることが知られている。今回は、このうち最も外側にあるE環のさらに外側に1本が見つかった。また、内側から3本目(B環)と4本目(A環)を隔てる「カッシーニのすき間」という場所には多数の小環が知られているが、ここでも新しい小環2本が確認された。

観測は9月、探査機が土星をはさんで太陽の反対側へ入ったタイミングに行われた。太陽が見えている時は明るすぎて撮影できない薄い輪も、太陽光に照らされた姿が漆黒の宇宙を背景にくっきりと浮かび上がった。今回の観測では、内側から5本目(F環)と6本目(G環)の間にも、新たな輪がすでに1本見つかっている。【読売 10.12】

    

…土星研究者の間では今、衛星への関心が熱いようです!関連のコラムがこちらにリリースされています

★追加情報 (10.11, 2006)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が撮影したリングの画像から、つい最近、リングに彗星もしくは小惑星が衝突したと思われる特徴が見つかった。

このリングは、最も内側の「Dリング」。画像を分析していた研究者たちは、このDリングの外側の部分に規則的に変化する模様があることに気づいた。この間隔は約60kmで、この間隔は年を追うごとに小さくなっていることも判明したという。

「この構造は、土星の輪が永遠不変のものではなく、現在も“生きて”おり、変化と進化をしていることを象徴しているものですね」と語るのは、画像分析チームの一員であるマット・ヘッドマン博士。

   

上は、カッシーニがリング面とほぼ水平になるような視線で撮影した一枚。Dリングの外縁の部分が波打っており、それがCGでわかりやすく描かれている(大きいサイズ)。

この現象は、微粒粒子が垂直に波打って分布していることで見られるもの。この構造、並びにこれが時間の経過と共に変化している事実は、Dリングに彗星もしくは小惑星が衝突したと考えることで説明できる。小天体がリングに突入したか、もしくは僅かに軌道が傾いている“ムーンレット”(微惑星)に衝突しその破片が残されたためか、ということが考えられるという。

(下・スレートのような波打った構造が、光の周期的な明暗を生んでいる。直線はカッシーニの視線で、下に示されているのが明暗パターン。視線方向に粒子が詰まっている部分は暗く、一方、そうでない部分は明るく輝く。)

    

ただいずれにせよ、衝突によりリングを構成する粒子が上下方向に僅かに散らされたことは間違いないと研究者たちは考えている。時間の経過と共に粒子はらせんを描き、現在見るような姿になったという。

この発見は1995年から2006年までの観測を元になされたもので、リングと小天体の衝突は1984年に起こったのではないかと推測されている。詳しくはこちらへ【Cassini 10.11】

下は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影したリングの拡大画像。25年前、ボイジャーでは写らなかった新しいリングが写しだされている。

    

新しいリングの1本目は「カッシーニの隙間」の中に見え(右)、その幅は約50kmとされている。一方、2本目は中央に見えており、幅は約6kmと非常に細く、かろうじて確認できる(大きいサイズではっきり見えます)。【Cassini 10.11】

下は先月15日に土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した土星のリング系の様子。背後に太陽がくる位置関係の時に撮影されたもので、これまで見えなかった微細構造を透かして見ることができる。

これにより、今まで知られていなかった新しいリングの存在が確認された。このリングは衛星「パレーネ」(Pallene)に付随するもので、微細粒子からできている。

    

衛星に付随するリングとしては、先頃、衛星「ヤヌス」と「エピメテウス」に関するものが発見されている(これも写し込まれている)が、今回の発見はそれに引き続くもの。

この新リングはEリングとGリングの間に存在し、幅約2500km。ちなみに衛星「パレーネ」もカッシーニによって発見されたもので、大きさ約4kmの小さい天体。(ちなみにこのリングに重なるように見えるドットはそのパレーネではなく、背後の恒星。)詳しくはこちらへ【Cassini 10.11】

★追加情報 (10.05, 2006)

下の画像は土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した、ほおずきランプを思わせる土星の姿。これはカッシーニに搭載されている可視光・赤外線マッピングスペクトロメーターにより得られた、土星内部からの熱放射で浮かび上がった大気下層の雲のシルエット。

     

土星の下層深部は、その上層のモヤと雲のため可視光でうかがうことはできない。そこで、土星内部から放射される熱を捉え、それによって生じた下層のシルエットをつかまえる形で浮かび上がらせることで得られたのが上の画像である。まさにランタンの原理だ。

この映像を見ると、下層部は非常に活動的で、様々なタイプの形やサイズの雲が存在することがわかる。詳しくはこちらへ【Cassini 10.05】


★追加情報 (10.02, 2006)

下は土星周回探査機「カッシーニ」が2004年6月21日に撮影した画像。3つの赤外線波長による個々の画像と、それらを擬似カラーで区別して合成したもの。

    

上段・左は波長1.3ミクロンで撮影されたもので、土星本体およびリングがはっきりと現れている。一方、中央は2.4ミクロンで、土星大気中に含まれるメタンはこの波長を吸収するため、反射波がカメラにこない。つまり土星本体が見えない。ところが右は5ミクロンで撮影したものであるが、今度はリングに含まれる水の氷がこの波長を吸収し、リングだけが見えなくなっている。

そしてこれらの違いを擬似カラーで表し、ひとつに合成したのが下段の画像。赤外線で撮影すると、どのような成分が含まれているのか精査することができるが、これはその典型的な一例である。詳しくはこちらへ【JPL/NASA】

右は、土星の衛星「ミマス」で、有名な巨大クレーター「ハーシェル」が写し込まれている。これは「カッシーニ」が撮影した画像であるが、かつてボイジャーが同様の画像を撮影している。

ハーシェル・クレーターは直径130kmで、ミマスの直径397kmと比べると、その巨大さに驚かされる。これはその昔、別の小惑星が激突した結果できあがったと考えられており、もう少しそれが大きな天体だったら、ミマスはバラバラになっていたと言われている。

この画像は今月8日に撮影されたもので、解像度は2km/ピクセル。。大きいサイズなど詳細はこちらへ【JPL/NASA 10.02】

★追加情報 (09.29, 2006)

下は、土星周回探査機「カッシーニ」による衛星「タイタン」のレーダー観測で得られたデータを視覚化したもの。2つの湖がはっきりと浮かび上がっており、両者は細い水路で繋がっているのもわかる。関係者らは「湖が“キス”をしている」と表現している。

    

この画像は今月23日、カッシーニがタイタンへフライバイした際に得られたもの。範囲は60km×40km。

もともとこのフライバイは質量分析観測に特化したもので、レーダー観測で得られたデータはごく僅かであったにも関わらず、その狭い範囲に湖が写っていたことに研究者たちは驚きを隠せないでいる。液体がたまっているとすれば、それはメタンとエタンの混合物だろうと考えられている。

この湖は北緯73度・西経46度に位置し、2つの湖の大きさは共に幅20ないし25km程度であろうと見られている。右の湖はゆっくりと乾いていっているように見える。現在、北半球は季節で言えば冬から春へ向かおうとしているが、温度の上昇でゆっくりと干上がりつつある途中のようにも見える。詳しくはこちらへ。【Cassini 09.26】

★追加情報 (09.19, 2006)

下の画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が今月15日に撮影したEリングと衛星「エンケラドス」の姿。

    

同リングと衛星で、このような画像が得られるのは初めてのことで、衛星の南極側から噴出物が吹き出している様がはっきりと見て取れる(大きいサイズ)。またこの噴出がEリングを形成するダストを供給しているのも明らか。

一方、エンケラドス自体の運動によりEリング内の粒子が掃かれることで、予想外の構造も写しだされている(リング内の暗い部分など)。

続いて、カッシーニが撮影した外側のリング。最も外側に淡く太く広がるのがEリングで、画面右側・濃いメインリングの外側にやや淡く細く映っているのがGリング。Eリングの中にはエンケラドスも写っている(リング左側・中央)。

そしてそのEリングとGリングの間、画面中央よりやや右の小さい点は、地球。左上はそれを拡大したもので、左側に出た“こぶ”は、月。

    

外惑星系より地球が撮影されるのは、1990年にボイジャー1号によるもの以来。詳しくはこちらへ【Cassini 09.19】

土星周回探査機「カッシーニ」が今月17日に撮影した長時間露出画像を分析した結果、これまで確認されていなかった新しいリングの存在が明らかとなった。

次の画像は、4年間にわたるカッシーニ・ミッションの中で最長の太陽掩蔽において撮影されたもの(太陽掩蔽とは、カッシーニから見て、リングのちょうど向こう側を太陽が移動していく位置関係)。この状態では、リングの細部構造がはっきりと浮かび上がる。通常、この類の掩蔽は長くても1時間程度であるが、今回は12時間も継続するものであった。

    

この掩蔽では、通常は見ることのできないミクロ級の粒子の分布を詳しく調べることができた。その結果、浮かび上がったのが、新しいリングだ。

新リングは内側の主リングより外側で、薄いG、Eリングよりも内側に位置する。またこの位置は、衛星ヤヌスやエピメテウスの軌道とも一致する。現段階では、それらの衛星に降り注ぐ隕石によって巻き上げられた表面物質が漂った結果、できあがったのではないかと考えられている。詳しくはこちら
【NASA/Cassini 09.19】

★追加情報 (09.14 2006)

土星周回探査機「カッシーニ」に搭載されている可視・赤外域マッピングスペクトロメーター(VIMS)による衛星「タイタン」の観測で、同衛星の北極上空に巨大なエタンの雲が存在することが明らかになった。この雲からエタンの“雪”が、地上のメタンの湖に降り注いでいる可能性もある。

VIMSは352の波長域でイメージを得、対象物を構成する物質を判断する貴重な情報を提供する。

(下の画像は、VIMSによって得られた、タイタン大気によって反射された太陽光の、波長2.8ミクロンで観測された姿(大きいサイズ)。反射強度が強い部分は赤系色で示されている。すべての画像で、北緯50度以北に赤く描き出されているのが、大量のエタンの雲。“NP”は北極点を意味する。)

    

(画像はそれぞれ(A)2004年12月13日、(B)2005年8月22日、(C)2005年8月21日および(D)2005年9月7日に得られたもの。)

かつて、タイタンにはエタンの雲が浮かび、地表には深さ300mに達するメタンの海が存在すると考えられていた。だがこれまでのカッシーニのレーダー観測やホイヘンスの突入観測の結果、そのような巨大な海の存在は否定され、研究者たちはこの事実に頭を悩まされている。

「我々は大量のエタンが、大気中すべての緯度に存在し、巨大な海が存在すると考えていたのです」と語るのは、アリゾナ大学の惑星科学者キャスリン・グリフィス女史。

タイタン大気では、太陽からの紫外線がメタンに作用し、エタンを生成している。過去45億年間、メタンがタイタン大気の構成成分であったのであれば、地表にエタンの海が存在すると考えるのは自然な成り行きであった。

カッシーニが昨年7月22日に行ったフライバイにおけるレーダー観測で、北極域に湖が発見された。しかし、「タイタン表面の殆どの部分には、湖も大洋も存在しません」とグリフィス女史は語る。

“ミッシング・メタン”すなわち「失われたメタン」は、さらに深い謎となっている。光化学反応によって生じている、エタンより存在比が少ないはずの固体生成物(スモッグダストなど)が、タイタン地表に砂丘を形成したり、あるいはクレーターを埋め尽くしていたりしているからだ。

カッシーニのVIMSは北緯51度〜69度、高度30km〜60kmの領域に大規模なエタンの雲が浮かんでいるのを検出した。ただ、カッシーニが観測した範囲は北極圏のごく僅かの部分である(現在、北半球は冬であり影に覆われている)。

「この観測結果より、エタンの堆積物は極地方に限定されることが考えられ、またこのことは、中・低緯度においエタンの海や雲が見られない理由のひとつになるかもしれません。北極地方では今まさに、液体のエタン、もしくはもっと低温であれば雪が降り注いでいると我々は考えています。続いて、南極が冬になったときには、やはり同様のことがその地域で起こることになるのでしょう。」

降り注いだエタンは、地表で凍りついている可能性もある。もしエタンが過去45億年にわたって現在のレートで降り続いていたとするなら、極域には厚さ2kmに達するエタンが凝結していることになるという。だが現実には、そのような様子はなさそうである。

これまでのところ、そのような“極冠”の存在を示す直接証拠は見つかっていない。また、北極は現在冬期で太陽光が当たらず、反射光を観測するVIMSで全体を捉えることはできない。

「地形学的に見て、厚さ2kmもの極冠があるとは思えません。ただ、液体が流れた痕跡は見られます」とグリフィス女史は言う。

カッシーニによるタイタンの極地方へのフライバイはこれからたて続きに行われ、年末までには極域の温度分布が得られることになるという。そしてそれは、そこがどのような状態下にあることを示すことになるのだろう。

関連論文が「サイエンス」誌9月15日号に発表された。詳しくはこちらへ【Univ. of Arizona/Cassini 09.14】

★追加情報 (09.12, 2006)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が今月9日に撮影した衛星「ダフニス」が、Aリングの外縁に存在する「キーラー・ギャップ」の中を突き進む様子。

    

ダフニスは昨年5月に発見されたもので、大きさは約7km。しかし映像では点像ではなく、上側がやや暗みを帯びており、この部分にはリングを形成する物質が降着したのではないかと考えられている。果たしてこれがあり得るのか否か、現在、コンピュータシミュレーションが続けられている。詳しくはこちらへ【Cassini 09.12】

★追加情報 (09.04, 2006)

右の画像は、おなじみとなった土星の衛星「エンケラドス」の最新画像。土星周回探査機カッシーニが8月11日、エンケラドスから220万kmの地点から撮影したもの。この時の位置関係は太陽−衛星−カッシーニが164°の角度。

エンケラドスの南極地方からの噴出は相変わらず続いていることが明らか。エンケラドスの大きさは地球の月の7分の1程度であるが、地殻活動は活発である。大きいサイズの画像などはこちらへ【Cassini 09.04】

★追加情報 (08.21, 2006)

下の画像は、土星周回探査機・カッシーニが今年7月23日に撮影した土星の「Aリング」の拡大画像。これは、リング−探査機−太陽の順に一直線で並んだ状態で撮影されたもの(いわゆる、逆光ですね)で、リング表面がひときわ輝く「衝効果」と呼ばれる現象が観測されています。(大きいサイズ

      

衝効果は、リングを構成する粒子が互いの粒子に影を被せないため、全体の輝度がひときわ増す現象。地球でも、土星の輪が大きく開いているとき、衝ではリングの輝度が増す姿が捉えられます。

最近では、探査機「はやぶさ」が、接近した小惑星「イトカワ」でも同様の現象を観測しました。【photo: Cassini 08.21】

★追加情報 (08.11, 2006)

下は、土星の衛星「ハイペリオン」(左)と「レア」(右)。左の画像は先日こちらでも取り上げましたが、紫外線、緑、赤外線の各波長域での撮影データを1つに重ね、その違いがわかるように着色して作られた疑似カラー画像。右のレアもやはり同じように作成された画像で、これらは表面状態の違いを示しています。

     

エンケラドスは直径505km、レアは1528kmと、大きさが3倍も違いますが、色の分布も大きく異なっており、表面状態も全く異なっていることがわかります。レアの方には細長い筋状の模様が見られますが、これは地溝のような部分に対応しています。

かつてボイジャーによる観測でもこのような筋が観測されましたが、これは地下から吹き出した氷によるものだと推測する研究者もいました。

このような筋状のもようは衛星「ディオネ」にも認められます(画像・左はレア、右がディオネ。ディオネの筋ははっきり見えていますね)。先にディオネの筋は地溝に沿っていることが観測ではっきりしましたので、レアもやはり同様であろうと考えられていました。【photo: NASA/JPL/Space Science Institute】

★追加情報 (08.07, 2006)

下の画像は共に、土星周回探査機・カッシーニが撮影した同惑星の衛星。

左は衛星・ハイペリオン(大サイズ)。表面状態の相違を強調するために極端な疑似カラーで着色されており、紫外線、緑、赤外線の各波長域での観測データを1つに重ねたもの。表面物質の成分や粒子の大きさの違いが色の違いを表していると考えられているが詳細はわかっていない。

     

右は衛星・エンケラドス(小)とレア(大)。エンケラドスがレアの背後から出現した直後の映像。ちなみに下は、エンケラドスがレアの背後に隠れる前の状態(この後エンケラドスが左から右へ進み、レアに隠される)。大きいサイズ

     

エンケラドスは直径505km、レアは1528kmと3倍もの違いがある。【Cassini 08.07】

★追加情報 (07.27, 2006)

2005年1月14日に迎えた、土星探査ミッション「カッシーニ・ホイヘンス計画」最大のクライマックスである、ホイヘンスのタイタン突入・着陸。ホイヘンスからのシグナルは一旦カッシーニ探査機で記憶され、地球にプレイバックされたが、そのホイヘンスからのシグナルに現れていた奇妙な“波”から、ESAの研究者らは、タイタン地表に散らばる小石のサイズを割り出すことに成功した。

ホイヘンスは、タイタンの濃厚でスモッグまみれの大気をくぐり抜け、無事に地表に着地した。その後も数時間に渡ってシグナルを発し続けたが、これはタイタン上空を通過するカッシーニによって見事に受信されていた。

その後、カッシーニにレコードされたデータが地球へ向けてプレイバックされたわけだが、研究者らは、ホイヘンスからのシグナル強度が周期的な波を打っていることに気付いた。当時、シグナルを見守っていた研究者らは、なぜこのような脈動を打つのか困惑したという。

「ホイヘンスは着地に充分耐えられるように設計されてはいなかったので、そんなシグナルが送られてくるとは思ってもいませんでしたよ」と語るのは、ESAホイヘンスチームの一員、ペレツ・アユカル氏。「きっとエイリアンが引き摺っているに違いない」などとジョークを飛ばしながら、彼らのチームは原因の考察を始めたという。

やがて、ペレツ氏は、そのシグナルの強弱が、カッシーニへの直接波と一旦地表に跳ね返ってカッシーニに到達した反射波との干渉が原因ではないかと考えたという。カッシーニの移動に伴い受信アングルも変化し、それに応じて、強度や周期も変化を受ける。
    

右イラストは干渉の原理。上部のアンテナから放射される直接波(黒太線)と、地表に向かい反射した反射波(青線)が干渉を起こし、それをカッシーニが受信する。干渉波は周期的な強弱を繰り返すので、その周期や強度を分析することで、地表の状態を推察することができる。(大きいサイズ

(イラストは正に高校物理の「波動」で学ぶ干渉と同じもので、“Δ−path”がいわゆる幾何的光路差に対応しています。“elev”(カッシーニ・ホイヘンスの視角)の変化に伴い刻々と変化していく干渉周期や強度からΔ-pathの変化を求め、それに合うような地表の凸凹を推察・フィットさせていくというからくりでしょうかねぇ・・思いがけない“地表レーダー”ですね@管理人)

彼はこの仮定を計算で確かめたところ、確かに成立することがわかり、その上、干渉波の属性が地表の状態にかなり敏感なことが判明。それを基に、散らばる小石のサイズなどを逆算することが可能になったという。

カッシーニは、ホイヘンスが着地してから71分間、シグナルを受信し続けた。この間に得られた干渉データを分析することで、ホイヘンスから1m〜2km離れた地点までの地表の状態を知ることができた。

この結果、着陸地点付近は比較的平らで、5〜10cm程度のサイズの小石で覆われていることがわかったという。これはまた、ホイヘンスのカメラで撮影された地表の様子(右)とも矛盾はない。

「これは全く、思いがけないボーナスですね。まったく特別な装置はいらないし、ただ、シグナルの受信だけで得られた成果ですからね」とペレツ氏は語る。このテクニックは将来の探査ミッションにも応用することができるもので、注目を集めそうだ。詳しくはこちらへ。【ESA 07.25】

…などと書いていますが、物理で波動は嫌いでした^^; 面白くなかったし。。ニュートンリングは目が痛いわ nは間違えるわ、暗室暑いし実験終わらんし。。

地球によく似た地形や気象現象があるとされる土星の衛星タイタンに、弱い霧雨が降っていることを、ドイツ・ケルン大の戸叶哲也研究員(地球物理学)らのグループが突き止め、27日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

同グループは、欧州宇宙機関(ESA)が昨年1月、タイタンに着陸させた小型探査機ホイヘンスによる観測で得られた大気中のメタン濃度や気温、気圧などを分析。その結果、上空には目に見えないほどの薄い雲が二層構造で存在し、下層の雲から弱い霧雨が降っていることが分かった。

タイタンはマイナス約180度という低温の世界のため、メタンは液体として存在する。タイタンにメタンの雨が降ることは、これまでも予想されていたが、明確な証拠はなかったという。【共同 07.27】

★追加情報 (07.24, 2006)

今度こそ本当に液体…?

土星周回探査機「カッシーニ」が行った衛星・タイタンのレーダー観測により、その北極付近の高緯度地方に、液化炭化水素の湖の存在を強く示唆するデータが得られたという。
     
研究者らは、低温であるタイタンの高緯度地方ではメタンやエタンが液体で存在するのではと考えてきた。今月21日に行われたレーダー観測で得られた画像(上)には、液体が流れることで形成されたと見られる渓谷が伺え、また、黒いパッチ状の部分はレーダーエコーが殆どなかった領域であるという。

レーダーエコーのゼロは、この領域が極めてなだらかであることを、即ち、液体が溜まっていることを強く示唆しているという。また、パッチの周辺にリムが認められる部分もあり、これは液体が蒸発していく過程で形成された可能性があるという。

このような“湖”は時間の経過と共に変化したりするものでもある。今後、再びこの領域を観測することが、液体の有無に決着をつけるものとなるはずである。くわしくはこちらへ【Cassini 07.24】

★追加情報 (06.27, 2006)

NASAの土星周回探査機「カッシーニ」が、予定ミッションのちょうど半分を達成した。カッシーニは2004年6月30日、土星周回軌道に入り、その後今日まで素晴らしい実績を挙げ続けている。

「探査機はこれまで、タイタンに15回の接近を行い、更にあと30回もの接近を行う予定です」と語るのは、カッシーニ計画マネジャーのロバート・ミッチェル氏。

タイタンは窒素の分厚い大気を有する衛星で、大気に漂うもやのために地上を可視光で見ることができない。従ってレーダー観測により地表を探査することで、数々の発見が行われている。また、カッシーニは2005年1月、搭載していたタイタン着陸機「ホイヘンス」を投入、見事着陸に成功。刻々と送られてくるシグナル・・投入ミッションは管制部から生中継され、世界中の人々を興奮させたことが思い起こされる。

また、タイタンと合わせて脚光を浴びているのが、衛星エンケラドスにおける大規模なアイスダスト噴出の発見。エンケラドスの南極地方から宇宙空間に向かって氷のダストと思われる粒子を内部から噴出しているもので、Eリングの形成を担っていることが判明した。(詳細はこちら

早くも一部の研究者の間からは、近未来の探査対象としてミッションが提案されている。

2008年6月まで予定されている“後半ミッション”では、タイタンや各衛星への接近に合わせ、大がかりなマニューバが行われる。それは1年かけて周回軌道を180°振るもので、このスイーピングにより、リングの3D映像を取得する。また、土星空間の磁場分布を調査する予定にもなっている。

詳しくはこちらへ。【Cassini 06.27】

★追加情報 (06.12, 2006)

画像は、土星周回探査機・カッシーニがナローアングルカメラで今年5月4日に撮影した土星の輪と衛星エンケラドス(直径505km)。この時、エンケラドスからの距離は約210万km。
     

よく見ると、エンケラドスの下方に噴出らしき様子がうかがえる。これは正に、昨年発見された南極からの噴出の様子!大きいサイズはこちら。【Cassini 06.】

★追加情報 (05.31, 2006)

土星の衛星・エンケラドス。昨年、同衛星の南極付近から大量の氷粒などが噴出してるのが発見され、研究者らの注目が集まっているが、なぜ南極でそのような地殻活動が生じているのか?これに関し、「Nature」誌今月1日号に興味深い説が記載されている。

カリフォルニア大学・地球科学学科のフランシス・ニムモ助教授らの研究チームは、衛星内部からわき上がってきた高温・低密度の物質の影響で、衛星の自転軸が変化したためではないかという説を唱えている。これと同様の現象が、天王星の衛星・ミランダでも起こっているのではないかと指摘している。

「南極地方で活発な地質的活動が見つかったことには仰天させられましたよ。大体、非常に低温であるべき部分ですからね」と語るのは、論文の共同執筆者で、NASA・JPLの惑星科学者ロバート・パパラルド氏。

惑星であれ衛星であれ、自転している天体は、赤道に質量が寄っていると程、安定した自転を行う。「何らかの質量分布変化が起こり、自転が不安定となったのではないでしょうか。その結果自転軸が変化し、密度の低い部分(=高温物質の偏った所)が自転軸に一致したのではないかと考えられます」とニムモ氏は語る。

(右は、エンケラドスとその内部のモデル図。内部の高温・低密度の物質は赤で示され、これが表面近くに上昇し、黄色で示された氷の層の温度を上げ、噴出を引き起こしているというもの。)

彼らはエンケラドスの表面付近に低密度の物質があるとして、自転がどのように変化するかをシミュレーションしたところ、30°も傾き、その領域が自転極に一致したという。

「ボウリングの球を回転させたら、やがて、指を入れる穴が上を向きます…穴の部分は全体と比べて密度が低いからです。」と、パパラルド氏は具体例を挙げて説明する。

土星探査機カッシーニによる次回のエンケラドスフライバイは2008年に予定されており、南極噴出に関する情報も集められる予定になっている。詳しくはこちらへ。【NASA 05.31】

★追加情報 (05.18, 2006)

画像は、土星周回機「カッシーニ」が先月14日に撮影した衛星「エンケラドス」と「レア」。
     

手前がエンケラドスで、向こう側にいるレアがエンケラドスに隠れていくように見える。時間間隔は1分。詳しくはこちらへ【Cassini 05.18】

★追加情報 (05.14, 2006)

今月1日に記載しました下の画像…土星探査機・カッシーニによるものですが、奥に写るのは「タイタン」とのことです。ちなみに手前は「エピメテウス」。詳細はこちらへ【NASA/JPL 05.14】
     

★追加情報 (05.04, 2006)

下は、土星周回機カッシーニが撮影した、衛星「ヤヌス」と「エピメテウス」。両者は軌道を共有しており、互いの運動量の交換が生じ、4年に一度、内と外を入れ替わります。ちょうど、スピードスケートで、2人の選手がインとアウトを入れ替わるのと似たような動きですね。最近では、今年1月21日に入れ替わりました…次は2010年です。

     

元々、1つだった衛星がバカッと割れて、二つになったのではないかと考えられています。なお、上画像は近接しているように見えますが、これはそう見えるだけで、実際の両者は4万km離れていたそうです。【Cassini 05.03】

2005年1月14日、NASAの土星探査機「カッシーニ」から切り離されていた欧州宇宙機構(ESA)開発のタイタン着陸機「ホイヘンス」が見事な完全着陸を果たした記憶はまだ新しい。このほどNASA、ESA及びアリゾナ大学が共同で、この時得られた画像とデータをつなぎ合わせ、2時間半に渡る着陸劇を5分間にまとめた、素晴らしいムービーを2本公開した。タイトルは「View from Huygens on Jan. 14, 2005」、「Titan Descent Data Movie with Bells and Whistles

下は「View from Huygens on Jan.14, 2005」を開くと見られる画面。ホイヘンスの降下から着陸後、トータル4時間近くに得られたデータを5分弱にまとめたもので、降下中は実際の40倍、着陸後は100倍の倍速で縮めてある。

降下中のシーンはホイヘンスのカメラで得られた多くの画像をつなぎ合わせて作られている。また、ホイヘンスの降下速度や方角、回転や揺れは四隅に表示されている。各部の説明は以下の通り;

     

左下
ホイヘンスの降下トラジェクトリ。エベレスト山と比較できるようにスケールバーが描かれている。カラーバーは太陽(ピンク)と母船・カッシーニ(紫)の方角を指し示す。

左上
刻々変化するホイヘンスとパラシュートの状態。人間の身長と比較対象。

右下
ホイヘンスの回転に伴う、視野の方角(緑)を示すコンパス。カッシーニは紫、太陽はピンク。

右上 世界時を示す時計(日本時間−9時間)。

また、左のスピーカーから出る音はホイヘンスの運動をトーンの変化で表したもので、回転をカウントするクリックや、耐熱シールドが大気に接触、パラシュートの展開、シールド分離、カメラカバー分離、及びタッチダウンの音も入っている。

右のスピーカーから出る音は、降下撮像カメラ/スペクトロラジオメーターの活動を表すもの。連続するトーンはホイヘンスからカッシーニに向けた電波の強度変化を示すもの。また、13種類のチャイム音が入っているが、各々は13種類の科学機器の動作に連携しており、白いフラッシュで視覚にも訴えている。

降下撮像カメラ/スペクトロラジオメーター(Descent Imager/Spectral Radiometer)は計3500ショットの活動を行った。

右は、着陸後に撮影されたタイタン地表と、それと同スケールに置き換えて加工されたアポロの画像。ナルホド、こうしてみると距離感がだいぶわかりやすいですね。【NASA/ESA 05.04】

…2つのムービーはどちらも素晴らしいものです!しかし…左右のスピーカーからは同じ音が出ているようにしか思えませんし、13種類のチャイム音って…分離できないんですけど(^^; これを一度に脳内処理できれば、JPLで働けるってことですかね?(笑)

面接官「君はあの左右の音を聞き分けられたかね?」
受験者「Yes, prett'good (^^)b」
面接官「…あれは、左右混ぜてアップしてしまっていたんだがね…」

これまでカッシーニで得られてきたタイタンの観測で、黒く写っている部分について、とりあえず結論が得られつつあるようです…

これまで長年にわたり、赤道付近に広がる暗く見えている地域は液体の海と考えられてきた。このほど得られた新たなレーダー観測の結果は、それらは海ではあるが、しかし、“砂の海”であることを示唆しているという。アリゾナ大学・カッシーニレーダー分析チームはこのような結論を出し、論文が「サイエンス」誌今月5日号に記載された。

研究チームは昨年10月にカッシーニのレーダー観測で得られたデータを分析、解釈を試みてきた。赤道付近のレーダー画像に写っていたのは、高さ100m、長さ数百キロに渡る砂丘が何本も平行に走る様子だったという。

     

(上半分はタイタンの表面に見られる特徴、下半分はナミビア砂漠の砂丘)

アリゾナ大学月・惑星研究所のラルフ・ローレンツ氏は「奇怪なことだよ。タイタンのレーダー画像は、まるでナミビアやアラビアのレーダー画像のようだ。タイタンの大気は地球より濃く、その重力は小さく、砂も明らかに異なっている…つまりあらゆるものが地球と異なっているわけだが…砂丘のできるプロセスと景観はなぜか同じってわけです。」

10年前、タイタンは太陽から遠く離れているため、砂丘を形成するに充分な強さの風は吹かないと考えられていた。したがって、赤道付近に観測されてきた暗い領域(アレシボレーダーなどで過去に得られた画像を意識しているのでしょう@管理人)は液化エタンの海と考えられてきたのだった。

ところが近年、土星の強い潮汐力がタイタン大気に力を加え、大気運動を起こし得ることが明らかになってきた。その潮汐力は、地球が月から受ける潮汐力のざっと400倍も強い。

これまで提唱されているモデルによると、潮汐力により地表付近に秒速50センチの弱い風が生じることになるとされている。これは弱い風であるが、濃い大気と弱い重力下では、観測されるような砂丘を形成するには充分だとローレンツ氏は語っている。詳しくはこちらへ【Univ. Arizona 05.04】

★追加情報 (05.01, 2006)

土星周回探査機「カッシーニ」が最近撮影した画像から2枚…

まず、下は先月28日に撮影されたもので、手前に小さく写っているのが衛星「エピメテウス」。ちなみに、リングの向こう側にでっかく写っているのは恐らく衛星「ディオーネ」ではないかと…?(う〜ん、「レア」かなぁ。。)大きいサイズ

    

最初は合成写真かと思いましたが、確かにカッシーニのカメラ(ナロー)が捉えた生画像です。息を飲む光景ですね。

下は、衛星「ヤヌス」(手前)。同じく28日に撮影されたもので、これまた息を飲む光景・・・(大きいサイズ

    

でも、すぐ奥に見える小さい衛星は何かわかりませんねぇ・・(^^; 【Cassini 05.01】

★追加情報 (04.26, 2006)

画像は、土星周回探査機「カッシーニ」が撮影した E リングの、真横からの姿。フレームには2つの小衛星も一緒に写り込んでいる。今年3月15日、土星から約240万kmの地点で撮影されたもの(大きいサイズ)。

    

E リングは中心から、土星半径の3倍から8倍、すなわち18万kmから48万kmの距離に広がっている希薄なリングで、衛星「エンケラドス」から噴出する氷のダストから成ることが最近判明したばかり。また、写し込まれた衛星「カリプソ」(Calypso)は大きさ22km、「ヘレーネ」(Helene)は32kmで、ともにEリングの中を周回している。

興味深いのは、Eリングが上下2層にスプリットしている点。これはリング中心面が、その上下500ないし1000kmの領域よりも希薄であるために見えるもので、リングを形成するダストの軌道傾斜角がゼロから僅かにずれているため。そのため、個々のダスト粒子がリング中心面の上と下を走り、その結果、スプリットしたリングができあがっている。

ダスト粒子が何故このような僅かな傾きをもって土星を周回しているのか、正確な説明はまだなされていないが、恐らくエンケラドスが関係しているものと考えられている。

可能性の1つとして、ダスト粒子がエンケラドスの南極から噴出している点が考えられる。これはつまり、リング中心面からずれた方向へ初速度が与えられることを意味し、結果として、僅かに傾斜がついた軌道を辿るというもの。

もう1つの可能性として、エンケラドスがリング中心面に近いところにある粒子をはね飛ばした結果も考えられるという。【Cassini 04.26】

…E リングを構成する粒子の軌道が僅かに傾いているということですが、ということは、粒子群がクロスするようにリングを形成しているのでしょうかねぇ…つまり、あるものは上面を、あるものは下面を走り、それが途中で入れ替わっているというような・・。うまく言えませんが・・スピードスケートで、2人の選手は途中でインとアウトを入れ替わりますが、言うならそんな感じ・・?そういう状態って、安定性はどうなのだろう?エンケラドスがキープしているのかなぁ。。

★追加情報 (03.29, 2006)

NASAの土星探査ミッション「カッシーニ」に携わる研究者達はこのほど、土星のリングの中に埋もれた「ムーンレット」(微衛星)を発見した。この微衛星の存在は、リングがどのように形成されたのかを考える上でヒントを与えるものと期待されている。

「これらの微衛星は、リングの形成を引き起こしたと考えられる太古の昔に生じた天体の破壊で残った塊のように見えますね」と語るのは、共同研究者の1人であるコーネル大学のジョセフ・バーンズ氏。

    

探査機カッシーニによって撮影された高解像度画像の注意深い調査(上・大きいサイズ)で、プロペラ型をした、微かな筋が4つ見出された。これらは大きく輝く「Aリング」内にあり、研究チームはこの“プロペラ”を、微衛星が周辺の粒子に影響を与える様をダイレクトに捉えた姿ではないかと考えている。
(上の4つの小円を拡大したものが右上の画像。確かに2枚羽根な形をしています…微衛星の大きさは約100m程度とのこと)

1980年代初頭のボイジャー探査機による観測以降、土星のリングは殆どが水の氷の粒子からなり、そのサイズは1センチ以下のものから小さな家ほどの大きさに分布していることが明らかになっている。また、リングの間に見られる「空隙」には小さな衛星も確認されている。大きなものでは「パン」と「ダフニス」の2つがあり、パンは約30km、ダフニスは約7kmのスパンを有する。

今回確認された微衛星の個数密度より、リング全体では約1000万個見積もられるという。

「今回の微衛星の発見で、パンやダフニスはたぶん、同様な微衛星の中でも最大のものなのでしょう。それらは別のどっかから飛んできた物ではなく、リング形成時に誕生した一員ではないでしょうか」と語るのは、メンバーの1人、マシュー・ティスカレノ氏。

パンやダフニスのサイズでは、リング粒子を掃き散らして空隙を形成することができるが、ムーンレットのような微衛星では力が小さいため掃くことができず、周囲の微粒子を集めてプロペラのような形になっている。このような形は既にコンピュータシミュレーションで予言されていたことであり、今回の発見は研究者により強い自信を与えるものとなる。

なお、上の画像は2004年7月1日、カッシーニの土星到着の際に撮影されたものである。詳しくはこちらへ【Cassini 03.29】

★追加情報 (03.09, 2006)

画像は、土星探査機カッシーニが2005年1月に撮影した衛星エンケラドス。衛星の南極領域から噴出物が確認されており、左のモノクロ画像に着色してディテールを際だたせたのが右。南極域の地表に確認されている「タイガー・ストリップ」地形(こちら)に垂直に噴出しているのが明らか。

    

また、こちらの画像はその一ヶ月後に撮影されたもので、タイガー・ストリップ地形に沿った噴出をみせているようである。

今月10日発行の「サイエンス」誌に記載された論文では、これは、地下に存在する液体状の加圧水リザーバから噴出する間欠泉だろうと主張されている。液体水の温度は摂氏0℃を超えるという。

一方、下はその間欠泉モデルの模式図で、論文を発表したカッシーニの画像分析チームが提唱しているもの。
     

モデルは、地下のリザーバーで加圧されている液体の水が間欠泉の源になっており、それが氷のジェットを空高く吹き上げているというもの。タイガー・ストリップの地溝から吹き上げていると考えている。

地球では熱水が間欠泉を起こしているが、エンケラドスでは氷点近い水による。それ故、「冷たい間欠泉」と呼ばれている。ただ、氷点近いとはいえ、周囲から見れば高温である。

ではその熱源であるが、放射性物質によるものと、タイガー・ストリップに集中していると思われる褶曲と潮汐力に起因するものではないかという。ただ現段階では、エンケラドスの地下がどうなっているのかはわかっていない。

なお、下はタイガー・ストリップ域を赤外線観測した結果得られた温度分布。数字は絶対温度(K=摂氏℃+273)を表しており、05年7月14日のフライバイで観測されたもの。
     

地溝の、かなり狭い部分の温度が周囲よりも高くなっているのが明らかで、最高で87〜90K(−186℃〜−183℃)に達している。より詳しいデータによると、幅数百メートルの、更に狭い範囲で145K(−128℃)に達していることが判明している。【Cassini 03.09】

…なるほどつまり、液体の水、ですか。エウロパに続いて話題になりそうですね〜。

★追加情報 (03.08, 2006)

画像は、土星周回探査機カッシーニが今年1月19日、土星から1200万kmの地点で撮影した「Gリング」の一部。最も外側にあるこのリングは氷の微粒子から成っており、画像もコントラストが強調されている(大きいバージョン)。

     

特徴的なのは、リングの内縁はシャープに形取られているが、外縁はダラダラとダストが拡散している様。非常にダストリッチな領域であることがわかる。

カッシーニは2004年7月1日の土星到着の際、このGリングの内側を通過した。その際大型パラボラを“盾”のように進行方向へ向けて突入したが、多くの細かいダストとぶつかったのが記録されている。【Cassini 03.08】

★追加情報 (02.27, 2006)

下の画像は、土星周回機「カッシーニ」が先月20日、距離140万キロから撮影した、衛星・ミマス。夜の側を飛行中に撮影されたもので、向こう側に見えるのは土星本体ですが…息の詰まる迫力を感じます。傍をすり抜けざまにすかさず撮影した、そんな想像を抱かされます。大きいサイズはこちら。【Cassini 02.27】
     

★追加情報 (02.14, 2006)

土星周回探査機「カッシーニ」は最近、土星大気に生じた、観測された中では過去最大級の雷電を観測した。アイオワ大学の研究チームが発表した。

画像は先月27日に撮影されたもので、土星の夜の領域に観測された大規模な嵐。夜の領域ではあるが、リングが反射した太陽光で照らされているため、嵐や周囲の雲の様子が映えている(実際はもっと淡いが、わかりやすいようにコントラストをつけて強調してある。大きいサイズ)。

この嵐の(下層の)深いところで生じている雷から電波が放射されていると考えられており、撮影前の23日、カッシーニがその電波をキャッチし始めた。なお、ちょうどこの前後、フランス・パリのアマチュア天体観測家らにより、土星の南半球・昼側の領域に嵐が発生しているのが撮影されている(詳細はこちら)。ただ、カッシーニは、光の具合で嵐の撮影には不適な位置にいた。

さて、右上画像の嵐であるが、南北3500kmに達するもので、ざっと米国の広さに匹敵する。電波も受信されている。

雷の閃光は写っていないが、写っていないから閃光は生じていなかったという結論には勿論ならない。分厚い雲で、光は弱められて検出できなかったのかもしれないし、運悪く、シャッターを開放していた10秒間には閃光が生じなかったということも考えられる。もし写るとすれば、閃光は拡散し、輝く斑点のようになるという。

ところで、我々の生活の中でも雷電波は体験できる…例えばラジオを聞いているとき外で雷が発生すると、生じた電波がガリガリと混入する。それと同様に、土星の雷で発生した電波がカッシーニの電波・プラズマ検出器にひっかかったというわけだ(右・生じた電波と、その一部を検知するカッシーニのイメージ図)。

雷では一般に、幅広い周波数の電波が発生するが、周波数の低い電波は(雲よりさらに上空に存在する)電離層に阻まれ、土星大気の外へは出てこない。検出された最低周波数などから、電離層の密度などがわかる。

    

上画像は横軸に時刻、縦軸に周波数を取り、検出された電波をプロットしたもの。ノイズ強度は色で示されている。1月23日から24日にかけて観測されたもので、信号音をこちらで聞くことができる(上の図の大きいサイズもあります)。ただしこのリリースされているファイルは、2時間を28秒に圧縮したものであるため、実際に耳にする音よりもかなり詰まっている。

今回発生した雷は、地球のそれの約1000倍もの強さを持つという。土星の雷そのものは既に、1980年、惑星探査機ボイジャー1号によって検出されていたが、今回はそのときのものも上回るものという。

研究チームによると、観測された大規模な嵐の成因はまだわからないが、高温である土星内部と関係があるのではないかという。カッシーニは来週、土星本体への接近が予定されており、更に詳しい位置の同定が期待されている。詳しくはこちらへ。【NASA/JPL/Space Science Institute 02.14】

…これはもう、太陽系最大級の雷、ということでしょうかね!

なんか、美味しそうな雰囲気(笑)…土星の衛星・テレスト

★追加情報 (12.17, 2005)

土星探査機カッシーニが先月26日接近したエンケラドスと、その際に確認された南極からの氷微粒子放出に関して、観測で得られたスペクトルデータがリリースされた。画像・上はエンケラドスから放出される氷粒子のサイズを色違いで表したもので、下は得られたスペクトル曲線。サイズはオレンジが「大」で、黄〜青につれて小さくなっていくのを示す。

センサーは、波長2.9ミクロンの水氷微粒子の特徴を示すスペクトルを掴んでいた。下の3本のグラフのうち、赤はエンケラドスの表面を、青はバックグラウンド、緑はエンケラドスから放出される氷粒子の各スペクトルを示している。ちなみにバックグラウンドは E リングに対応している。
    

特に注目すべきは青と緑で、両者は極めて類似したスペクトル構造を成している。これは端的に言えば、氷噴出物と E リングの組成が同じと言うことを表し、これは、エンケラドスからの噴出が E リング形成のための粒子供給源になっているという仮説を支持するものである。

これまでの調べでは、粒子の大きさは約10ミクロン(10万分の1メートル)で、E リングの粒子の約3分の1のサイズという。【Cassini HP 12.17】

★追加情報 (12.02, 2005)

1日、タイタン着陸機「ホイヘンス」から得られたデータの解析結果の概要がESAとNASAの共同記者会見で発表されました。興味深い内容で、その要約をまとめてみました。こちらをご覧下さい。【管理人】

★追加情報 (11.30, 2005)

エンケラドスの大気の発見や、水蒸気噴出に関して提唱されているモデルについて・・

カッシーニは今年7月11日、紫外線スペクトル計でエンケラドスの背後を通過するオリオン座の恒星「ベラトリックス」を観測した。恒星がエンケラドスの縁に隠れていく際、その光度変化によって、大気の存在が明らかになった。

図Aは、その時得られたデータ。もし大気が存在しないのなら、縁に消えた瞬間に光度がドロップするはずであるが(図Bで示されたような光度曲線)、図Aの光度曲線のように縁の間近でのダラダラとした減衰(ピンクで着色された部分)は明らかに気体の存在を示唆している。

   

スペクトル解析により、この気体からは水蒸気が検出された。また、再びベラトリックスの掩蔽(えんぺい=天体が天体を隠す現象)を観測したところ、大気がない場合の光度曲線が得られたといい、このことは、エンケラドスの大気は“部分的なもの”であることを示しているという。

ちなみに、図Bのデータそのものは今年2月に起こった恒星・さそり座λのエンケラドスによる掩蔽の観測から得られたもの。

次に、下図は「タイガー・ストリップ」で生じている水蒸気放出に関して考えられているモデルで、3つが提唱されている。

まず第1のモデルは、柔らかい状態のアンモニア氷が表面から昇華しているというもので、「Flow Model」と言われる。

“柔らかい”とはいっても、温度は−100℃。ただ、周囲に比べたら温度は高い状態であり、また、アンモニアの融点すれすれであるので比較的柔らかく(Slurry = スラリー・泥水状)、土星からの潮汐力によるエネルギー(Tidal Heating)で動くことができる。それが、“氷岩盤”(H2O Ice)を突き抜け表面に流出、表面で再び固体化した後、宇宙空間に向かって昇華している。

   

第2のモデルは、ちょうど地球の火山のようなもので、「Plume Model」と言われる(下)。これは地下では水は液体の状態で(H2O Liquid)、潮汐エネルギーにより運動し、マグマ溜まりならぬ“水溜まり”(Pressurized Chanber)を形成する。そしてこれが地表へ吹き出し、水蒸気や氷粒子を吹き上げるというもの。

ちょうど水が、地球の火山で言うところのマグマに相当すると考えるとわかりやすい。

   

第3のモデルは、「Sublimation Model」と言われるもの。Sublimation とは昇華の意。

これも地下の状況は上2つに似ているが、スラリー状のアンモニア水(−100℃)が地表に噴出するのではなく、−200℃の氷岩盤の真下まで上昇しそれを“温め”、表面からの地表氷の昇華を促進させるというもの。

   

…今回得られた画像(下)を見る限りでは、「Plume Model」が一番マッチしているように見えますね。放出が比較的垂直で、上へ向けての力(爆発?)が働いているように見えます・・。

★追加情報 (11.29, 2005)

下は今月27日に土星探査機カッシーニが撮影した、衛星エンケラドスの最新画像(撮影時、カッシーニ−エンケラドス間の距離は約11万km)。太陽を背にして逆光で撮影されたものだが、地表から宇宙空間に向けて何かが吹き出している様子がはっきりと写し出されている(左下)。
    

スプレー状に噴出が生じているのはエンケラドスの南極域で、ここには「タイガー・ストリップ」と呼ばれるひっかき傷状の地溝帯が存在する。今年夏、この溝からの水蒸気放出が確認されていたが、今回得られた画像はそれをはっきりと裏付けるものとなる。(追加情報 (08.31, 2005)も参照)
    

上は画像処理でカラー化し、ディテールを際だたせたもの。【Cassini HP 11.29】

★追加情報 (11.17, 2005)

オカリナのような、ジャガイモのような下の画像は、土星探査機・カッシーニが撮影したFリングの「羊飼い衛星」と呼ばれている衛星・パンドラのクローズアップ。これまでとられた同衛星の画像ではベストショットで、表面はダストサイズの細かい氷状物質に覆われていると見られている。
     

パンドラは差し渡し84kmの小さな衛星。外側のリングにある、細く太い「Fリング」をそのような状態に維持させるための「羊飼い衛星」としての役割を担っていることで知られている。画像より、クレーター内部は明らかに微粒子に覆われており、また、全体的に滑らかな表面であると見られている(パウダースノーが覆ったような状態かな?)。

これは9月5日にカッシーニが各波長で撮影した画像を合成して作られた疑似カラー画像(実際の色とはやや異なる)。解像度は300メートル。【Cassini HP 11.17】

★追加情報 (10.20, 2005)

アリゾナ大学の研究者達は、分厚い大気を有する土星の衛星・タイタンの南半球の中緯度に見られる雲は、地球の赤道に見られる雲の帯と同じメカニズムで生じている可能性があると指摘した。21日付の「サイエンス」誌に論文が発表された。

「タイタンの気象は、地球上のそれとは非常に異なっている」と、研究に携わっているアリゾナ大学のカイトリン・グリフィス助教授は語る。「もし、タイタンの南緯40度付近を歩いたとしたら、液体大気のにわか雨を受けることになるだろう。もし、タイタンの南極に行ったとしたら、メタンでできた“ハリケーン”に出くわすことになると思う。それ以外で雲の形成は期待できないだろうね」という。

「地球の両極をまたいで見たと想像してごらん。ニュージーランドとアルゼンチン、チリが存在する緯度にのみ、雲が存在することになるのだよ。こんなにおかしいことはないよ。」と同助教授。

このように、極端に局所化された特徴が見られるということは、タイタンの表面に何らかの関係があるのではないかという。研究チームは、氷の火山がメタンを吹き上げているのではないか、とも考えられるといい、そうでなければ、タイタンのメタンは太陽光線で分解され、とっくの昔に消滅してしまっているはずだったという。【Cassini HP 10.20】

★追加情報 (10.19, 2005)

この、息の詰まるような一枚は、土星探査機・カッシーニが捉えたもの。正面に見える岩石質の天体は衛星「ディオネ」で、その背後に土星本体、下には細く移ったリングが見える。

     

今月10日、カッシーニはディオネの表面から約500kmの地点を通過し、この衛星の観測を行った。画像は最接近寸前のもので、表面には無数のクレーターとひっかき傷のような渓谷が見え、これは他の土星の衛星でも観測される特徴。表面には水の氷の存在が観測されているが、大気の存在は見出されていない。ディオネはリングの1つである“Eリング”との関連が取りざたされており、今後観測で得られたデータと、このリングとの相互作用などが詳しく研究されることになっている。【Cassini HP 10.19】

★追加情報 (10.15, 2005)

NASAを始めとした国際協力で土星を探査する「カッシーニ計画」が15日、打ち上げ8周年を迎えた。

このサイトでもしばしば取り上げるカッシーニ計画は米国(NASA)と欧州各国(ESA)が共同で開発した探査機「カッシーニ」を土星へ飛ばし、その周囲を周回させ、土星本体や輪、衛星などを調査するもの。1997年の9月15日、ケネディ宇宙センターからタイタンIV-B・セントールロケットに搭載されて打ち上げられた(右写真)。

カッシーニはその重量(約6トン)のため直接土星へ飛ばすことができず、金星や木星などに接近、それらの重力を利用したアシストを受け、土星へ向かった。そのため到着までに7年の歳月がかかった。

ミッションのクライマックスは今年1月14日に行われた土星の衛星・タイタンへの「ホイヘンス着陸機」の突入。重さ320kgの着陸機はタイタンの分厚い大気とスモッグの中を突き抜け、謎だった地表の様子を撮影、大気のデータとあわせて膨大な情報をもたらすことに成功した(写真・タイタン地表)。ホイヘンス着陸機はESAが開発し、カッシーニの脇腹に張り付く形で土星まで同行した。タイタンからのデータはカッシーニにより中継され、地球に送信された…まさに国際プロジェクト。【NASA/ESA 10.15】詳しくはこちらを。。


…カッシーニ計画は大西洋をまたいだ国同士の国際プロジェクトですが、それゆえ組織も巨大になり、当然、思惑を巡る様々な問題との戦いも数多くありました。それらをまとめた書籍が今月1日発売になっています。「The Titans of Saturn」(Bram Groen & Charles Hampoen-Tuener共著)は、タイトルを見ると「タイタン探査の最新結果か!?」と思わされますが、タイタンズ、と複数形になっていることにご注意。。タイタンズ=巨人達、ということで、ミッションに関わった人々や組織のドラマというか、舞台裏を描いたドキュメントです。

レビューを読んで、面白そうだったので早速取り寄せて読んでいます(…あと、表紙のデザインに惹かれたという話も・・売るためには表紙って大切ですよね(笑)・・買ってしまった一人。。)

しばしば報道されてきた事柄も記されていますが、計画発案から具体的に形を帯びるまでの流れや、打ち上げから今日までの様々な出来事が小気味よく綴られており、興味深いです。ただし、メカニックな話は殆どありませんので、ご注意を。例えばコストの問題で“プラットホーム”が載せられなかったという話や、原子力電池を巡る反対派との攻防などなど、そのような一般向けのストーリーです。

あと、写真も殆どありません。欧米のブックにあるように、関連フォトは一ヶ所に、数ページにまとめて記載というのみ、というスタイルです。英文は平易なので、読みやすいです。【管理人お勧め】


★追加情報 (09.30, 2005)

土星周回機「カッシーニ」が8月28日に撮影した、衛星プロメテウスとアトラス。外側の細いリングはFリングで、リングの間に見えるすき間がいわゆる「カッシーニのすき間」。そのすき間の外側の幅広いリングをAリングといいます。リングの詳細はこちらへ

   

プロメテウスは差し渡し102kmで、画像上方・Fリング傍に見える小さいもの。アトラスは20kmで、画像右下・Aリングのすぐ外側にかすかに見えるもの。Fリングは所々に「こぶ」があるのもわかります・・密度の濃淡が大きく、また、ねじれている箇所もあるなど、未解明が多いリングです。【Cassini HP 09.30】

画像は9月26日に土星探査機「カッシーニ」が接近、撮影した土星の衛星「ハイペリオン」のクローズアップ。“スポンジ”とも“軽石”とも言える、極めて奇抜な、一見気持ちも悪い格好。同衛星の密度は氷の60%程度と極めて小さく、内部もかなりの部分がスカスカ(多孔質?)になっているのではと考えられている。
       

この画像は細部を強調させるために処理が施され、実際の目で見た色とは異なる(実際は赤みを帯びた淡い色)。ハイペリオンの大きさは長い部分でも266kmで、全体的にいびつな形。しかも自転軸が定まっておらず、まさに“ゴロゴロ”と転がるように、土星の周囲を周回している。

(右は今年2月23日に撮影されたハイペリオン。可視光で撮影されたものですが…確かに、少し赤みを帯びているのがわかりますね)

(シルエットがゴリラに似てます…赤面ゴリラ?(笑))

今回撮影されたクローズアップ画像で興味を惹くのは、クレーターの底に詰まった黒い部分。実際の色はこれとは異なるが、黒く際だっているのは、周囲と異なる物質が存在することを示唆している(これが赤みの原因か?)。周囲との比較から、この物質は厚さ数十メートル程度のものと考えられる。

また、この画像から、大規模な“地滑り”の痕跡が見つからないか、研究者達は関心を寄せている。クレーターのリムが崩れ落ちることで、土星の他の衛星には見られないこのような不可解な地形が形成されているのではないかと考えられている。

カッシーニは今回、ハイペリオンの表面から500qの地点を通過した。これは、これまでハイペリオンに接近した中では至近距離。【Cassini HP 09.30】

★追加情報 (09.17, 2005)

土星周回機・カッシーニはついに、リング上に出現する「スポーク」と呼ばれる影の撮影に成功した(関係者達はシャンパンで大喜びだったそうで・・)。

「スポーク」とは、今から25年前、NASAの惑星探査機・ボイジャー2号が土星のリング上に発見した複雑な模様(右)。これはNASA・ハッブル宇宙望遠鏡でも撮影されているものであるが、カッシーニはまだ撮影できていなかった。

下は、このほどカッシーニが撮影に成功したスポーク。3枚の画像は27分間隔で撮影されたもので、淡く狭い、輝くスポークの様子がうかがえる。サイズは長さ3500km、幅100kmで、左から右へと動いている様子がわかる。
  

研究者の一人は「ボイジャーミッションに立ち会った頃に帰ったようだ」と興奮を顕わにする。

ところで、スポークがどうして生じるのかは、いまでもよくわかっていない。最近最も有力視されているのは、超微粒子の氷の粒による太陽光線の反射により生じた模様という説。探査機とリング面とのなす角度が低角度の位置関係にある際にはスポークは淡く、高角度にある時は明るく輝いて見えることがわかっている。

また、光が直接当たらない“裏面”にも出現することがわかっており、このカッシーニによる画像は裏面のもの。

成因には土星の磁場の影響や微少隕石の衝突も提案されているが、満足な説明はまだ成されていない。【Cassini HP/Spaceflight Now 09.17】

土星を地道に周回しながら観測を続ける土星探査機「カッシーニ」が先日、衛星・タイタンにフライバイ(接近)した際に行われたレーダー観測で、タイタンの南半球にまさに「海岸線」と言ってもいいほどの地形を発見した。

   

「ここにはいま正に、ないしは近い過去に液体、もしくは湿地面が存在するかのようだ。」と関係者は語る。

画像の撮影領域は1700km×170km。【JPL 09.17】

…我々には「なるほど、海岸みたいだなぁ」としか見えない画像も、専門の地質学者が見たら様々な情報を引き出すのでしょうねぇ。例えば以前リリースしていた、タイタンに存在する火山とか・・。今後もどのような分析が飛び出すのか、楽しみですね!

★追加情報 (08.31, 2005)

土星の衛星・エンケラドスの南極付近で、大量の水蒸気放出が起こっていることが判明した。今年7月の土星探査機・カッシーニの接近で得られたデータから明らかにされた。

エンケラドスの南極付近には爪でひっかいたような“タイガー・ストリップ”(虎のひっかき傷)と呼ばれる大渓谷構造が存在するが、その渓谷で蒸発が特にアクティブであるという(画像:青く着色された部分)。

エンケラドスには希薄な大気が存在することは先日既報だが、その“供給源”として最有力という。

この現象は、彗星が太陽に接近した際温められ、表面や内部から氷や水蒸気が舞い上がるのと同じという。ただエンケラドスの場合は内部に熱源があることは間違いなく、これは土星による潮汐力と考えられている(下画像:南極付近のクローズアップ。赤く囲まれたところが虎の傷で、黄色いラインはカッシーニの飛行経路)。

ただ、エンケラドスとほぼ同サイズの衛星・ミマスにはこのようなアクティブな現象は見られないため、両者の違いはどこから来るのかなど、興味深い事柄は多いという。
【Spaceflight Now/Cassini HP 08.31】

★追加情報 (08.23, 2005)

土星を周回している土星探査機カッシーニが得たデータを分析している研究チームは、土星のリングを希薄な酸素分子が囲んでいることを発見した。つまり、リング自身が“大気”を持つとも言える。

この酸素分子はリングそのものから生じたものと考えられるという。リングを構成する物質は微少な氷やチリなどであるが、氷に太陽からの紫外線が当たり、水素と酸素に分解、そのうち水素は宇宙空間へ逃げてしまい後に残った酸素原子が同分子を形成しているのだろうという。【Cassini HP 08.23】

★追加情報 (08.16, 2005)

先月リリースされていたトピックスですが・・少しまとめてみました

土星探査機カッシーニは先月、衛星の1つ・エンケラドス(写真)に接近、各種観測を行ったが、これまでの予想を大きく覆す現象が発見された。

それは、エンケラドスの赤道地方が、南極よりも温度が低いということだ。

「例えるなら、サハラ砂漠が南極大陸よりも寒いということだ」と語るのは、カッシーニミッションに関わるコロラド州・サウスウエスト研究所(SRI)の科学者ジョン・スペンサー氏。この発見は、これまで謎だった事柄に1つのヒントを与える一方、新たな謎を生み出している(下:衛星表面の温度分布を示した画像。左は予想されていた温度分布で、右はカッシーニの観測から得られた実際の値。青い部分は温度が低く、赤〜白の部分は温度が高い。南極の温度が特に高いことがわかる)。

           

エンケラドスは1789年に発見され、直径約500キロ。表面は薄い氷の膜で覆われており、太陽光を殆ど反射、太陽系では最も明るい天体である(勿論、太陽以外で)。

カッシーニは最接近時、エンケラドスから約175キロの地点を通過、これは同衛星への接近としては過去最近接。まるでメロンのような印象を与える姿に加え、表面に細い“氷脈”を確認、また、水や氷を外空間へ向けて吹き上げていることも発見した。

一方この現象は、エンケラドスが今なお活発な運動を行っていることを表している。これは、長年研究者達を悩ませてきた土星のEリングとの深い関わりを示す重要な“物証”となると思われている。

土星のEリングは、目に見えるリングの遙か外に形成されている、特に細かい微粒子から成る非常に淡いリング。30年前、ボイジャーによって発見されたこのリングはエンケラドスの軌道付近が最も濃く、それは例えるなら“まとわりつく煙”のようなもの。このEリングがどのように形成されたのかは謎の1つであったが、今回の発見で「エンケラドスが粒子を吹き出して供給している」という説が有力になった。

これまでは、「エンケラドスの表面に衝突する宇宙線などが粒子を巻き上げている」という説が大方の見方だった。エンケラドスは不活発と考えられていたからだ。

ただ、極が高温であることについては、まだ有力なモデルは発案されていない。【Space.com/Cassini HP 08.16】

★追加情報 (08.03, 2005)

画像は今月3日に土星探査機・カッシーニが撮影した衛星・ミマス。“巨大なクレーター”は、かつてボイジャー探査機が発見した有名なもの。「ハーシェル」と名付けられ、直径はおよそ140キロ。小惑星が激突したことで生じたと考えられているが、もう少し小惑星のサイズが大きかったら、ミマスはバラバラになっていただろうと考えられている(→で、“環”になっていた、かも…)。

            

右は、地表成分の違いを視覚化させるための疑似カラー着色。ハーシェル・クレーターの周囲の色が他と異なるのが特徴的である。【JPL 08.03】

★追加情報 (07.29, 2005)

タイタン着陸機・ホイヘンスからのデータを解析しているチームは、今年1月にホイヘンスが得たデータを元に、着陸地点付近の3D画像を公開した。↓

http://www.esa.int/SPECIALS/Cassini-Huygens/SEMO8G808BE_0.html

データの解析は引き続き行われており、今後も新たな解析結果が出される模様。【ESA 07.29】

★追加情報 (07.03, 2005)

次の写真は土星の衛星ですが・・よく似てますが、別物です。それぞれ何という名前なのかおわかりになられたら、かなりの土星フリークです(笑)

左はミマスで、右はテチス。ミマスは直径397キロだが、氷が主成分と考えられており、しかも速い自転のため赤道がかなり膨らんでいる(・・明らかに真球ではないですね)。テチスは直径1100キロで、やはり氷成分が多いと考えられている。表面のクレーターは、古いものは形が崩れて消えかかっているものもある。【Cassini HP】

土星の衛星に関するコメントはこちらが充実しています(Cassini HP 英語)

★追加情報 (06.29, 2005)

土星の衛星タイタンを調査している研究チームは、タイタンの南極近くに、明らかに「湖」と思われる地形を発見した。

            

画像は土星周回機・カッシーニによって得られたレーダーエコーから合成されたもの。画像中央上に、明らかに「水たまり」のような地形が見て取れる。その「湖岸」の様子など、地球の湖に極めて類似。サイズは長さ234キロ、幅73キロで、北米の五大湖の1つ、オンタリオ湖とほぼ同程度という。

タイタンにはそれまでの予測に反して、未だ液体メタンの確固とした存在は確認されていない。アリゾナ大学教授で、カッシーニ画像解析チームの1人であるアルフレッド・マクウェン氏は「液体炭化水素の湖の最有力候補だ」と語る。

メタンの大雨が降り、メタン溜まりができたとも考えられるという。タイタンの超低温下では、蒸発も遅いので、長期間液体で溜まっていることは充分考えられるという。ただ、“火山のカルデラ湖”の可能性も残されているともいう。

カッシーニは今後39回タイタンに接近し、液体炭化水素から得られる“鏡のような反射波”を求めてレーダー調査を続ける。【Cassini HP 06.29】

…うちの近所の湖にそっくりです、桜並木が湖をぐるりと囲んで。。タイタンでも花見ができるかな(ん?笑)

★追加情報 (06.08, 2005)

土星の衛星・タイタンを研究している欧・米合同の研究チームは、土星を周回するカッシーニ及び1月にタイタンへ突入したホイヘンス着陸機のデータから、タイタン大気に関する新たな仮説を唱えている。今月9日発行の「Nature」誌に論文が記載される。

それによると、カッシーニによるタイタン地表のレーダー観測データを解析したところ、火山らしき地形を発見、これがメタンを吹き出すことによって大気中のメタン濃度が高いのではないかと考えられるという。

これまで、大気中のメタン濃度の説明には、表面に液体メタンの海ないし湖が存在することが仮定され、支持されてきた。しかしこの「火山説」が確かなら、「メタン海説」は大きく修正を迫られることになる。

これは、ホイヘンスから得られた画像にも裏付けられる。今のところホイヘンスのデータからは液体メタンの溜まった領域は確認されていない。

火山は内部から氷を吹き出し、溶岩ドームならぬ、「氷ドーム」を形成。また、カルデラ構造も確認されるという。土星本体の重力による潮汐力で内部の温度が上がり、氷が吹き出すと考えられている(これは、木星の衛星・イオの火山活動と同じ理屈)。【ESA 06.08】

…カルデラ構造&氷ドームということは、阿蘇山と島原・普賢岳を足したものか(笑)

★追加情報 (05.29, 2005)

土星の謎の1つとして、同惑星の低緯度(赤道近傍)領域から放出される低強度X線のメカニズムがあるが、先日この謎に決着がついた。

右は、NASAのX線観測衛星チャンドラが撮影した画像。下段が太陽画像を示しており、上段・ブルーの画像中の水色の斑点はX線を示している。

左は、フレアが生じる前。右は太陽中央でフレアが生じている状態を示している(閃光)が、その際、土星本体の下部にたくさんの斑点=X線が存在している。解析の結果、フレアにより生じたX線を土星が反射したものであり、これが低強度X線の正体と結論づけられた。

ただ、そもそも地球や木星といった、強い地場を持つ惑星は極地方にオーロラを生じる特徴があり、そこからX線が放射されている。やはり地場を持つ土星もオーロラを生じているが、土星の場合そこからX線が放出されていない。これはなお、謎だという。【NASA 05.29】

★追加情報 (05.27, 2005)

土星の衛星・タイタンに、謎の“スポット”が出現しているのが、土星探査機カッシーニが撮影している画像より明らかになった。

このスポットは大きさが九州と四国を合わせた位のもの。「タイタンに隕石が落下して高温になった」「地殻内部から噴出が生じてその部分が変色した」「地形の影響により生じた雲」など、いくつかの説が取り沙汰されている(下画像で、右半球の中央下の、シミのようなもの)。

           

今月7月上旬、カッシーニがタイタンへ接近する予定だが、何らかの結論が得られるのではと期待されている。【NASA 05.27】

★追加情報 (05.15, 2005)

今年1月、土星探査機カッシーニに搭載されていたホイヘンス着陸機が見事、衛星タイタンへ着陸したのは記憶に新しいが、その際撮影された画像をつなぎ合わせた地表全景の新たなバージョンが公開された。

           

この画像は、ホイヘンスが降下しながら撮影した“細切れ”画像をつなぎ合わせたもの。高度20キロでゆっくりと回転しながら撮影された画像を、特殊な合成処理で重ね合わせたものという。

画像はステレオ図法(人間の目で見るのに近い、奥行きの縮尺が正しいもの)になるようにつなぎ合わされており、魚眼レンズで撮影された画像に近いという。

写真中、白丸で囲まれたところがホイヘンスの着地地点付近。【ESA 05.15】

★追加情報 (05.11, 2005)

土星探査機カッシーニが新しい衛星を発見しました

           

リングのすき間に見える小さな点がそうで、大きさは約7キロ。S/ 2005 S1と仮符号がつけられ、関係者には「ウェーブメーカー」と呼ばれています。

右から左へ進行しており、通り過ぎた直後に、まるで波のようにウェーブが立ち上がっています。また、前方の上側のリングにも波が立ち上がっています。動画がこちらで見れますが、面白いです。おりゃ〜てな具合に波を立てながら突っ走っていくのが見れます。

波はこの豆粒のような衛星の重力によるものです…かすかな重力ですが、リングの構造を大きく左右するものです。自然の神秘を感じます。【Cassini HP】

★追加情報 (05.06, 2005)

土星の周囲を回る直径数キロの小さな衛星をまとめて12個も発見したと、デービッド・ジューイッツ米ハワイ大教授のチームが6日までに発表した。土星の衛星はこれまで34個報告されており、一気に計46個に増えることになる。

ハワイ・マウナケア山頂にある日本のすばる望遠鏡の広視野カメラを使い、昨年12月に初めて観測。今年3月までに、ハワイのジェミニ北望遠鏡などで再確認した。

衛星の大きさは推定で直径3−7キロで、土星最大の衛星タイタン(直径約5150キロ)などと比べると超ミニサイズ。

12個のうち11個は、主な衛星とは反対の方向に回っている。最も近い衛星でも土星から約1700万キロ離れている点から、土星と一緒に形成されたのではなく、後から土星の重力に引き寄せられて衛星になったのではないかとチームはみている。 【共同 05.06】

★追加情報 (03.17, 2005)

土星の衛星エンセラダスに大気が存在することが、土星探査機カッシーニの磁気観測で明らかになった。大気を持つ土星の衛星は、濃厚なスモッグに覆われ表面が見えないタイタンに次いで2個目(写真はカッシーニが撮影したエンセラダス)。

米航空宇宙局(NASA)によると、カッシーニが先月17日と今月9日にエンセラダスに接近した際、大気の構成成分と見られる水分子イオンの存在を検知した。

エンセラダスは直径約500キロ・メートルの小さい衛星のため、本来は大気が存在しても失われやすく、火山の噴火や間欠泉など安定したガスの供給活動があると推定されている。太陽系の衛星にはこのほか、木星のイオ、海王星のトリトンに大気があると考えられている。【NASA 03.17】

★追加情報 (03.02, 2005)

土星探査機カッシーニが捉えた、かつて無い最高画質の画像が公開された。

これは昨年10月6日に撮影された126枚のモザイク画像をつなぎ合わせたもの。撮影時カッシーニは土星から約630万キロの地点を飛行中だった。画像は一切の修正を施す必要が無いほどはっきり、かつ、鮮やかなもので、これまで得られたどの土星の映像よりも美しいものだという。【NASA/Spaceflight Now 03.02】

           

★追加情報 (02.17, 2005)

土星の南極に現れるオーロラには、地球のオーロラとは異なり数日間続くなどユニークな特徴があることが分かった。土星を周回している米欧の無人探査機カッシーニと、米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡による同時観測の結果で、米ボストン大などのチームが16日、英科学誌ネイチャーに発表した。

オーロラは太陽などから出る荷電粒子が惑星の磁気圏にとらえられ、大気圏の上層に流れ込んで発生。宇宙からは北極や南極を取り巻く輪のように見える。

画像は、先月24,26,28日に撮影されたもの。土星本体はナチュラルカラーで、オーロラは紫外線域で撮影されている。

観測の結果、地球も土星も、日によってオーロラの見え方が違う点は共通だが、地球のオーロラが数分から数時間で消えてしまうのに対し、土星は数日間も続いていた。【共同/NASA 02.17】

土星の衛星・タイタンへ15日に接近したカッシーニによるレーダーエコー画像がリリースされた。

画像には、直径約440kmの巨大クレーターが映っている。タイタンの地表にはクレーターなどがあまり見られていなかったが、この巨大クレーターはこれまでで初めて確認された、はっきりとしたものであるという。巨大な隕石などがのめり込んだ結果、生じたものだろうと見られている。

          

一方、別の画像では、ネコのひっかき傷のような細い特徴も確認されている(下)。たぶん、風で形成されたものではないかという。【NASA 02.17】

          

★追加情報 (02.09, 2005)

先月14日、土星の衛星タイタンへ着陸したホイヘンス着陸機からの微弱な電波が地球の電波望遠鏡群で直接追われたが、この初期分析の結果がリリースされた。

ホイヘンスからの観測データは一旦、カッシーニへ送られ、それが地球へ中継されたが、それとは別に、地球上でそのかすかな電波の直接追跡が行われた。このシグナルの変化から、大気の運動(風速など)を追跡することができる。

なお、ホイヘンスからカッシーニへ送られる予定だった風速データは、チャンネルのエラーのため失われている。このデータと、地上での観測をあわせて分析される予定であった。だが、地球上の電波望遠鏡で捉えられたシグナルの変化から、当初の予定よりも極めて高精度に運動を解析することができるという。

現在の所、タイタン表面から高度120キロの地点で風速・秒速120メートル(時速430キロ!)であったこと、高度が低下するに連れて弱まっていくが、高度60キロで風の吹き方が大きく変化すること、などがわかったという。

また、パラシュートの展開など、幾度かのイベントの際の速度の変化もバッチリ捉えていたという。今後、更なる解析でより正確な大気構造を探るという。【ESA 02.09】

★追加情報 (02.05, 2005)

米航空宇宙局(NASA)の研究者がハワイにあるケック望遠鏡で土星上空の大気の温度分布を調べてこんな新事実をつかみ、3日発表した。周囲より暖かい極域が見つかったのは、太陽系の惑星では、土星が初めてという。

研究者は土星の南半球を赤外線で観測。成層圏の温度は大半が零下130度以下だったが、南極では零下122度と大幅に上昇していた。表面に近い対流圏でも、南極付近で急激な温度上昇がみられた。 【共同 02.05】

…写真は、赤外線波長域で撮影された土星です。南極が白く輝いていますが、これは周囲より温度が高いことをしめしてます。

★追加情報 (01.27, 2005)

タイタンへ着陸したホイヘンスを開発した欧州宇宙機関(ESA)のHPへのアクセスについて、着陸を果たした15日だけで約91万9000ヒットのアクセスがあったという。

14日〜21日の約1週間で、延べ3億4070万ヒットをカウント。ピークは最初の画像が公開された会見の時で、1秒間に3000ヒット(!)を記録。また、数多くの激励とお祝いのメールを受け取ったとのことで、全ての人々に感謝するという声明が出されている。【ESA 01.27】

★追加情報 (01.21, 2005)

米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は21日、土星最大の衛星タイタンで、島々の周囲をメタンの“川”が流れているとみられる画像を公表した。

島は、画像の左上から右下に明るい色を示した領域として連なり、標高はそれぞれ異なる。周辺の暗い部分には、微妙な明暗の差や波頭のようなものが見られる。過去に流れた川の痕跡の可能性もあるが、今も海や泉から液体のメタンが流れ出ているとも考えられるという。メタンの川は地表を浸食し、水の氷を堆積(たいせき)させたり、押し流したりしているらしい。

観測チームは、降下中に観測した大気成分や、高度125―20キロで収集した粒子の分析結果も発表。メタンと窒素から成る大気が地球の大気圏に似た対流を生み、降雨など様々な気象現象を引き起こしているという。【各種報道 01.21】

★追加情報 (01.18, 2005)

ホイヘンスはタイタンの地表から僅か30キロの高度で“もや”から抜け出し、着地は予想以上におとなしかった事が明らかになった。

解析によると、着地の際、“ドスン”という感じではなく、もちろん“ザブン”でもなく、いわば“ムニュ”、“ベチャッ”という具合だったと見られるという。真下を撮影するカメラのレンズに何かがこびりついているのが明らかで、これを考えてのこと。「機体が埋まっているのか、あるいは何かが飛び散ってレンズに張り付いているのか、どちらかだろう」と関係者は語る。着地の際の機体への衝撃はかなり小さかったのでしょうね!?

また、地上の画像に中に自身をつり下げてきたパラシュートが見えないため、カメラが向いているのはたぶん東ではない、と見られている(降下時の状況から、パラシュートが地表に被さるのは東側である可能性が高いため)。【ESA01.19】

ホイヘンスが高度13キロから8キロにかけて降下中に撮影した地上のパノラマ画像が公開された。これは30枚のモザイク画像をつなぎ合わせて作成したものという。解像度は約20メートルで、幅は差し渡し約30キロ。

降下速度は毎秒5メートル(パラグライダーくらい)。また水平方向へは毎秒1メートルとかなり小さく、ほぼ垂直に降下したことが判明している。【ESA 01.18】

なんてこったい…

米・欧の小型探査機ホイヘンスが撮影した土星の衛星タイタンの断片的な画像を、アマチュア天文家たちが独自に合成、着色してウェブサイトに公表し、「広報を担当している欧州宇宙機関(ESA)より対応が早く、画像もきれいだ」とインターネット配信のニュースサイトやブログなどで評判となっている(右:その一例。よくできてる〜(驚))。

元の画像は探査計画に参加した米アリゾナ大が公表したものをつなぎ合わせた白黒パノラマ画像。カラー加工された1枚は先に公表されたその画像の着色版で、オランダの科学者が運営する個人サイトに出た。

画像の中には、海岸線や河川のような地形が写ったタイタン表面を一覧できる合成写真もあり、アマチュアに先を越されたESAがあわてて合成写真を公表する一幕もあった。 【読売】

…このせいでしょうか、ESAの対応はかなり速くなり、分析結果(勿論、初期分析ですが)がぞくぞくとリリースされています。ESAからは「生画像」もHPにリリースされていますから、それを独自につなぎ合わせたりもできるわけです。

それにしても、「オタク」は日本の代名詞みたいなものですが、ここまでくるともう、欧米人オタクはスケールが違いますね(^^;

その、欧米オタク達が作った画像のリンク集はこちらです↓ 右のパノラマのファイン版もあります。感嘆します…


http://www.foxcheck.org/story/2005/1/16/185247/971

★追加情報 (01.17, 2005)

14日、ホイヘンスのタイタン突入時、ハワイ・マウナケア山頂のケック天文台の10m反射望遠鏡でタイタンが撮影されたが、ターゲットとされていた“ファイアーボール”をキャッチすることはできなかった。

この日、ケックでは赤外線波長域でタイタンを観測、ホイヘンスの大気圏突入時に生じる高温のプラズマの撮影を試みた。当時山頂は天気が悪く、風も強く、氷結と雪が残った状態での観測。だが、突入の瞬間における画像を撮影することができ、またこれは最高の画像だという(右・矢印はタイタンが突入した地点)。【Kek observatory 01.14】

★追加情報 (01.16, 2005)

14日、先月25日に母船・カッシーニから切り離されたホイヘンス探査機が、予定通りタイタンへ突入、地表に着陸することに成功した。ホイヘンス着陸のドキュメントを、一部再編集を含めて纏め直しました。ボタンをクリックしてご覧下さい!別ウィンドウで開きます。 このウィンドウ内はこちら


★追加情報 (01.14, 2005)


欧州宇宙機関(ESA)及び米航空宇宙局(NASA)発表の、ホイヘンス突入及びカッシーニに関する予定タイムテーブルです(時刻は地球時間、つまり実際のイベントはこの約70分前に起こったことになります。なお、日本時間です)。

14:51 タイマーが起動し、電子機器のスイッチが入る
タイマーが作動し、ホイヘンスのオンボード機器が“眠り”から覚め起動を始める。データ送信機はローパワーモードでスタンバイ。
17:09 カッシーニ、大型パラボラをタイタンへ向ける
ホイヘンスからのデータを受信するため、パラボラアンテナをタイタンへ向け始める。12分後、完了。
17:24 カッシーニからの通信、途絶
カッシーニとのXバンドでの通信が途絶。この後、全ての行程はオンボードプログラムに従い行われる。地上との交信は途絶えるため、ホイヘンスが大気圏突入に耐え抜いたか、きちんと降下しているか否かは地上の大型望遠鏡群での直接受信により確認される(データの受信は不可能だが、ビーコンの受信は可)。
19:13 ホイヘンス、“インターフェース高度”に到達
インターフェース高度は地表から高度1270キロの地点と定義されているところ。この高度までタイタン大気は広がっていると見なされている。この後、時速2万キロで大気圏突入、耐熱シールドは約3500℃まで上昇の予定。
19:16 耐熱シールド、最高温度
ホイヘンスの耐熱シールドが最高温度で、機体に加わる力が16Gに達しているころ。
19:17 パイロットパラシュート、展開
速度が秒速400メートルまで落ちたこの時点で、パイロットシュートを展開。高度180キロ。パイロットシュートは直径2.6メートルの小さなもので、探査機のリアカバーを外すのが目的。展開から2.5秒後にリアカバーを引きはがし、その後直径8.3メートルのメインシュートが展開する。
19:18 ホイヘンス、カッシーニへの送信を開始。耐熱シールドを分離。
高度160キロで耐熱シールドを分離。パイロットシュート展開の42秒後、ガスクロマトグラフ質量分析計及びエアロゾルコレクターが展開し、各種大気成分測定器をつけたブームが伸びる。また、搭載カメラが最初のパノラマ画像を撮影、以後これは着地まで継続。底部に取り付けられた地表観測装置に電源が入り、起動を開始する。
19:32 メインシュート分離、ドラッグシュート展開
Tドラッグシュートは直径3メートル。この時点で高度125キロであるが、メインシュートだと降下が遅く、地表到達前にバッテリー切れとなる。従ってやや速度を上げるため、より小型のシュートを展開する。
19:49 地表センサー、起動
地表まであと60キロ。上記の行程まで、ホイヘンスに搭載のタイマーに従って進行してきたが、この後は地表までの距離を測定しながら各プロセスを進めていく。
20:56 “アイシング・イフェクト”
タイタンの超低温がホイヘンスに影響を与え始める頃。この低温が機器にどのような影響を与えるかは、実際のところわからない。
20:57 ガスクロマトグラフ質量分析計、大気サンプルを収集
ホイヘンスに搭載された機器が全て同時に起動するのはこれが最後。ホイヘンスは降下時に毎分1〜20回転の割合でスピンしているが、これにより降下地点のパノラマ画像が得られるものと期待されている。
21:19 カッシーニ、タイタンへ再接近
カッシーニ、タイタン上空に最接近。距離6万キロ、時速2万キロ。
21:30 カメラの傍につけられたランプ、点灯
地表を照らすランプが灯される。これは撮影カメラにもそうだが、特にスペクトロメーターに取って、地表の正確な構成物質を割り出すために重要なもの。
21:34 着地!
ホイヘンス、秒速6メートル程度で着地。地表は岩石質か、氷の上か、或いは液体メタンの上か、ついに明らかに。観測機器が地表の状態を分析し、カッシーニに送信する。なお、液体の上だった場合、底部につけられたソナーでその深度も測定される。カッシーニは着地後、最悪でも3分程度は活動できるように設計されている。
23:44 カッシーニ、ホイヘンスからのデータ受信、終了
ホイヘンスがカッシーニの視界から外れるため、これ以上のデータ受信は不可能。
23:54 カッシーニ、パラボラを地球へ向ける
3分後に姿勢制御、完了。
24:14 最初のデータが地球に到達
各地の大型電波望遠鏡でホイヘンスからのデータを受信する。万を記して、これから数時間かけてプレイバック(再送)が2度行われる(つまり、データ送信は計3回)。データは直ちに担当研究者に送られ、画像を含む最初の速報が日本時間15日早朝に予定されている。

★追加情報 (01.12, 2005)


図は14日に降下するホイヘンスの撮影領域。ホイヘンスは降下中に撮像を行うが、その「視界」を示したもの。この画像は昨年10月26日にカッシーニが撮影したもので、解像度は約4〜6キロ。

一番外側の緑ラインは高度150キロから撮影される範囲で、以下、水色・高度90キロ、ピンク・高度50キロ、赤・高度30キロからの撮影領域。勿論、地表に近づくにつれ解像度も上がる。黄色のポイントは着地予定地点を示している。

約2時間半の降下中、搭載された5つの観測機器が大気の成分などを分析し、カメラが地表の撮影を行う。無事着地した場合、更にバッテリー切れになるまで観測を続ける。

一方、データはリアルタイムでカッシーニに送られ、カッシーニはそれをメモリーに蓄える。全行程で約3時間が予定されているが、その間蓄積されるデータは約500MB。ホイヘンスからの受信が終了すると地球へと送信が始まるが、データと送受信の確実性を記すため、3セットの送信が予定されている。

ちなみに、ホイヘンスからカッシーニへの送信は、仮に電池が長持ちしたとしても3時間は超えない。カッシーニの視界からホイヘンスが外れるためである。【NASA/JPL】

★追加情報 (01.04, 2005)

15日に予定されているホイヘンスのタイタン突入に際し、ホイヘンスからカッシーニ経由で送られるデータとは別に、地球上の大型電波望遠鏡群で“直接”、ホイヘンスのシグナル追跡が行われる。ホイヘンスの送信出力は10ワット。ワットだけ言えば蛍光灯より小さいのだが、この超・超微弱なシグナルの変化をダイレクトに追いかける。

追跡には米・国立電波天文台(NRAO)の望遠鏡群が用いられる。NRAOを構成するグリーンバンク電波望遠鏡(ウェストバージニア州・写真)、超長基線電波干渉計(VLBA)を成す8基(of 10)が稼働する予定。(この8基はPie Town, Los Alamos, Fort Davis, North Liberty, Kitt Peak, Brewster, Owens Valley, Mauna Kea. 詳細はVLBAのページをご参照下さい)

このミッションでは欧州チームがホイヘンスの正確なポジションを計測し、米国チームが降下速度や方向などを追跡する。一方、オーストラリアや日本、中国の電波望遠鏡がタイタン大気の探査にあたる。これらをドッキングさせることで、タイタン大気の極めて精度の高い運動を解析できるものと期待されている。

また、欧州各国の電波望遠鏡も追跡し、NRAOのデータとあわせることで、12億キロ先の探査機の位置を、誤差僅か1キロ(!)の精度で確定することができるという。

タイタンの大気運動に関しては、現時点では殆どわかっていない。ただ、タイタンの自転そのものよりも速いスピードで運動していることはわかっている(これは金星大気と同じような現象で、「スーパーローテーション」と呼ばれる)。ボイジャー1号が1980年に接近した際に得られたデータ、また、その後に得られたデータやそれらを基に構築された流動モデルをベースに、突入プロセスがくみ上げられたが、実際どうなるかは、飛び込んでみないとわからないという。

これらはホイヘンスから送信されるシグナルのドップラーシフトを計測することで達成される。(もう、まさに“地球全身で受け止める”という感じですね。)

なお、同様の試みは1995年、木星探査機「ガリレオ」に搭載されていた小型突入機の木星突入の際にも行われている。この時は地上でのダイレクト追跡とあわせることによって、木星大気が深い部分ほど速く運動していることが判明した。これは大方の予想と異なる結果で、これを基に新たなモデルが提唱されたりしている。【NRAO】

…ホイヘンスのタイタン突入は日本時間14日午後6時過ぎが予定されています。この日、土星は「衝」(太陽−地球−土星で一直線)ですから、突入時、日本ではちょうど東の空から上り始めた頃、ハワイではほぼ頭上、米国西部のNRAOアンテナ群には西の空に見えるはずです。ハワイのマウナ・ケア電波望遠鏡が最良の条件でしょう。。因みに欧州では、土星は西に沈みかけてギリギリじゃないかなぁ…パラボラはほぼ西の地平線の方を向いて追跡することになりますね(かなり苦しいぞ(笑))。まあ、欧州資本の電波望遠鏡は世界中にありますから、それらを駆使することになるようです。

★追加情報 (12.28, 2004)

タイタンへ着陸機を放出したカッシーニは28日、軌道修正を行った。25日、カッシーニはタイタンへ直撃するコースを辿りながら着陸機ホイヘンスを投入、成功している。今回の軌道修正で自身の突入をさける(当然ですね(笑))。なお、ホイヘンスのタイタン突入は来月15日。【NASA/JPL 12.29】

カッシーニがホイヘンスを切り離して2日が経過した27日、カッシーニは更にホイヘンスを撮影、その拡大画像が公開された。

丸い輪郭が着陸機の外縁を示している。ごく僅かなピクセルの画像であるが、より正確な投入軌道を確定するための重要な資料になるとのこと。

★追加情報 (12.25, 2004)

衛星タイタンへ直接降下し、その分厚い大気や地表の状態を探査する着陸機ホイヘンスが日本時間25日正午過ぎ、カッシーニから切り離された。ホイヘンスは来月14日昼、タイタン大気へ突入、全てがうまくいけば着陸後もデータ送信を行う予定。

ホイヘンスは欧州宇宙機構が開発したもので、各種観測装置やカメラなどを備えており、カッシーニの脇腹に装着されて打ち上げられた。放出時に毎分7回のスピンが与えられ、スプリングの力でソフトリリースされている。ホイヘンスには一切の姿勢制御エンジンが搭載されておらず、姿勢を安定に保つため、ゆっくりとした回転が与えられている。(超ロングシュート、ですね)

なお、切り離しの際カッシーニのアンテナが地球を向かない位置にあるため、通信が再開する日本時間午後3時頃に、正確な確認が取れるとのこと。

16日に軌道修正が行われ、現在カッシーニはタイタンへ衝突するコースを辿っている。この状態でいわば、正面へ“押し出した”訳で、ホイヘンスは一直線にタイタンを目指す。28日にはカッシーニの再軌道修正が行われ、当然ながら、“母船”のタイタン衝突を回避する。

ホイヘンスの動力はバッテリーであり、これから約20日間、電力の消耗を防ぐため“冬眠”に入る。再び“目覚める”のは突入の直前で、起こすのは“目覚まし時計”であるタイマー。ここまで来て、“寝坊”したら、目も当てられない…タイマーは3重に備えられている。まるで目覚まし時計を3つ並べているようなものですね(それでも起きない人もいますが…(笑))

目を覚ましたホイヘンスは、時速2万キロで大気へ突入し、約 1200 度の高温という“洗礼”を受ける。耐熱カバーがこれに耐え、時速1400キロまで速度が落ちると、補助パラシュートが開き、続いてメインシュートが展開する。このシュートは15分後に切り離され、更に、より小さなパラシュートが開き、ゆっくりと大気圏を降下する。その間、大気の成分など、フル稼働で可能な限りの測定を行い、リアルタイムでデータを転送する。約2時間半後、秒速5メートルで着地する(このスピードは、パラグライダーで着地するときとほぼ同程度)。

着地後はその状態にもよるが、写真撮影など行いながら、バッテリーが切れるまでデータを送信する。

ちなみに当初のプランでは11月に切り離しが行われる予定であった。ところが打ち上げ後のチェックで、ホイヘンスからの電波をカッシーニが受信する際の「受信域帯」に無理があることが判明、12月リリース・1月タイタン突入というプランに練り直された。(写真:ホイヘンスを組み立てる技術者達)

詳細:ホイヘンスからカッシーニに送られる電波はドップラーシフト(近づいてくる救急車の音が、高い音程で聞こえるのと同様の現象・電波版)しているため、本来の周波数よりもズレている。ところが受信域帯が狭いため“はみ出して”しまい、当初のプランではカッシーニが受信できないことが判明。このズレは、両者の速度差が小さいほど小さいため、ズレが可能帯域に収まるような速度でリリースができるよう、飛行計画が練り直された(「対策」参照)。なおこの問題は、ホイヘンスから送られるシグナルにドップラーシフトへの対策が施されていなかったため。

対策:タイタンへのアプローチ高度を当初の50倍にまで引き上げ(6万キロ)、相対位置も修正することで相対速度を極力小さくする。また、ホイヘンスのスイッチを予定よりも早めることで機器全体の温度を上げ、機器の安定性をより確かなものにする(温度をあげることで発振周波数を変動させ、周波数を受信帯域に納めようということかな?このテの技法はボイジャー2号でも使われました:管理人)。より詳細はプレスリリースをご覧下さいhttp://saturn.jpl.nasa.gov/news/press-release-details.cfm?newsID=24

現在のところ、理論で予想されているメタンやエタンの湖や沼の存在は、明らかになっていない。10月のカッシーニによるレーダー調査でも、未決着のままである。ホイヘンスは、この最大級の謎に、大きなヒント、或いは答えを与えるものと期待されている。【JPL/NASA/SpaceflightNow 12.25】

★追加情報 (10.30, 2004)

NASAは29日、米欧の無人探査機カッシーニが初めてとらえた土星の衛星タイタンの表面のレーダー画像を公開した。右画像は縦150キロ、横250キロで、解像度は300メートル。

カッシーニが26日に最接近した際、タイタンの上空約1600キロから撮影した。黒く見える平らな部分と、白っぽい起伏のある部分とが混在し、変化に富んだ地形だった。表面の成分は炭化水素などとみられる。

タイタンの環境は原始の地球に似ているとされ、表面には液体のメタンやエタンが存在するとみられている。NASAは、黒く見える場所について「表面が非常に滑らかな固体か、あるいは液体かもしれない」としている。

また、主立ったクレーターが見られないことから、地表は地質的に若いと考えられるという。【Spaceflight Now 10.29】

…白っぽい部分が細長く、黒い部分に木の根のように入り込んでいるところがあります。これって、黒い部分は固体と考えた方が妥当なような気がしますねぇ(?)。渓谷のように見えるところが、白と黒の間にも見えますが・・どうなんでひょ?

27日に土星探査機カッシーニが最接近した衛星・タイタンの画像が続々公開されている。

右の写真は可視光と赤外線で撮られたイメージを合成したもの。赤外光は3つの波長(2、2.7、5ミクロン)で撮影されている。南極側(画像下方)に白く輝くのは、大気に漂うメタンの雲。この画像は最接近2時間前、タイタンから10万キロの地点で撮影された。

左上の拡大部は、1月に着陸機ホイヘンスが着地する予定地点。

また、衛星表面に大きな明るい“大陸”のような部分と、凍結した液体と思われる暗い部分が見られる。これまでの分析で、明るい部分と暗い部分の物質は似たような物質で、大気中から降着したものか、もしくは内部からわき出たものとみられるが、詳細はまだはっきりしない。

同時に、殆どクレーターらしきものが見られないのも不思議だとしている。(分厚い大気のせい?・管理人)

なお、予測されている「メタンの海(もしくは沼)」の存在は、この画像だけからはわからないという。同時に行われたレーダー調査の分析からより詳細が得られるものと期待されている。このレーダー分析の速報は、今日にもリリースされるとのこと。【NASA/Spaceflight Now 10.29】

★追加情報 (10.07, 2004)

写真はカッシーニが撮影した土星の衛星・ディオネ。7月2日、140万キロの地点から撮影したもので、左は通常の写真で、右側は露出オーバーの処理を施したもの。

右の写真では、光の当たらない側も微かに写っているが、これは土星本体に当たった太陽光線が“照らしている”ため(同様の現象は地球の月でも見られる。三日月の暗い部分がぼんやり光って見えるもので、地球照(ちきゅうしょう)と呼ばれている)。

また、ディオネの暗い部分の輝き方のムラから、表面には氷があることが推測されている。【NASA/ Spaceflight Now 07.21】

写真は、土星探査機カッシーニが7月1日、土星周回軌道投入操舵中に撮影したもの。手前に写っているのは衛星プロメテウス(大きさ約102キロ)で、向こう側にぼやけて見えるのは F リング。プロメテウスは、別の衛星パンドラと共に、F リングの安定化に大きく寄与している「羊飼い衛星」。

この画像は、カッシーニがリング面下方から上方へ横切る際、ワイドアングルカメラで撮影された。【NASA/JPL 10.07】

★追加情報 (07.01, 2004)

無人探査機カッシーニを史上初めて土星の周回軌道に乗せた米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の科学者らは米太平洋時間の30日深夜、記者会見し「これ以上の出来はない」(探査計画責任者のロバート・ミッチェル博士)などと、極めて順調に進んだ作業を振り返った。

ミッチェル博士らによると、カッシーニは土星の周回軌道に予定通り入った後、高精度カメラを使って輪の近接撮影を開始。4年間の探査のスタートを切った。【共同】

日本時間1日正午前、カッシーニは土星周回軌道への投入が始まった。以下、NASA TVからのダイジェスト(時間は日本時間)

11時過ぎ 管制官達がピーナッツを食べ始める。これはいわゆる「願掛け」で、宇宙開発黎明期の1960年代、重要なミッションを目の前にしてのイライラを、ピーナッツを食べながら晴らしたということに由来するとか。いつしか、ミッション成功への儀式とかしてしまったという(笑)…知らなかった。。

11:26 FリングとGリングの間を無事通過。管制室に歓声

11:35 逆噴射1分前 管制室に緊張が漲る

11:36 カッシーニから、逆噴射開始のシグナル。管制室に歓声、皆ハイタッチで喜ぶ(笑)

NASAのカッシーニHPのカウントダウンが「SOI has occurred」に変わる。

カッシーニからのシグナルのドップラーシフトが小さくなり始める。これは機体の速度が落ちていることを意味し、予測曲線通りに低下している模様。カッシーニからのシグナルはオーストラリア・キャンベラにある、JPL深宇宙ネットワーク(DSN)の大型アンテナで受信中。(写真・赤くギザついているところはリングの向こう側を通過して電波が乱れているところ)

11:41 上院議員らの歓迎訪問を受ける。シュワルツネッガーは来ないのかな?マーズローバーの時は来たのに…

リング上方を飛行中のカッシーニは大型アンテナを地球へ向け、電波を送信中。この電波はリングを通して地球へ送られており、後に電波の減衰データ(右写真)から、リングの密度や成分、構造などが分析される予定。

12:24 カッシーニは予定噴射時間のちょうど半分に到達。

12:47 比較的分厚いBリングの裏側にまわる。地球との交信、一時途絶。

13:04 土星本体に最接近した模様。

13:05 Bリングの影から出現、地球との交信再開。管制室に歓声。

13:12 逆噴射停止、予定通りの軌道へ投入成功!管制室に歓声。

7年の航海を終え、無事に到着。カッシーニは、地球人が作った、土星の周囲を周回する初めての飛行体となった。

13:13 逆噴射間隔は、予定の僅か1秒の誤差で達成されたことがレポート。スゴ!

【Photo・CG/ NASA】